第97管理外世界の赤い球   作:破壊光線

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 あけましておめでとうございます。 

 サブタイトル通りの話ですけど、この話の必勝パターンって皆さまご存知ですよね?
 相手を研究した方が勝つ。


大怪獣総攻撃

 シグナムが海鳴市上空を飛行していた。もちろん、魔力を持っている生命体以外をはじく結界を張っている。

 

 懸念していた時空管理局はフェイトとなのは、すずか、アリサ。この四人よりも強い魔導士と戦っていない。彼女達よりもはるかに弱い魔導士だけだった。戦って勝てる相手だからいいものの、魔力は低く、目的とする魔力収集、その先の『闇の書』の完成には程遠い。人数も監視程度で効率は悪い。しかし、管理局の行動からシグナム達は準備中だと判断し、これを好機に別の生物から魔力収集に徹していた。

 

 その生物が浩の創りだした怪獣達だった。ヴィータとシャマルが交戦した怪獣、さらに昆虫のような怪獣を見事撃破。これらを複数収集した。さらに怪獣達は本来、地球に生息していない種類ばかりで魔力も魔導士と比べればはるかに多い。外来種を駆逐するという意味合いもかねて守護騎士たちは戦っていた。

 

 そして今日。先日逃したバキシムと名乗る怪獣。コイツの魔力を感じ取ったため、捜索していた。バキシムの持つ魔力は独特で、一度覚えてしまえば分かってしまう。さらに、バキシムはバキシムを操る少年と、その少年が操る怪獣が二体。一度の戦闘でたくさんの魔力を稼ぐチャンスでもあった。シグナムは一度バキシムとその仲間の怪獣達と交戦し、見事相手を撤退に追い込んでいる。三対一の状況で勝利を収めたことから今回も勝てると踏んでいた。

 

「シグナム、そのバキシムってヤツは本当に青とオレンジの怪物だったんだろな」

「ああ、間違いない」

 

 シグナムの隣にはヴィータがいた。守護騎士たちは時空管理局、魔力を持った怪獣達と強敵相手に戦闘を仕掛けるため、二人一組で行動する決まりができた。シャマルとザフィーラは待機中だが、二人がピンチになったらいつでも駆けつけられるようにしている。基本は二人で、一大事には全員で、戦う体制を整えていた。そして今回、ヴィータには相手が逃げた場合、阻止してもらう役割もある。

 

「あそこだ」

 

 シグナムはバキシムの居場所を捉えたのか速度を上げ、ヴィータもそれに追随する。

 二人の騎士が降り立った場所は、街中の大通り。そこは以前、なのはとフェイトがデスレムとグローザム相手に戦った場所だった。

 

 

 

 大きなビルが立ち並ぶ都会。ガラス張りのショウケースには、最新の服や高価なアクセサリーがこれでもかと言わんばかりにライトで照らされている。レストランには本日のオススメと称した看板が、食品サンプルと共に飾られていた。人々が行きかう大都市と思いきや、その場に人っ子一人いない。幅の広い道路に自動車は一台たりとも走ってなく、空は汚い茶色に赤や緑色の線が入り、自然のものとは思えない。それもそのはず、この空間はシグナム達が造り上げた結界の内部だからだ。

 

 主のための魔力収集とはいえ、シグナムは最低限の被害だけで済まそうと考えた。よって結界を張り、空間を切り離すことで現実世界に被害を及ぼさないようにしていた。この結界は魔力収集の対象、すなわち獲物が逃げないようにするためでもあるが。

 

 シグナム達が降り立つと、バキシムが待ちわびていたように立っていた。姿は少年モノではなく、超獣バキシムとしてのもの。コカカカカと独特な鳴き声を上げ、棘の付いた両腕をバシバシと叩いて二人を威嚇する。

 シグナムとヴィータは戦闘に入ると確信し、武器を手に取った。

 

「バキシム……仲間を切った、あの戦いの続きという訳か」

「シグナム、どうする。アタシは見ているだけでいいか?」

「ああ、頼む」

 

 シグナム自身、これから始まる戦いに期待しており、楽しみでニヤケてしまう。相方はそんな自分を呆れてしまったのか、ため息をつくと一歩引いて空を見上げた。

 万が一のためにヴィータを空中に待機させておきたい。相手の逃げ道を潰すためだ。相棒が飛び立ったら戦闘開始の合図。

 しかし、一向にヴィータは飛ぼうとしない。不安に思ったシグナムが視線を上空に向ける。いつもと変わらない結界の景色。その先には鉛色の霧が突如として立ち込めていた。

 

