時空管理局から別行動をとったフェイト達は浩の家、鹿島家を活動拠点としていた。管理局の捜査が入ってもいいようにゴルゴレムの能力や、アリサの魔法で瞬時に転送できるようになっている。フェイトは元から住んでいたグローザムに案内されて、鹿島家のリビングや、キッチンなどを見て回った。事務所として使われていただけあって、ガスも水道も電気も使える。拠点としては合格点だろう。
しかし、事務所として使われていた故に、リビングにはパソコンや地図などが散らかっている。これらを一旦片付けて、使える物を判別してフェイトと怪獣達が座るだけのスペースを作った。なんとなく住めるように整えると、フェイト達は買い出しで、必要な物を取り揃えた。その後はグローザムが料理をしたり、怪獣達と戯れたりしてその日を過ごした。
「ふぁ~」
朝日を浴びてフェイトが目を覚ました。引っ越しをして、買い物を終え、怪獣達と遊んでいるうちに眠ってしまった。だからベットの上ではなく、床の上。リニス、アルフ、アリサも怪獣達と一緒に雑魚寝をした。風邪をひかないように掛布団にくるまっている。そんなフェイトの膝の上にはタイラントの尻尾が乗っていた。
ベムスターの腹をむき出しにして爆睡する合体怪獣、ハンザギランの棘とシーゴラスの頭の後ろにある角がうまく床を捕らえてバランスを保って寝相はいい。ただ、だらりと垂れ下がった手足が死んでいるようにしか思えないが。
フェイトはタイラントを起こさないように布団から這い出すと、いまだに寝ているみんなを見渡した。四体の怪獣と三人の女の子はいまだに夢の中。人類と戦ってきた怪獣と一緒に寝るなど考えられない現象がフェイトの目の前に広がっていた。
浩と一緒に『時の庭園』で生活していた時には怪獣軍団が製作途中だったこともあり、今一緒に生活している四体とは関わっていなかったので新鮮さを感じている。
ゴルゴレムはアリサと仲良くなり、並んで寝ている。ティグリスと一緒に生活していたアリサ。それ以前に犬と囲まれて過ごしていた彼女は撫でるのが上手く、ゴルゴレムの気持ちいいポイントを撫でまわした。ゴルゴレムは肩から生える角の付け根に神経が通っているのか分からないが、ここが一番気持ちよく感じるようで、アリサに撫でまわされながら気持ちよさそうに寝落ちした。
そんなアリサもゴルゴレムの背中の結晶の光を見ているうちに眠くなって寝落ちしている。とはいえ、見るからに堅そうなでトゲトゲしたゴルゴレムにもたれ掛かりたくなかったのか、身体を預けていない。
ラゴラスエヴォはリニスとアルフから人気だった。元は冷凍怪獣だったラゴラスが溶岩怪獣グランゴンを食べて進化したのがラゴラスエヴォ。
炎と氷という対極の属性を操るこの怪獣。体温を調節できるのか、溶岩怪獣の熱を手に入れたからか、コイツの周りが温かい。今が11月中旬というそこそこ寒い時期とあり、冷気から逃げるようにアルフとリニスが暖を求めたのだ。おかげで部屋の中は冬とは思えないほど温かい。
リニスはラゴラスエヴォの横で猫らしく丸くなっているし、アルフもその隣で爆睡している。ラゴラスエヴォもまんざらでもなさそうで、二人の使い魔を受け入れた。
言うまでもなく、嫌われたのはグローザム。一人だけ別室で寝かされた。
フェイトは三匹と三体を起こさないように静かに歩くと、壁に寄り掛かっているキングジョーに近づいた。胸のライトや目には光が無く、起動していないのが分かる。
この宇宙ロボットは、地球で活動するため電気をエネルギーとしている。浩が改造したのか、背中のタンクの横の穴からプラグを取り出して、コンセントに突き刺し充電できるようになっている。地球での生活にうまく適応させたんだろうなと感心した。
そんなキングジョーを起動させるべく、プラグを抜くと充電が75パーセントと微妙なライン。フェイトはそのままプラグを持って、魔法を使う。
フェイトは雷魔法を得意とするため、キングジョーの充電ができると予想。フェイトの感が当たったのか、浩の改良が良かったのか、キングジョーの充電はすぐに満タンになって、グワッシグワッシと腕を上下に振り回して動き出した。これがあってか、キングジョーはロボットのくせにフェイトに懐いている。まさに恋するキングジョーと言ったところか。
テレビでは基本的に戦闘しかしなかった四体だが、グローザムが言うには浩が地球で人間と同じように生活できるように調整した結果だそうだ。地球で人間と一緒に生活する怪獣を怪獣と呼んでいいのかは疑問に思うが。
フェイトは食パンをかじりながらテレビの電源を付けた。鹿島家のハードディスクに撮り溜めてあった『ウルトラゾーン』を見て、そんなことどうでもよくなった。
