『ゴジラに会えますように。 かしま ひろし』
なんでこんな願いをしたのか分からないけど、それが初めて七夕にした願い事だと思う。それから怪獣尽くしの願い事をしてきた。
小学四年生になって、ようやく願い事が叶い始めた。『赤い球』を拾った俺、創りあげた怪獣軍団。名前を呼べば現れて、なんでも言うことを聞いてくれる。
グローザムは夕飯を作ってくれたし、デスレムは勉強を教えてくれた。バキシムやドラゴリー、ドラコやテレスドンとは一緒に温泉旅行に行った仲だ。
デスレムとグローザムは魔法少女に倒されちゃったけど、二人と過ごしたことは忘れない。友達には俺の怪獣という趣味は否定されちゃったけど、こいつらはそれを受け入れて一緒に遊んでくれた。今では楽しかった思い出だ。
プレシアは俺の怪獣軍団を偽物と言ったけど、今なら納得できる。だって怪獣は本来、街を破壊して人間を蹂躙する、破壊の化身みたいなものだから。
テレビの怪獣たちが、太くてしなやかな尻尾が建物を薙ぎ払い、禍々しい光線がビルを爆破し、ゴツイ足が家を踏み潰す姿に俺は興奮していたのかもしれない。
だから俺は怪獣軍団に戦えと命令を出した。
レイキュバスはラゴラスエヴォとタッグを組んで、アリサとすずかに攻撃開始。メトロンがアースラに侵入し、管理局側のサポートを妨害している。
ゾイガーやスコーピスの尖兵怪獣軍団はブラックギラス、レッドギラスと一緒に時空管理局のスタッフと戦っている。途中で傀儡兵を引き連れたプレシアが乱入して、管理局側についたけど、現状は互角だ。プレシアにはタイラントを仕向け、その使い魔のリニスにはゴルゴレムをぶつけた。
戦況は俺の方に傾いている。
当たり前だ、怪獣は暴力の権化。人間をぶっ倒してこそ怪獣と言える。善戦する怪獣たち、うろたえる人間ども。破壊される『時の庭園』。これが、これこそが、俺の望んだ光景だ。
俺は怪獣が大好きだ。
グローザムがダムを氷漬けにしたのが好きだし、デスレムが火球をまき散らして、ビルを木っ端みじんに粉砕するも好きだ。
ベムスターがお腹の五角形の口でガスやら飛行機やら、宇宙ステーションを食べたのには痺れたし、バキシムやドラゴリーみたいな全身凶器で出来ている超獣が、身体中から火炎放射やミサイルを放つのは生物離れしているから好き。
ドラコは映画でウルトラの星を闊歩していたし、テレスドンが夜の街をのし歩く姿には魅力がある。
レイキュバスがスヒュームと協力して、基地を沈めたのも好きだし、キングジョーがタンカーを持ち上げたのには興奮した。ブラックギラスとレッドギラスが嵐の街で大暴れした、あのゾクゾク感は忘れられない。
ゾイガーやスコーピスのような尖兵怪獣とその親玉が、都市を破壊し地球に与えていく絶望に染め上げるのは言葉にできない。ジェロニモンの60体の怪獣総攻撃は見てみたかったなぁ。
都市を破壊する怪獣たち。震災のように人間が造り上げたものを一瞬で瓦礫の山と化す、圧倒的な力。親も友達も、先生も、俺のも好きな怪獣を否定してきた奴ら。そいつらの大切な者を俺の大切な物がぶっ壊す。これほど楽しいことはない。
俺は怪獣の破壊活動に好きになっていったのかもしれない。
どうしてだろうか、心のどこかで何かが違っている気がする。なんで、ゴジラが好きになったんだっけ。あの時は皆で怪獣ごっこをしてたはずなのに。
今、俺は『時の庭園』の最上階にいる。そこにポツンと置いてある玉座に座り、『赤い球』を通して戦闘を見守っていた。この場には、俺と膝を抱えてうずくまったフェイトの二人しかいない。メフィラスは怪獣軍団のサポートがあるため、異次元でジェロニモンと一緒に動いている。フェイトはプレシアに否定されて以来この状態のままだから、実質は俺一人も同然だ。
俺は『赤い球』から送られてくる映像を見ながらほくそ笑んでいると、なのは、クロノ、アルフ、ユーノの四人が向かってきていることが分かった。
四人は俺のいる最上階、その一歩手前の大広間で作戦会議をしていた。あの部屋はフェイトやメフィラス、メトロンと一緒にシュークリームを食べて、ウルトラマンのDVDを見た部屋だ。怪獣図鑑にソフビ人形も完備してある。通称、怪獣部屋。
