第97管理外世界の赤い球   作:破壊光線

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メフィラス三部作、終了です。


作戦:死者再生

 高町なのはは逃げている。追手はアリサとすずか、なのはの親友だった。

 二人の親友は、なのは目掛けて様々な光弾を放つ。なのははその度にバリアを張って防御したり、回避したりしてやり過ごしていた。しかし、二対一。数の差、アリサたちのコンビネーションもあり次第に被弾していった。

 一方のアリサとすずかも一方的に攻撃してるが、その顔は歪んでいて、二人とも目に涙を溜めている。

 二人はなのはを傷付けないように、早く終わるように。一発一発願いを込めて魔法を放った。目を覆いたくなるような光景なはずなのに、アリサとすずかのデバイスだけは嬉しそうに光っていた。

 

「なのはっ!」

「なのはちゃんっ!」

 

 決死の思い出放たれた、炎と氷の魔弾がなのはに直撃した。白いバリアジャケットが破れて、なのはが大地に叩きつけられた。

 なのはは、仰向けの状態から腕に力をこめて立ち上がろうとする。上半身を起こした時、アリサとすずかがなのはの前に立ちふさがり、槍と扇を突き付けた。

 なのはの瞳が大きく開かれて、ヒッと悲鳴を漏らす。

 

「なのはちゃん、ごめんね、ごめんね」

「なのは……もう、大丈夫だから」

 

 三人の瞳から涙が流れ、地面に斑点模様を作った。

 

「お見事です。アリサさん、すずかさん。後はあなた達二人が、なのはさんを攻撃し、気を失わせることで洗脳が解かれます。さあ、最後の攻撃です」

 

 アリサとすずかは顔を背けた。デバイスを持つ手が震えている。

 

「何をしているのですか。あなた達が苦しんでいるのと同じように、なのはさんも苦しんでいるのです。早く攻撃して解放してあげなさい」

 

 メフィラスの言葉を受けて、アリサとすずかがなのはに向き合った。無抵抗のなのはにアリサが怒鳴る。

 

「どうして、どうして何も抵抗しないの? アンタ、私たちから攻撃されているのよ」

 

 なのはが必死に口を動かして、言葉を紡ぐが親友には届かない。

 それは事の始まり、あの日の、喧嘩して別れた放課後とよく似ていた。事情を聞いたアリサと、ただひたすらに謝ったなのは。

 

「何をしているのです、撃つのです! 友のために」

 

 メフィラスの声が響き渡る。アリサとすずかはデバイスを構え直し。

 

「さっさと撃て」

 

 腕が震えて。

 

「撃て!」

 

 そして……武器を地面に落とした。

 

「もう、無理です、私には撃てない。ごめんなさい」

「メフィラス星人! なのはは攻撃できない、誰がどう見ても私たちの勝ちよ。私たちの勝ちでしょ? ねえ!」

 

 アリサとすずかは膝から崩れ落ちると、なのはに抱き着いた。

 親友を攻撃して心苦しかったのは、なのはだけではない。アリサとすずかも心を殺して、今まで戦ってきたが、ついに限界を迎えたのだ。

 なのはのバリアジャケットに顔をうずめて、ひたすら謝り続ける。なのはは二人の頭を優しくなでる。

 

「ええい、もういい! この馬鹿どもがっ!」

 

 ついにメフィラス星人がしびれを切らした。

 突如、円盤が現れて三人に光弾が降りそそぐ。座り込むなのはを守るべく、アリサとすずかが立ち塞がった。

 

「エリアル、プロテクションッ!」

 

 緑色のバリアが三人の前に立ちはだかり、光弾を全て防ぎきった。三人の前に現れたのは……。

 

「ユーノ君!」

「ごめん、なのは」

 

 ユーノ乱入にアリサとすずかはデバイスを拾い、距離をとる。

 

「ユーノ無事? メフィラスが言うには管理局から酷いことされたって」

「ユーノ君、なのはちゃんは操られているの」

「なのはは操られてなんかいない」

 

 ユーノは武器を構えられながらも、毅然とした態度で二人に言い放つ。

 

「アリサ、すずか。君たちが何を吹き込まれたか知らないし、相手がメフィラスだから何も言わないけれど。

 君たちを攻撃したメフィラスと、最後まで君たちを攻撃しなかったなのは。どっちを信じているんだ」

 

 アリサとすずかはハッと目を開くと涙を拭って、視線を合わせてデバイスを上げる。その直線上には円盤があった。あの円盤はユーノとクロノが装置を破壊したことで現れたのだろう。

 