 おかしい。シグナムはこの霧に不安を感じ、眉間にしわを寄せる。

 

「シグナム、飛べねぇ!」

 

 ヴィータが叫んで、シグナムの不安が現実のものになる。

 コカカカと鳴き声を上がるバキシム。先程と全く同じトーンなのに、ジグナムたちを嘲笑っているように聞こえる。

 バキシムは両手を合わせると上空目掛けて、光弾を発射。シグナム達の視線の先、空がガラスのように割れると赤い空間が広がってモニターが映し出される。そこに映ったのは両手が巨大なハサミの宇宙人だった。

 

「フォッフォッフォ。諸君、私はとある少年の『赤い球』から生まれた宇宙人、バルタン。

 いかがかね、空を飛べない感覚は。怪獣達はいつもこんな中で戦っていると知って欲しくてね、体験会を開いたところだよ。まあ種を明かすと、君たちの結界内の重力バランスを少しいじらせてもらった。我々バルタンの科学力にとって重力操作など初歩の初歩、手品にもならないさ。

 これで君たちも我々も飛行することはできない。だが、君たちは強い。それだけじゃ物足りないだろう、だからゼットンとタイラントをそちらに送ることにする」

「待て!」

 

 シグナムが怒鳴るも、バルタンは一方的にそれだけ伝えると消えてしまう。

 さらに二か所、空が割れ、赤い異次元の中から片腕がハンマーでもう方がカマの怪獣が出現。砂塵を巻き上げて、バキシムの右隣に降りった。暴君怪獣タイラントだ。タイラントの両目は真っ赤に燃え上がり、メトロン星人を傷つけられた怒りを表している。

 左隣には、黒い身体にオレンジ色の発光体を持つ怪獣が音もなく現れる。こちらは宇宙恐竜ゼットン。タイラントと異なり無表情だが、逆に感情の無さが相手を倒すことだけを考えているように思える。

 

 バキシムと二体は話すようなそぶりを見せると、入れ替わるようにバキシムが異次元へと消えていく。タイラントは雄たけびを上げて、ゼットンは無言のままシグナム達に襲い掛かった。

 

 

 

 タイラントはシグナムと、ゼットンはヴィータと戦闘を繰り広げる。

 シグナムの斬撃はタイラントがカマで弾き、業火はベムスターの腹で吸収してしまう。距離をとっても口から爆炎放射を放ち、逃がさない。シグナムとタイラントは初めて戦うはずなのに、タイラントはシグナムの攻撃を知り尽くしているようで、全て対処してしまう。対してシグナムはタイラントの攻撃手段の多さに後手に回りつつあった。

 接近戦を仕掛ければカマとハンマーに加え、腹から冷却ガスを放たれる。炎の魔法で遠距離攻撃を仕掛ければ、怪獣の耳が光り、矢のような光線が連射された。さらに、シグナムの炎も剣を弓に変形させて撃っても、タイラントのお腹にある五角形のような器官に全て吸収されてしまった。

 遠距離攻撃が効かないと判断したシグナムはつばぜり合いに持ち込んで、ヴィータの様子をうかがう。

 

 ヴィータとゼットンの戦いもゼットンに軍配が上がっていた。

 ゼットンはヴィータの攻撃をテレポーテーションでかわし、がら空きになった背中に火球をぶつけて優位に立っている。本気を出していないのかは分からないが、一発一発は大した事はない。しかし、ヴィータの喧嘩っ早い性格に火をつけた、力に任せて大振りになるハンマーを、ゼットンが避けることは簡単だった。

 むろん、ヴィータも伊達に騎士をやっていない。時々、誘導弾を使ってゼットンの足止めを試みるが、宇宙恐竜は自身の周囲にバリアを張って防御してしまう。あまつさえ、バリアを展開したままてテレポーテーションを行うという離れ業も披露。

 

 相方も苦戦しているのを見てシグナムは他の仲間たち、ザフィーラとシャマルにSOSを送った。

 

「……シャマル、ザフィーラ。不甲斐ないが敵の罠にハマった」

 

 重力はいじられているのに、通信妨害がないことに疑問感じつつも救援を待つ。

 