人の部屋で勝手にくつろいでいる四人を見て、俺は『赤い球』を手にした。
―――丁度いい。キングジョーとベムスターでアルフとユーノを倒してやろう。―――
俺は玉座に取り付けられたスイッチを押して監視カメラの映像を見る。突如、怪獣部屋の中心の床を鉄格子がぶっ刺さり二分する。クロノとなのは、アルフとユーノ。俺の目論見通りのペアができ、金色の合体ロボットと緑色の宇宙大怪獣を仕向けた。
すぐにキングジョーとベムスターが怪獣部屋に現れて、ユーノとアルフと交戦する。なのはとクロノが助けようと動き出した。俺は間髪入れずに放送を流す。
「友達を助けようとするなんて、いい友情じゃないか。でも、そんなことをしている暇はあるのかい? 俺の手元に『赤い球』がある限り、君たちに勝ち目がないことを忘れたのかな」
すでに俺は学校も塾も行くのを止めて、『時の庭園』にこもり、『赤い球』を使って怪獣軍団を作り続けた。
学校に行っても、塾に行っても俺のことを覚えている奴なんているのだろうか。両親はメトロン星人とメフィラス星人に変えてしまった。新しい知り合いの、なのは達は敵。フェイトはクローンで人造人間。人間の知り合いは居ない。だけど、俺には怪獣たちがいる。俺の創り上げた怪獣たちが。それが俺の全てだった。
クロノとなのはは、俺の挑発に乗って俺のいる最上階に向かってくる。最強の切り札はまだこちらにある。どうやっていたぶってやろうか。ビームで焼き払うか、怪力でねじ伏せるか、それとも。大怪獣が暴れる姿を脳裏に思い描て俺は笑った。
そんなことも知らずに迷わず突っ込んでくる二人。間抜けだとあざ笑う一方で、どこか羨ましく思った。
なのは達はものの数秒で最上階に上がってきた。俺は念のため、バトルナイザーを取り出して、テレスドンとドラコを召喚する。二匹は事情を把握したようで、すぐさま戦闘態勢に入った。なのは達を見るや否や、カマや腕を叩いて威嚇する。
二体の怪獣に怯むことなく、クロノが口を開いた。
「カシマ・ヒロシ。君にはロストロギアを不正に使用した疑いをはじめ、様々な容疑がかけられている。大人しく投降してもらう」
「どうしてだい? 俺は君たちが幼稚だとか、ダサいとか言ってた怪獣を創り出しただけだ。そこまでコケにするなら、お前たちでどうにかできて当然だよな」
今まで散々バカにしておいて、都合の悪くなると俺を犯罪者扱いだ。もう遅いんだよ。
『赤い球』が光りを放つ。あの二人を倒せと。
ぜひそうさせてもらおう。
「やれ」
テレスドンがクロノを襲って、ドラコがなのはに突っ込んだ。二人の魔導士と、俺の怪獣たちが戦っている。
しかし、テレスドンもドラコも、メフィラスに貸した時に一度クロノと戦っている。そこから攻略法を見つけられたのか、しだいに押され気味になっていった。クロノはバインドでドラコの動きを封じて、なのはがその隙をつきディバインバスターをぶっ放す。
背中の羽が破壊された。地面に落とされて、床が砕けて埃が舞った。ドラコは何とか生きているみたいだが、戦うことはもう無理だろう。テレスドンも二対一となれば勝ち目はない。すぐにクロノとなのはの連続攻撃でダウンしてしまった。
「フェイトちゃん!」
怪獣たちを倒し、なのははフェイトに駆け寄るが、依然としてフェイトは俯いたままだ。それもそのはず、フェイトは自分の一番大切な人に裏切られたのだから。
クロノは俺に向かって、デバイスを向けながら近づいてくる。用件は分かっている。『赤い球』を渡すこと。再び俺の趣味が、六年越しの願い事が否定された。
なのははフェイトを助けようと呼びかけている。
たしか、オマエのレイジングハートとかいうデバイスの待機モードは赤い球だったけ。俺のも元々はきれいな球状だったんだぜ、今は禍々しく棘が生えて見る影もないけど。きれいな球状は正義の味方、怪獣の角のような棘が生えたのは悪のボス。実に分かりやすい構図じゃないか。
思えば最初からお前のことが嫌いだった。ベムラーもデスレムも、グローザム、ギマイラ。俺の怪獣たちを倒しておいて、自分は仲間だ友達だ。ふざけるな。
