第97管理外世界の赤い球   作:破壊光線

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ウルトラマンブレーザー放送おめでとうございます。

時間が経ち、このタイミングでと思いますが、挿入します。
なんかあったので。


全ての答えは、きっとこの胸にあるから

 高町なのはが物心ついたとき、彼女は一人ぼっちだった。

 

 父親が仕事で事故に遭い、意識不明の重体となった。最終的には命を取り戻し、家族全員で仲良く暮らしているが、それまでが大変だった。

 父親の分を母が喫茶店を切り盛りし、二人の兄弟も母を手伝った。

 幼くて何もできなかったから、なのはは常に一人。家族が大変だからと、誰にも迷惑をかけないよう、いい子に努めた。

 

 その時から、無力な自分が嫌だと。誰かを守れるような人になりたい、守れなくとも人の気持ちを分かるような人になりたいと、そう思ってきた。

 

 

 

 小学校に入学、すずかとアリサの二人と友達になった。

 出会いはアリサがすずかの大事なものを盗って、悪ふざけしていた。そこになのはが止めに入り、大喧嘩になって、すずかが勇気を振り絞って止めに入ってくれた。

 出会いは最悪だったけど、それでも間違ったことは、ダメだと言ってくれる友人を誇らしく思った。

 何より、家以外もなのはの居場所ができて嬉しかった。

 

 小学三年生の春ごろ、ユーノと出会い、ベムラーを倒して魔法少女になった。

 

 なのはは、誰かを守れる力を手に入れたと喜んだ。

 これで誰も悲しませないようになれる。私もみんなの力になれると。

 

 別の魔法少女のフェイトと戦い、時には協力し、時空管理局を名乗るクロノやリンディと出会った。

 メフィラス星人の企みで、洗脳されたアリサとすずかと戦った。話を聞けば、なのはのためだと思ってやってくれたこと。アリサとすずか、二人の親友は協力してくれることになった。

 

 二人には感謝している。

 メフィラスに操られたとはいえ、一度攻撃しようとしたにもかからず、許してくれて、自分が魔法少女であることを許してくれた。

 人知を超えた力を持つ自分を恐れずに、一緒に戦ってくれると、言った親友二人を、なのはは誇りに思った。

 

 なのはは本当に人に恵まれた。

 両親と兄妹は仲良く、なのはを愛してくれている。

 二人の親友は、魔法の力を受け入れたうえで、それでもなお協力してくれた。

 ユーノはなのはを信じて、いつも味方になってくれている。

 リンディさんたちも、なのはを信じてくれた。

 

 だからこそ、考えてしまう。

 もし、メフィラス星人の策にはまり、アリサとすずかを攻撃してしまっていらた。

 もし、二人が自分の魔法の力を恐れて、離れてしまったら。

 

 大切な者を守るために戦っているのに、大切な者から嫌われてしまう。

 もし、自分がそうなったら。

 その答えは……。

 

「無理するな。オマエも強くてカッコいい怪獣が好きなんだろう? 街を破壊し大暴れする怪獣たちが大好きだ」

 

 鹿島ヒロシ。

 なのはの一つ上の、怪獣が大好きな少年。

 『赤い球』を拾い、誰にも理解されずに狂ってしまった少年。

 

「でもそんなこと言ったら笑われるもんな、いい年して怪獣なんて幼稚な、ダサい、くだらない……。くだらなくて悪かったな!」

 

 なのはは彼を知っているが、彼がどんな人でどんな人生を歩んできたのかまでは分からない。

 でも、彼が怪獣が好きなことだけは分かる。

 手に握りしめれている『赤い球』と、粘土でできた怪獣。翼とお腹の棘に接着剤を塗った後が残っている。塗装はところどころ剥がれ、時間が経ったのだろう。

 壊れても剥げても、大切に、大切にしてきたことが分かる。

 

「今こそ見せてやる、怪獣の本当の凄さを!」

 

 なのはからみれば、怪獣は敵だった。

 ベムラーとベムスターはいきなり襲ってきたし、デスレムとグローザムはジュエルシードを破壊の力として利用していた。メフィラス星人は親友を操った悪いやつだ。

 だからこそ、怪獣が好きな人はいない。知らないうちに決めてつけてしまった。

 

「その恐ろしさを! 全て壊してやる……」

 

 けど、それは間違いだった。

 テレスドンとドラコはメフィラスに「お前は負けた」と説得してくれたし、キングジョーはフェイトを守るように動いていた。ティグリスは怪獣なのにアリサと一緒に戦ってくれて、なのはの仲間になってくれた。