「どうした、お前らしくない」

「お待たせー。相手は二匹だけ?」

 

 シャマルもザフィーラもすぐに駆けつけてくれた。緑色のバリアジャケットに身を包んだシャマルと、普段の獣モードから筋肉隆々の男性モードになったザフィーラ。これで守護騎士四人が揃い、万全の体制になる。

 心強い仲間たちに囲まれてもシグナムの心は晴れない。タイラントもゼットンもシグナム達の攻撃を熟知しているような動きを見せている。あらかじめシグナム達を倒すために育てられたといっても過言ではない。それほど完璧な動きだった。さらに以前バキシムを守るべく現れた怪獣の姿が見えていない。つまり相手は本気を出していないのだ。

 

「ありがとう。あの怪獣、タイラントと言うらしいが、私の攻撃を見切っている。シャマル、ザフィーラ、これは何かある。注意してくれ」

 

 分かった。とシグナムの忠告に相槌を返す二人。それぞれが得意なポジションに付くのを確認すると剣を鞘に収める。

 もし、ザフィーラとシャマルも研究しつくされているとしたら勝算は薄い。しかし呼んでしまったものは仕方ないし、助けを求めなければ負けてしまう可能性もあった。しかし、魔力取集を目的とするシグナム達にとって、ゼットンとタイラントの魔力はぜひとも回収しておきたいほどの量になる。シグナムは撤退という選択も考えながらタイラントに向き合った。

 タイラントは大きく雄たけびを上げると、シグナムに突進を仕掛けた。だが、これはシグナムにとっての好機。抜刀術は彼女の得意技の一つ。迫りくる暴君怪獣に怯えることなく、息を整え、敵の弱点と距離を計算し、居合の構えをとる。

 

 背後から殺気を受けてシグナムが抜刀する。シグナムが切り裂いたのは彼女の後方から迫る火球だった。後ろには赤い異次元をバックに巨大なカニのような怪獣が立っていた。レイキュバスだ。

 

 両腕にある異なる大きさのハサミを振り回し、真っ赤な目をした海獣はシグナム目掛けて火球を乱射する。むろん、見え見えの火の玉など当たってやるつもりはない。シグナムは半身になって火球を避けると、それらはタイラントに飛んでいった。タイラントに直撃し、仲間割れになれば最高だ。

 

 しかし、タイラントは突進をやめると立ち止まってレイキュバスの火球を吸収する。さらに、ハンマーのような片腕を突き出すと、先端の棘がムチのように伸びて、シグナムの左腕に巻き付いた。

 

「……やはりそうか」

 

 ここでようやく確信する。これはバルタンの罠。シグナムたち守護騎士をおびき出して、怪獣達と戦わせて総攻撃する。これほどまでに対策されているのは、今まで戦ってきた記録から練り上げられた作戦なのだろう。出なければ種類の異なる怪獣同士が連係プレーなど見せるはずも無いし、バキシムとタイラント、ゼットンが話しをするはずもない。

 タイラントに左手の自由を奪われて、正面からはレイキュバスの火球や冷気が無慈悲に襲い来る。バリアを張ってやり過ごし、わずかな視界から仲間たちの様子をうかがった。

 

 

 ザフィーラは三日月の角を持った茶色い怪獣、ゴモラ。同じく三日月の角を持った赤と青の混ざった怪獣、ラゴラスエヴォに挟み撃ちに会っていた。ゴモラが力でザフィーラと張り合い、隙をついてラゴラスエヴォが光線を放って攻撃する。ときどき、ゴモラが地底に潜って奇襲を仕掛けて翻弄していた。

 ゴモラと取っ組み合いをしている時に、背後からラゴラスエヴォの光線を浴び、正面からはゴモラの超振動波を受ける。頑丈が取柄のザフィーラだから戦闘不能に陥っていないが、身体は傷が増えている。

 

 後方支援担当のシャマルの相手は全身棘だらけの怪獣ギマイラと、背中に結晶が生えた怪獣ゴルゴレム。

 ギマイラが霧や長い舌で攻め立てて、シャマルが反撃に出ようとするとゴルゴレムが何処からともなく現れて攻撃する。これもまた完成された連係プレーだった。ゴルゴレムは背中の結晶を発光させて姿を消す。ギマイラが鳴くとすぐに表れることから、ギマイラが司令塔なのが分かる。分かったところでどうすることもできないが。