「フェイトちゃん! しっかりして」
なのは、残念だけどオマエにフェイトは救えないよ。みんなに囲まれてぬくぬくと育ってきた君にフェイトの痛みが分かる訳ないのだから。
俺は『赤い球』を強く握りしめる。すると、稲妻がほとばしりクロノを牽制した。
度合いは違えど、俺とフェイトは似ていると思う。趣味を否定され続けた俺と、人格そのものを否定されたフェイト。俺が受けてきた否定で、彼女の拒絶を語るのはおこがましいと思うが、それでも言いたいことがあった。
「無理するな。オマエも強くてカッコいい怪獣が好きなんだろう? 街を破壊し大暴れする怪獣たちが大好きだ」
テレビの中で暴れまくる怪獣たち。自分を否定したものなど、ちっぽけだと言わんばかりに暴れ狂うその姿に、少なからず興奮を覚えたはずだ。常識を覆していくあの破壊活動に心を打たれたはずだ。
プレシアをぶっ倒したタイラント。フェイト、お前は悲しんでいたけど、心のどこかでは嬉しかったはずだ。お前を否定した親がボロボロになっていく様を。かつての俺がそうだったように。だってプレシアはぶっ倒されて当然な仕打ちをしてきた。俺から言わせてもらえば当然の報いだ。
「でもそんなこと言ったら笑われるもんな、いい年して怪獣なんて幼稚な、ダサい、くだらない……。くだらなくて悪かったな!」
俺の好きな怪獣。本物には会えないから『赤い球』で願った偽りの本物。幼稚でダサくて、くだらないと言ってきた、アリサや俺の友人たち。アリサはメフィラスの一件で嫌いになるのは分かる。だが、親はどうだ。自分たちの理想を押し付けて、気に食わないものを全力で排除してきた。
今までバカにしてきた奴らを見返すために。俺は怪獣軍団を作って来た。お前たちがくだらないと言ったものが、街を破壊する、地球を滅ぼす。どんな気分だい。
「今こそ見せてやる、怪獣の本当の凄さを!」
プレシアは既存の怪獣を、俺の都合のいい形で創るだけでは完成ではないと言った。ドラコもテレスドンも二メートルの個体ではなく、ちゃんとした大きさになってこそ本物だと言える。なぜなら、身長45メートルが実際の、宇宙空間を飛び回るドラコの大きさであり、2メートルそこそこの俺の創ったドラコは、本物のドラコを都合のいいようにつくり替えただけだから。
ならば、俺が最初から創りあげた怪獣なら本物の怪獣と言えるんじゃないか。たとえそれが、10メートルに満たなかったとしても、オリジナルの怪獣ならばそれが許される。最強の怪獣を創ってその力を見せつけてやろう。
「その恐ろしさを! 全て壊してやる……」
何より破壊というものを怪獣たちが望んでいる。自分たちの武器を最大限に発揮して、大暴れするのはさぞ気持ちいだろう。
アリサのティグリスのような、人間に媚び売って共に生きる? すずかみたいな吸血鬼が人間と共存する? それこそ偽物じゃないか。吸血鬼は、怪獣は人類の侵略者で、破壊者で、敵なのだから。
「こんな世界全てブチ壊すんだ!」
そして、怪獣に必要なのは、大きさや馴れ合いじゃない。全てを破壊する攻撃力、敵の攻撃を無力化する強固な皮膚、戦闘機を上回る素早さに、大空を自由に飛び回る翼。それらはすなわち、世界を破壊できるほどの圧倒的な力だ。
かつて俺が粘土で作りあげた怪獣。怪獣図鑑を引っ張り出して、ウルトラマンのDVDを見て、研究に研究を重ねて作り上げた最強の怪獣。親に壊されてしまったけれど、いや、一度くだらないと否定され、捨てられたからこそコイツを望んだ。奴らは俺の怪獣を否定した、だから今度は俺の番だ。
夢の中でバジリスクとスキュラを従えた怪獣。怪獣の王、ゴジラをリスペクトして俺が創り上げた怪獣。だからこそ名前は決まっている。怪物を統べるモノ、それすなわち怪物の王。
「暴れろ! 俺の最恐怪獣」
俺が、俺のために創りあげた、俺を象徴する大怪獣、ソイツの名は……
―――キングオブモンス―――
えー、なのはをご存知の方は知っていると思いますが、なのはには二期があります。
この物語で、僕のやりたいことは一期で終わります。
何が言いたいかっていうと、続き書くべきなの?
ま、最終回終わったらご意見くださいな。