第97管理外世界の赤い球   作:破壊光線

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第97管理外世界の赤い欠片

 守護騎士たちが動き出した。その情報を管理局が得た時にはすでにフェイト達と守護騎士たちが交戦している時だった。

 場所もなのはがデスレムとグローザムの二人と初めて戦った、温泉旅館のはずれにある森。そこで昼寝をしていたゴモラを守護騎士たちが襲撃、それに反応してフェイト達が参戦する形になった。

 原作でも平和な生活を奪われたゴモラだが、ザフィーラと互角に渡り合った戦闘力を持つ。そこにフェイト達が加われば守護騎士たちを撃退することくらいはできるだろう。今まで魔力を取集されていたモノと違い、フェイト達とゴモラは守護騎士たち相手に善戦している。

 キングジョーとタッグを組んだフェイト、グローサム、ラゴラスエヴォ、リニスとゴモラ対シグナム、ザフィーラ、ヴィータ。怪獣達はこの前の戦いで守護騎士たちの戦法を把握しているため被弾していない。一方で守護騎士たちも怪獣達の戦法が分かっているのか、それぞれの攻撃に対し上手く対応していた。

 

 管理局に出撃命令が出たと同時に、守護騎士たちは撤退を開始。フェイト達も逃がすまいと手段を尽くしたが、突如霧が濃くなって、それが原因かは分からないが守護騎士たちを見失った。

 高町なのはが到着したころには守護騎士たちが完全にいなくなり、フェイト達だけが現場に取り残されていた。

 フェイトは勇ましく戦っていた時とは違い、怒られて落ち込んでいる。なのははギャップに驚きつつも優しく声をかける。

 

「フェイトちゃん……管理局に戻ろう」

「ごめん、なのは」

 

 なのはの呼びかけにフェイトはかおをあげたが、すぐにうつむいてしまう。それから何も言わなくなって、なのはとフェイトの間に沈黙が訪れた。

 

「なのは、管理局には帰れない。弱い私じゃ足でまといになるだけだから」

 

 フェイトはそれだけ呟くとまた黙ってしまう。膝を抱える少女のポケットが赤い光を放ち始めた。なのはが光を不審に思って、フェイトにたずねようと口を開いた時、メトロンから通信が入った。

 

「なのは君、悪い知らせだ。クロノ少年やユーノ少年達がアルフ君、グローサムと交戦した。悪いけどバキシム達をフェイトと戦わせることはできない。この三体とも切断攻撃で倒されているからね、フェイトとの相性は最悪だ。代わりと言ってはアレだが、ラゴラスエヴォやアルフはこちらに任せてくれ」

 

 ウルトラマンエースにおいて、バキシムもドラゴリーもエースのウルトラギロチンで止めを刺されている。ベムスターに関しては実際にフェイトと戦い敗北していた。浩の仮想敵がずっと高町なのはで、フェイトは味方だったため、切断技に強い怪獣を意識して創っていない。

 強いて言えばキングジョーとタイラントくらいだ。だがこの二体はあいにくフェイトの味方。もし戦闘になったら、なのは一人で何とかするしかない。

 

「うぐっ」

 

 メトロンとの通信に気を取られていると、フェイトが小さく唸った。両腕で胸を抱きしめ、苦しそうな表情を見せる。

 

「フェイトちゃん、どうしたの?  具合悪そうだよ」

 

 痛みが治まったのか、フェイトはふらりと立ち上がると、バルディッシュをなのはに向けた。

 

「大丈夫。なのはを守るためには、なのはより強くならなきゃいけない。だからここで、このメンバーで一度あなたに勝利する」

 

 一見、まともに聞こえるが、目的と手段が間違っている。だって、自分の守りたいものを自分で破壊すると言っているようなものだ。フェイトは正気でないのか、二つの大きな瞳は光りを失って黒く濁っている。

 

「どうしたのフェイトちゃん、おかしいよ」

「うるさい」

 

 フェイトの声にエコーがかかる。白くきれいな肌なのに、目元には黒いくまができ始めていた。フェイトのポケットはほのかに赤く光っている。

 

「出てきてキングジョー」

 

