第97管理外世界の赤い球   作:破壊光線

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 なんか、投稿しないといけない気がした。(原作より)


それぞれの現状

 何の変哲もない民家にシグナムがいた。彼女はバキシムという怪物に戦闘を仕掛けたが、仲間の少年と黒服の男性に妨害され、逃げられてしまった。

 10月も後半に入り、急に寒くなった。北風が吹いて、寒さからシグナムがブルッと震える。戦果もなく帰宅したシグナムは扉に手をかけ、ドアノブを回して扉を開くと家の中に入っていった。

 

 シグナムがドアを閉めると同時に室内からは、お帰り~。と優しい女の子の声がする。どうやらこの家がシグナムの拠点のようだ。

 

「主はやて、ただいま戻りました」

 

 車椅子を器用に動かして出迎えてくれた少女、はやてにシグナムがお辞儀をする。シグナムは守護騎士と呼ばれるからには仕える主がいる。この車椅子の少女、はやてがシグナムの主だった。

 はやてはブラウニーのような茶色いショートヘアの少女。年齢は高町なのはやフェイトと同じくらいで、戦いとは無縁のとても優しそうな子供だ。騎士であるシグナムが使えるような人物とは思えない。

 

「シグナムが戻って来たし、ほんなら私とシャマルは夕飯の買い物に行こか」

 

 優しい関西弁混じりの口調が特徴的な小さな主は、守護騎士シャマルと一緒に出掛けて行く。

 シグナムはリビングのソファーに腰掛けると、腕を組んで目を瞑る。正面にテレビがあるが、電源は入っていない。これがシグナムの最もくつろげる体勢のようだ。足元には青色のオオカミ、ザフィーラがうずくまる。ヴィータの姿が見えないことから、魔力収集にでも出かけているのだろう。

 

「今日、気になったことがあってな、共有したい。みんな、聞こえたら返事をしてくれ」

「シャマルです。聞こえます」

「ヴィータだ、出来るだけ早くしてくれ」

「……ザフィーラ、聞こえる」

 

 目を閉じたまま、シグナムが念話を送る。相手はもちろん、他の守護騎士たち。全員に伝わっていることが分かると、シグナムがさらに念話を送る。

 

「以前、この星で交戦した怪物とは別の怪物と遭遇した。名前はバキシム。初めは少年の姿だったが、正体は怪物だった。もちろん、魔力もある。それも下手な原生生物も上だ」

「この前にアタシとシャマルが倒した奴とおんなじだな」

「ヴィータ、そうだ。気になったことは別にある。バキシムは人間の男の子と男性と一緒に歩いていた。さらに少年がまた別の怪物を召喚した。それも二体。男性と少年が一体ずつ」

 

 静かに寝そべっていたザフィーラの耳が動く。

 

「シグナム、俺が守護獣なのと同じように、そのバキシムは少年か男性の使い魔という訳ではないのか?」

「分からん。バキシムが男性の使い魔であれば筋は通る。しかし、魔力反応がない少年が別の怪物を召喚したんだ。シャマルは後方支援担当として心当たりはないか?」

「……正直、私には分からないわ。この前のアリサちゃんとティグリスっていう怪物が、主と使い魔の関係だったと考えてみるね。アリサちゃんには魔力があるからティグリスを使い魔にすることは可能だと思うわ。でも、その魔力の無い少年が怪物を使い魔にできないと思うのだけど」

 

 念話の向こうで、うーんと唸るシャマル。何ボーっとしてるんや? と、はやてに言われている。

 考え込むシャマルとは別に、ヴィータが愚痴った。

 

「それに空を飛んだあの怪物も、アリサの召喚したティグリスも、はやてが言うには地球には存在しないからなー。どうなってんだよこの星。あ! 管理局が怪物を操る手段を見つけたとか?」

「それはないだろう。この星は管理外世界だったはずだ。管理局が怪物を使役し、人間に変身できたとしても、魔法を知らない世界で野放しにするとは思えん。俺は怪物たちを操る勢力があると思う」

