蛾超獣ドラゴリー。バキシム同様ウルトラマンエースに登場した超獣だ。
体色は緑色で腹はオレンジ。頭は小さく口には二つの牙が生えている。蛾の羽のようなヒラヒラしたものが両手と背中についている。
武器は口から吐く火炎と、両腕から放つミサイル、目から放つ怪光線だ。怪力を誇り、ムルチ二代目をバラバラに引き裂いてしまうほど強力だ。また、毒があるとされ牙で噛み付かれると一瞬にして毒素が体内に回ると言われている。
TACの基地を襲い、そこに現われたメトロン星人Jrとムルチ二代目と共にウルトラマンエースを苦しめた。
そんなドラゴリーが今俺の家にいる。もちろん、小さくして。
「さて、ヒロシ君。悪いお知らせがあります」
「え、何」
「君の持っている『赤い球』、これはこの地球のものではありません。異世界から来たものだと思います。そして、今この地球上にこの『赤い球』を取り戻そうと異世界人が現れたと考えています。何か心当たりはありませんか」
メフィラスの言葉に驚いたが、すぐにそれらしきものを考える。俺はベムラーを倒した少女を思い出した。
「そうだ、君たちを創る前なんだけど、ベムラーを生み出したことがあってね。そのベムラーなんだけど、女の子がビームを発射して倒しちゃった。ソイツが異世界人ってこと? 空飛んでたし」
「分かりません。ですが、異世界人と関わっていると考えて間違いないでしょう。今後、その女の子が『赤い球』を狙って攻撃を仕掛けてくるかもしれません。ですので、今後は異次元からメトロンが監視し、ヒロシ君も護身用として戦えるものを持ち歩いて欲しいのです」
メフィラスから急に武器を持てと言われて戸惑っていると、メトロンがやってきた。
「押し入れと異次元を繋いだと報告をしようとしたら、大変なことになっているみたいだね。申し訳ないがヒロシ少年がビームを放つ連中と戦って勝てるとは思えない。私だって倒されてしまうかもしれないからな」
ハッハッハと呑気に笑うメトロン。こっちはデスレムのような邪悪な笑いとは違って心の底から楽しんでいるように聞こえる。
「そんな訳で戦いなんか戦闘のプロに任せておけばいい。つまりだね、バトルナイザーを創ればいいんじゃないか」
さすが、メトロン。それ、採用。
バトルナイザーとは怪獣版のモンスターボールみたいなもので怪獣を携帯できる。どこぞのカプセル怪獣は一体につき一つ必要だが、このバトルナイザーは一つで三体の怪獣を飼育できる。
「『赤い球』、よろしく。バトルナイザー創って」
右手に持った『赤い球』がピカリと光ると、次の瞬間、俺の左手にはバトルナイザーが握られていた。
「おお、いつ見てもすごいものですね」
メフィラスが感心している。メトロンは俺の創る怪獣に興味があるようで。
「それで、使役する怪獣は誰にするんだい?」
「えっと、酋長怪獣ジェロニモンなんてどうかな」
酋長怪獣ジェロニモン。怪獣を蘇生させる能力がある怪獣だ。こいつがいれば、もしメフィラスやメトロンが異世界人に倒されたとしても再生できると思う。
「ほほう、いいじゃないですか。これで盤石というものです」
「少年、残りの二体は決まっているのかい?」
「ドラコとテレスドン」
即答。ジェロニモンと組ませるならこの二体以外はありえない。ちなみにジェロニモンを倒すならピグモン以外ありえない。
彗星怪獣ドラコ。両手がカマになったり、カマとムチだったり、再生して剛腕に変えられたりとよく腕が変わる怪獣だ。飛行能力もあって、好戦的だが戦績はイマイチだったりする。パワードが最強。
地底怪獣テレスドン。ナパーム弾が効かない皮膚と火炎放射と怪力を武器とする地底怪獣。茶色くて二足歩行の怪獣らしい怪獣だ。とはいえ、ウルトラマンとの初戦ではカラータイマーが赤になる前に倒された気がする。Xが最強。
