ヴィータとシャマルという人物にゾイガーが倒された。
温泉旅行から帰って来た俺たちの初仕事は、町中に仕掛けた監視カメラの映像をチェックすることだった。海鳴市の監視カメラは俺たちが少しいたずらして、映像は全て掌握済み。メトロン印の特別性。
元々俺たちは犯罪者。時空管理局の行動を逃さないように、結界が張られても起動できるように細工してあるのだ。何が言いたいかというと、海鳴市中で魔導士による戦闘が起きた時、その映像は全て俺たちが手に入るような仕組みになっている。
「つまり、なのは達が戦っていたら、その映像も見れるのだよ」
ドヤ顔でカメラハッキング担当のメトロンが発表した。
しかしどこのカメラに記録したのかは分からない。俺と怪獣たちも巻き込まれて、全員でしらみつぶしにカメラの映像を探す。
「ビンゴ! ドラコ」
ドラコからラインが入る。
再生ドラコになったコイツは羽と鎌を失い、代わりに五本指の腕を手に入れた。そのおかげもあってか、パソコンやスマホの使い方が上手くなっている。当人は羽が欲しいと七夕で願っていたが。
俺たちは集まってドラコが見つけた映像を視聴する。
画面の中にはなのはとすずか、アリサの三人が、昨日のヴィータがザフィーラというオオカミを連れて戦っていた。アリサ、すずかの見事な連係プレーに大盛り上がって、敵の戦力分析を忘れて怪獣たちみんなで騒ぎ倒した。
アリサが弾幕を張れば咆哮が上がり、すずかがグロッケンを振れば歓声が聞こえる。なのはのスターライトブレイカーとアリサの連携が決まった時には踊り始めるヤツもいた。シグナムという新たな敵が現れた時はざわついたが、フェイト登場と共に今日一番の雄叫びが上がり、グループラインの数値がカンスト。興奮しすぎて火を吐くやつもいた。なんだかんだでフェイトが一番愛されていた。
しかし、映像はフェイト達の負けで、ティグリスが本の中に吸い込まれたところで切れてしまう。怪獣の中には意気消沈しているのもいるが、それでも必要な情報を入手できたので良しとする。
俺の創った怪獣たちも、なのはたち魔法少女組も敵の情報を入手して対策をして勝利している。つまり、相手よりも少しくらい弱くても対策して勝ちをもぎ取るのが俺となのは達の戦い方だ。
シグナムやヴィータは確かに強いが、今回の映像で彼女達の戦闘能力が分かれば、俺たちの勝ちパターンに組み込めるだろう。勝負はここからだ。
「なのはちゃん達の過去のデータやゾイガーのデータを参考にして、ヴィータ達の戦力を計算してみるよ。デスレム、協力してくれるかい?」
「仕方がねえ」
メトロンはデスレムと一緒に別の部屋へ入っていった。メフィラスは俺に向き直ると。
「ヒロシ君。管理局の味方をした三人が襲われました。今後は管理局が絡んでくる可能性があると考えてもいいでしょう」
「でもさ、ヴィータ達は管理局の味方したなのは達を攻撃したんだよ。戦うとしたら管理局VSヴィータ達って構図になるんじゃないかな」
「様子見という訳ですね」
俺はうなずいた。
管理局と戦って以来、侵略者の思考というか。敵をどう追い詰めるかを考えられるようになってしまった。メフィラス達の授業を受けた甲斐があるのか分からないけど、テストとの点を見る限りは効果ないと思う。
「その方がいいじゃないのかな……敵の戦闘データを解析できたら、それを管理局との交渉材料にできるかもしれないしね。何よりここで追い詰めても逃げられてしまえば勝利にはならないから」
「なるほど、攻撃は敵の拠点を突き止めてから。もしその間に、ヴィータ達と管理局が敵同士であると分かれば、ヴィータ側に着くことも視野に入れますか……」
