第97管理外世界の赤い球   作:破壊光線

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第97管理外世界の赤い球

 俺が物事を正確に判断できなくなったのはいつからだろうか。

 

 クロノと戦うキングオブモンスを見てふと考える。

 キングオブモンスを生み出した時、タイラントとプレシアを戦わせた時。ティグリスと戦ったことやデスレムとグローザムが倒されたあの日。怪獣に影響を受けて、そのたびに『赤い球』に願ってきたけれど、俺が狂い始めたのはもっと、もっと前だった気がする。思えば両親を宇宙人にするなんて普通では考えられない。ベムラーを創る前、あの『赤い球』を拾った時から狂い始めていたんだなと実感する。

 

 目の前で暴れるキングオブモンスは光線を乱射してクロノを牽制。『赤い球』が消えてもその威力は健在だ。クロノがバインドでどんなに動きを封じても、ものの数秒で引きちぎってしまう。

 クロノはバインドで動きを封じて隙を作っても攻撃に移らない。対して効果ないという理由もあるが、おそらくはクロノがキングオブモンスを引き受けているうちに、弱った二体を倒して三対一で戦おうという作戦だと思う。だけど、キングオブモンスはなのはとクロノが二人係で戦っても終始優位だった。クロノ一人では無理だろう。

 翼を広げてキングオブモンスが飛び立ち、空中戦を繰り広げる。攻撃に特化した怪獣だ、しだいにクロノは防戦一方となった。いくら歴戦のクロノとはいえ、キングオブモンスの攻撃をすべて捌き続けるのは難しい。破壊光線によって生まれた煙でキングオブモンスを見失ってしまい、それが原因で捕まった。

 

「クソ」

 

 キングオブモンスはクロノのデバイスを両手でつかんで急降下し、クロノを地面に叩きつける。埃や破片が宙に舞い、俺はとっさに目を閉じたから直前の事は分からない。だけどクロノ背中が光っていたから、叩きつけられる直前でバリアを張り、衝撃を和らげることに成功したと思う。

 だからといって攻撃が終わったと言えば違う。キングオブモンスは両手にさらに力をこめると、クロノのデバイス、S2Uがミチミチと音を立て、ヒビが入る。

 

「なに!?」

 

 そしてバキッという音とともに、クロノのデバイスを真っ二つにへし折った。武器を失ったことでクロノが実質戦闘不能になり、キングオブモンスは興味を無くして次なる敵を探す。ちょうどそこにスキューラとバジリスを倒したのかなのはとフェイトが駆けつけた。

 真っ二つに折れたデバイスを見て二人は息を飲む。キングオブモンスは吠えると、二人を新たな敵と定めて飛び立った。

 光線を乱射するキングオブモンス。バリアを張ったり、回避をしたりと二人はどうにかやり過ごし何とか互角に戦っていた。しかし、バジリスとスキューラでの影響が現れ始めたのか、動きが鈍くなっている。

 俺から見たら二人は米粒のように小さいが、空が真っ黒だから魔法の光や光線、火花などで大体の想像はつく。星のように光っていた魔法の光は、息でも吹きかけたら消えそうなほど弱い。

 

「なのは、フェイト!」

 

 ついにクレイメイトビームが二人を捕らえて大爆発を起こした。流れ星のように落っこちて埃が舞い上がる。俺は倒れた二人のところに駆け寄った。少女たちは辛そうなうめき声を上げながらも立とうと手足に力をこめている。

 なのはは白かったバリアジャケットの上着の部分が無くなっていて、黒いインナー姿になっていた。長かったスカートも破れて左右の長さが違う。フェイトもマントがそっくり無くなっていて、ニーソも手袋も破れていた。クロノは……戦えそうにない。

 ドシンと俺の後ろに巨大生物が降り立つ。キングオブモンスだ。雄たけびを上げて仁王立ちする怪獣を見て、俺は自分が生み出した負の塊の凄さを改めて知った。

 