 浩が怪獣を呼び出すのと同じような言い方で、金色のロボットを召喚した。

 フェイト&キングジョー。海鳴市の海上決戦で、なのはを追い詰めた名コンビ。あの時のキングジョーはギマイラの霧の効果で機能停止に陥って自滅している。しかし、動いていた時はなのはのディバインバスターを防ぐという盾の役割を果たした。

 なのはとフェイト、二人のデバイスは新調され、守護騎士たちの持つカートリッジシステムを搭載している。火力が上がった今なら突破できる可能性もあるが、キングジョーの装甲を打ち破るには数発当てる必要があるだろう。

 

「行くよ、キングジョー」

 

 フェイトがキングジョーの分離形態を引き連れて、なのはに向かって行った。

 なのはが砲撃を撃てばキングジョーが盾となり、フェイトのフォトンランサーと一緒にキングジョーが怪光線を放つ。なのはは後手に回りつつも二人の攻撃を防いでいく。圧倒的に不利な状況だが、浩にトラウマを植え付けただけの実力はある。フェイト達の攻撃の隙をついて、ディバインバスターを放った。

 桃色の必殺技はフェイト達に直撃したのか、爆発を起こした。

 

 さて、時空管理局側のエースが高町なのはならば、浩たち怪獣軍団にもエースがいる。

 初戦からプレシア・テスタロッサという大魔導士と戦い、白星をあげた。続くプレシアとの再戦は引き分け。守護騎士たちとの戦闘もしている。事前情報があったとはいえ、シグナム相手に終始有利に戦い、その後の団体戦では戦術的に完全勝利を収めた。先程のシグナムとの戦いでは決着こそはついていないが、やはり優勢。戦績は三戦二勝一分けと負けがない。それが。

 

「タイラント」

 

 別名、暴君怪獣。

 タイラントが爆発の中から姿を現した。宇宙空間を飛んだ飛行能力を活かして、空中に佇んでいる。フェイトを守るように現れたことから、ディバインバスターを防いだのだろう。

 両腕を振り上げて威嚇し、真っ赤に染まった目から殺意をむき出して高町なのはを睨みつけた。ゴーサイン一つあれば突っ込んでくるだろう。

 

「やれ」

 

 打てば響くような雄たけびを上げてタイラントが突っ込んだ。口から炎を放ち、お腹から冷気を噴き出して遠距離攻撃をぶちまける。

 

「タイラントまで……」

 

 もちろん、なのはも一方的にやられているわけにはいかない。タイラントの攻撃を避けて、相棒のレイジングハートを振う。タイラントの右腕を拘束するとディバインバスターを放った。

 だが対策済み。タイラントはお腹の五角形を見せびらかすように突き出すと、ディバインバスターを吸収する。かつてなのはを苦しめたベムスターの腹。なのはを初めて引き分けに持ち込んだ宇宙大怪獣が再び猛威を振るう。

 残るバインドも、背中から溶解液が噴き出して溶かしてしまった。原作では描かれなかったが、液汁超獣ハンザギランのものだろう。

 

 こちらの戦法を熟知しています。機械ながらも悲鳴を上げるレイジングハート。

 

「何とかしないと」

 

 タイラントは浩が時空管理局を倒すために創りだした怪獣。切断攻撃に強い部位がある。魔法による光線攻撃を吸収する。遠距離攻撃が豊富。バインドに対しても耐性がある。圧倒的な耐久力。飛行可能。これらの条件をクリアしたから生み出された。強いのは当たり前。

 さらに生み出された時期もギマイラが倒された後という、なのはやアリサ、すずか、クロノなどの時空管理局のメンバーの戦力が出そろった時期、一通りの戦闘パターンを熟知している。

 フェイトはかつて怪獣を操った浩のように傍観に徹して、攻撃してくる素振りは見せない。いや、タイラントでなのはを倒せると踏んだのか。

 タイラントは怒り任せてバラバの鎌を振り回し、フェイトの傍ではキングジョーが控えている。

 

「これじゃあ攻撃も出来ないし」

 

 そしてもう一つ、タイラントを強者たらしめる要素があった。レッドキングから受け継いだ凶暴性。

 影で『ブチギレの暴君』の異名を持つ浩のタイラント。一度スイッチが入ったら徹底的に叩きのめそうとする凶暴性から付けられた二つ名だ。

 昔の配達業ではクレームを入れたヤンキーの集団を、擬人化した状態にもかかわらず一人で突っ込んでボコボコにしている。ヤンキーが地元で相当のワルだったから事件にはならなかったものの、あの時の暴れっぷりは警察でも手に負えないほどだ。

