第97管理外世界の赤い球   作:破壊光線

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大切なモノを守るために

 アリサとすずか、そしてティグリスは『時の庭園』の内部で二体の怪獣と戦っていた。

 

 一体はカニのように左右の大きさの異なるハサミを持ち、エビのような尻尾、飛び出した目は赤色だったり青色だったりと変わる。名前は宇宙海獣レイキュバス。ウルトラマンダイナに登場した怪獣だ。スヒュームに操られてダイナと戦い、火球と冷却ガスを使い分けてダイナを氷漬けにしてしまうほどの実力者だ。

 

 もう一体は直立二足歩行の怪獣だった。グローザムのような角を持ち、身体に水生生物がもつヒレを生やしている。一方で胸部には岩石がまとい、一本の角が生えいていた。身体の色は全体的に赤い。こいつは進化怪獣ラゴラスエヴォ。こちらはウルトラマンマックスに登場した怪獣で、冷凍怪獣ラゴラスが溶岩怪獣グランゴンを捕食した結果誕生した怪獣だ。レイキュバス同様に冷気と炎を操るほか、知能も持っている。また、炎と冷気を合わせて放つ、超温差光線はマックスの必殺技を凌ぐ威力を誇っている。

 

 そんな二大怪獣と戦う場所は、先日戦った霧に包まれた島よりは広いが、天井があるため飛行しながら戦うのは無理だった。障害物は少ないが、その分攻撃が当たりやすい。二体の怪獣は炎と氷という間反対の属性を操って攻撃してくる。この連携はエアロヴァイパーに大ダメージを与えた、アリサとすずかの合体技を一体でこなしてしまうようなものだ。絶対に当たれたない。

 アリサたちは『時の庭園』の壁を崩して、少しでもバリケードを作り、二体の怪獣相手に奮闘していた。二人の元となった能力はデスレムとグローザムという、強力な怪獣だ。しかし二人が扱えるのは、あくまでもデスレムとグローザムの代表的な攻撃技のみ。グローザムの不死身の力も、デスレムの狡猾な戦略も備わっていなかった。つまり、アリサとすずかはデスレムとグローザムの本当の力を引き出せていない。

 

「不味いわね」

「……うん」

 

 二人もそのことは分かっていた。こちらの攻撃は相手にも効くから倒せないことはないが、相手の攻撃が致命傷だった。それもそのはず、ラゴラスエヴォとレイキュバス。この二体の怪獣は浩がアリサとすずかと戦わせるために、数ある怪獣の中から選び抜いて創った怪獣だから。

 二体の怪獣は時々、相談しながらも着実に二人を追い込んでいる。それは残酷な戦いを長引かせているようにも感じられたし、二体の怪獣が別の目的をもって戦っているようにも感じられた。

 

「あーもう、このままじゃ、またなのはに助けられる! すずか、デカいの当ててコイツらぶっ飛ばすわよ」

「まって! アリサちゃん危ない」

 

 魔力を溜めるアリサに、すずかは飛び込んだ。二人がいた場所は爆発を起こし、床全体が揺れる。ティグリスが瓦礫を払いのけて二人を助けた。

 最大のチャンスだというのにラゴラスエヴォとレイキュバスは、上空を見つめている。壁を伝わって、『時の庭園』あちこちで爆発する音が聞こえる。戦闘はあちこちで行われていると思うが、さっきまでの状況とまるで違う。

 

「力?! ……これは」

 

 すずかも怪獣たちにつられて上空を見つめた。ひび割れた天井の先で何が起きているのかは分からない。でも、この『時の庭園』での戦闘を左右することが起きているのは分かった。

 アリサが怪獣たちの方を見ると、二体ともさっきまで戦っていたとは思えないほどに大人しくなっていた。ティグリスも地べたにお座りして戦闘する気配がない。二人が急な変化に戸惑いを隠せないでいると、時空が割れる。

 

「メフィラス星人!」

 

 異次元から黒ずくめの宇宙人が現れた。彼は警戒するアリサたちなどお構いなしに、戦場のど真ん中にテーブルを置いた。さらに椅子を七つ、ティグリス用に座布団を並べると、発生器官を光らせた。

 

「食事をしよう」

 

 木で作られたテーブルの上に翠屋のシュークリームが置かれた。

 

 

 

 テーブルを囲んで椅子に座るメフィラス星人とアリサ、すずかと二体の怪獣。座布団の上にはティグリスがお座りしていた。

 初めは罠だと思い二人は反対したが、ラゴラスエヴォとレイキュバスだけで精一杯だったのにメフィラス星人まで加わると本格的に勝ち目がない。しかし、考えようによっては二体の怪獣と敵の参謀を足止めできるため、前向きに考えて着席した。

 

「実はもうお二方お呼びしています」

 

 メフィラスが指を鳴らすと、アリサとすずかのデバイスが光り、メフィラスの懐から二つの光る球と合体した。力を奪われたと思って、二人が自分の身体を見渡すがバリアジャケットに変化は無く、デスローグもグロッケンもそのままだった。