 

 ヴィータの相手はゼットンと金色のロボット、キングジョーだった。ゼットンはテレポーテーションで、キングジョーは四つに分離してヴィータの攻撃を避け続けている。四方八方から攻撃をするさまは誰がどう見ても、ヴィータが不利だと分かる。

 ピロロロロという音とグワッシ、グワッシという機械音だけを鳴らして、無表情で襲い掛かるゼットンとキングジョー。攻撃が当たらない、神出鬼没、そして強い。この三つの要素でヴィータを攻め立てている。現状ヴィータは怒りで立ち向かっているが、表情の読めない相手と戦うプレッシャーは大きいだろう。心が折れないかが心配だった。

 

 三人の仲間がそれぞれ苦戦しているから、シグナム一人の力でこの状況をどうにかしないといけない。バリアでタイラントとレイキュバスの冷却ガスを防いでいるが、この後どうするか。

 

「……まて、冷却ガス? バリアを壊すなら火球や火炎放射、それよりもあの鎌や、大きなハサミで切り裂いた方がよっぽど早い。私の左手が塞がっている今なら反撃を食らう心配もないはずだ」

 

 なのに何故。タイラントもレイキュバスもガス状の攻撃でシグナムを攻めていた。バリアを壊すというよりも、シグナムの視界を潰すと言った方がしっくりくる。シグナムの予想が当たったように二つのガスが強くなり、シグナムのバリアをすっぽりと覆ってしまった。ビルも、仲間たちも、目の前の怪獣達も見えない。シグナムは猛吹雪に閉じ込められたような、一人だけ違う真っ白な世界の中心にいた。

 

 あの怪獣たちが視界を奪うだけで終わるはずがない。

 

 シグナムは白い世界の中で焦り始めていた。轟々と音立ててはバリアに弾かれていく冷却ガス。時々、爆発や光が聞こえてくる。何が起こっているのか分からない。仲間たちが逆転したのか、それとも……。

 

「ヴィータ、ザフィーラ、シャマル! 大丈夫か、返事をしろ! 返事をしてくれ」

 

 必死に仲間たちに呼びかけるが返事はない。確認しろよと言わんばかりに、左手からムチが解けて視界が晴れる。

 

 その光景を見て、シグナムは崩れ落ちた。

 

 結界の中の街は廃墟に変わり、ビルの瓦礫を怪獣たちが踏み潰している。きれいなアクセサリーもはやりの服も破壊され、光るものと言えば瓦礫の間からチロチロ燃える炎と、怪獣達の瞳や発光器官だった。破壊の限りを尽くした怪獣たちは、何かを取り囲むようにぐるりと円を描いている。

 

 フラフラと立ち上がるシグナムの後ろで、タイラントが吠えた。

 シグナムに背を向けていたモノも、横を向いていたモノも一斉に振り返る。レイキュバス、ゴモラ、ラゴラスエヴォ、ゴルゴレム、ギマイラ。今まで戦ってきた怪獣たちはもちろん、その奥に見たことも無い怪獣たちが立ち並んでいた。

 前方にいた怪獣達が左右に分かれて道をつくると、ゼットンとキングジョー、バキシム。そしてバルタン星人がシグナムを見定める。

 

「シグナム、勝敗は決した。君たちの、いや君の負けだ」

 

 静まり返る廃墟にバルタンの言葉が響いた。

 

「どういう、ことだ。私はまだ戦えるが」

 

 バルタンが何を言っているのかが分からない。シグナムは苦戦こそはしているが、五体満足だし魔力も切り札の弾丸も残っている。さすがにこの数を相手にするのは無理だが、逃げることなら何とか出来るだろう。ここで敗走しても再戦して勝てばいい。その意味でもシグナムは負けていない。

 

 バルタンはフォッフォッフォと笑い声をあげると、バキシム達が瓦礫の山から何かを引っ張り上げた。

 それらは人型のものが二つ、獣の形が一つあった。一つは小さくて赤く、一つは黄緑色で、一つは青色。ぼろ雑巾のようなそれらを怪獣たちが雑に投げ捨てて、シグナムの目の前に転がした。

 シグナムは三つの物体に駆け寄ると目を見開いて泣き崩れる。

 

「……ヴィータ? シャマル、ザフィーラ! 返事をしろ、何か言ってくれ」

 