 なのはの口が動いた。二人には言語としては聞こえない。しかし、アリサとすずかはスペースを作り、なのはを向かい入れる。仲良し三人組が横一列に並んだ。扇、槍、そして杖。三つの異なるデバイスは青空の下で輝き、三人が同時に異なる技を叫んだ。

 青、赤、桃。三つの光線は仲良く円盤目掛けて飛んでいき、中心を打ち抜いた。中から黒ずくめの宇宙人が現れて着地する。

 

「メフィラス星人」

 

 メフィラスは四人相手に構えると、そのままビームや光弾を乱射した。様々な軌道を描き、襲い来る光線たち。その全てをアリサとすずかが防ぎきる。

 

「なのはッ!」

「なのはちゃんッ!」

 

 二人の言葉に強くうなずくと、なのはがレイジングハートを構える。

 

「メフィラス……ディバイン、バスター」

 

 今まで溜まっていたものをすべて吐き出すかのように放たれた。ピンクの光線は射線上にあるメフィラス全ての光線を打ち消し、それでも劣ることなく飛んでいく。その威力にメフィラスが後退した。

 

「みんな、大丈夫か」

 

 クロノが到着し、これで五対一。メフィラスはそれでもひるむことなく、ペアハンド光線を放つ。しかし、メフィラスの攻撃を防いだのは、クロノでもなくなのはでもなく、火炎放射だった。

 地底から茶色い怪獣、空から灰色の怪獣が現れてクロノの横に立つ。

 

「テレスドン、ドラコ……あなた達が何故」

 

 ギャアギャア吠える二体の怪獣。

 敵であるはずのクロノには見向きもせずに吠え続けている。その姿はメフィラスに何かを訴えているように感じた。確かなことは今回に限り、本来敵であるはずの怪獣がなのはたちの味方に付いるということだ。

 

「メフィラス、君はなのは、アリサ、すずかに手を出さないと言った。オマエは自分で仕掛けたゲームのルールを自分で破った。 

 このゲームは僕たち、いや。なのは達の勝ちだ!」

 

 ユーノの言葉にメフィラスはゆっくりと両腕を下ろし、なのは達を見渡すと発声器官を光らせる。

 

「……分かりました。確かにこのゲーム、私の負けのようです。彼らもそう言っているのでしょう」

 

 ドラコとテレスドンは大きくうなずいてメフィラスの隣に立つ。

 メフィラスはそれらを確認してから指を鳴らした。槍と扇のデバイスから二つの光が現れて、メフィラスの手の中におさまった。

 

「二人のデバイスの細工を解いておきました。これで普通に会話できるはずです、このゲームの賞品だと思って受け取って下さい。あなたたちの勝利です」

 

 メフィラスの敗北宣言に、アリサとすずかが笑みを浮かべた。なのはは睨みつけている。

 

「しかし私は諦めたわけではありません。必ず、あなた方に再戦を申し込みます。いつの日か、必ず」

 

 メフィラスは二体の怪獣と共に消えていった。三人の少女は仲良く抱き合って喜びを分かち合う。クロノとユーノは健闘をたたえて握手を交わした。

 青い空の下、五人の少年少女の笑い声が平原の果てまで響いていた。

 

 

 

 アースラに戻ると、リンディをはじめみんながなのは達の帰りを待っていた。もちろん、アリサとすずかも一緒だ。

 それから二人のデバイスをアースラの技術班に渡す。その間、なのははアリサとすずかに自分の現状を話した。魔法少女になったこと、ジュエルシードのこと、時空管理局のこと。なのはとメフィラス星人の説明に大きな違いがあったことが分かり、二人は素直に謝った。

 仲直りを終えると、親友は、でもね。と言葉を返す。

 

「まったく余計な心配してんじゃないわよ。そもそも、アンタ一人で地球をどうにかしようとか考えるのが間違ってんの」

「私もアリサちゃんもすっごく心配したんだから。それに、相手が怪獣なら私たちにも出来ることがあったのにな」

 

 とても頼もしいセリフだった。アリサはなのはスマホを見せつける。

 

「ほら、さっき検索したんだけど、メフィラス星人ってウルトラマンの宇宙人の中では有名らしいって。それで、戦い方もそっくりだったのよね」

「つまり、ウルトラマンの中に怪獣を倒すヒントが隠されてるのかなって。」

 

 目から鱗。といった具合でなのはがポカンとしながら、うなずいている。フェイトも以前に似たようなことを言っていた。

 

「だからね、私たちが戦えないなりにウルトラマンを見まくって怪獣を研究するって方法もあったのよ」

「そんな感じで、私とアリサちゃんも協力するね。うんん、絶対にするから」

「この年になってウルトラマンなんて見るとは思わなかったわ」

 

