夕焼け少女達と紡ぐモノガタリ   作:希望光

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はいどうも。希望光です。
えっと……ごめんなさい!
間に合うように書いていたら、データが飛んでしまって、間に合いませんでした!
本当、前回といい今回といい戦犯ですよ……。
とりあえず、本編の方をお読み頂けると幸いです。
注意としては、例の如く時系列が飛んで、ネタバレを含んでいますのでご了承下さい。
それでもOKという方は、どうぞ!


ひまり誕生日回:重なる(号令)

 その日、朝から雷輝は憂鬱であった。普段と特段変わらない朝を迎えてはいるが、憂鬱なのであった。彼は、重い体を起こすと学校へ向かう準備を始めた——

 

 

 

 

 

 普段通りの通学路。そこを1人歩く雷輝。

 

「あ、雷輝君!」

 

 そんな静かな通学路に、彼を呼ぶ1つの声が木霊した。しかし雷輝は、その呼び声に応じることなく歩みを進める。

 

「酷くない?!」

 

 直後に、地震の真後ろから聞こえてくる反論の声。そこで漸く雷輝は応じるのであった。

 

「おはようひまり。朝から元気だな」

「私が呼んだのに無視しないでよ!」

 

 ブーブーと、文句を飛ばすひまりを一瞥した雷輝は、再び学校へと歩みを進める。

 

「で、こんな早朝の時間帯から俺を捕まえに来たってことは、なんか用があるのか?」

「うん。実は——」

「断る」

 

 雷輝はひまりの言葉を遮り、断言した。

 

「まだ何も言ってないじゃん!」

「……ええ?!」

「そこ驚くところじゃない!」

「で、用件は?」

 

 なんとも奇妙な茶番を繰り広げる2人であったが、雷輝が即座に切り替え、話を本線に戻した。

 

「あ、えっとね」

「はい」

「放課後私に付き合ってほしいな〜って」

「中身次第だな」

「買い物とか」

「帰りまーす」

「なんで?!」

 

 雷輝の無情な一言に対して、ひまりは叫ぶのであった。

 

「他のやつ誘えばいいだろ」

「みんな用事があるんだって……」

「そう言うお前は?」

「私は今日部活休み。雷輝君も休みだよね?」

「どうだか。確かに休みだが、唐突にやり始めるかもしれない……。先輩()があんな感じだから……」

「そうだね……」

 

 そう言った雷輝の瞳は虚であった。それを見たひまりは、彼に同情するのであった。

 直後、ひまりは何かを閃いたらしくあ、と言って雷輝に話し始めた。

 

「じゃあさ、こうしようよ?」

「どうするんだ?」

「今日の昼休み確認取りに行くの」

「俺とひまりでか?」

「そう!」

 

 ひまりの提案に、雷輝は少し考え込んだ。そして、こう答えた。

 

「分かった。今日の昼休みが始まってから5分後、階段の前な」

「了解!」

 

 そう言ったひまりは、こう続けた。

 

「じゃあ、今日も1日頑張って行こー! えいえい——おー!」

「……」

「合わせてくれてもいいじゃん!」

「いや、これが日課なものだから」

「今日の雷輝君いつにも増して冷たい!」

 

 不満全開のひまりに、それは無いと一蹴した雷輝は、進むペースを若干速めた。

 

「待ってよ!」

 

 そんな彼の後を、ひまりは追いかけていくのであった——

 

 

 

 

 

 A組の教室に入ってきた雷輝。すると、普段はこの時間に登校してきていない人物の姿があった。

 

「おはよう蘭」

「ん」

 

 自身の隣の席の少女に挨拶をした雷輝に、少女こと蘭は短く返すのであった。

 そんな彼女を見た雷輝は、普段と変わらない日常を認識する。

 

「ところで、準備の方は?」

「こっちはできてる」

「そうか。んじゃあ、これ」

 

 そう言って雷輝は、蘭に何かを投げ渡す。受け取った蘭は首を傾げた。

 

「何これ」

「俺の部屋の鍵。それ必要になるだろ?」

 

 雷輝の言葉に蘭は頷いた。

 

「でも、これがないと入れないんじゃないの?」

「そうと言えばそうだが、放課後は予定入るかもしれないから、みんなの方が早いと思う」

「何の予定?」

「ひまりに、買い物に付き合って欲しいって言われたんだ」

 