「フェイトちゃん、まだいける?」

「なんとか……でも、あと一発が限界」

「ふふふ、私もそう」

 

 絶望的な状況でも笑いあう二人を見て、頼もしさと一緒に何故俺の怪獣たちが敗れてきたのかが少しわかった気がする。なのはとフェイトは手を伸ばし、キングオブモンスをバインド魔法で拘束する。金色と桃色のバインドは複雑に絡み合って、何重にもなりキングオブモンスの動きを封じた。

 

「ヒロシ、ちょっと離れて」

 

 フェイトに言われて離れる。バルディッシュとレイジングハートは魔法の光を溜め始めた。

 なのはの魔法はスターライトブレイカー、映像でしか見たことの無いがグローザムとデスレムを倒した必殺技で、その威力を言わずもがな。フェイトの周囲に無数の黄色い光の玉が現れたことから、フォトンランサーだと思う。スキューラにとどめを刺した大技だ。二人とも自分の最大威力の魔法を放つつもりだ。

 俺には戦う力が無いので、呆然と集まってくる光を見ることしかできないが、これが正真正銘、最後の攻撃だと思う。

 魔力は順調に集まりつつあった。いくらキングオブモンスとはいえ、二人の必殺技を同時に食らったら倒れるだろう。だからこのまま、魔力が溜まり切って、それを当てればこの戦いが終わる。

 

「バインドが」

「ちぎれる!」

 

 そう簡単には終わらなかった。キングオブモンスはなのはとフェイトのバインドを腕や尻尾、翼や棘を使って引き裂いてしまった。

 自由の身になったキングオブモンス。アギトを開いて破壊光線を放つ体勢へ。フェイト達はまだ魔法を溜めていて、この機会を逃すと体力的にも魔力的にも限界に達し、戦えなくなる。つまり魔力を溜める以外の動作はできない。キングオブモンスのクレイメイトビームよりも先に攻撃するしかない。だけど、圧倒的に時間が足りなかった。

 キングオブモンスの口から光が漏れ出す。フェイト達が覚悟を決めたその時、青色の鎖がとんできた。

 その鎖はなのは達が使ったバインドのようにキングオブモンスに絡みつき、クレイメイトビームは不発に終わった。

 

「何とか間に合ったか」

「クロノ、どうして……デバイスは壊れたんじゃなかったのか」

 

 満身創痍のクロノが笑う。彼は倒れたままの状態で、顔を起こし右手を前に伸ばしていた。掌は青く光っていて、魔法を使っていることが分かる。

 

「へへ、デバイスが無くったって、魔法は使える。詠唱が必要になるけどね。ま、モロボシ・ダン隊長のウルトラ念力ってとこかな」

 

 デバイスが無くなってもクロノの魔力は残っている。俺たちはクロノの機転で首の皮一枚のところで怪獣を食い止めた。さらに、茶色の怪獣がキングオブモンスに突っ込んだ。

 

「テレスドン、おまえ」

 

 バインドを引きちぎろうとするキングオブモンスに、テレスドンまでもが加わって動きを封じようと健闘する。

 こいつもドラコと一緒で俺を助けてくれたようだ。クロノとなのはに倒されたと思ったけど、生きていてよかった。

 

「フェイトちゃん!」

 

 なのはが叫ぶ。魔力を溜めていたフェイトが膝をついてた。それでも魔力の玉を維持しているから、チャージは続いている。だけど、この状態でフォトンランサーを撃つのは不可能だ。

 クロノもテレスドンもキングオブモンスを封じるだけで精一杯。ドラコはすでに力尽きている。なのはとフェイトには頼れない。だけど、この状態が続けばキングオブモンスは倒せない。いずれ拘束を引き千切られてクレイメイトビームの餌食になって終わる。

