第97管理外世界の赤い球   作:破壊光線

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プライド オブ ガールズ

 フェイトはなのはに呼び出されて、対デスレム&グローザムについて話し合っていた。

 場所は翠屋という喫茶店。お店の隅っこの席を使って三人の少女と一匹のフェレットが顔を見合わせている。テーブルにはオレンジジュースが三つとミルクが一つ置かれていた。

 まず初めに話したのは少女ではなくフェレットだった。ユーノと呼ばれるこのフェレットが司令塔のようだ。

 

「確認だけど、グローザムはバラバラにしてからなのはの砲撃で倒す。デスレムはフェイトの斬撃で急所を突く。ボクはこれが有効だと思ってる」

 

 続いて金髪の少女が手を上げた。彼女の名前はフェイト。この前、友達のヒロシという少年の家で観たDVDの内容を伝える。

 

「実は、デスレムもグローザムもウルトラマンメビウスに出てきた怪獣なんだ。二体とも倒されたんだけど、グローザムはユーノの作戦通りで倒された。デスレムは合体必殺技で倒されたけど、近距離戦は苦手みたい。だから私が接近して攻撃するのは有効だと思う」

 

 この中で見た目が一番年上の少女、アルフが頭を抱える。

 

「となれば、後はどうやって決めるか。だね」

「うん。私なりに考えたんだけど、デスレムの火球を私が頑張って打ち落とすから、その間にユーノ君のバインドとフェイトちゃんでグローザムに攻撃する。

 バラバラになったら私の砲撃でグローザムを倒す。アルフさんはその間でデスレムを攻撃して注意をひいて欲しい。接近するまでは私が援護するから」

 

 一番の難題に答えたのは白い服を着た少女、なのはだった。彼女は自身の経験と敵の攻撃、レイジングハートやユーノのアドバイスから考えた作戦を発表した。この作戦に二人と一匹は首を縦に振った。

 

「それでなのは、作戦名は」

「作戦名?! うーん、考えても無かったな……」

 

 立案者のなのはが腕を組んだ。うーうー唸るがなかなか思いつかないみたいだ。フェイトが手を叩く。

 

「プライド オブ ガールズ。それが作戦名」

「え、ボクは……」

「にゃはは、ユーノ君、オスだもんね」

 

 なのはがフェレットの性別をカミングアウトした。フェイトはそっか、と呟いて口を開ける。

 

「それなら、ユーノはウルトラマン枠だね」

 

 フェイトはにっこりとほほ笑んだ。

 

 

 

 今、フェイトたちは街の大通りにいる。作戦がまとまってからすぐにジュエルシードの反応があったからだ。四人はジュエルシードの魔力を頼りに広い海鳴市を走っていく。

 なのはの肩に乗ったユーノが叫んだ。

 

「北に走って、そこに怪しい結界がある。きっとそこだ」

 

 ユーノの言葉通り、街は不思議なドーム状の結界に包まれた影響で周りに人はいない。代わりに特徴的なシルエットが二つ現れた。

 一つは扇状の左手と長い首が特徴的な影、デスレムだ。もう一つは三日月を横にたおした頭と厳つい鎧みたいな上半身の影、グローザムだ。

 すでにジュエルシードは二人の手の中にあり、それを見せびらかせて挑発する。

 

「お前らの目的のものはここにあるぞ」

「欲しかったら戦って勝つんだな。前回みたいにならなければいいが、フハハハハ」

 

 肩を回して臨戦態勢に入る二人に対し、魔法少女たちは杖を構えた。

 

「行くよ、フェイトちゃん」

「分かった。……大丈夫、きっと勝てる」

 

 なのはが一歩下がり、フェイトがカマを振るった。ユーノとアルフは少しでも相手の動きを止めるべく、バインドを仕掛けた。

 

「ディバインシュート!」

 

 作戦通り、なのはの光弾がデスレムの火球とぶつかり合って相殺する。

 腕を封じられたグローザムは口から冷気を吐いてフェイトの雷撃を相殺。爆発が起こる。フェイトが煙に紛れて一瞬でグローザムの背後に回り込んだ。

 