「ぁあ、フェイト。おはようございます、寝過ごしてしまいました」
リニスが起きて大きなあくびをすると、身支度を整える。次にアリサとゴルゴレム、タイラント、ラゴラスエヴォと次々に起きだした。朝食が出来上がることにはグローサムも起きだして、ゴルゴレムが生肉を丸かじり、怪獣達が昨日の夕飯の残りを平らげる。
朝食をとった後、フェイト達に問題が発生した。
「フェイト、守護騎士と戦うとは言ったものの、生活するためにもお金は必要です。しばらくはここで生活するとして、資金をどのように調達しましょうか」
メモを取りながらリニスは頭を抱えている。書いてあるのは食材とその値段。昨日買い足した雑貨なども含まれている。短期決着を掲げているとはいえ、フェイト達の食費にプラスして怪獣達の食費が加わる。以前浩たちが頭を悩ませていた問題がここで再浮上した。
「『時の庭園』が崩壊してから俺たちは運送業をやってた。その金が残っているから問題ねえ。けど収入が無い分、長期になるだけ不利には変わらないがな」
グローザムが資金提供を進言してくれたが限度はある。それに戦いが長引けば長引くほど『闇の書』の犠牲者は増えるだろう。やはり、早期決着を図りたい。
「グローザム、感謝します。守護騎士たちの捜索は私に任せてください」
「分かった。俺たちが奴らをぶっ飛ばせばいいんだろう? 任せておけ」
リニスがバックアップに回り、グローザム達とフェイトが戦闘を担当する。フェイトの知らない問題を大人たちが片づけてくれて、ようやく戦いに集中できる環境が整った。デバイスを手入れする機材が無いことが不安だが、それ以外は何とかなるだろう。
限られたメンバーの中、役割が決まりつつある。そんな中、アリサがリニスの服を引っ張った。
「リニスさん、私にも索敵魔法っていうのを教えて欲しいんだけど」
何も出来ないのが嫌だったのか、アリサはリニスに頼んだ。守護騎士との戦いでもザフィーラ相手に落とされているアリサ。一対一だとどうしても分が悪く、本人もそれがネックだったのか、サポートでも役に立ちたいと考えていた。
もちろん、リニスは笑顔で返事をする。
「分かりました。時間が無いので、実践しながらになりますが、一緒に頑張りましょうね」
「わぁ、ありがとうございます。ゴルゴレム、あんたも一緒でいい?」
アリサの提案にゴルゴレムが頷いて、リニス、アリサ、ゴルゴレムのサポートチームが誕生する。
「それでは早速、実践してみましょう」
リニスとアリサが索敵魔法を使い始めた。テーブルライトのような光が二人の手の中に現われる。守護騎士の捜索を二人に任せてフェイト達が準備に入ろうとすると、リビングの上でアルフがいまだに寝ている。
「起こすか、ラゴラスエヴォ、ちょっと来てくれ」
グローザムが悪いことを思いついたのか、ラゴラスエヴォを呼んで、二人で寝ているアルフを囲んだ。
大の字になって寝ているアルフの右側にグローザム、左側にラゴラスエヴォが座る。何が起きるのかとフェイトと、残りの怪獣達が注目する。グローサムとラゴラスエヴォの周りが急に冷え、アルフが唸りだした。そして。
「ラゴラスエヴォ、同時に息を吹きかけるぞ」
進化怪獣が頷き、二体同時に冷気を浴びせた。
「うぎゃあ」
怪獣達のいたずらで飛び起きたアルフにフェイトは微笑む。
「おはよ、アルフ」
主の挨拶に使い魔はくしゃみで答えた。
リニスたちが索敵中、フェイトは浩の部屋にいた。ベッドと学習机だけの部屋でポツンとたたずむフェイト。部屋の持ち主は本の中へと消えてしまい、この世界には居ない。学習机の上にはうっすらと埃をかぶったランドセルが置かれているだけだ。フェイトは学習机の引き出しの中身が気になってしまい、気づいたら開いていた。
「これは……『赤い……欠片』」
学習机の引き出しの中には本来、小学生が持っていそうな鉛筆や消しゴムのような文房具がなく、代わりにメモ帳とその上に小さな『赤い欠片』が置いてある。フェイトは『赤い欠片』を持ち上げた。
赤い宝石のような欠片はかつて、フェイトが集めていた『ジュエルシード』というロストロギアと色違いともいえる形をしている。フェイトは赤色にいいイメージを持っていない。かつて浩が創りあげたキングオブモンスの瞳も、浩を狂わせた球もすべて赤い色をしていたから。しかし、子供の手に収まるほどの宝石は何者かの目のように、フェイトを見つめていた。
フェイトは誰かに見られているような気がして周囲を見渡した。誰もいないことを確認すると、『赤い欠片』を引き出しの奥にしまってからメモ帳を開く。最初のページには汚い字でこう書いてあった。
『ゾイガー、もしくはこれを見つけた誰かへ。