 

 ヴィータのひらめきもザフィーラに否定される。時空管理局は管理局と付くだけあって、世界平和を掲げている。悪者と戦うために戦力を保持することはあるが、それを野放しにしておくはずがない。正義のためとはいえ、怪獣を野放しにしたら管理などと名乗れなくなってしまう。

 

「バキシムはその新勢力だとしたら……アリサちゃんとティグリスの関係はどうなっているの? やっぱり使い魔かなあ」

 

 シャマルは管理局の関係者であるフェイトが、アリサを助けたことから、アリサたちは管理局の関係者だと予想する。そこからアリサは管理局の支援もあってティグリスを使い魔にできたと考えた。

 

「……あの怪物が管理局のものであろうと、少年を筆頭とした別の勢力であろうとも、私たちのやることは変わらない。魔力を収集し、『闇の書』を完成させること」

「もちろんだ。はやての足は原因不明で、内臓にも悪い影響が出てきてるっていうし。『闇の書』を完成させれば、はやての病気と足を治せるんだろ。そしたらみんなで仲良く暮らすんだ」

 

 現段階で考えられるところまで考えられた。シグナムの後にヴィータが続く。敵がどれだけ増えようとも守護騎士たちがやることは変わらない。主であるはやてを守ること。

 

「そのためには、あの怪物たちから魔力を収集するのが一番効率いい。怪物たち、管理局、敵は多いが一対一なら俺たちの方が上だ」

「それに複数の使い魔を使役することは主の負担にもなるはず。だから多くて一人当たり三体、四体が限度かな」

 

 ザフィーラが敵の戦闘力を考え、シャマルは敵の勢力を予想する。守護騎士たちは自分たちの常識の範囲内で結論を出し、勝機はあると確信した。

 

「どうする、シグナム。主ははやてだけど今回のリーダーはシグナムだ」

 

 ヴィータから判断をゆだねられる。今回の魔力収集はシグナム達が独自に行っているもの、だからリーダーは守護騎士たちの将であるシグナムだ。

 

「今後は怪物から魔力を収集する方針で行く。我らが主のために、戦うぞ」

 

 応。シグナムの指針に三人が承諾する。守護騎士たちは浩の怪獣達と戦うことを改めて決める。主の足を治すために。

 シグナムが決意を固めて鍛錬を始めるために立ち上がった。その時にピーンポーン。と気の抜けるチャイムが鳴った。

 

 

 

 シグナムが玄関を開けると、黒いスーツを身にまとった男性が小包を抱えて立っている。

 

「宅配便です」

 

 運送業者とは思えない格好と丁寧かつ渋い口調でお辞儀をする。シグナムはそのギャップに驚いたが、印鑑を手に取った。

 

「ありがとう。誰が頼んだか教えてくれないか」

「分かりました。八神はやて様のご注文になります。本だと書いてありますねえ、八神はやて様は読書がお好きなのですか」

「ああ、そうだ。確かにはやてのだな。……どこに印鑑を押せばいい」

 

 こちらです。運送業者の男性が伝票を差し出した。シグナムが印鑑を押すと、ふと男性の胸ポケットにある名札が視界に入る。名札には『魔導 素羅意』と書いてあった。

 

「すまない、変なことを聞くが……名前は何というのか? その、珍しくて」

「ああ、『まどう すらい』と申します。みな様から聞かれますので、お気になさらないでください。まあ、気軽に『魔導のスライ』とでもお呼びください」

「『魔導のスライ』か覚えた……もう一度会うかは分からないが」

「ハハハ、おっしゃる通りです。でもまあ、人生分からないものです。出会いがあれば別れもある。その出会いが再開ということもあるでしょう」

「一理あるな。心にとどめておこう」

「はい、今後ともごひいきに」

 

 シグナムはスライと名乗る運送業者にお礼を言ってドアを閉めた。それからシグナムははやての部屋に小包を置く。

 