 体温が一度上がれば爆発してしまうほど沸点が低く、日常生活では困り者だが、戦いになれば強力な武器となる。恐怖で怖気づくことがない精神は、強敵相手にも立ち向かえることを示している。かつて、なのはとフェイトが、3メートルの巨体を持つキングオブモンスを倒せたのも、恐怖に負けなかったからだ。

 

「タイラントの攻撃をキングジョーに当てたいんだけど……効果は薄い、よね」

 

 タイラントの攻撃が弱いわけないが、防御力に定評のあるキングジョー。体制は崩せるだろうが、一発程度では機能停止に陥るはずがない。

 砲撃型のなのはに対し、タイラントは遠距離攻撃の威力は劣る。だがスピードも接近戦もタイラントの方が格上。牽制用のディバインシューターなどでは怯みもせず、バスターを撃てば先程のように吸収されてしまう。バリアを張っても、フェイトの攻撃によって簡単に破られる。

 

「バリアを張って持久戦に持ち込めば」 

 

 なのはは時間を稼いで仲間たちの助けを待つことにした。設置型のバインドをばらまいて、バリアを何重にも展開して防御を固める。

 それでもフェイト達の猛攻は止まらない。赤い光を携えて、フェイトが狂ったようにバルディッシュを振るい、なのはのバリアをズタズタに引き裂いた。こことぞとばかりにがら空きになったなのはをキングジョーの怪光線と、タイラントのアロー光線が追撃。悲鳴を上げて墜落するなのは。

 地面に落ちる前に木がクッションとなって墜落の衝撃は和らいだ。それでも隠しきれるダメージではない。タイラントは追撃をすべく、降り立ち、両腕を叩いて爆炎放射を放った。業火は木々を一瞬にして灰にして、勢いそのまま、なのはに迫る。

 

 もうだめだ。なのはも来るべき火炎を覚悟して目を閉じる。

 

 ……熱くない。おかしい。なのはの耳にはごうごうと燃え盛る炎が聞こえてくるし、小さな鼻は焦げ臭いにおいを吸い込んでくる。なのに、身体はちっとも熱くない。バリアジャケットが炎を軽減するとしても、ここまで熱くないのは不自然だ。

 

 なのはは誰かに守られているような気がして、恐る恐る目を開いた。

 

 誰が張ったのかは分からないが、青くて透明なバリアが炎を真っ二つに割っている。なのはを守る正十角形のバリア、そのの前後左右はタイラントの炎に包まれていて何も見えない。だが上空はぽっかりと空いていた。そこからフェイトは驚きで目が見開かれている。

 フェイトが驚愕するのも当然だ。だってなのはを守るバリアも、彼女の驚いた顔を映しているのだから。見開いた両目で守ってくれた人物を探す。

 ソイツは探す必要もなく、なのはの前で仁王立ちをしていた。フェイト同じ黒い背中。業火を防ぐバリアを張った人物から微かにピロロロと電子音が鳴り響く。銀色の触角を動かすと、黒と白の腕を伸ばして振り返った。

 

「ゼッ……トン、さん?」

 

 宇宙恐竜ゼットン。タイラントと同じくウルトラマンを倒した強敵で、なのはと駄菓子屋でアイスを食べた怪獣だ。

 思いもよらない助っ人に、なのはが声を失っていると、ゼットンの握りこぶしがなのはの前で止まる。なのはが手を出すと、ゼットンの拳が開いてキャラメルが落ちてきた。前にゼットンと駄菓子屋へ行った時、アイスの当たりから貰ったものだ。

 なのははキャラメルを受け取って包み紙を開いた。銀紙には汚い字で、だけど温かみを感じる文字でこう書いてあった。

 

『ありがとう』

 

 ゼットンは駄菓子屋でキャラメルをもらったお礼をしたかったのだろう。銀紙の『ありがとう』に全てが書かれていた。

 

「ゼットンさん、助けてくれたの?」

 

 ゼットンはいつも通りコクリと頷いた。なのはとゼットンを繋ぐものはあの駄菓子屋だけで、アイス食べてキャラメルをあげた事くらいしか思い出がない。だけどゼットンにとって駄菓子屋で過ごした時間はかけがえのない思い出になった。だから駆けつけてくれたのだろう。

