第97管理外世界の赤い球   作:破壊光線

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 メフィラス三部作の始まりです。


メフィラスのゲーム

 なのはとフェイトが戦う前、まだ放課後になっていないころの出来事だ。

 ここは私立私立聖祥大付属小学校。海鳴市にある大きな小学校の三年生の教室で、仲良し三人組の少女たちがいた。

 一人目は高町なのは。デスレムとグローザムを倒すことになる少女だ。二人目はアリサ・バニングス。きれいな金髪を持つ彼女だが、生まれと育ちは日本。英語と日本語を操るバイリンガルで学校の授業も完璧にこなす、いわば天才少女だ。三人目は月村すずか。こちらはベムスターが現れた猫の多い屋敷に住んでいる少女。おっとりとしている見た目とは裏腹に運動神経が抜群だ。

 勉強がずば抜けて出来るアリサと、スポーツ万能なすずか、そして魔法少女のなのは。三人とも見ためも可愛いことから学校では人気が高い。いつも仲良しの三人だが、最近の中は悪かった。

 

「だから、どうして遊べないのよ」

「うん、ごめんね」

 

 放課後、これから遊ぼうと誘うアリサとそれを申し訳なさそうに断るなのはがいた。喧嘩になりそうな雰囲気の中、すずかはアリサをなだめている。三十分前からこの調子だ。

 

「もう知らない」

 

 ついにアリサがキレて教室を飛び出した。

 

「ごめんね、なのはちゃん。アリサちゃんだってそんなつもりはないんだよ」

「うん、分かってるよ。すずかちゃんもゴメンね」

 

 すずかは申し訳なさそうに、さよならを言って教室を出た。

 残されたなのはもデスレムとグローザムを倒すべく、教室を後にする。こうして、なのはとフェイトが戦い、それからクロノと会うことになる。

 

 

 

 一方で一緒に下校し、遊んでいるすずかとアリサに忍び寄る影があった。

 なのはを誘うことに失敗したアリサとすずかは気分を紛らわすために大通りでウインドショッピングをしていた。

 アリサは色とりどりの服やかわいいアクセサリーを見て、自分に似合うかを考えていると、どうしてもここに居ない親友の顔を思い出してしまい、その度に落ち込んでしまう。

 

「アリサちゃん、やっぱりもう一度話してみようよ」

「そんなこと言ったって、温泉旅館行く前からあんな感じなのよ! ったく、悩みがあることを隠し切れないくせにウジウジして」

 

 アリサの剣幕に押されてすずかは困惑していた。それでも二人の仲を取り持とうとするのは、すずかが優しいからだろう。

 

「でもさ、なのはちゃんだって悩みの一つや二つくらいあると」

「分かってる。分かってるけどさ、友達の悩みに力になれないどころか、話してもくれないなんて」

「お嬢さん方、失礼ですが聞いてしまいました。私なら力になれるかもしれません」

 

 落ち込むアリサに、声をかけたのはすずかではない。少女のものとは全然違う渋い声だった。アリサとすずかが顔を上げる。ガラスに映っていたのは、驚く二人の少女と黒ずくめの宇宙人だった。

 

「私はメフィラス星人。ただの風来坊ですよ」

 

 アリサとすずかが振り返ると、メフィラス星人以外に人はおらず空は紫色にビルは緑色に染まっていた。

 

「この場には私たち以外は居ません。しかし、立ち話もあれです」

 

 メフィラス星人はどこからともなく木のテーブルと椅子を三つ出現させ、そのうちの一つに座る。メフィラスはさらに、どうぞ。と空いた二つの椅子に、アリサとすずかを強制的に瞬間移動させて座らせた。

 

「な、何の用よ」

「ここは……何処」

 

 異空間に飛ばされたと思った二人が怯える中、テーブルにラッキョウが詰まったビンと美味しそうなイチゴのケーキ、そしてティーセットを出現させる。少女たちの驚いた反応に満足すると、メフィラスの発音器官が光った。

 

「食べたまえ、食事をしよう」

 

 こうして二人の少女と宇宙人による奇妙なお茶会が始まった。

 

 

 

 メフィラス星人はアリサとすずかに手を上げることなくラッキョウに手を付けた。ものすごい音を立てて消えていくラッキョウに、少女たちの顔が青くなる。

 

「……さっきからラッキョなんか食べてないで要件を言ったらどう」

 

 アリサが口を開く。今まで驚きっぱなしなに嫌気を刺したようだ。

 

「申し訳ありません。お二人が慣れるまで待っていようと思ったのですが、その心配は無くなりました」

 

 メフィラスはテーブルの食べ物を全て消し去った。

 