「ゴモラとかレッドキングとか強い怪獣は沢山いるのにその二体でいいのかい?」
「確かにその二体でもいいけど、没。だって、この三体が協力して戦う姿が見たいんだもん」
俺の用心棒が決まった。メインで動くのはメフィラス星人たち、裏で動くのはメトロン星人たち、俺は二人の支援らしい。二人が最大限に動けるように俺もバックアップをしないといけない。
メフィラスも後ろ盾を固めたいのか要求してきた。
「そうですね……早速ジェロニモンを創りましょう」
「それもいいんだけど、俺さソフビと何かプラスして怪獣とか宇宙人を創りたいんだ」
「何故です?」
表情は変わらないが怪訝そうに尋ねてきた。怪獣を創るときのこだわりっていうのかな。特に意味は無いけど、超獣を創った先人のやり方を真似してるっていうか。
ようするに、ヤプールみたいでカッコいいから。これに尽きる。
メフィラス、デスレム、グローザム。この三人は暗黒四天王だ。四天王というからにはもう一人いる。それが異次元人ヤプールだ。暗黒四天王として呼ばれるときはヤプールだったり、メビウスキラーだったりと安定しないので今回は創ってない。もちろん、ヤプールも好きだ。
「なるほど。なら今回創る三体は何を足すつもりだい?」
「ドラコは鎌かビニール袋で、テレスドンは岩石。溶岩が固まったやつだともっといいな。ジェロニモンは鳥の羽がいい」
「なるほど、わかりました」
ドラコは両手がカマだから鎌。ビニール袋はドラコの羽がビニールみたいに柔らかいって書いてあったから。テレスドンは好物の溶岩がいいんだけど、そんなもの無いし。岩石で代用。デットンが出来ないことを祈る。ジェロニモンは頭が特徴的だからかな。
メフィラスも納得してくれてよかった。
「今回は私が同行しましょう」
「まかせた、メフィラス。私はドラゴリーと一緒に異次元の整理をしないといけないのでな」
さっき決めた役割が適用され始めてるようで、今日はメフィラスとお出かけになった。
「デスレムとグローザムにも声をかけてください。きっと手伝ってくれますよ」
「それは心強い。こちらからバキシムを貸そう」
それでは行ってくる。そういってメトロンは手を振ると押し入れの中に入っていった。……やっぱそこなのね。
「ヒロシ君、未来のロボットだって押し入れで暮らしているんだ。リスペクトだよ、リスペクト」
赤い空間へと消えるメトロンを見送って、メフィラスと向かい合った。
「あと、異世界人と遭遇した時のことを考えて怪獣を創って欲しいのですが」
「いいよ、何にしようかな……」
「勝てる怪獣にしてくださいよ」
「相手はビームを使って来たし、飛んでることが多かったから……ベムスターなんてどう?」
宇宙大怪獣ベムスター。帰ってきたウルトラマンに登場した最初の宇宙怪獣だ。ベムラーと同じような名前だが強さは全然違う。
平べったい緑色の身体に、鳥のような顔と両腕に一本ずつ黄色い大きな爪がある。
武器は頭の角から放つレーザー光線。宇宙から地球にやってきたこともあり空を飛べる。最大の特徴は腹にある五角形の口で、ガスや電気などのエネルギーはもちろん、宇宙ステーションや戦闘機も飲み込めるし、ウルトラマンジャックのスペシウム光線のような光線だって吸収してしまう。さらに、最近では自分と同じくらいのウルトラマンですら飲み込んでしまったほどだ。
「カニ星雲の大怪獣ですか……素晴らしい。ベムスターなら相手のデータをとるだけではなく、異世界人を倒してしまうかもしれません」
「ナックル星人みたいな使い方するね。ブラックキング創るつもりないけど……やっぱアロンとかプルーマとかの方がよかった?」