「てことは、なのはが敵?! まーた高町なのはに悩まされるのか。フェイトとは戦いたくないし……でも捕まるのはもっと嫌なんだよね」
「ごもっとも。ヴィータ達を捕まえれば管理局に協力したとして、罪が軽くなればいいのですが」
はぁ~、俺とメフィラスは深い深いため息をつく。
高町なのははベムラー、デスレムとグローザム、ギマイラ、バジリス、そしてキングオブモンスと俺の怪獣軍団を倒した数ではトップ。一番の天敵だ。心も折れないし戦闘でもクソ強いんだよな、アイツ。
しかしやることは変わらない。今あるデータの中でヴィータ達について徹底的に解析した。
そして明後日、事件が起こる。
解析も順調に進み、敵の戦法や役割も解析完了。技についても数値化できて対抗策もでてきている。完璧ではないにしろ、あの三人と一匹を倒す算段がついた。ヴィータ達の拠点を調べるために彼女たちの行動範囲を調べていると、メフィラスが海鳴市の一軒家がハラオウン名義で買われていることが発覚。ハラオウンと言えばクロノやリンディの名前、管理局が関わってくることがほぼ確定になる。
しかし、管理局は準備中なのか本格的に活動していない。さらに映像を見る限り、フェイトが管理局側に着いたと思うが、なのは、すずか、アリサの三人がヴィータ達に倒されたため、戦力もダウンしているはず。プレシアとリニスが何をしているのかが分からないけど。テスタロッサ家に関しては後で手紙でも出すとして、フェイトとクロノだけでシグナムやヴィータを倒せるとは思えない。
つまり、自由に動き回れるのは今日が最後。食べ修めという理由で、メトロンと俺は海鳴市の翠屋という喫茶店までシュークリームを買いに行った。俺はメトロンの付き添いなんだけどね。
そんな訳で、擬人化マシーンで変身し、黒いスーツを着こなしたメトロンが俺の隣で鼻歌を歌っている。好物のシュークリームを買えたため上機嫌な宇宙人。あと普段着の俺と子供の姿に化けたバキシム。以前、ドラゴリーを創るために蛾の採取に出かけた三人でぶらぶらと市街地を歩いていた。
「いやー悪いね、少年。翠屋の女将さんとは仲良くしてもらっていて、特別に割引券をくれたんだ。せっかくもらったのに、使わないなんてもったいないじゃないか」
「エクレアもうまいな、ヒロシ一個食べるか?」
バキシムはエクレアにかぶり付いて幸せそうだ。口の周りにチョコクリームを付けていて、超獣の威厳がない。上司のメトロンに似たのか、コイツも地球の文化を満喫していた。
俺はおいしそうなショートケーキとチョコケーキ、フルーツのタルトなど、誕生日で買うようなケーキを買い占めた。異次元に帰った時にみんなで食べるつもりでいる。これも怪獣たちが運送業を上手くやってくれたおかげだ。すでに異次元に送ってあり、今頃は怪獣たちがケーキパーティの準備でもしているだろう。
「フォッフォッフォ、バルタンの科学では分身など三時のおやつ前だ。バルタン」
「お前ら! バルタンのバカが分身した、ケーキ全部食われるぞ! レイキュバス」
「タイラント、どさくさに紛れてケーキ食ってんじゃねえ! お腹の周りにクリームついてんだよ。グローサム」
「喧嘩売ってんのか! これはベムスターのお腹が勝手に食ったんだ。タイラント」
「こっちに責任転嫁すんのやめてください。ベムスター」
「オマエもオマエで食べとるやんけ。ゴモラ」
「……チョコケーキ、美味しい。ゼットン」
「チョコケーキがやられた、ショートケーキは俺が守る。ギマイラ」
「ギマイラ、あなたの舌でクリーム舐めとるのはシャレにならないので止めていただけますか? メフィラス」
案の定、グループラインが盛り上がっていた。しかし、パーティの準備はしていなかった。
チョコケーキ、もう亡くなったのね。食べたかったな。クソ、バルタンめ覚えていろよ。