 このままいけば俺の怪獣が正義の味方に勝てる。俺がずっと望んでいたことなのに、ちっともうれしくなかった。

 キングオブモンスは自由の身になろうと、身体中に力をこめてもがいている。かつての俺が趣味の怪獣を受け入れてもらおうと足掻いていたときと重なって見えた。

 

 ―――どうしてオマエは戦うんだろう―――

 

 それは俺の純粋な疑問だった。キングオブモンスは狂った俺と『赤い球』によって生み出された。しかし、狂った俺は『赤い球』を手放して正気に戻り、生み出した『赤い球』もこの世界には存在しない。俺が抱いた怪獣の理想像やコンプレックスを背負って戦わなくてもいいはずだ。

 キングオブモンスは過去の俺。コイツが勝てば、俺は怪獣たちと一緒に世界を支配すると思う。

 もしコイツが倒されれば、普通の生活に戻るはず、メフィラスやメトロン、バキシム達が俺の家族になって俺は学校に通うだろう。

 

 気に食わないモノを破壊して、瓦礫の山に玉座を置いて、一人で座るのか。

 またフェイトと一緒にウルトラマンを見るのか。

 

 握りしめたスマートフォンに電源が入る。怪獣たちと温泉旅行に行った待ち受け画像が映った。

 怪獣と一緒に写真を撮るなど常識では考えられないが、俺にとってあの頃は楽しかったと思う。それからフェイトに会って、ウルトラマンを見て、怪獣たちから来るラインでギャルゲーが始まって。怪獣の数は写真の時よりも増えたけど、なんやかんやであの頃が一番楽しかった気がする。

 

 なら、どうしてこんな事になったんだろうか。

 俺を否定した世界をぶっ壊すためにキングオブモンスを創った。その前は、プレシアに否定された怪獣を、否定されないように戦った。怪獣たちを守るために怪獣軍団を創って、フェイトを守るために異次元まで逃げ込んで。その前は日常を壊されたくないからデスレムとグローザムを創った気がする。親をメフィラス星人とメトロン星人に変えた理由は俺の趣味を否定されたくなかったから。

 

 ……本当か。デスレムとグローザムを倒したのはフェイトだった。なのに、俺はフェイトを時空管理局から逃げる手伝いをしてしまった。俺の日常を守るために創った二体をフェイトは倒した。でも俺はフェイトを助けてしまった。

 俺は怪獣が好きだし、好きだから怪獣を望んだ。でもそれと同じくらい欲しかった者があったのかもしれない。好きな物を失っても手に入れたかった者があったのかもしれない。

 俺が望んだものはきっと、この写真と怪獣たちと、もう一つ……。

 

 答えは出た。

 

「待ってろフェイト」

 

 俺は膝をつくフェイトの元へ駆け寄ると、腕を肩に回して支えになる。フェイトの身体を持ち上げて、二人で立ち上がった。金髪の彼女は驚いた表情でこっちを見たが、すぐにキングオブモンスへと向き直るとバルディッシュを構える。

 キングオブモンスは俺を見つめると頷いた。キングオブモンスは過去の俺、俺の心の中にある闇そのもの。いわば俺の負の感情が集まったもの。だからコイツは俺の願いを知っている。

 

 そうか、キングオブモンス。お前は俺が本当に望んだモノを教えたかったのか。

 ならば俺も全力で答えなければならない。

 

「翼の付け根と、腹の棘を狙え! なのは、フェイト。キングオブモンスの弱点は翼と棘だ!」

 

 俺が小さいころに粘土でキングオブモンスを作った。それは『赤い球』を拾ってきた夜に親に壊されている。その場所が翼の付け根と腹の棘。一度取れた翼と棘の部分は何度接着しても脆く、目を離せば取れていることもあった。もし、ヤツに弱点があるとしたらそこしかない。

 