「甘い」

 

 なんとグローザムが自らの腕をちぎることで縛られていたバインドを抜け出した。再生したグローザムブレードでフェイトのバルディッシュを迎え撃つ。しかし、この前の戦いでグローザムも学習をしたのか、フェイトの動きに対応しつつあった。

 

「この前は単独で戦っていたのに今日は連携してくるとは、無駄な足掻きを」

「無駄なんかじゃない! レイジングハート」

 

 ディバインシュートとデスレムインフェルノがぶつかり合う。撃ち漏らした火球はユーノがバリアで防いだ。アルフが打撃でデスレムを牽制、できるかぎりデスレムの注意をひく。

 

「予定変更、私が一回砲撃するから、フェイトちゃんは避けて」

「了解」

 

 作戦変更、なのはが魔力を溜めに入った。フェイトとグローザムが斬り合い、アルフとデスレムが殴り合う。その間、火球はユーノがすべて防いだ。なのはの魔力が溜まる。

 

「ディバインバスター」

 

 フェイトが離脱し、グローザムになのはの必殺技が直撃。グローザムの身体が四つに砕け散った。ここでもう一発、ディバインバスターが決まればグローザムは倒れるだろう。なのはが砲撃体勢に入る。

 

「デスレム!」

「応」

 

 デスレムが四つに分かれたグローザムの身体に対して時空をゆがめると、それらが消える。さらになのはの背後に時空の穴が開いた。

 

「そこだ!」

 

 デスレムの穴から再生したグローザムがとびだし、なのはの背中を切り付けた。とっさにバリアを張ったが、完全には防ぎきれず地面に叩きつけられる。なのはの白いバリアジャケットの背中だけが赤く染まっていた。

 

「作戦が上手くいってると思ったら大間違いだ。光線だろうが、切断だろうがこの俺には通用しない」

 

 元通りになったグローザムがゆっくりと近づいてくる。フェイトたちの作戦を破り、上機嫌になったグローザムが叫んだ。

 

「お前たちの攻撃自体が無駄だ、俺は不死身のグローザムだ」

「グローザム、仕上げといこう」

 

 デスレムの言葉が合図となり、デスレムインフェルノが流星群のごとく降りそそぐ。さらにグローザムがヘルフローズンブレスと合体。灼熱と氷結という反する属性を持った流星群がフェイトたち四人を襲った。

 ボロボロになりながらも立ち上がると、氷と炎の悪魔は次なる攻撃を仕掛けるべく準備をしている。

 

「デスレム、フォーメーション変更だ。存分に暴れてこい」

「了解。お楽しみのトドメといこうか」

「ハッ、センスねーな。トドメは氷漬けにして磔だろ」

 

 グローザムが冷気を放つとデスレムの真上でドーム状に広がった。半球上になった氷の中でデスレムが笑っている。

 

「さあ行くぞ。デスレムインフェルノ」

 

 半透明な氷の中で謀将が必殺技、デスレムインフェルノを乱射する。再び流星群がフェイトたちに襲い掛かる。

 

「間に合えぇえ」

「ありがとう、ユーノ君……ディバインバスター」

 

 それでもユーノがバリアを張ったおかげで、なのはに時間ができて砲撃を放つ。氷のドームがバリアとなってデスレムには届かない。さらにひび割れた個所をグローザムが冷気を放ち補修した。

 

「ウルトラマンを氷漬けにした俺の冷気だ。そう簡単に突破できると思うなよ」

「俺は氷のバリアに守られて、相棒は不死身。フハハハハ、完全なる敗北に打ちひしがれるといい」

 

 再び襲い掛かるデスレムインフェルノ。安全地帯に入ったデスレム、バインドは効くだろうがデスレムインフェルノは身体の自由を奪っても関係ない。グローザムの作った氷の防壁にいる彼はまさに無敵だった。迫りくる火球を避けながらフェイトが考える。

 

