第97管理外世界の赤い球   作:破壊光線

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時空管理局、海へ

 海鳴市の海上に突如として積乱雲が生まれた。

 巨大な雲は海を覆うが雨は降らず、ただ大きな雲が広がるだけだった。人々は特に害がないと判断したのか、一瞥するだけで通り過ぎていった。積乱雲は一日中動かずに海を覆っていた。

 次の日の早朝、海は突如として発生した霧に覆われた。上空には積乱雲が以前として立ち込めている。不思議なことに霧は地上を覆わず、くっきりと地面と海を分けていた。これも不思議な光景であるが、一見するとただの霧だった。しかし、この霧に近づくと、携帯電話の電波が届かず、デジタル時計がいきなりアメリカの時刻を表示するなど電子機器の調子が悪くなった。テレビやメディアは原因不明の怪現象としてこぞって取り上げ、様々な専門家の意見が交わされたがいまだに解明されていない。

 そんな不思議な霧の答えに一番近い回答を持っているのは。

 

「やっぱりクロノの言ったとおりだ、あの霧は自然に発生したものじゃないよ。とは言っても電子機器が調子狂うんじゃあ、私はお手上げかな」

「ありがとう、エイミィ」

 

 時空管理局のクロノ・ハラオウンだった。

 彼はメフィラス星人という宇宙人と戦った経験から、今回の霧も彼が絡んでいると見当をつけた。メフィラス星人が関わっていなくても、フェイトという異世界人や、彼女を連れて逃げた鹿島浩という少年。そして手掛かりのつかめていない、何でも願いが叶う『赤い球』の持ち主。様々な可能性と考えていた。誰が犯人だと決めては無いが、誰が犯人だとしても一筋縄ではいかないことは分かっている。故に、クロノの表情は渋い。

相方のエイミィは両手を万歳してお手上げだとアピールする。

 彼女の仕事はアースラという船のオペレーターだ。魔法が発達している世界とはいえ、パソコンなどの電子機器に頼っている。エイミィの仕事は主に電子機器を使うことが多いため、この霧とは相性が悪い。発生源を探そうとするとすぐにエラーがでる。エイミィは苦笑いを浮かべてコーヒーを飲んだ。

 

「クロノ君、大丈夫? 何か私たちに出来ることはない」

 

 そんなクロノを高町なのはは心配していた。霧の原因がクロノの考えのとおり怪獣だとするならば、なのはは自分で解決できると思ったからだ。なのは以前もベムラーやデスレム、グローザムといった怪獣たちと戦い、勝利を収めている。

 

「ちゃちゃっとやってさっさと終わりにしたいけどさ、クロノが渋るほどの霧よ。まだ様子見でいいんじゃない」

「私もそう思うな、まだ害は出てないし……このまま何にもなく霧が晴れるかもしれないし。霧を出す怪獣の特定をして対抗策考えた方がいいんじゃないかな」

 

 なのはの親友、アリサとすずかがスマホを見ながら答えた。

 アリサとすずかはメフィラス星人に騙されてデバイスをもらい、なのはと戦った。ユーノの活躍もあって誤解は解け、メフィラス星人に勝利した。今ではメフィラス星人のデバイスをそのまま活用することで、なのはと同じ戦力になっている。また、敵がテレビに登場した怪獣であることもあり、スマホを駆使して怪獣の分析も行っている。

 二人のスマホの検索履歴には『霧 怪獣』や『霧を出す怪獣』などと言ったワードが連ねている。

 

「サドラっていう怪獣が候補みたい。ネットの情報だとそんなに強くないって。すずかはどう?」

「……私もアリサちゃんと同じかな、マグニアって怪獣が霧になれるみたい。あとは……ギマイラ?」

「なにそれ、キマイラじゃなくて? 合体怪獣なの」

「違うみたい、えっと」

 

 すずかがギマイラについて調べようとした時、アースラ内に警報が鳴った。

 すぐさま海上の様子がモニターに映し出された。そこには金髪の少女、フェイトと彼女の使い魔のアルフが映っている。本来電子機器は異常を起こして海上の細かい様子は分からない。しかし、そこは凄腕オペレーターのエイミィ。長年の経験を駆使し、コンピュータを自在に操って、魔力を持っている人物と竜巻のような大きな物体を捉えることに成功した。

 二人は海に向かって魔法を放つと、巨大な竜巻が六つ発生。穏やかだった海が嵐のように荒れ狂う。

 

「クロノ君行かせて、フェイトちゃんが」

 