 それを聞いた蘭は、納得するのであった。

 

「わかった。こっちは任せて。後、ひまりの事宜しく」

「ああ」

 

 それだけ言って、2人の会話は終了した。

 その後は、特段目立った事もなく午前の授業が終わった。

 そして迎えた昼休み。

 雷輝は約束通りに階段の前に立っていた。

 

「お待たせ!」

 

 そんな彼の元に、ひまりがやってきた。

 

「待ったわ」

「そこは否定するところだよ!」

「早いところ行こう」

「聞いてよ!?」

 

 騒ぐひまりを他所に、雷輝は下の階へと向かう。

 対するひまり本人も、反論を諦め彼の後に続くのだった。

 すると、彼が不意に口を開いた。

 

「しっかしなぁ……いつ行っても2学年(魔境)には慣れないな……」

「雷輝君の場合は……特にだよね」

「かもな……っと、着いたが果たしているのか」

 

 雷輝は、辿り着いた教室——2-Bの中を覗き込んだ。

 しかし、その中には雷輝が目的としていた人物の姿は無かった。

 

「……いない?」

「かもな……」

「あら、上条君に上原さん」

 

 言葉を交わした直後、2人に声がかけられた。

 

「あ、友希那先輩」

 

 声をかけてきたのは、友希那だった。

 

「何か用かしら?」

「洸夜先輩に用事があるんですけど……」

「彼ならさっき、教室から出て行ったわ」

「どこに行ったかとか分かります?」

「確か、隣のクラスへ行くって」

「A組か……」

 

 友希那の言葉に、思わず雷輝は頭を抱えるのだった。

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

 それだけ告げると、洸夜はひまりを連れて隣の教室へと向かった。

 そして、先程同様に中を覗く。

 

「あ、いた。洸夜先輩」

「雷輝?」

 

 彼に呼ばれた洸夜は、雷輝の元へと歩み寄った。

 それに続いて彼の妹の日菜も着いてきた。

 

「ライ君だ!」

「どうも」

「で、何のようだ?」

「今日練習休みですよね?」

「ああ、そうだが。なんでだ?」

 

 そう尋ねる洸夜であったが、となりにひまりがいたことに気付き、理由を察するのであった。

 

「そういうことか。了解。こいつ(日菜)は俺がなんとかしとく」

「ありがとうございます。だとさ、ひまり」

「洸夜先輩ありがとうございます!」

「良いってことよ」

 

 そう言った洸夜に対して、日菜が問い掛けた。

 

「え、今日練習やん無いの?」

「そもそもOFFだろ。というわけだから日菜、放課後甘いもの食べに行くぞ」

「え、奢ってくれるの?」

 

 洸夜は頷いた。

 すると、思わぬ方向から声が飛んで来た。

 

「なになに〜、洸夜が奢ってくれるの〜?」

「誰もお前に奢るなんて言ってないんだが」

 

 横から現れたリサに、洸夜はそう返した。

 そのまま、洸夜は日菜とリサ、2人の対応に追われ始めたが、ひまりと雷輝に早く行くように手で促した。

 それを確認した2人は、足早に2学年のフロアを立ち去った———

 

 

 

 

 

 放課後、雷輝とひまりは駅前のショッピングモールへと足を運んでいた。

 今現在は、ブティックに来ている。

 

「ねー、この黒い方と白い方どっちがいいと思う?」

「うーん、普通に着るなら白いほうかな。ライブ衣装だって言うなら黒い方」

「うーん、じゃあ白い方かな。買ってくるね!」

 

 そう言い残して、ひまりは服を持ってレジへと向かった。

 雷輝は自身の制服の内ポケットに手を入れ、必要なものを持っているかを再確認する。

 確認を終えた直後、ひまりが戻ってきた。

 

「買い終わった?」

「うん!」

「で、次はどこに行くんだ?」

「うーん、どこか行きたいところある?」

「俺は特には」

「じゃあ、お茶してこ!」

 

 雷輝は頷き、2人はモール内のカフェへと向かった。

 そして、中に入り席へと通された。

 