 このままだとフェイトたちは再び負けてしまう。しかし、攻撃できたとしてもグローザムは不死身でデスレムは氷の中。グローザムをバラバラにしてもデスレムが次元を歪めて回収してしまうだろう。次に出てるとしたらデスレムの隣。そうなれば氷の壁をグローザムが永遠に修復を続け、デスレムの攻撃は止むことはない。さらに二人は防壁の中、手も足も出ない状況になってしまう。

 

 ―――最後まで諦めない限り、かならずチャンスは巡ってきます。逆に作り出すように戦えばいいんです―――

 

 ふと、フェイトはヒロシが言ったことを頭の中でよみがえった。

 怪獣殿下は言った、チャンスを作り出す。

 

「そうだ!」

「どうしたのフェイトちゃん」

 

 バリアで攻撃を防ぐなのは、フェレットという身体を生かして隕石を掻い潜るユーノ、バリアを張りつつ腕をクロスして防御するアルフ。全員やることをやりながらも、フェイトの言葉に耳を傾けた。

 

「ユーノの作戦、覚えてる? 今がチャンスなんだ」

「分かった。何すればいいの?」

 

 フェイトの意図を組んでか、なのはが指示を待つ。フェイトの作戦は、四人が乱れて協力する必要があるほど高度な戦術だ。今まで敵同士だった者同士が実行可能かは分からない。

 

 ―――仲間がいればどんな強敵にも勝てるって―――

 

 温泉旅館では個別に戦っていたから勝てなかった。だけど、今は四人でこうして戦っている。だからこそ、チャンスはここしかない。

 

「アルフはグローザムを攻撃して、その後も再生できないように攻撃し続けて。なのははアルフの援護をお願い、ユーノは私に近づいて」

 

 フェイトの指示を受けて三人が一斉に動き出した。

 

「フェイト、分かった。君の作戦に賭ける」

「アルフさん、お願いします。私に背中を任せてください」

「あいよ。グローザムはアタシに任せて」

 

 アルフが吠え、火球に臆することなく突っ込んでいく。降りそそぐ隕石は全てなのはが打ち払った。アルフの拳とグローザムの槍がぶつかり、さらになのはの光弾が加わりグローザムを追い詰める。

 

「アークセイバー」

 

 そこにフェイトがベムスターを倒した、あの光りの刃がグローザムを真っ二つにした。さらにアルフの打撃のラッシュでグローザムの再生を妨害する。

 

「立て直すぞ、グローザム」

 

 しびれを切らしたデスレムがさっきと同じように時空の歪みを作った。グローザムを退避させて再生を図るのだろう。これもフェイトの読み通りだ。

 

「ユーノ、肩に乗って」

 

 フェイトがユーノを肩に乗せ、グローザムの破片を掴むと、デスレムの生み出した時空の歪みに飛び込んだ。

 一方でなのはで魔力を溜めつつ、ドーム状のバリアを張ってグローザムの破片が時空の歪みに吸い込まれないようにしている。

 

「そこだッ!」

「よしっ、捕らえた!」

 

 ドーム状の氷で覆われているデスレムの背後からフェイトとユーノが出現。ユーノがデスレムをバインドで縛り上げ、がら空きになった身体をバルディッシュが切り刻んだ。

 敵二人の連携を読み切り、なのはとアルフ、フェイトとユーノ。珍しいコンビでの連携は大成功。デスレムは身体の自由を奪われ、急所に連続で斬撃を浴び、さらに氷の防壁にひびが入る。グローザムは再生しようにもパーツが足りず、再生した部分もアルフによって破壊される。なのはのバリアが障壁となって二人の逃げ道を断つ。

 

「みんな、準備オッケー。デカいのいきまーす」

 

 なのはの魔力が溜まりきった。アルフが離脱。フェイトがデスレムもろとも氷のバリアを吹っ飛ばし、再生中のグローザムにぶつけた。

 フェイトの目が光る。

 

「質量が小さくなったとき、破片の全てを消せば再生できない。そしてデスレムは合体攻撃が苦手。ならこれで、バルディッシュ!」

「いくよ、レイジングハート」

 