 義理堅くも不器用で、文字も下手糞なゼットン。だが、味方につけるとしたらこれほどまでに心強い怪獣はいない。

 

「どうしてゼットンが……」

 

 ゼットンの乱入に一番困ったのはフェイトだ。キングジョー、タイラントと怪獣達を味方につけ、なのはや管理局と戦うために戦略を立ててきた。実際にキングジョーの装甲やタイラントの火炎放射で追い詰め、なのはのバリアもフェイト自身が参加することで完封している。しかし、フェイトの立てた綿密な作戦はゼットン一匹に全てをひっくり返されてしまった。

 おかしくなったフェイトだが、彼女はなのはに勝つことを目標としている。これ以上ゼットンに邪魔されるわけにはいかない。ゼットンのバリアが真上を守れていないことに目を付け、バルディッシュを構えて突っ込んだ。

 

「レイジングハート!」

 

 ゼットンの弱点をカバーすべく、なのはが上空にバリアを張ってフェイトの一撃を防ぐ。ゼットンはすかさずなのはを腕を掴むと、テレポーテーション。一気にフェイト達から引き離す。

 

「ゼットンさん、私に作戦があるんだけど」

 

 距離をとって落ち着けた二人。なのははゼットンに作戦をつたえると、キャラメルを口の中に放り込む。キャラメルは熱で溶け、少しベトベトしていたが、なのはが食べたキャラメルの中で一番おいしかった。

 ゼットンがなのはの前に立ち、先程同様にバリアを展開。タイラントやフェイト、キングジョーも総攻撃するが、ゼットンシャッターは何とか持ちこたえている。

 

「行くよ、レイジングハート」

 

 なのははゼットンシャッターの中で魔力を溜め始める。おそらく必殺技、スターライトブレイカーを放つのだろう。

 

「スターライトブレイカー?! この限られたスペースで?」

 

 フェイトが驚きで声をあげた。バリアの中でスターライトブレイカーを撃つ準備する。一見、有効そうだが危険極まりない。溜めに溜めた魔力がバリアの中で暴発したり、バリアの中を満たしてしまい、満足に溜められなかったりする可能性があるからだ。

 しかしゼットンのバリアは違う。前後左右はバリアで防がれているが真上は空いている。だから、先程フェイトはバリアの真上を攻撃した。そして、レイジングハートは空高く掲げられている。つまり、魔力を溜めている上空だけはバリアで守られておらず、魔力は溜め放題。

 

「キングジョー、怪光線でアレを撃って」

 

 キングジョーが魔力の塊に標準を合わせても、ゼットンがテレポーテーションを使って、なのはと一緒に回避してしまう。なのはの技術によって、魔力は溜まったままだ。

 

「タイラント、キングジョー。一旦引いて! あの一撃がなのはの最後の攻撃。あれをやり過ごしたら私たちの勝ち」

 

 フェイトは潰すことを諦めて防ぐことに決めた。なのははキングジョーによって体力を消耗しているし、タイラントによって戦闘不能寸前まで追い詰められている。どう頑張ってもこの一撃で体力も魔力も使い果たすだろう。

 フェイトの叫びにタイラントとキングジョーは反応し、すぐに防御態勢に移った。ゼットンは空中が弱点だと思い出し、一人は二体をつれて上空に飛び立つ。

 フェイトの前に立ちベムスターの腹を突き出すタイラントと、フェイトを守るように立ち塞がるキングジョー。そして、その二体を守るように何重にもバリアを展開するフェイト。万全の防御態勢。いくらなのはのスターライトブレイカーとはいえ、真正面から受け止められれば防ぎきれるはずだ。

 

「レイジングハート、ゼットンさん。お願い」

 

 ついにはのはが動く。レイジングハートを前に突き出すと、ゼットンがバリアを解除。なのはの襟を掴んでテレポーテーション。

 

「消えた」

 

 一瞬にして静かになる森。

 フェイトが五感を使ってなのは達が現れる場所を探す。万が一に備えて自分の周囲にバリアを展開。ゼットンシャッターとは違い、上下も守れるようにしてある。

 だが、フェイトは肝心なことを忘れていた。どうして、なのはやフェイト達よりも強かった守護騎士たちが怪獣達に敗れたのか。数の差もあった。情報による優位もあった。だが、ヴィータ、ザフィーラ、シャマル。この三人を同時に倒すことができた最大の要因は……。