ガッツ星人に囮として使われたアロンとゼラン星人に囮として使われたプルーマ。両者も囮として使われたが、実力もその辺の怪獣には劣らない。
「いいえ、今回は遠慮しておきます。それでヒロシ君、鳥が見つかりそうかつ人目のない場所はありますか?」
「えー。あ、少し離れたところに猫がたくさんいる屋敷があるって聞いたな。そこならいいんじゃない?」
「そうですね。そこにしましょう」
「ヒロシ、メフィラスさん、お待たせ」
目的地が決まったところでバキシム登場。出発。
その後、バキシムの移動能力を使って屋敷に降り立った。どこでもドアがあったらこんな感じなんだろう。さっそく、スズメを見つけバキシムにお願いをして取りに行ってもらう。
バキシムはよちよちとスズメに近づくと、両手を広げ威嚇した。スズメは驚いて飛び立つが、バキシムがそれを先読み、スズメの進行方向に異次元が広がってそのまま飲み込んだ。
「おい、敵が来たぞ」
「何だこの鳥! ぶっ殺されてーのか」
デスレムとグローザムがぶち切れている。ドラゴリーの鳴き声もする。スズメが無事だといいけど、バラバラにされてそう。メトロンは笑ってないで止めに入ってほしい。
「あちゃー、これ後で怒られますね……」
「いえ、バキシムの責任ではありません。小鳥一匹に対応できない彼らがカスなのです。
聞いてください、メトロンの笑い声を。本来はこう、余裕ある態度を見せるべきです。短気はいけませんね」
お前が言うか、そのセリフ。俺はそんなことを思ったけど、口に出すと無重力空間に閉じ込められそうなのでやめる。
バキシムは手の棘で、申し訳なさそうに頭をポリポリ掻いていた。かわいい。
異次元から氷に閉じ込められたスズメが送り返されてきたが、俺の欲しかったものは鳥の羽で、氷漬けのスズメじゃない。仕方ないので、それと持ってきたベムスターのソフビを並べて『赤い球』に願った。
「来い、宇宙大怪獣ベムスター」
おなじみとなった怪獣生成の光。ベムスターへと変わった。
肝心の身長だけど、今回は1メートルと90センチだ。メフィラスとメトロンを生み出して以降、怪獣と宇宙人の大きさは2メートルを基準に俺が独断と偏見で決めている。ちなみにバキシムは2メートルと15センチくらいある。ドラゴリーもそんくらい。
「おお、ベムスター。ちすちっす」
「能力はどれほどなのでしょうか」
ベムスターは同族とバキシムの仲間の超獣、ベロクロンとサボテンダーが共闘したこともあり、友達の友達といった仲なのかな。宇宙怪獣と超獣は二体の特徴的な手を振り回して一緒に喜んでいた。
メフィラスはいつの間にかスマホみたいな端末を取り出してベムスターに向けていた。
「メフィラス、何してんの?」
「ベムスターのデータを採っていまして。うん、ヒロシ君の知っているベムスターと同じような能力を持っていますね」
満足そうに頷くと、本来の目的である鳥の羽探しに戻る。
森みたいな感じになっているが、人の家だ。鳥の代わりに猫がわんさかいる。むしろ猫以外の動物を見ない。これがおそらく猫屋敷だろう。
そろそろ疲れてきたな。そんなことを思い始めた時に、あっちの方から爆発が起きた。
「木がいっぱいあるところから爆発が起きた。行ってみようぜ、ヒロシ」
バキシムさっきから木と猫しかいないから、ここ。ベムスターは勝手に行動しないでほしい。
俺が宇宙怪獣を追いかけようとした時、メフィラスに制止された。
「ヒロシ君。異世界人かもしれません。ここは私とベムスターに任せて、あなたはバキシムと一緒に異次元の中に避難してください」
「了解。無理しないでね」
「分かりました」