「スライには魔力があった。それもかなり多い。再開と言っていたが……見通されているのか」

 

 ふとシグナムはスライの事を思い出す。まるで近いうちに再び会うようなセリフ。怪物を操る謎の勢力と何故か重なって、不安を感じたが、気のせいだろうと首を振る。

 玄関を挟んだ先ではスライが邪悪な笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 浩たちが戦闘準備に入った時、管理局内ではシグナム達の情報整理が行われていた。

 なのは、アリサ、すずかの三人も激しい運動をしても大丈夫なくらいには回復している。フェイトも戦ったが、なのはほどのダメージは受けてなく、元気だ。彼女たち四人はシグナム達と交戦した経験から会議に呼ばれていた。

 

「みんな、来てくれたか。まずは元気になってよかったよ。早速で悪いけど、座ってくれないか」

 

 クロノに言われるがまま、なのは達は近くの空いている席にまとまって座った。会議のメンバーがそろったのを確認すると、クロノがモニターを使って説明を開始する。

 

「まず初めに君たちの魔力を奪ったあの本の説明をする。あれは闇の書。使用者を主とし、魔法や魔力でページを埋めて、全てのページが埋まると一つのデバイスとして完成する。目的は各地の魔法を収集し記録するためのデバイスだ」

 

 クロノの説明が一段落すると、なのはが手を挙げる。

 

「えっと、質問です。あのヴィータちゃんやシグナムさんは何者なんですか?」

 

 クロノは相槌を打つ。

 

「あのシグナム、ヴィータ、ザフィーラの三人は守護騎士システムと言って、闇の書が完成していないときの魔法や魔力の収集、および主の防衛を担う、プログラムみたいなものだ」

「それじゃあ、シグナムは人間じゃない。私と同じ……」

「違うわ。フェイトさんは生まれが特殊なだけでちゃんとした人間よ」

「リンディの言う通りよ」

 

 フェイトの自己嫌悪をリンディが否定する。

 さらにもう一人、リンディを補足した人物がいた。その人は女性で黒いローブを身にまとい、手には古い本を数冊持っている。彼女の隣には猫耳の女性がいた

 

「母さん、リニス!」

 

 フェイトの母、プレシア・テスタロッサだった。

 プレシアは不死の病を患わっていたが、メトロン星人とメフィラス星人の発達した科学と『赤い球』の力によって病気を食い止めてもらった。その後は暴走した浩によって、住居だった『時の庭園』を追い出され、フェイトやフェイトの使い魔のアルフ、プレシアの使い魔のリニス、娘のアリシアともども管理局にお世話になっている。かつて、フェイトを憎んでいたが今回の事件がきっかけとなり、プレシアがフェイトに謝罪。フェイトもそれを許し、不仲は解消された。

 

 それからはリニスと一緒に親バカが発動。表立ってフェイトとアリシアにデレデレするリニスとは対照的に、裏で娘たちの成長にニヤケている。プレシアはバレていないと思っているが、これは有名な話である。ちなみに裁判では、娘との仲を引き裂かれてたまるものですか。とクロノと一緒に無双して無罪を勝ち取った一人でもある。

 

 そんなプレシアだが、実力は暴君怪獣タイラントと渡り合った魔導士で、アリシアのクローンとしてフェイトを創ってしまうほどの技術者だ。その実力と知識を買われて『闇の書』の会議に呼ばれていた。

 

「……私が言えたことではないのだけれど、フェイト。貴方は私がアリシアの代わりとして生み出した。でもね、貴方はフェイトとして育った。たとえ貴方がクローンだとしても、フェイトであってアリシアではない。フェイトという人はこの世界に一人しかいないの。自信をもって生きてください」

 

 母親のプレシアに言われてフェイトは微笑んだ。

 それにね。プレシアはフェイトの頭を優しくなでながら言った。

 