 苦しそうに呼吸だけするヴィータ。

 今の主、八神はやてと暮らすようになって明るくなり、昼はゲートボールで遊び、夜ははやてにアイスをねだって怒られる。笑いたいときに笑って、怒りたいときに怒る。純粋な子供のようなヴィータ。だが、戦いになればシグナムに引けを取らない立派な戦士。シグナムはそんなヴィータが好きだった。

 

 ザフィーラがうめき声を上げる。

 守護獣としてオオカミのような姿のザフィーラ。八神家では唯一の男性ゆえに、肩身の狭い思いをしていないかと心配していた。しかし、ザフィーラなりに、はやてと昼寝をしたり傍に寄り添ったりと主のために尽くしてくれた。寡黙ゆえに何も言わないが、その忠誠心はシグナムも高く買い、尊敬していた。

 

 闇の書はシャマルが抱きかかえていた。

 魔力収集の元凶はこの本から始まり、はやてと合わせてくれたのもこの本があったからだ。魔力収集の家事や、シグナム達の弾薬の生成はシャマルがやってくれた。私は戦闘できないから。と苦笑いを浮かべ、影で弾薬を作ってサポートしてくれたシャマル。シグナムが魔力収集に行っている間、はやてに寂しい思いをさせないでいてくれたのは彼女のおかげだ。戦闘が苦手と言っておきながらも、今回の戦いに駆けつけてくれた。

 

 シグナムの大切な仲間たち。自分を将だと認めてくれて付いてきてくれた、かけがえのない戦友。怪獣達が円を描いていたことからヴィータ達を一ヶ所に集めて、取り囲み総攻撃を仕掛けたのだろう。吹雪の中で聞こえた爆発音や光は、仲間たちが浴びた怪獣達の攻撃によるものだった。

 シグナムがバリアで吹雪をやり過ごせると甘えていたのが原因で招いた結果。左手の不自由さを理由に怠けていたから起きた悲劇。主のはやての足を治し、みんなで仲良く過ごすことを願って始めた魔力収集。なのにシグナムは自分の体たらくで、主の足を治すどころか大切な仲間たちを傷つけてしまった。

 

 歯を食いしばり、血が出るほどに手を握ると、シグナムは立ち上がる。

 

「例えこの命尽きようと、こんな私を信じて付いてきてくれたお前たちを死なせるわけにはいかない。かならず、主の元に送り届けてやるからな」

 

 自分の不甲斐なさと敵に対する怒りで、怪獣達を睨みつける。そんなシグナムを嘲笑うかのようにバルタンはハサミを上下に動かした。

 

「世界も宇宙も無限に存在する。魔力収集のために他の星や別の世界に行ったことだろう。その先々で破壊や殺戮を繰り返してきたはずだ。

 だからこそ、君ら騎士たちは、自分が最も優れた生き物として高を括り、他の生物を見下してきた。転移した先の原生生物を見てカモだと、傲慢な錯覚を覚えたはずだ。その星の原生生物が君たちに魔力を渡してくれる。ようこそ、この星にと。

 故に、我々もそれにのっとり異世界の住人として、この言葉を君たちに授けよう」

 

 バルタン星人。シグナムの作った結界の中で、重力を操り侵略に成功した宇宙人。ウルトラ戦士と幾度となく戦った強敵。浩が生み出したのは初代バルタン星人ではない、数あるバルタンの中でも最強と言われる個体、ダークバルタン。

 バルタンは誰もが知っているあの動作をし、フォッフォッフォと笑った。

 

「ようこそ、地球へ」

 

 再び怪獣軍団が動き出す。シグナムは転移の準備を整えると、仲間たちが転移する時間を稼ぐために剣をとる。一人でこの数を相手にできるわけがない。それでも戦おうとするのは彼女が騎士であり、守護騎士たちのリーダーだからだろう。

 

 すまない、主はやて。

 

 シグナムは心の中で主に謝ると相棒、レヴァンティンを構える。

 

「ヴォルケンリッター、烈火の将。シグナム、参る」

 

 シグナムの名乗りに答えたのは、怪獣達の咆哮だった。




 ヴォルケンリッターが負けたことにより、各勢力の力関係が同じになりました。

 ちなみに、設定上のシグナム達の強さですが、同じ条件で浩の怪獣とタイマン張れば勝てます。だから途中で二対一になりました。

 今年もよろしくお願いします。
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