 戦ってきた怪獣たちは、純粋な悪ではなかった。

 

「こんな世界全てブチ壊すんだ!」

 

 なのはにとって大切な者は家族や友達で、ヒロシにとって大切な物は怪獣や宇宙人だった。

 もし、なのはの家族や友達が危険な目に遭ったら、なのはは全力で対抗するだろう。実際、破壊をもくろむデスレムやグローザムとは徹底的に戦った。

 

「暴れろ! 俺の最恐怪獣」

 

 キングオブモンス。

 鹿島ヒロシが高町なのはとクロノ・ハラオウンを倒すために生み出した大怪獣。

 破壊の限りを尽くさんと、雄たけびを上げる怪獣のはずなのに。

 

「……ないてる、あの怪獣。ないてるよ」

 

 周りの人に理解されなくても、怪獣を愛し続けていたころの彼を、キングオブモンスは知っているのだろう。

 

「そうか、そうだよね。怪獣が、ヒロシ君にとっての大切な物だったんだね」

 

 両親を、友人を、理解者を怪獣に求めてしまったからこその結末。目の前の少年が、怪獣が好きだと知らずに、彼の好きなものを、知らず知らずに否定してしまっていたのだ。

 

 もし、なのはがヒロシともっと話し合って、怪獣を受け入れたら、こんなことにはならなかっただろう。

 もし、ヒロシがなのはともっと話し合って、友達になっていたら、こんなことにはならなかっただろう。

 もし、『赤い球』で生み出されたベムラーが、なのはとユーノを襲わなかったら、こんなことにはならなかっただろう。

 

「あれは、怪獣なんかじゃない。もっと悲しい、孤独な何か。小さかった頃の私と同じ……」

 

 怪獣軍団を従えた元凶のはずのヒロシが、昔のなのはと重なって見えた。一人ぼっちで、いい子を演じていた、無力だったころのなのはと。

 ヒロシには居なかったのだ。大切な物を認めてくれる人も、間違えたことをしたら止めてくれる友人も。

 

「フェイトちゃん」

 

 生気を失ったフェイトがなぜヒロシの隣にいるのか、なぜヒロシはフェイトだけをそばに置いたのか。メフィラスでも、メトロンでも無い。フェイトなのか。

 その理由が、少し分かったような気がした。

 

「クロノ君。私ね、思っちゃったんだ。もし、アリサちゃんとすずかちゃんを助けられなかったら、魔法の力を理解してもらえなかったら……」

 

 なのはは、ヒロシの座っていた玉座を杖で指した。

 

「あそこに座っていたのは、たぶん。私だと思う。私の運が良かっただけで、ヒロシ君は運が悪かっただけ。フェイトちゃんも、プレシアさんも……もちろん、ヒロシ君だって。みんな、悪い人じゃなかったんだ」

「同感だ。みんな、いろいろな事情や過去があって生きている。すれ違って、こじれて、こんなはずじゃなかったことになっちゃうけど、不幸を口実に人の幸せを壊しちゃいけない」

 

 なのはにとっての家族と友人。それはヒロシにとっての怪獣。

 もちろん、クロノにだってそれはある。だからこそ、クロノは杖を構える。

 

「それに、まだ終わっていない。人は、生きている限りやり直せる。バッドエンド一歩手前だけど、まだ終わりじゃない。彼には償って、戦って、未来を変えてもらう。なのは、キングオブモンスを倒そう!」

 

 一瞬、キングオブモンスを倒していいのかと頭の中によぎる。

 けど、なのはの心は『赤い球』を破壊しろと、ヒロシを助けろと叫んでいる。

 

「……私より一歳年上の男の子が、ただ『赤い球』を拾っただけで、こんなことになっちゃって。すべての責任を押し付けて、悪い奴だと決めつけて、事件を終わりにしたくない」

 

 キングオブモンスが吠える。俺を倒せ、と。

 あの怪獣、キングオブモンスは今のヒロシそのもの。哀しみと嫉妬、承認欲求に囚われて、暴れている。

 なのはが知っているキングジョーやティグリスみたいに生きていない。『赤い球』の暴走で生み出された、愛を知らずに哀を叫ぶモンスターだ。

 

「クロノ君、レイジングハート、力を貸して。『赤い球』を壊して、キングオブモンスを倒して、ヒロシ君の洗脳を解くよ」

 

 やることは決まった。上手くいくかは分からない。でも、なのはは迷わない。

 誰かを守るために、誰かを助けるために、魔法の力を使う。

 

「全ての答えはこの胸にあるから」

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