 なのはが訴える。

 なのはとフェイトは一度デスレムとグローザムを倒すのに協力したことがある。この共闘でフェイトにはフェイトなりの理由でジュエルシードを集めていることが分かった。これに関してなのははフェイトを否定するつもりなど無いし、だからといって危険なジュエルシードを全てフェイトに渡そうなどと思っても無い。

 一方で、フェイトと一緒に協力して立場が違うため争っているが、純粋で芯の強く、優しい子だと思っている。ベムスターの時に助けられたことも相まって、なのははフェイトと仲良くなりたいし、できれば助けたいとも思っている。

 

「まって、今ここでなのはたちを海に送り出したら危険だ! 確かに僕たちの任務はジュエルシードの回収も含まれているが、それが原因で君たちを傷つけるようなことはできない」

 

 きっぱりとクロノに否定され、なのはは項垂れる。アリサもすずかもなのはの気持ちも分からなくないが、クロノの言うことの一理あると思ったのか、抗議せずに親友を慰めていた。

 

「クロノ、何か変だよ。ジュエルシードは六つのはず。フェイト達は無謀にも同時に起動させた、でも画面には竜巻が七つある」

 

 エイミィが叫んだ。海の上はさらに荒れていて、竜巻の数がさらに増えている。今までは一つの竜巻につき、ジュエルシードが一つ対応していると計算していた。つまり竜巻の数はジュエルシードの数であり、六つで最大のはずだ。七つ目の竜巻は意思を持ったように他の六つの竜巻にぶつかっていった。

 竜巻の同士討ちに、冷静だったクロノが叫んだ。

 

「アリサ、すずか! 竜巻を操る怪獣は何がいる!」

 

 二人は飛び上がりながらも、指を動かした。

 

「バリケーン、シーゴラスとシーモンス、ブラックギラスとレッドギラスです!」

 

 全員、台風や嵐、竜巻と関係ある怪獣たちだ。特にシーゴラスとシーモンスは竜巻や津波を操る能力を持っている。ここに来てフェイト達が何故、ジュエルシード六つを同時起動などと無謀な行動に出たのか、はっきりと分かった。

 

「あの二人は闇雲にジュエルシードを起動したわけじゃない! 回収できる秘策を持って起動させたんだ。それがあの七つ目の竜巻で、僕たち管理局に妨害されないために例の霧をばらまいた。今二人の背後には強力な助っ人がいる」

 

 クロノの頭の中でフェイト達の協力者が誰かを考える。

 電子機器を狂わす霧も、竜巻を攻撃する竜巻も、日本の海上それも海鳴市に存在するはずがない。つまり何者かが造り上げたものになる。果たして人間に竜巻と霧を同時に発生させることが可能なのか。もし、不可能だとしたら他に候補として挙がったのは。

 

「ヒロシだ! ヒロシの家に行った時、彼とフェイトが一緒にいて、ヒロシはフェイトを連れてどこかに消えた。さらに彼は怪獣について詳しい。もし彼が怪獣を創る『赤い球』を持っていたら、この状況を簡単に作り上げられるだろう」

 

 鹿島浩。傍から見れば何の変哲もない、ただの小学生だ。しかし、フェイトと逃げたことで黒幕の候補に挙がった。

 そしてそれは現在暴走している六つのジュエルシード、その全てを回収する手段があると言っているようなものだ。だって彼はジュエルシードの上位互換の『赤い球』を持っている。さらに、ジュエルシードを怪獣達が吸収したら……考えたくもない。

 現状を重く見たクロノが叫んだ。

 

「みんなにはヒロシを見つけ出してほしい。幸いヒロシ自身に戦闘力は無い、怪獣とフェイトに注意して欲しい。もちろん、僕もいく」

 

 艦長のリンディが許可し、クロノから下る出撃命令。なのは達四人は頷くと、クロノと一緒に海鳴市の海上へと繰り出した。

 

 

 

 なのは、ユーノ、クロノ三人は海上にいた。ジュエルシードの暴走で生まれた六つの竜巻はフェイトと竜巻怪獣の力でその勢力が衰えている。砲撃の一つでも浴びせたらジュエルシードとして封印できるほどに。そして今まさにフェイト達がとどめの一撃を加えて、三つの竜巻をジュエルシードにしたときにクロノたちが現れた。

 

「あーもー、なんだっていい時に」

「だから来たんだろう」

 