 思わぬ協力を得られた。時空管理局にユーノ、そしてアリサとすずか。フェイトとはあれ以来ライバル同士に戻ったが、なのはの周りには味方ばかりだ。

 

「よろしくね、アリサちゃん、すずかちゃん」

 

 なのはが嬉しそうに微笑む。二人はなのはの手を取る。

 

「任せて」

 

 それから、ガールズトークが始まった。学校の事や、新作のお菓子の話で盛り上がる三人。緊張した空気がほどよく柔らかくなった頃に、扉が開く。

 三人の前に一人の女性とクロノ、そして艦長のリンディがやって来た。名前の知らない彼女はアースラでオペレーターをやってた人だ。

 

「やあ初めまして、私はエイミィ。アリサとすずかのデバイスを解析できたって報告に来たよ」

 

 エイミィの報告によると、メフィラスのデバイスは時空管理局が使っている物と異なっているが、出来ることは同じである。

 メフィラスの作戦の要だった、なのはの言葉だけを非言語に変換されてしまう機能も完全に解除され、現状メフィラス星人にとって有利に働く機能はすべて失われたという。戦闘における性能も二人が使っていた頃のものと大差ない。完全に二人のデバイスとして認められた。

 エイミィは一息つくと、報告書をしまう。

 

「あのさ、今はもう完全になくなってるから安心していいんだけど。あのデバイス、大きな仕掛けがあって、デスレムとグローザムの魂? みたいなものが封印されていたんだ。

 それでね、アリサとすずかが魔法を使えば使うほど成長して、最終的には二人の身体を乗っ取るように仕組まれていた。おそらくなのはを倒して、そのままクロノとぶつけてデスレムとグローザムを復活させるつもりだったと思う。そう考えると危ないところだったよ」

「何よそれ! 原作よりも凶悪じゃない」

 

 ま、今はそんな心配はなんだけどね。

 カッカッカと笑うエイミィを見て、アリサたちは本当に害が無くなったのだと確信する。

 アリサが調べたメフィラス星人は、特殊な電波を出して地球人を洗脳し、ウルトラマンメビウスと戦った。しかし、地球人を怪獣に変えて自分の支配下に置こうとまではしていない。

 メフィラスの作戦に興奮がさめない少女の前にクロノが立った。

 

「次は僕からだ。二体の怪獣、テレスドンとドラコだったか。あの二体はメフィラス星人以外の何者かによって操られていると思ってる。つまり、メフィラス星人と他に黒幕がいると思っている」

 

 クロノの考察はこうだ。

 テレスドンの腕には機械が巻かれており、メフィラスの結界を維持していた。よってメフィラスとテレスドン、そしてテレスドンを助けたドラコは仲間同士だと考えられる。しかし、メフィラスが光線で敵であるなのは達を攻撃したときに、テレスドンは火炎放射でなのはを庇っている。

 さらに、メフィラス側には戦闘をするとデスレムとグローザムを復活させるギミックがある。五対三とはいえ、諦めるような状況ではない。もし、仮にテレスドンとドラコがメフィラスの配下ならば、何としてでもメフィラスの命令に従い戦闘を続行しただろう。

 つまり、第三者がメフィラスにドラコとテレスドンを貸し与えており、ドラコとテレスドンは第三者の命令に従って戦っていたことになる。

 以前デスレムとグローザムは、ボスが目覚めた。と発言している。彼らの言う、ボスがメフィラス星人ではなく、今回の第三の黒幕だともとらえられる。

 

 あくまで可能性の話だが。クロノは前置きをしてさらに続けた。

 

「ただ、そうなってくると第三者の目的が分からないんだ。しかし、僕はその第三者が『赤い球』を持っていると思っている。これは勘だけどね」

 

 黒幕登場に室内の空気が張り詰める。そんな雰囲気を変えようとしたのか、艦長のリンディが笑顔で手を叩いた。

 

「さて、クロノの説明から新たな敵が浮上しました。そこで、アリサとすずかがよろしければの話ですが、お二人にも協力してほしいなって思います。

 戦えなくても怪獣を調べて、それを伝えるだけでも立派な戦力ですから」

 

 リンディの言うことは最もで、強敵のデスレムとグローザムを破ったのも、フェイトが原作を見て弱点を突いたおかげだ。後で分かったことだが、グローザムをバラバラにして破片を消滅させる倒し方は、ウルトラマンメビウスで防衛軍のGUYSが使った作戦を基にしている。

 

「もちろんよ。メフィラスなんて悪いヤツ、絶対に許さないから」

「私も協力します。これ以上、なのはちゃんばかりに負担させたくないから」

 

 こうしてデバイスを持ったアリサとすずかが参戦。姿の見えない黒幕を倒そうと、なのはは決意するのだった。

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