「あなた方のお友達、高町なのはさんの事ですが、彼女は今、時空管理局という組織に捕まっています」

「なんですって」

「どういう、ことですか。信じられません」

「そうだろうねぇ。私のような宇宙人が突然、非現実的なことを言っても信じてもらえないでしょう。しかし、これは事実です」

 

 すずかの言葉に紳士的な相槌を打って、宇宙人は続ける。

 

「時空管理局。文字通り、様々な星や世界を管理、支配する組織です。私の故郷のメフィラス星も彼らの手によって支配されてしまいました。

 その時、私は円盤で宇宙旅行をしていたおかげで助かったのですが……。そこは省略します。彷徨った挙句、地球に来ました。その時、なのはさんはすでに時空管理局と戦っていたのです」

 

 メフィラスはスマホのような機械を取り出して映像を流した。そこには機械の杖を持って巨大な猫と戦い、黒い少女と一緒に怪獣を倒すなのはが映っていた。

 

「この猫は時空管理局の一人によって改造されたもので、あの怪獣は管理局の生物兵器です。そして、高町なのはの肩にいるフェレットも元々は人間。彼も時空管理局の手によって動物に変えられてしまったのです。

 ああ、黒い少女はフェイトと言って、なのはさんの味方です。ご安心を」

 

 フェイトの一撃でベムスターが倒される。アリサとすずかが安堵したのもつかの間、メフィラスはその後すぐに次の映像を流した。

 今度は温泉旅館近くの森が映し出される。人間の姿から変身したデスレムとグローザム、そしてそれと戦うなのはとフェイトが映された。

 

「ご覧ください、これが時空管理局の正体です。実に禍々しい怪人ではありませんか、極悪非道な組織にはお似合いです。優しい彼女はあなた達を守るために、日々戦っていたのです。しかし……」

「なのは!」

「なのはちゃん!」

 

 次の瞬間、デスレムとグローザムになのはとフェイトが倒されていた。映像が一旦そこで切れ、次に映されたのはクロノと、クロノから逃げるフェイト、連行されるなのはだった。

 

「ご覧の通り、怪人たちに負けてもなお、なのはさんは仲間であるフェイトに対し、自らを犠牲にすることで守ったのです。しかし、相手は時空管理局、今頃なのはさんは洗脳されていることでしょう」

「ちょっと、どういうことよ! なのはは私たちが遊んでいる時も戦ってて。なのに私はあんなに酷いことを……」

「アリサちゃん……。お願いします、どうか、どうかなのはちゃんを助けてください」

 

 アリサは無力に打ちひしがれて涙を流し、すずかは親友を助けてとメフィラスに懇願する。

 二人の少女を見て、メフィラスの青い目が輝いた。

 

「申し訳ありません。残念ながら私に戦う力はありません」

 

 メフィラスの言葉を聞いてうつむく二人の少女。だが、メフィラスの話は終わっていなかった。

 

「ですが言ったはずです、私があなた達の力になると」

 

 これを。メフィラスは二つのデバイスを取り出してテーブルの上に置いた。一つは灰色の扇型のデバイス。もう一つは真っ白の槍のようなデバイス。すずかとアリサの宝石のような目が二つのデバイスを捕らえた。

 

「これはデバイスと言って、なのはさんが時空管理局と戦うときに使っていたアイテムです。これをあなた達に差し上げます。これさえあれば時空管理局と渡り合えるでしょう。

 この扇のようなものはデスローグ、炎を操れるデバイスです。これをアリサさんに。こちらの槍のようなデバイスはグロッケン、氷を操れるデバイスです。これはすずかさんに」

 

 アリサとすずかがデバイスを手に取ると、扇と槍が輝いた。

 アリサの制服は白から赤をベースにしたものへと変わり、ミニスカートと黒のスパッツ。赤い金属の籠手、上はなのはのバリアジャケットを赤ベースにしたものにだ。胸元にはカラータイマーのような青い宝石が輝いている。

 

 すずかの制服は青のロングコートに変化し、白をベースにしたワンピース、黒タイツを履いている。紫を帯びていた長い髪は一つに結ばれ、額には白いカチューシャを付けている。

 アリサは左手にデスローグを装備し、すずかは右手にグロッケンを握りしめていた。

 

「なにこれ」

「すごい」

 

 変身したこと信じられないのか身体のあちこちを見渡している。メフィラス星人は二人が状況を理解したことを確認して、声を発した。

 

「どうですか? これが時空管理局に対抗する力です。とはいえお二人はまだ慣れないでしょう、この空間をそのままにしておくので、戦闘の練習でもされたらどうですか。止めたいと思えば洋服、この異空間共に元に戻ります。あとはそうですねえ、戦う感覚としては人間がよく遊ぶゲームに近いと思います。参考までに」

 