「バルタン、後でお話があります。ヒロシ」
「君ノ日本語ハ分カリニクイ。バルタン」
バルタンのやつ、都合が悪とすぐコレだもんな。
教育が悪いのか、怪獣たちは帰りを待つ。ということを知らないので、急いで帰るしかない。
俺たちは急いで異次元のゲートを作るために人気のつかない場所に移動する。ビルとビルの影、野良猫の家がありそうで、人目のない隙間を見つけると、そこには先客がいた。
「……君たちに恨みはないが、少し魔力をもらう」
そいつは紫色の髪を一つに束ねた女性だった。トレーナーとジーパンを着こなしたその人を、俺たちは知っている。
シグナム。フェイトと戦い、勝利を収めた女剣士。管理局と並んで危険人物のトップに君臨する人と鉢合わせするなんて……。
実際に遭遇してみて、シグナム達の目的が魔力だということが分かった。何に使うのかは分からないけど、怪獣達からみればたまったものじゃない。『赤い球』で創られた怪獣たち、その元になった力が魔力らしい。メフィラスが言うには、実際は少し違うようだが魔力としても代用できるとのこと。
シグナムは少年の姿をしたバキシムに武器を向けると、鞘から剣を抜いた。バキシムもエクレアを口に放り投げて、ファイティングポーズをとる。モグモグしているがやる気満々だ。俺とメトロンはシグナムの注意がそれたため、バトルナイザーを掴んでバキシムの援護ができる体勢をとった。
俺たちの隠れ家の異次元は、もともと超獣たちの根城なので、バキシムかドラゴリーがいないと帰りにくくなる。だからどこかのタイミングでシグナム対バキシムからシグナム対ジェロニモン、ドラコ、テレスドンの構図を作って、その間に異次元へ帰る準備をしなければいけない。
「ほう、その年で戦おうとするのか……テスタロッサと似ているな」
「こっちにもこっちの事情があるんで」
バキシムが返した。情けないことだが、俺とメトロンが戦力外なんだ。球は置いてきたし。
「……引くに引けない事情があるのだな。私は烈火の将、シグナム。少年、名前は」
「……バキシム。仲間内じゃあ一角超獣ってので通ってる。よろしく」
シグナムはバキシムの覚悟を汲んでか名乗ってくれた。俺たちがいる前で名を明かすことは不利になるし、この隙間に入ってきたときに不意打ちすれば戦わなくて済んだはずだ。正々堂々と勝負を挑んでくることから、シグナムなりのルールみたいなのがあるのだろうか。きっと根はいい人なんだろうな。
「ごめん任せたよ、バキシム」
バキシムはコクリとうなずくと、超獣モードになって両手を合わせて火炎放射を放った。シグナムは少年が怪物になったのを見て一瞬だけ驚いた。しかし戦い慣れているのか、あの戦闘服をまとうとバリアを張って火炎攻撃を防いでしまう。
「ジェロニモン、頼んだ」
俺はその隙にジェロニモンを召喚。毒の羽や無重力光線を使って時間稼ぎを狙う。シグナムが飛んでも、バキシムが頭の角を飛ばしたり、ジェロニモンがフェザーショットを撃ったりして、防御に専念させる。
その間にもメトロンがドラゴリーを召喚。全力で異次元の扉を作った。
「ヒロシ、完成した」
「OK、撤退!」
俺の合図を受けて、怪獣も超獣も赤い世界目指してダッシュする。
「させるか、レヴァンティン」
ジェロニモンを召喚したことから、俺がリーダーだと判断したのだろう。シグナムは剣を変形させると、それがムチのようになって俺に襲い掛かった。俺は戦場にいたことはあるが直接狙われたのは初めてだ。いきなりの事で頭が真っ白になる。
「少年」
メトロンが俺を体当たりで異次元に弾くと、そのままメトロンが頭から腹にかけてムチで叩かれる。運よくゲートの前に吹き飛ばしたが、メトロンは立ち上がれない。俺はテレスドンを召喚してメトロンを担ぎ上げた。