 一方で合体した光は二つの人型を形成した。それはアリサとすずかがメフィラスから管理局の正体として見せられた怪人になる。

 

「紹介しましょう。デスレムとグローザムです。あなた方の力の元になった怪獣ですよ」

 

 しまった。と真っ青になる二人。そんな彼女たちなどお構いなしに二体の怪人が自己紹介を始めた。

 

「よう、すずか。俺がグローザムだ。得意な攻撃は知っての通り、冷気だ。ま、よろしく」

「フハハハハ、アリサ。俺はデスレム。火球召喚が得意だが……策謀を張り巡らせるのが好きだな。よろしく」

 

 敵意も無く、フレンドリーな暗黒四天王の三人。ラゴラスエヴォとレイキュバスに至ってはテーブルのお菓子を食べてくつろいでいた。状況を読み込めない二人にメフィラスが言った。

 

「先ほどヒロシ君が切り札を切りました。それは彼が『赤い球』を拾ってから今に至るまでの、彼の出した答えです。この切り札が破れた時、我々は素直に負けを認め、手を引きましょう」

「どうしてそんなことが言えるの? どうせ、私たちを騙すんでしょ」

「アリサさん、だましたところで意味がありません。かつて私には『赤い球』を使って侵略するという目標がありました。

 しかし、所有者であるヒロシ君がああなってしまったから無理です。あれはヒロシ君などではありません、『力任せの邪悪な願い』そのものです。私は美しい地球を手に入れたいと思いますが、破壊され荒廃した地球は美しいとは思いません。

 ヒロシ君が勝てば地球は滅び、ヒロシ君が負ければ戦いが終わる。どちらにせよ、私が欲しいものは手に入りませんから」

 

 アリサはメフィラスに騙されて親友のなのはと戦ったことがある。ゆえに、彼女の中でメフィラス星人は倒したいほど憎い存在で、信用ならない相手だった。数の差でこうして座っているが、本当だったら殴りたい相手でもある。

 憤るアリサをデスレムがたしなめる。

 

「落ち着け、アリサ。俺たちヒロシに創られた怪獣ってのはな、意思があるんだ。ヒロシの言うことを聞いているようで、実は自分勝手に行動している。まあ、みんなヒロシを幸せにしたいって思った上での行動だけどな。だから俺は奴に勉強を教えたことがある」

「一方で俺たちはヒロシから理想の怪獣像を受け継いでいるんだ。メフィラスは悪質で、俺は戦いが好き。みたいな。んで霊体になって見守ってきたが、今ヒロシはその理想像が壊れ始めていやがる。どうして怪獣が好きになったのかを忘れちまった」

「ええ、彼は家族や友人よりも我々怪獣を愛してくれました。だから私たちも彼を愛し、ヒロシ君の思い描く理想のメフィラス星人として従ってきた。しかし、その愛は何処にもない」

 

 グローザムは戦いが好きという特性を浩の理想像として受け継いだ。結果、独断でなのはとフェイト戦い負けてしまったが。先日のエアロヴァイパーも浩を助けるために独断で行動し、ティグリスとなって敵になるシベリアンハスキーを襲っている。浩は自分のいうことを聞くだけの怪獣を創るのではなく、怪獣そのものの個性を大切にしてきた。

 とはいえ、アリサにとっては仲間が戦っているから助けに行きたいし、メフィラスが何を言っているのかも分からない。いまごろになって怪獣の特性とか言われても困る。

 

「何が言いたいのよ!」

「我々に戦う理由が無くなったのです。ベムスターやキングジョーも今頃は戸惑い始めて、アルフさんやユーノさんと話し合いでもして、成り行きを見守っているんじゃないでしょうか」

 

 モキアンの時は調子に乗りましたが……。メフィラスは尖った耳をかきながらお菓子をつまんでいる。レイキュバスもお菓子を食べていて、ラゴラスエヴォに関してはティグリスと遊び始めた。

 

「今戦っているのはタイラント、ゾイガー、スコーピスとギラス兄弟くらいですね。ギラス兄弟に関しても、戦うというよりは自分たちの身を守る、最小限の戦闘をしていますが」

 

 タイラントは自分を否定したプレシアと戦闘している。両者の実力は五分と五分。ゾイガー、スコーピスは管理局スタッフと激しい戦闘を繰り広げていた。ギラス兄弟は瓦礫に身を隠している。

 

「俺たちにも生み出された目的がある。それは時期にもよって違うがな。

 ゾイガーとスコーピスは管理局スタッフを倒すためだけに創られている。だから超攻撃的な性格になった。

 タイラントやギマイラは怪獣たちを守るために生み出された。自分たちを排除したり、否定しようとしたりする連中には容赦ない。……アリサ、心当たりがあるんじゃないか」

 

 デスレムの言葉にアリサが目をそらす。霧の島で怪獣をくだらない。などと言ってしまい、ギマイラに襲われたことを思い出す。

 とはいえ、アリサにとって怪獣は、親友のなのはを襲い、自分たちの住む街を霧に包んで大暴れしている。一概にアリサが悪いとは言えない。

 じゃあ、と言ってすずかが手を挙げた。

 