「何飲もうかな〜」

「俺はカフェオレで」

「じゃあ、私はピーチティーにしよーっと」

「ん、じゃあそれを頼んでっと……。すいませーん、これとこれお願いします」

 

 少々お待ちください、と言い残して店員は奥へと消えていった。

 

「ふう。ありがとね、今日付き合ってもらって」

「あまり本意ではないがな」

「もー、そう言うこと言わないの!」

 

 そんな感じで、何気なく会話をしながらも2人はカフェを満喫した——

 

 

 

 

 

 その後、カフェを後にした2人は帰宅する為に歩いていた。

 その道中、雷輝は何気なく足を止めた。

 

「どうかしたの?」

「いや、ここの辺りに神社なんてあったんだなぁと思って」

 

 雷輝が見つめる先には、古びた神社がひっそりと佇んでいた。

 

「本当だ。お参りでもしてく?」

「そうだな。こうして見つけたのも何かのご縁かもしれないしな」

 

 2人は、参拝道を歩き本堂の前へと向かう。

 賽銭箱の前に立った雷輝は、財布から小銭を2枚取り出した。

 

「はい、ひまりの分のお賽銭」

「え、いいの?」

「いいよ」

 

 受け取ったひまりは、雷輝と共に賽銭を投げ入れ、鈴を鳴らした。

 暫くの間沈黙が辺りを包む。

 そして、数瞬の後に2人はそっと目を開いた。

 

「ねぇねぇ、何をお願いしたの?」

「教えない」

「なんでよ〜」

「内緒にしたいからだ。そう言うひまりは?」

「私はね——」

 

 そう言ったひまりは、こう続けた。

 

「これからも、Afterglowのみんなや雷輝君といられますようにって」

 

 それを聞いた雷輝は、一瞬固まったがすぐに切り替え、フッと言うのであった。

 

「な、何かおかしい?」

「いや、ひまりらしいなと。まあ、そう言うことなら頑張れよ。()()()()さん」

「ありがとう! ひまりちゃん頑張っちゃうよー! と言うわけだから、アレやろ?」

「号令?」

「うん! 行くよ。えいえい——」

「「おー!」」

「え?」

 

 あまりのことに、ひまりは驚いた。

 普段の流れ。いつもやっているやりとり。

 なんなら今朝もやったばかりだった。

 それは不発に終わる事が彼女の中では当たり前のことなのだろう。

 

 しかし、今のは不発ではなかった。

 そう、目の前の彼が合わせてくれたから。

 

「今日という日ぐらい、いつも通りじゃなくてもいいだろ?」

 

 そう言って雷輝は、懐から取り出した小包をひまりに渡した。

 

「え、これは……? どう言うこと?」

「わかんないか? じゃあ——ひまり、誕生日おめでとう」

 

 覚えていてくれていないだろう彼が、覚えていてくれた。

 その事が、今のひまりにとってどれ程までに嬉しいものか。

 

「覚えててくれたの?!」

「まあな」

「ありがとう雷輝君! あ、これ開けてもいい?」

「構わないよ」

 

 了承を得て開けた中身は、ヘアゴムだった。

 

「これって……」

「ひまりのヘアゴム、痛み始めてた気がしたからさ」

「うん! ちょうど変えようと思ってたの! ありがとう!」

「いいって事さ。さて、そろそろ行くぞ」

 

 雷輝はそう言って踵を返した。

 

「え、何処に?」

「俺の家」

 

 それだけ言い残して、彼は歩き始めた。

 

「何があるの?」

「強いて言うならみんながいる」

 

 それを聞いて、ひまりは理解した。

 そして、彼にこう言った。

 

「え、じゃあ急がないと!」

「え、あ、おい、引っ張るな!」

 

 こうして、ひまりに引き摺られながら雷輝は、自分の部屋へと向かうのだった。

 その後、雷輝の部屋で誕生日会が行われて、混沌とした状況になったのはまた別のお話。




はい、本当何遍も何遍も同じこと繰り返してて……すいません皆さん。
何よりひまりに申し訳ないです……。
えっと、とりあえずですね……次回は通常通り、本編の方を進めて行く方針でございます。(恐らく此処よりも『その全』の方に回ってしまうと思いますが)
また、宜しければ感想・評価等お願い致します。
最後に、ひまり誕生日おめでとう!

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