この上に置いてある『赤い欠片』は俺たちの切り札。必要な時に勝手に動き出します。それまではいじらないでください。決して海に持って行かないでください。ゾイガー、スコーピス。頼んだ。
鹿島浩』
浩の書いたメモだと知り、フェイトはメモ帳のページを次々にめくっていく。内容はシグナム達の戦闘に関することがほとんどで、どの相手にはどの怪獣をぶつけるべきかが細かく書かれてあり、作戦の順番や怪獣達の役割が最後のページに付け加えられていた。
フェイトが読んで意味不明だった文章は最初の、ゾイガーもしくは見知らぬ誰かに当てた手紙のような内容だけ。とはいえ、『赤い欠片』を海に持って行かなければ問題ないだろう。それも今は引き出しの奥にしまってある。メモ帳は今後戦う守護騎士たちの情報が載っていたため、フェイトは最初のページをゾイガー用に切り取って机にしまうと、残りをポケットに突っ込んだ。
「……一緒に学校行きたかったな」
使われなくなった黒いランドセルを見つめて呟く。フェイト自身、学校という場所に通ったことはないが、浩やなのは達と一緒に勉強できればどんなに楽しかっただろうか。
「おいフェイト、浩の部屋に入って何してんだ?」
フェイトが振り返ると、浩に創られた冷凍怪人のグローサムが立っている。オタマを持った元暗黒四天王の一人のコイツが家事を担当していた。ちなみに、浩に創られてからしばらくの間は、グローサムが料理を担当していたこともある。腕前はそこそこ。
選ばれた理由だが、リニスはアリサにサーチ魔法を教えているから動けず、アルフはガサツな家事が得な方ではない。怪獣達は手が特殊で調理器具が扱えなかったり、四足歩行だったり、おまけにロボットだから食事が必要ない。要は消去法である。
「あ、なんでもないよ。ご飯できたの?」
「ああ、そうだ。ったく、なんで俺がこんなことしなきゃいけ無ねーんだ」
グローサムはブツブツ言いながらリビングへと戻る。フェイトがスマホを開いて時間を確認すると12時ちょうど。お昼の時間だ。
フェイトが追いかけた先のテーブルの上にはハンバーグ、ラーメン、お刺身と和洋中のごちそうが並んであった。料理の数から意外と楽しんでいたようだ。対照的に頭を抱えていたのリニス。
「グローサム、食事を用意していただけるのは助かりますが、これほどのごちそうを作ってしまったらお金がすぐに無くなってしまいます。もっと節約をしてください」
「え、そんなもんか? たしかに、一時期はもやしばっかり食ってたこともあったけど、まだ大丈夫だろう。こいつらも美味しそうに食ってるしな」
怪獣達は皿に食らいついて、美味しそうに料理を頬張っている。ゴルゴレムは口を伸ばしてハンバーグにかじりつき、ラゴラスエヴォも手づかみで刺身を食らっている。両手がハンマーと鎌になっているタイラントは、鎌でじゃがバターを突き刺すと大きな口に放り投げた。さらにハンマーの先端から触手を伸ばして、ラーメンどんぶりを絡み取り、そのままベムスターの腹の中に入れてしまった。
「タイラント、食器をそのまま食べるなと何度言ったら分かるんだ」
グローサムに叱られてタイラントが吠える。ラゴラスエヴォがそれを見てほくそ笑んでいた。タイラントが皿ごと食べるのは日常風景だったらしい。もちろん、フェイト達は驚いたが。
「グローサムの言う通りです。豪華な食費の上にお皿まで加わったらすぐにお金が無くなってしまいます! 今後は私が作るので皆さん、そのつもりでお願いします。アリサさんからも何か言って下さい」
「え、そうなのリニス? これくらい普通じゃない。私としては食後のデザートが欲しいところなのだけど」
アリサはハンバーグ、ラーメンのスープ、お刺身、どれも少しずつ取って順に食べている。一食につき一皿使っているため、誰よりも皿の数が多い。しかし、誰もよりも食べ方は綺麗だった。
「アリサさんは昼食を何だと思っているのですか?」
リニスに振られ、アリサはナイフとフォークを皿の上に八の字に置いた。
「フルコース?」
お金持ちは格が違った。
次回、浩編。
活動報告にて募集していた怪獣達。
ゴルゴレムとルガノーガー、ボクラグ、ブラックキング、バンピーラ、キングシルバゴン&キングゴルドラス、ゴルザ&メルバ、リガトロン、ゲオザーク、レイキュバス、ネオザルス、モンスアーガー、ゾーリム、超コッヴ、恐竜戦車、サラマンドラ、ビオランテ、MUTO
これらを出してほしいとの事です。
ゴルゴレムとレイキュバスはすでに出ています。たしかに、目立った活躍はしていませんが……。頑張って活躍させたいと思います。
ゴルザ&メルバ、キングゴルドラス&キングシルバゴンなど、コンビで要求するあたりに愛を感じました。
なんで、ゴルゴレムとレイキュバスは除くと、一体~二体を頑張って出します。