 キングオブモンスがバインドを引きちぎった。テレスドンを尻尾で吹き飛ばす。地底怪獣は動かなくなった。

 なのはとフェイトが頷く。溜めてきた魔力を開放し、莫大なエネルギーとなって爆音が生まれた。

 俺は吹き飛ばされないようにフェイトを支えるのに精いっぱいで、二人が何か言っているか分からない。だけど怪獣を倒すのに値するものだろう。

 桃色の光線が翼を打ち抜き、金色の稲妻が腹の棘を砕く。

 それは生み出された邪悪なものとは真逆の、朝日のようなきれいな光だった。大怪獣は両腕を上げて、身体中から火花を散らして後ろから倒れていく。

 最後の最後まで戦って倒されていく姿は、テレビの中でウルトラマンに倒されていった怪獣たちと全く同じだった。

 

「なあ、キングオブモンス。怪獣って何なんだろうな。」

 

 爆発する直前、ヤツはどこか嬉しそうだった。

 

 一拍遅れて『時の庭園』が揺れ、あちこちから爆発が起こった。激しい戦闘に耐えきれなかったのか、建物自体が崩れていく。危険だと分かっていながらも、俺は呆然とキングオブモンスがいた場所へ走った。

 そこにはクレーターと焼け焦げた跡が残るばかりで、大怪獣が立っていた場所とは考えられない。でも俺は、その場所に、もう一つの何か大切な答えがあると思って立ち尽くす。……それが何かは分からなかったが。

 

「ヒロシ、何しているの?」

 

 フェイトが俺を呼んでくれた。俺が振り返ると、彼女は手を差し伸べている。後ろの方では、なのはがクロノを背負っていた。クロノはなのはに魔力を分け与え、脱出しようとしている。その中に俺が含まれているのは光栄だ。

 

「今行くよ」

 

 歩き出したその時、轟音を立てて、巨大な石の柱が落ちてきた。ちょうど真下にフェイトがいた。

 

「フェイト危ない!」

 

 俺はとっさにフェイトに体当たりして弾き飛ばす。対格差もあってか、フェイトはうまい具合に転がって、柱の影から抜け出せた。俺は間一髪で柱を避けたが、柱の重みで『時の庭園』自体が崩れていく。

 

「ヒロシ! ヒロシ!」

 

 フェイトが泣き叫んでいるがどうしようもない。俺は瓦礫と一緒に重力に身を任せて落ちていく。フェイトはなのはに抱えられて飛んでいた。

 魔力を使い果たしたフェイトでは、飛んで俺を捕まえて帰るだけの力がない。もちろん、なのはとクロノもだ。二人でフェイトを支えながら飛んで帰るだけで精一杯だろう。

 瓦礫の隙間から、二つの魔法の光が見えた。俺の名前を呼ぶ声がどんどん小さくなっている。フェイトも無事に脱出できたのだと思う。

 最後の最後に人助けができてよかったな。……欲を言えばもう少し生きたかった。

 覚悟を決めて俺は目を閉じる。

 

 

 

 

「……まったく。キングオブモンスを創り出して、『赤い球』を失って、自分だけ答えを見つけて満足そうに死ぬことが許されると思いますか?」

 

 聞き覚えのある渋い声が聞こえる。

 

「言ったはずです。私は貴方が思うまま、望むままに邪悪だと。ですので、こんなものを用意しました。いえ、こんなこともあろうかと。と言った方がよろしいでしょう」

 

 突如、赤い光が俺のまぶたを焼いた、瞳を閉じていても関係ないほどに光っていて、目を開けることなどできるわけない。

 見えないはずなのに、俺はこの真っ赤な世界を知っている。一つは俺とフェイトが逃げ込んだ異次元だ。もう一つは……。

 

「スペアを取っておいて正解でした。何のとは言いませんが。しかし、名前が無いのも問題です。そうですねぇ。私が命名するとしたら、『第97管理外世界の赤い球』とでもしましょうか」

 

 ねえ、ヒロシ君。

 その直後、俺は意識を手放した。




 色んなパターンがありましたが、最終的にコレに落ち着きました。
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