「ジェロニモン、無重力光線」
ジェロニモンの無重力光線でごみやほこりを舞い上げて、シグナムの視界を塞ぎ、剣先を狂わせる。その隙に異次元へ飛び込んだ。
こうして俺たちは何とかやり過ごし、メトロンを怪獣たちの怪力で担ぎ上げると異次元へと帰還。ケーキバイキングで楽しんでいる奴らに向かって叫んだ。
「みんな! メトロンがやられた。手当てを頼む」
ケーキを食べてた宇宙人も、ショートケーキのイチゴを取り合っていた怪獣たちも一瞬に集まって、メトロンの看護をする。メトロン星人はムチで叩かれたが元々が剣だったこともあり、切断されたような傷ができていた。
俺はウルトラマンマックスに登場したメトロン星人を思い出した。ソイツはかつてウルトラマンセブンとの戦闘中、アイスラッガーで切られたものの、着ぐるみの補修の要領で手当てをしたところ一命をとりとめていた。俺は補修作業に使う道具と医療具を持ってきて手当てをする。消毒してから着ぐるみを直せそうなGボンドで切られた場所をくっつけて、針で縫い合わせ、痛み止めを塗った。
処置が良かったのかは分からないが、メトロン星人は助かって寝たまま話せるくらいには元気だ。
「これからどうしますか?」
メフィラス星人が聞いてくる。シグナムやヴィータ達の目的が分からないし、俺の想像が及ばないほど深刻な状況にあるのかも分からない。
だけど、仲間のゾイガーやバキシムを攻撃した。個人的に時空管理局は嫌いだが、俺のために戦ってくれたクロノやなのはには感謝してるし、フェイトは友達だ。なによりアイツらはメトロン星人という、俺の大切な仲間を傷つけた。……戦う理由は十分だろう。
俺は怪獣たちを見渡して、大きく息を吸った。
「親愛なる宇宙人、怪獣、超獣たちへ告ぐ。これより俺たちはシグナム、ヴィータ、ザフィーラ、シャマル。以上の四名を敵と定めて、近々大規模な戦闘を仕掛けたいと思う。過去にゾイガーが倒されているように命の保証はできないし、敵は強い。それでも協力してもいいと言うのなら残って欲しい」
瞳の色も、形も違う。そもそも目がない怪獣もいる。それでもコイツらは俺の顔をとらえて話を聞いてくれた。この場から離れようとする怪獣は一人もいなかった。全員同じ気持ちなのだろう。
「ありがとう。幸い、彼女達の拠点はこの海鳴市周辺の街にあるということまで分かった。引き続き、運送の仕事で敵の拠点を探しながら作戦を立てる。事業は縮小するが、その分探し回ってもらえるとありがたい。あと仕事の体制は二人一組で行うように。班別けは君たちの意見を尊重するが、こちらで行う」
襲われる危険があるにもかかわらず、仕事をしてくれるなんて……とんでもないブラック企業だと自分でも思うし情けない。だけど、あの四人に勝つためには必要なこと。怪獣達に魔力があって、シグナム達の目的が魔力ならば俺の怪獣たちは狙われ続けることになる。
「なお、四名と遭遇した際には交戦せず、速やかに撤退するように。むろん、こちらでも全力で協力する。以上」
話が終わると、怪獣達は理解したと言わんばかりに鳴き声を上げ、特徴的な腕を振り回した。準備に取り掛かる怪獣たちを見て、俺は切り札を考えるために異次元の資料室へと向かう。
何より相手は女性や子供だけど、騎士道精神あふれる人たち。対して俺たちは悪の宇宙人や怪獣軍団。正義対悪。だからこそ負けられないし、ゾイガーが倒されている以上は卑怯だ。とかは禁句。どんな手段を使っても勝たなければ意味がない。
「神にでも頼るか」
俺は怪獣図鑑を取り出して、とあるページに付箋を付けた。俺たちの日常を守るために。
次回は管理局と守護騎士の視点を書きます。戦闘はその次です。