第97管理外世界の赤い球   作:破壊光線

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勇気の光

 浩が『赤い球』を空高く掲げると、それは今まで一番大きい光を放ち、稲妻へと変わる。さらに粘土の人形とジュエルシード、デスレムとグローザムのパーツが光りだし合わさって、巨大なエネルギーになった。

 最上階の天井を消し飛ばし、暗黒で覆われた空があられた。そこにポッカリと穴が開き、浩の前に雷が降りそそぐ。稲妻がいびつに曲がると、それが怪獣の形になって雄たけびを上げた。

 『時の庭園』の最上階に、仁王立ちする怪獣。身長は4メートルとお世辞にも大きいとは言えないが、目の前の二人を倒すためだ。むしろこの大きさの方が戦いやすいかもしれない。

 

 闇を象徴する紺色の身体には、稲妻のような模様が長い尻尾にまで走る。背中には穴の開いた金色の骨の両翼、『赤い球』をモチーフにした二つの赤い瞳と、その真ん中にある真っ赤なコア。腹も赤色していて、赤と紺の境目に剣のような棘が生えていた。それは怪物の口の中を連想させる。細いながらもするどいツメの生えた両腕と、対照的に太くて頑丈な足は、かの怪獣王ゴジラを参考にした。シルエットは最強のモンスターと名高いドラゴンだ。

 怪獣と怪物。その二種族の王を取り入れたコイツは、キングオブモンスというのにふさわしい。

 

「行け、キングオブモーンス!」

 

 浩の最高傑作は闇に向かって吠えると、翼を広げて高町なのはに襲い掛かった。

 

「レイジングハート」

 

 なのはは武器を構えて、ベムラーを倒したビームを放った。大怪獣もなのはに対抗して口を開き、ビームを放つ。

 桃色の光線は、怪獣のオレンジ色の破壊光線にかき消される。なのはがとっさにバリアを展開し、キングオブモンスのビームに備えた。

 

「あの破壊光線、クレイメイトビームは全てを破壊する。お前のバリアごときで防げるはずがない!」

 

 浩の宣言通り、破壊光線はなのはのバリアを打ち破り、一拍遅れて射線上に爆発が起きる。なのはは光線の直撃こそ避けれたが、爆発に巻き込まれて悲鳴を上げた。ビームそのもの火力と遅れてやってくる爆発という二段構えの破壊力は半端なものではない。

 

「壊せ壊せ壊せ壊せ、ぶっ壊せ!」

 

 地味な色一色だった『時の庭園』をキングオブモンスが焼き払う。無味乾燥だった黒色の床に走るオレンジ色の光線、あとから追随する爆発の花がきれいに咲いた。壁はたちまち瓦礫の山に変わり、『時の庭園』が悲鳴を上げるように黒煙を噴き出した。

 

 なのはとクロノが食い下がり、バインドで動きを封じ、設置型の爆発魔法で牽制するがそんな抵抗は無意味だ。キングオブモンスは拘束を引きちぎり、地雷を踏んでもキズ一つ付かない。遠距離技は口から放つクレイメイトビームのみだが、射程も精度も威力も、なのはとクロノが扱うどんな魔法よりも優れている。

 だって、キングオブモンスは浩が生み出した最強の怪獣だから。

 

 遠距離では分が悪いと判断したのか、クロノが隙をついて怪獣の懐に飛び込んだ。キングオブモンスのビームは口から発射され、身体の構造上は顎の下、腹の部分はビームが届かない。小さい腕なら何とかやり過ごせるだろう。クロノはそこに目を付けてたのだ。

 いくらキングオブモンスの甲殻が堅いとはいえ、ゼロ距離から魔法を当てればダメージが入るだろう。

 

「よし! そこだ」

 

 キングオブモンスは破壊に特化した怪獣、堅い甲殻を持っているが無敵ではない。ゼロ距離から魔法を放てばダメージは入る。当たればの話だが。

 クロノがデバイスを構えて、攻撃に転じようとした時、赤色の腹の周りに生える棘のようなものが伸びると、クロノを包み込んだ。灰色の棘は意思を持ったようにガチガチと動き回り、クロノを締め上げる。万力のような力にクロノはたまらず悲鳴を上げた。キングオブモンスは二つの腕でクロノ頭を鷲掴みにし、光線を巧みに操ってなのはを集中攻撃する。

 

「シャークファング。キングオブモンスのお腹の周りについている棘の名前だよ。接近戦なら勝てること持ったのかい? 言ったはずだ、キングオブモンスは最強の怪獣だ。そんな小細工通用するわけないだろう」

 