メフィラスは頷くと、ベムスターを追って行った。
「ほいヒロシ、帰るか」
「そうだね、丁度鳥の羽も落ちてたし」
俺は運よく地面に落ちてた鳥の羽を拾ってから、バキシムの作った真っ赤な異次元空間に飛び込んだ。
メフィラス星人はベムスターに追いついた。それから一人と一体は情報を共有すると異世界人と顔を合わせることを決意。そのまま進んでいくと目の前に巨大な猫とそれと戦う白い服の女の子が現れた。
女の子は宙に浮きながら手に持つ杖を猫に向け、牽制しているようだ。
「なるほど、これがヒロシ君の言っていたベムラーを倒した少女ですか……しかし、扱っている武器は見たことありませんね」
猫と戦う少女をメフィラスが観察し、ベムスターは戦わないの? と首をコテンと傾げている。
「まあ、待ちなさい。こうして相手が戦っているのです。手札を知るという意味でもここは観戦しておきましょう。気づかれないようにね」
メフィラスの言葉にベムスターは頷くと、静かに手を振りながら応援をはじめた。
一方で女の子は困っていた。猫屋敷の主は彼女の友人で、遊びに来たら猫が巨大化してた。相手の猫は今のところ暴れるような素振りは見せず、ひなたぼっこをしているのか丸くなっている。
「ユーノ君、どうしようか」
ユーノと呼ばれたのは人間ではなく、少女の肩に乗ったフェレットだ。フェレットが喋るのには訳がありそうだが、この地球にはバキシムという喋る超獣がいる。気にしたら負けだろう。
「なのは、僕もどうしていいのか困るけど、このままにしておくわけにもいかないし。うん、できるだけ傷つけないように終わらそう」
ユーノというフェレットは少女のことを『なのは』と呼んだ。この少女の名前だろう。なのははユーノの指示を受けると、杖を猫にかざした。
「ちょっと痛いと思うけど、ごめんね」
なのはは杖に光を溜め始めた。
「こんな感じだよね、ユーノ君」
「そうそう、その調子。この前の怪獣と違って今回は倒さなくていいから、溜めすぎないようにね」
「うん」
メフィラスの耳は遠くの悪口が聞こえるほどの地獄耳だ。それでなのはとユーノ会話を聞こえたようで、ベムスターに語り始めた。
「ベムスター、なのはと呼ばれるあの少女が、ベムラーを倒したことが確定になりました。あと、なのははまだ戦闘に慣れてはいないようです。叩くならあの猫が倒されてからにします。準備をしておいてください」
ベムスターもメフィラスの言葉を理解したようで戦いのために腕を回し、準備を始める。
メフィラスは、なのはが戦っているように見えるが、ユーノから指示を貰っていることから戦闘には慣れていないことを読んだ。さらに、ユーノの「この前の怪獣」とはベムラーの事だと予想する。異世界人だとしても戦闘になれていない少女。猫とはいえ戦わせることなど普通なら考えられないし、あの少女が使っている力についてもユーノの方が詳しそうだ。これらを踏まえて一つの仮説を立てた。
「少女の力は目を見張るものがありますが、知識的に考えてユーノが戦うべきでしょう。なのはとユーノは訳アリと考えてもよさそうですね」
メフィラスの考察が終わると、なのはの杖が光ってビームが発射された。ピンク色の光線は曲がることなく猫に直撃する。猫はにゃぁあ。と鳴いてから全身が光った後小さくなって猫と青い宝石が現れる。
なのはの武器が予想通り光線技だと知ってメフィラスの青い目が不気味に輝いた。
「やった。猫ちゃんは元に戻ったし、ジュエルシードもゲット」
なのはは地面に降り立つと猫の安否を確かめてから『ジュエルシード』と呼んだ青い宝石に手を伸ばす。
「今です、ベムスター」
「ピーギャ」
鳥のような鳴き声を上げ、ベムスターが飛び立った。