 アリサとすずかはメフィラス星人にきちんとお辞儀をしてお礼を言ってから、顔を見合わせて互いに頷いた。その様子を見て悪質宇宙人が満足そうに両腕を広げる。

 

「さあ、今度はお二人が友を助ける番です」

 

 アリサとすずかは誰もいない異空間を駆けだし、互いに模擬戦を開始する。親友の高町なのはを助けるためだと信じて。

 純粋な少女の背中を見て、メフィラスは人知れず姿を消す。その表情は変わらないが、浩がメフィラスを見たらこう言うだろう。

 何笑っているの? と。

 

 

 

 その日の夕方、なのはが時空管理局の取り調べから戻ってきたときは夕方だった。

 艦長のリンディと話した結果、敵が地球のテレビに登場する怪獣だと分かると、なのはとユーノの希望もあり、一緒に戦うことになった。しかし、帰路についたなのはに元気はない。ユーノは少年の姿に戻ると、必死に元気のないパートナーを慰め続けた。

 

「どうしたの? なのは、悩みがあるなら何でも言ってよ」

「大丈夫だよ」

 

 強がって笑う少女の背中をユーノは優しくさすった。

 

「本当は戦いたくなかったとかじゃない? ボクは何時も君に頼りがちだから……もっとしっかりしなきゃいけないのに。でも時空管理局の人たちも来たから、もうボク一人で」

「やめてっ!」

 

 ユーノの言葉を遮るようになのはが叫んだ。大きな瞳からはポロポロと涙を流していた。

 

「……今日ね、学校でアリサちゃんとすずかちゃんと喧嘩しちゃった……。私が悩んでいるのにどうして相談してくれないのって。でも、私が戦ってるって言ったら、アリサちゃんもすずかちゃんもきっと助けてくれると思う、だって優しいから」

 

 でも。言葉を切りつつもなのはは吐き出した。

 

「それじゃあダメ、ダメなの! 二人には私みたいに魔法が使えないし、使えたとしてもデスレムやグローザムみたいな強敵と戦って欲しくない! その分、私が頑張るから、一生懸命頑張るから、二人にはずっと笑っててほしい。ユーノ君だけが傷つくのだってもっとダメなんだから!」

 

 ユーノはそっと、なのはを抱きしめると背中をさする。何度も、何度も、なのはが泣き止むまで。

 

「大丈夫。ジュエルシードは全部集まってないけど、すぐ集まるよ。そしたらまた皆で出かけようよ。ボクとなのはとアリサにすずか。フェイトとアルフさん、それに管理局の人たちも一緒さ。フェイトたちとはまた敵同士になっちゃったけど、一度一緒に戦ったんだからきっとみんな仲良くなれる」

「うん、うん」

 

 なのははユーノの言葉に何度もうなずいた。

 

 

 なのはとユーノがみんなでどこに行こうかと話をしながら歩いていると、急に街の雰囲気が変わった。空が紫色になり、灰色だったコンクリートブロックが黄緑色に変化する。

 不気味な世界で二人は名前を呼び合い、警戒態勢に入った。慎重に歩いていくと笑い声と共に黒ずくめの宇宙人が現れた。

 

「初めまして高町なのはさん、ユーノ・スクライアさん。私はメフィラス星人」

「メフィラス星人、用件はなんだ!」

 

 ユーノがメフィラスからなのはを守るように立つ。宇宙人は手を前に突き出して。

 

「まあ、待ってください。私は暴力は嫌いです。戦うつもりはありません」

「何しに来たの?」

「今日は宣戦布告に来ました。あなた達に……いえ、高町なのはさん、あなたとそのお友達、月村すずかさんとアリサ・バニングスさん。三人の心にね」

「アリサちゃんとすずかちゃんに何をした!」

 

 なのはが珍しく怒鳴る。今までなのはが戦って来れたのも、友達を傷つけたくないという気持ちもあったからだ。メフィラスは詫びも入れずに笑っている。

 

「そのうち分かります。ですが安心して下さい、私はお二人に手を出していませんし、今後もそのつもりです。さらにあなたにも手を出さないと約束しましょう。少女に手を上げるほど私は野蛮ではありませんから。

 そうですねえ、これはゲームみたいなものです。このゲームにあなた達が勝てば新しい仲間を手に入れ、友達と強い絆で結ばれるでしょう」

「……もし、負けたら?」

「高町なのはさん、あなたが私のしもべになります。どうですか、面白いゲームでしょう?」

 

 メフィラスから放たれるプレッシャーに二人は睨み返すことしかできない。

 

「それではこの辺で、次に会うときを心から楽しみにしておりますよ。ワッハッハッハ」

 

 高笑いをしながら姿を消した。取り残されたなのはとユーノを青い空が見守っている。

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