「シグナムやヴィータはどちらかというと、ヒロシが作り出したゾイガーやスコーピスの方が近いと言えるわ。

 あの怪獣たちは『赤い球』というデバイスがヒロシの願望によって現実化したもの。その役割は主を守ること。予め明確な役割を持って生み出され、その役割を遂行する。ね、似ているでしょう」

 

 

 メフィラス星人は『赤い球』に願って創られた怪獣たちは目的がある。と言っていた。実際にゾイガーやスコーピスは時空管理局から浩たちを守るため、地球を滅ぼすために生み出されている。シグナムたち守護騎士も、ゾイガー、スコーピス軍団も、主を守り、障害を排除するために創られたという点では同じだった。

 プレシアは、ふう。と一息つくと、クロノを呼んだ。

 

「三つの情報を持ってきたわ」

 

 一同がプレシアに注目する。

 

「一つ目は、ヒロシたちはこの街を拠点として生活している。この前もメトロン星人が翠屋でシュークリームを買っているのがカメラに映ったわ。

 二つ目は、守護騎士がヒロシたちに攻撃を仕掛けた。理由は……魔力収集ね。三つ目、これが問題なんだけど」

「なんだ、プレシア」

「こちらです」

 

 ただならぬ気配にクロノがたずねると、リニスが封筒から手紙を取り出し机の真ん中に置いた。

 百円ショップで売っていそうな、ただの茶封筒。切手も張られ、書いてある文字は日本語。一見してただの手紙だが、内容を読んで会議に参加していたメンバー全員が息を飲む。

 

 

―――――――

 

 プレシア・テスタロッサへ

 

『時の庭園』でタイラントと戦ったことから予想しますが、時空管理局の味方になったのだと思われます。それでしたら丁度いいですし、そうでなくても関わりはあると思うので、リンディかクロノにでも伝えてください。

 

 俺たちはヴィータに襲われたなのはやフェイトを映像で観ました。防犯カメラをハッキングしたら映ってたと思ってください。管理局もヴィータの事を敵として扱っていると思います。

 俺の怪獣、ゾイガーとメトロン星人もシグナムに襲われました。つまり、ヴィータやシグナムは俺たちの敵でもあります。

 よって、近々シグナム、ヴィータ、ザフィーラ、シャマルの四人に全面戦争を仕掛けます。周囲に影響が出ないように最大限に努力するので、戦闘中は一切手出しをしないでください。

 

 鹿島浩と怪獣たち

 

PS.フェイト元気? 今度一緒に遊ぼ。

 

―――――――

 

 

 紛れもない守護騎士たちへの宣戦布告。

 時空管理局と浩たちは敵対関係にあった。『赤い球』が消滅し、『時の庭園』崩壊と共に、首謀者の浩が行方不明になり、メトロン星人の策略によって記録映像も無し。事件そのものがうやむやになって、浩たちが再び現れなければ闇に葬られていたことだろう。

 この手紙によって、浩たちが表舞台に立つことが確定。管理局から目を付けられるだろう。それでも守護騎士と戦おうとすることから、相当頭に来ていることが分かる。

 

 そして追伸の一言。戦いが始まっていないのにも関わず、勝利を確信しているかのようだ。

 手紙の内容に目を通したフェイトが顔をあげた。

 

「……もし、もしヒロシ君たちが勝ったらどうなるの?」

 

 今回の事件の発端は『闇の書』の騎士達の攻撃によるものだ。浩たちが守護騎士たちを倒してしまえば元凶が無くなることになる。もしかしたら浩たちは『闇の書』を無力化したとして管理局と手を取り合えるかもしれない。そんな期待からフェイトは訊ねた。

 しかし、クロノの答えは真逆を行くものだった。

 

「考えたくはないが……このままだと、勝った方が僕たちの敵になると思っている」

 

 管理局にとっての、かつての敵勢力と現在の敵勢力。二大勢力がぶつかろうとしていた。




 最近、メアリー・スー気味になっている気がする。
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