「メフィラスさんたちにも生み出された理由みたいなものがあるんですか?」

「私はヒロシの元父親です。ヒロシがみんなに怪獣という趣味を認めてもらいたい。という願いを『赤い球』にした、その成れの果て。

 私は彼が望んだメフィラス星人として今までもこれからもヒロシ君の味方であり続けますが、この瞬間に至っては命を懸けてまで彼のために戦おうとは思いません」

「俺とデスレムはヒロシが大切なモノを守りたいって願いで生まれた」

「バキシムは友達が欲しい。ドラコとテレスドンはヒロシを守るため。だったか、そんなだから俺たちは温泉旅行にも行ったことがある。……グローザムは温泉に入れなかったがな。フハハハ」

「うるせえ! 俺が風呂に入ったら大浴場がスケートリンクになるだろうが」

 

 三人がそれぞれ理由を話してくれた。アリサとすずかは怪獣が襲い掛かるイメージしかなかったが、温泉旅行に行ったことを知って素直に驚く。すずかはティグリスとじゃれ合っているラゴラスエヴォを見て、戦いばかりを望んでいないのだと思い始めていた。

 しかし、すずかには地球を怪獣から守るために戦っている。いくらメフィラス達に戦意が無かったとしても、浩が『赤い球』を持っている以上、彼らが敵であることには変わらない。

 

「あなた達が生み出された理由があるように、私たちにも戦う理由があります」

「すずか、もちろん分かってる。でもな、ヒロシんとこ行って、切り札ぶっ倒して終了。って訳にはいかねえんだ。奴がこの戦争をおっぱじめた理由は、怪獣という趣味を否定して欲しくなかったから。そこをなんとかしねーとな」

「私もグローザムには同意見です。しかし、このままいくとヒロシ君は本当に得たかったモノを失ってしまう。そうなっては手遅れです」

「じゃあ、メフィラスさんたちも協力してヒロシ君を止めれば」

「それでは意味がありません、今までと同じです。力が知恵に変わっただけです。結局は彼の趣味を抑えつけただけになります。ヒロシ君は何度でも反発するでしょう、新しい怪獣軍団を引き連れてね。ヒロシ君の切り札は高町なのはとフェイト・テスタロッサが倒さなければ意味がありません」

 

 ヒロシの切り札を大人数で倒したところで、それはみんなから怪獣を否定されていた時と変わらない。それがメフィラスの意見だった。

ならば、なのはとフェイトが倒しても変わらないのでは。アリサの頭に疑問が浮かぶ。

 

「どうしてなのはやフェイトはいいの?」

「高町なのははヒロシ君が欲しかったモノの全てを持っている。フェイト・テスタロッサはヒロシが欲しかったモノになれる。あなた達だって持っている。しかし、それは私たちが力を合わせても手に入れることができないモノです。」

「でも気づくのが遅かった。なんでも叶える『赤い球』の魅力はヒロシの願い事を狂わすのに十分すぎた」

「いーや、周りの環境がクソだった。俺は思うな。もうちっと早くすずかやアリサに出会っていたら、こんな事にはならなかっただろうな」

 

 アリサの疑問にはメフィラスが答え、デスレム、グローザムと続く。

 なのはは友達や家族、大切な者のために戦っている。浩は自分の大好きな怪獣という物のために戦っている。両者とも異なるモノのために戦っているが、本質は自分たちが大切なモノを守るため。

 しかし浩は『赤い球』に願ううちに世界の破壊を望んでしまった。結果、怪獣たちの個性は破壊だけを重視するようになり、今に至る。その象徴が浩が創り出した、あの切り札だ。

 

「まあ、こうなることを見越して行動してきたというのもありますから。だって敵である私が、アリサさんやすずかさんにデバイスを渡しますか? リニスをプレシアの使い魔に戻しますか?

 あなた達と怪獣たちを戦わせて、一度怪獣とは何かを考えてもらうはずだったのに……なかなか上手くいきませんね。

 とはいえ紆余曲折を経ても、ヒロシ君なりの答えを出してくれれば私は満足です。それまでは静観を決め込むとしましょう」

 

 こうしてメフィラス星人やデスレム、グローザム、レイキュバスとラゴラスエヴォも戦うことを止めて、静観することに決めた。

 

「魔法は両刃の剣。頼れば頼るほど闇に飲まれ、光の魔法はいつしか黒魔術に姿を変える」

 

 メフィラスはモニターを異次元から取り出すと、テーブルの上に置き、スイッチを入れる。画面にはなのはとクロノ、そして見たことのない怪獣が映っていた。アリサとすずかはもちろん、メフィラス、デスレム、グローザム。お菓子を食べていた怪獣やティグリスも机にかじりつき、モニターを凝視する。

 怪獣を従えてゲラゲラと笑うヒロシはどこか悲しそうに見えた。




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 もしよろしければ皆様も一緒に考えてみてください。
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