 アルフは悔しそうに頭を掻きむしる。潮風と相まってふさふさの髪の毛がゴワゴワになり、獅子のたてがみのようだった。対してフェイトは、真っ直ぐになのはを見つめている。もちろんなのはも見つめ返した。それは見つめ合うというよりも、にらみ合うといった方が正しい。両者とも戦いは避けられないと確信すると、フェイトが静かに呟いた。

 

「きて」

 

 それが合図となり、フェイトの周りに四つの金色の飛行物体が集まった。それらはフェイトを中心として守るように佇んでいる。大きさも、形もバラバラな四つの飛行物体、フェイトの髪の色とも重なって新しい武器ともとらえられる。

 なのはは秘密兵器を警戒し、相棒のレイジングハートを構えた。いつでも攻撃できるように準備を終えたうえで。フェイトもバルデッシュを構えて、得意とする金色の光弾を放った。

 

「ディバインバスター」

 

 なのはの得意技がフェイトの光弾をかき消し、真っ直ぐ飛んでいく。最も隙のできる打ち終わりを狙った一撃はフェイトといえども回避することは困難だ。ゆえに直撃する。誰しもがそう思った、攻撃をくらうフェイトですら。

 しかし、桃色の光線はフェイトに当たらなかった。いや、フェイトに当たる直前で、四つの飛行物体がフェイトを守り爆発した。黒煙が立ち込め、竜巻の暴風ですぐにかき消させる。ごうごうと唸る風の中で、フェイトを守るように立ち塞がっていたのは金色のロボットだった。

 

「キングジョー、それがこの子の名前」

 

 フェイトが静かに告げる。キングジョーと呼ばれたロボットはグワッシ、グワッシという独特な機械音を鳴らし、無事であることをアピールする。五十円玉の小さい穴のような目がなのはを捉えていた。

 

「四つのパーツが合体して一つのロボットになる。防御力は見ての通り」

 

 フェイトが再びバルデッシュを構えた。キングジョーが分離する。四つのパーツから怪光線をなのは目掛けて放った。とっさにバリアを放ち、キングジョーの怪光線を防いだ。しかし、攻撃はそこで終わらない。フェイトが突っ込んできたかと思うと、なのはのバリアを切り裂いて、穴をあけ、そこからキングジョーの怪光線が再び襲った。

 

「あぐうう……まだまだ」

 

 なのはが再びディバインバスターで反撃したが、フェイトは合体したキングジョーの後ろに隠れ、さっきと同じことが起こった。

 このままだと負ける。なのはの頭に最悪の結末がよぎる。歯を食いしばって打開策を考えていると、すずかから念話が入った。

 

「なのはちゃん、なのはちゃん、聞こえる? 今戦っている怪獣はキングジョー。防御力は高くて、怪力もある。だけど遅い、ものすごく遅いの、その怪獣は」

 

 親友の助言を聞いて、なのはが縦横無尽に飛び回る。ジュエルシードの竜巻に身を隠し、アルフと戦っているユーノの前を通り過ぎた。フェイトは余裕で付いてきてバルデッシュを振るうが、キングジョーは全くと言っていいほど付いてこれていない。

 キングジョーはウルトラセブンをねじ伏せるほどのパワーがある。フェイトとの連携も光線よりも怪力を使えば、なのはに大ダメージを与えられたはずだ。しかし、実際にはしなかった。いや、フェイトのスピードが速すぎて付いてこれないのだ。真っ向から立ち向かえばフェイトとキングジョーのコンビは無敵だろうが、スピードでかく乱したときにコンビネーションは崩れる。アルフとフェイトのような長年のコンビじゃないからなおさらだ。

 なのはの目標はフェイトにジュエルシードを回収させないこと。時間を稼いで、クロノがジュエルシードを回収し、アリサとすずかが霧を晴らせば、なのはたちの勝ちだ。アースラのサポートを受けてフェイト達と戦えばいい。

 

「キングジョー?」

 

 さらにここで、運までもがなのはに味方した。キングジョーの動きが突如止まったのだ。

 原因は電子機器を狂わす霧。浩はアースラの電子機器を狂わせるように願い、ギマイラの霧を強化した。あらかじめデバイスには影響がないように配慮したが、キングジョーとギマイラでタッグを組ませることは想定していないようで、キングジョーの特殊合金を過信していた。キングジョーがよく暴走を起こすことを忘れて。

 つまり、キングジョーはギマイラの霧の影響をモロに受けた結果機能停止に陥ったことになる。浩が自爆したのだ。

 

「フェイトちゃん、一対一の勝負だね」

「負けないよ。……のバカ。」

 

 かくして、なのは対フェイトの一対一の勝負が始まった。

 

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