 浩が笑う。キングオブモンスの光線がついになのはを捉えて吹き飛ばした。

 地面に落とされたなのはが肩に痛みを感じて、手で押さえると柔らかい感触がした。目で確かめてみると、光線が直撃したのかバリアジャケットが破れて、傷口からは赤い血が流れていた。幸いなことに傷は浅く、腕を振り回しても少し痛みがあるくらいでまだ戦える。

 キングオブモンスはクロノを締め上げることに飽きたのか、クロノを無造作に放り捨てると、長い尻尾で何度も叩きつけている。

 

「……ディバイン、バスター」

 

 キングオブモンスの気をそらすため、なのはの桃色の光線が一直線に標的目掛けて飛んでいく。怪獣は金色の翼を動かすと、それが光りのバリア生み出して、なのはの光線を防いでしまった。クロノは何とか脱出したものの、攻守万全なキングオブモンスに二人は息を飲む。

 

「ボーンウィングはボーンシールド、バリアにもなる! お前たちの攻撃なんか効くものか」

 

 クロノが前回の経験を活かしてテレスドンとドラコあっさり倒したのと同じように、デスレムとグローザムがなのはとフェイトに研究されて倒されたのと同じように、浩は過去の戦いからなのは達の戦法や威力を記録していた。そして創られたのがキングオブモンス。まさしくなのは達を倒すために創られたと言っても過言ではない。だからこそ、ここまで強いのだ。

 キングオブモンスは勝ち誇ったように吠える。浩の手に握られた『赤い球』が強く赤い光を放っている。

 

「そろそろ終わりにしよう、捻じ伏せろ。キングオブモンス!」

 

 浩が握りしめる『赤い球』が光りを放ち、世界を真っ赤に染め上げる。暴風を伴って、なのは達をひるませるとキングオブモンスの背中が赤い光で照らされた。

 

 翼を広げると、金切り声が上がる。キングオブモンスの二つの翼が一瞬、四枚になると背中が盛り上がった。さなぎから幼虫が羽化するように全く別の生物がキングオブモンスの背中にしがみついている。ソイツは四枚の羽を広げると、上空に飛び立たった。

 長い首、細い脚、太いくて短い尻尾に小さな顔。両手はカマになっていて、その大きさは自身の半分近くもある。鎧のような銀色の甲殻をもち、その隙間から見せる金色はキングオブモンスのものと似ている。瞳は赤色に塗りつぶされて、なによりこの怪物のもつ四枚の羽はキングオブモンスの翼と酷似していた。

 

 それだけでは終わらない。今度はキングオブモンスの腹がうごめくと、首の付け根と尻尾の付け根が盛り上がった。さらに腹全体が分離するように動いていって、別の生物へと変化する。シャークファングと呼ばれたキングオブモンスの腹が別世界の入り口のようになり、そこから四足歩行の水生生物が飛び出した。

 頭の上には緑色のたてがみと小さな赤い目。手足は巨大なヒレで、尻尾も魚のようになっており、身体からは堅い皮膚が垂れ下がっていた。このモンスターはクロノを見つけると、威嚇するかのように口を開けた。それが尋常じゃないほど大きく、身体のほとんどが口になっていた。真っ赤な大口にはシャークファングを彷彿とさせる牙がズラリと並んでいた。

 二体とも姿形が異なるが、浩の夢に登場した怪獣だ。鎌を持つ方がバジリスク、大あごの方がスキュラ。浩が夢の中でそう呼んでいた怪獣たちだ。

 

「骨翼超獣バジリス、巨大顎海獣スキューラ、そしてキングオブモンス! 行け、この世界の全てをぶっ壊せ!」

 

 浩の邪悪な願いにこたえるべく、三大怪獣はなのは達に襲い掛かった。

 

 

 

 怪獣たちが暴れるのを横に、フェイトは赤い光を見つめていた。

 自分の母、プレシアに拒絶されてからフェイトはずっとこのままだった。ベムラーを追いかけてやってきたウルトラマンは赤い球で、ウルトラマンに力を与える太陽も言ってしまえば赤い球だ。ウルトラマンの世界では赤い球はいいものとして扱われてた。だからフェイトは浩の持っている『赤い球』に助けを求めていたのかもしれない。

 しかし現実は無常でウルトラマンもいなければ、カッコイイヒーローも現れない。ましてや希望を託した『赤い球』は怪獣を生み出すものだった。友人は破壊に狂って、母には見捨てられた。自分の名前を呼ぶのはボロボロになった知り合い、白い服の女の子。ウルトラマンでも友達でもない、魔法が使えるだけの少女がフェイトを助けようとしていた。