 なのはに続き、フェイトも攻撃態勢に入る。

 テレビ番組、ウルトラマンメビウスで倒されたデスレムとグローザム。デスレムはメビウスとジャックの合体光線で、グローザムは再生中に破片を全て焼きつくされて敗北した。

 なのはの砲撃は射線上の敵全てを打ち抜くほどの強力な一撃だ。グローザムの小さくなった身体を消し飛ばすくらいの威力はあるだろう。そこにフェイトの砲撃までもが加わる。デスレムにとどめを刺した、メビウスとジャックの合体光線のように。

 

「アルフ!」

「分かってる!」

 

 ユーノとアルフが息ピッタリのタイミングでデスレムとグローザムを拘束。これで二人の身体は緑とオレンジの光に拘束され、まったく身動きがとれない。

 

「いくよ、フェイトちゃん」

「合わせるから、なのは」

 

 白と黒。杖と鎌。正反対の武器が振り下ろされる。同じなのは二つとも強力な攻撃を放てるということ。

 

「全力全開! スターライトブレイカー」

「これで、トドメ! サンダースマッシャー」

 

 黄色と桃色の二つの砲撃が合わさり、一つの光の束となってデスレムとグローザムを飲み込んだ。

 

「バカな、俺が負けるだと。人間ごときに、俺の戦術が」

「俺は、俺は不死身のはず、俺は不死身の……」

 

 地面が抉れ、ビルが崩壊し、大爆発が巻きおこる。デスレムとグローザムは跡形もなく消し飛んだ。

 

「やった、やったよ、フェイトちゃん!」

「すごいじゃないかい二人とも」

「アルフもお疲れ様。ありがとう、なのは」

「うまくいってよかった~」

 

 フェイトたちはお互いの健闘をたたえて抱き合った。グローザムがいたところにキラリと光っている。ユーノがいち早く気づき、近づくとジュエルシードが落ちていた。おそらくはグローザムが見せびらかしてたものだろう。

 

「このジュエルシード、どうしよっか」

「考えてなかったね」

「明日もさ、ここで会おうよ。それでまた戦って決めようよ。それでいい?」

「え、僕としては回収したいけど……。なのはに協力してもらわないといけないからなぁ。はぁ、今回はそれでいいか」

「アタシはフェイトの言うことに従うけどさ。それで、誰が保管するんだい?」

 

 あ。なのはとフェイトが同時に声を上げた。二人とも倒すのに夢中でそこまで考えてなかったらしい。フェイトは少し考えてから。

 

「ヒロシ君っていう男の子がいて、魔法関係のこととかジュエルシードのこととか知ってるから、その子に持っててもらうのはどう?」

「いいけど、そのヒロシ君は信用できるの?」

「できるよ。だってグローザムとデスレムの弱点を教えてくれたんだもん」

「うん、それなら安心だね」

 

 なのはは浩が味方だと判断して承諾。フェイトがスマホを取り出した。

 

「呼ぶね。……もしもし、あ、ヒロシ」

 

 しばらくして一人の少年が現れた。その少年はゆっくりと歩きながらつまらなそうに周りを見渡している。

 

「デスレムとグローザムがいるってホント」

「うん。でも倒しちゃった」

「……だから、そんなボロボロなんだ」

「強かったけど、ヒロシのアドバイスのおかげでなんとか倒せたよ。ありがとう」

 

 笑顔を見せるフェイトに対し、浩が関心のない返事を返す。それからなのはの方を見た。

 

「君は」

「あ、はじめまして。私は高町なのは。こっちはユーノ君。よろしくね」

「ふーん、よろしく。俺は鹿島浩。それで要件は」

「あ、これを預かっててほしいんだ」

 

 フェイトはジュエルシードを渡した。浩は恨めしそうに青い宝石を見つめている。

 

「わかった。それだけ?」

「それだけだけど……今日はどうしたの? 機嫌悪いけど」

「何でもないよ。じゃあ、これから塾があるから」

 

 素っ気なく言い放つと手ぶらまま姿を消した。ひとまず事件は終わり、フェイトとなのはは分かれて帰路についた。

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