 

「っ! バリアの中」

 

 ゼットンが行ったテレポーテーションによるバリア内部からの一撃。

 フェイトが気づいた頃にはもう遅い。腹部に冷たい金属の感触が伝わって、視線で追って行くとレイジングハートにたどり着く。もちろん、魔法の杖は高町なのはが手にしており、彼女の腰にはゼットンが抱き着いてる。

 空中が苦手なゼットンが空を飛んでいる自分の場所まで来るわけない。先入観が生んだ致命的なミス。怪獣達とバリアの安心感から生まれた油断。こうなれば何重にはったバリアも、キングジョーの装甲も、タイラントの吸収能力も、フェイト自慢のスピードも意味をなさない。

 

「フェイトちゃん」

「うわああああ」

 

 半狂乱になってバルディッシュを振りかぶる。振り下ろされる斧をゼットンの腕が弾く。

 攻めも守りも出来なくなったフェイトが覚悟を決めて目を瞑る。暴力的なまでの魔力が襲い掛かると思っていたら、柔らかく、温かいものがフェイトの身体を包み込んだ。

 

「なの……は?」

 

 フェイトが目を開くと、なのはが抱き着いていた。次の瞬間、溜めていた魔力が上空、空高くへと放たれる。射線上には誰もおらず、ただ溜めていたものを放出しただけだった。

 それが直撃したとなれば耐えられるはずがないだろう。キングジョーはもちろん、吸収能力を持つゼットンやタイラントでさえ。むろん、フェイトだって耐えられない。その砲撃をあえてフェイトに撃たなかったのだ。誰がどう見てもなのはの勝ちだと分かる。しかし、当の本人は震えていた。

 

「無理だよ……理由がなんだって、私は友達と戦うことなんてできない」

 

 フェイトの耳元で弱々しい声がする。反対にフェイトを抱きしめる力は強くなっていた。フェイトはなのはに抱き着かれたまま、地上へ降り立つ。すでにゼットン含む怪獣達は地面の上で待機していた。

 

「私は誰かの大切なモノや、人生を踏み台にしてまでも幸せになりたくないよ」

 

 一瞬だけ赤い光が二人を包んで、そのまま消えた。

 フェイトははっとして目を開く。なのはの言葉は浩の事を指していたし、フェイトが今までしてきたことは暴走してきた浩と同じこと。

 フェイトはポケットにある『赤い欠片』を取り出して、なのはと交互に見直した。さっきまで赤く光っていたのに、何事もなかったかのように静まり返っていた。お守りだと思って持っていた欠片は憎き『赤い球』と同じような気がしてくる。

 

「……フェイトちゃん。フェイトちゃんと戦えなかった私に力を貸して。一緒にヒロシ君を助けようよ」

「ヒロシは……生きているの?」

「分からない、かな。でも、ヒロシ君が生きていることに賭けてもいいと思う。これ以上、復讐に走ってもいいことないし」

 

 フェイトはキングジョーとタイラントを見た。二体とも大人しくなのはの話を聞いている。タイラントは納得したような、でもどこか不満げな表情でなのはを見つめている。キングジョーは機械だから何考えているのか分からない。でもフェイトの決定に従うだろう。

 

「……なのは、今の私は一人じゃない。それはなのはと友達っていう意味もあるし、この子たちだってこんな私に付いてきてくれた。ゴメン、まだ私にはやらなきゃいけないことがある」

 

 そっか、と困った顔で笑う親友に、フェイトは続けた。

 

「でも、必ず戻る。それまで待ってて」

 

 とは言ったものの、フェイトは俯いてしまった。気持ちの整理ができていないリーダーを慰めたいのか、二体の怪獣は寄ってきて、特徴的な手で少女の頭を交互に撫で始めた。

 その後ろではゼットンが立っている。相変わらず無表情だが、なのはの視線に気づくと、親指を立てる。なのはもそれにVサインで返した。

 

「なのはちゃん、フェイトちゃんもいる? いたら返事して! 海が、海が大変なの!」

 

 直後、すずかから念話が入った。

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