 どうして浩は狂ったのか、どうして少女は自分を助けるのか。分からない。その答えを求めるためにフェイトは『赤い球』を見つめていた。

 

 浩という少年と出会ったのは、レンタルビデオ店だった。ベムスターという怪物を調べるためにDVDを借りようとしたら、あっちから声をかけてくれた。それからDVDを借りて、自宅で一緒に『帰って来たウルトラマン』を見た。

 街を破壊するベムスター。宇宙ステーションを飲み込んで、ウルトラマンを追い詰めて大暴れする。ウルトラマンは体勢を立て直して、新しい武器を身に着けて帰って来た。そして武器を使ってベムスターを倒してしまう。

 困っている人のために戦う、ウルトラマンの姿は、フェイトの目にはカッコよく映った。そして、いつか自分もウルトラマンのように母を助けたいと思った。

 

 その後は、なのはという白色が似合う女の子と一緒にデスレムとグローザムという強敵と戦った。最初は負けてしまったけれど、なのはからの誘いもあって、フェイトは協力してデスレムとグローザムに立ち向かい、リベンジを果たせた。使い魔のアルフ除けば、なのはがフェイトと一緒に戦ってくれた初めての人だった。

 

 その後は時空管理局に追われ、浩が助けくれた。メトロン星人と出会い、色々話して、楽しかった。メトロンが浩やアルフを茶化すたびに蹴られていたのがどうしようもなく面白かった。エアロヴァイパーの背中に乗って過去に行き、フェイトの師匠、リニスと再会できたのは嬉しかった。

 『時の庭園』でバキシムやメトロン星人、浩たちと一緒にゲームをしたり、ウルトラマンを見たりした。プレシアはイライラしていたけど、前よりも元気になった気がする。

 ジュエルシードを求めてあの白い女の子と戦ってはいたし、大変だったけれど、フェイトにとって浩と過ごした時間はどれも楽しかった。浩がいたからこそ、ここまで頑張ってこれた。

 

「……どうして」

 

 でも、フェイトが好きだった浩はいない。『赤い球』を手にした浩は三大怪獣を従えて、破壊の限りを尽くし、喜んでいる。彼の瞳は真っ黒の中に赤い点が映っていた。それは手にした『赤い球』に操られているようにも見える。フェイトが記憶を探ってみると、浩がプレシアを攻撃したときも『赤い球』を持っていたし、浩が怪獣を従えて攻撃するときも『赤い球』を持っていた。

 

 フェイトは確信した。『赤い球』が浩を狂わせたんだと。あの『赤い球』はウルトラマンを象徴する赤い球なんかじゃない。破壊をもたらす『赤い球』だ。

 希望とは正反対の位置に存在するモノ。フェイトからプレシアと浩を奪い、今にもなのはを奪い去ろうとしている邪悪な球。この世界には怪獣がいる。しかし、怪獣を倒すウルトラマンは居ない。

 ウルトラマンが欲しいと叫んでも光の巨人は現れない。ウルトラマンがいなくても、『赤い球』をどうにかしなければいけない。フェイトが地球で得た大切な人がいなくなってしまう。

 

「フェイトちゃん!」

―――フェイト―――

 

 どこかで自分を呼んでいる声がする。一人は少女の声で、もう一人は……分からない。でも、フェイトにとって大切な人の声だった気がする。

 ギリギリの中、一人だけ塞ぎ込んでいるわけにはいかない。ウルトラマンがいないなら、自分でどうにかしなければならない。相手はあの大怪獣。なのはよりも強い光線を放ち、クロノの魔法などビクともしない。果たしてフェイトが戦いを挑んだところで勝てるのだろうか。

 

―――仲間がいればどんな強敵にも勝てるって―――

 

 以前、浩が言っていた言葉を思い出す。デスレムとグローザムを倒す、一押しとなった言葉。敵は確かに強い。だけどフェイトには戦友がいた。暗黒四天王の二人を打ち破った高町なのはだ。これ以上心強い味方は居ない。

 大切な人を守るために、フェイトは自分の力を信じて立ち上がった。

 

「ヒロシはリニスを助けてくれた。私に協力してくれた。私の悲しみを理解してくれて、自分の事のように怒ってくれた。私はあなたにいろんなものをもらった。だから今度は私の番! ロストロギア『赤い球』、私の大切な人をあなたなんかに渡さない」

 

 バルディッシュを握りしめて、キングオブモンスの前に立ちふさがる。自分の身長の三倍もある相手に怯みもせずに戦いを挑もうとしていた。

 フェイトの瞳には今までの虚ろなものとは全く違う、力強い光が宿っている。

 それは邪悪な願いという闇を照らす勇気の光だった。

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