第97管理外世界の赤い球   作:破壊光線

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 ドラクエのラスボスの肩書みたいなサブタイになった。


暗黒の覇者

 ガタノゾーアの猛攻はいまだなお衰えていない。

 リーゼ姉妹、ザフィーラ、シャマルを石化し、次なる標的としてヴィータを選んだ。

 石になるまいとヴィータも抵抗するが、ガタノゾーアは友達をくすぐる感覚で触手を伸ばしていく。邪神の触手はシグナムの剣で真っ二つにされたり、ヴィータの鉄槌で粉砕されたりしているが、時間が経てば生えてしまうほどの生命力を持っていた。

 取り囲んでは切られて再生して取り囲んでは破壊される、この繰り返し。すでにシグナムは眼中になく、無限とも思える生命力でヴィータを置いて詰めていった。

 

「シグナム、このままじゃラチがあかねえ。あのデカい本体に一発かましてくれ!」

「いいのかヴィータ」

「おう、ぶん殴って怯ませればタコの足みたいなのも消えんだろ」

 

 ガツンと殴る姿を見て一人でも大丈夫だと判断し、シグナムはガタノゾーア目掛けて急接近。もともとノーマークだったこともあって、かすり傷一つ付かなかった。

 

「油断したな」

 

 シグナムはガタノゾーアの上顎に降り立つと、レヴァンティンを逆手に持ち替え、炎をまとわせる。暗闇の中に業火が輝いた。

 

「これで、どうだ!」

 

 シグナムは闇を切り裂くようにそのまま炎剣を振り下ろす。ガタノゾーアの顎の付け根、殻との隙間にレヴァンティンが突き刺さる。鳴き声と共に巨体が揺れた。ヴィータを取り囲んでいた触手もバラバラにのたうち回り、遺跡を破壊していく。

 邪神はシグナムを振り払おうと、身体を揺らすが、シグナムは意地でも突き刺したレヴァンティンから手を放さない。むしろ、レヴァンティンが左右に揺れて、それにシグナムの力が加わり、刃がより深く突き刺さっていく。

 

「シグナム! こいつは効いてるぞ」

 

 ヴィータの声援を受けてシグナムがさらに力をこめる。レヴァンティンが弾丸を吐き出して、魔力が増加。炎がさらに大きくなった。

 

「レヴァンティン!」

 

 シグナムの雄叫びと共に炎が光りを放って大爆発。夜空に咲いた花火のように火の粉が舞った。ヴィータはもちろん、破壊活動に徹していたゾイガーとスコーピスでさえも闇の中に咲いた花火に釘付けになっていた。

 この一撃をまともにくらったガタノゾーアはたまったものではない。赤い目が点滅し、苦しそうに叫ぶ。巨体を揺らして出来た波は邪神の動揺を表すかのようにあらぶった。顎から伝播したように全身から火花が噴き出し、シグナムの一撃がどれほどの威力かを示している。

 リーゼアリアの弾幕ですら効果なかった邪神に、初めての有効打。それはこの場に居た誰もが、このまま押し切れると思ったに違いない。現にヴィータは嬉しそうに叫んでいるし、シグナムも手ごたえを感じて口角が吊り上がっている。

 

 だが、例外がいた。ガタノゾーアだ。

 

 点滅していたはずの赤目が輝きを取り戻すと、顎に突き刺してあるレヴァンティンの根本が紫色に光る。次の瞬間には紫色のレーザー光線となってシグナムの身体を貫いた。

 リーゼアリアを石に変え、原作ではウルトラマンティガを倒した、あのレーザー光線。シグナムは悲鳴を上げる暇すら与えられず、笑みを浮かべたまま一瞬にして石に変えられてしまう。レヴァンティンは石化を免れたものの額に突き刺さったままだ。

 

「シグナム!」

 

 ガタノゾーアは触手で石像になったシグナムを巻き取るとヴィータ目掛けてぶん投げた。仲間をキャッチしたヴィータ。邪神は彼女の両手が塞がったことをいい機に邪神の額が再び光る。三度目の石化光線、狙いはもちろんヴィータ。だが、石像を抱きかかえているため回避行動もとれず、両手が塞がっているためバリアも張れない。

 

 ヴィータには悔し紛れに邪神を睨みつけることくらいしかできない。そんな彼女の目の前がガラスのようにヒビが入った。しだいにそれは大きな亀裂となってバキッと割れて真っ赤な空間が広がった。ソレはヴィータと光線を空間的に分断し、石化光線を吸い込んでしまう。

 

「え? んだよこれ」

 

 状況が読み込めていないヴィータを他所に、赤い空間はお返しにと言わんばかりに桃色の光線をガタノゾーアに向けて放った。むろん、邪神の腹部に直撃し、泡のような模様を破壊する。予想外の反撃をもらい、腹部から煙をあげて怯むガタノゾーア。

 赤い空間を作ったのは誰か、桃色の光線を放ったのは何者か。どちらもヴィータには見覚えのあるものだ。彼女の記憶が確かなら、赤い空間から出てくる人物は。

 

「ヴィータちゃん、大丈夫!?」

「なのは! なんでお前が」

 

 高町なのは。そしてもう一体、赤い空間からひょっこりと顔を出した一体の超獣。かつてシグナムと戦って、守護騎士VS怪獣軍団の火ぶたを切ったあの怪獣。

 

「バキシムさんに連れてきてもらったの」

 

 バキシムは奇襲が成功したとトゲトゲの両腕を叩いて喜んでいる。コイツは飛べないらしく、赤い空間つまり異次元から出てこようとしない。代わりにもう二人、今度は男の子が飛び出した。

 

「時空管理局のクロノだ。言いたいことは色々あると思うが、あの怪獣をどうにかするのが先だろう。僕も協力するから君も力を貸してくれないか」

「時空管理局の手伝いをしています。ユーノです。ずいぶん前にここからSOS信号を受け取ったけど、転送魔法は使えなかったから、移動手段を考えているうちに時間がかかっちゃった。でも超獣の移動手段を使って何とかこっちに来れたんだ」

 

 転送魔法ですら無効化してしまうガタノゾーアの闇。しかし、これには抜け道があった。もともとガタノゾーアは守護騎士と戦わせるために創られた。よってある程度怪獣同士で連携をとる必要がある。

 浩はこれを考えていて、超獣の能力であれば闇を超えられるように設定してあった。ガタノゾーアの存在を浩以外は知らないが、メトロンの機転により偶然発見できた。

 

 さらにもう二人、今度は空間そのものが歪んで、その歪みから姿を現した。

 

「アリサちゃんにすずかちゃん!?」

 

 息を切らしながらも嬉しそうに笑うすずかと、バツの悪そうに視線を合わせず髪をいじるアリサ。

 

「……その、ゴメン」

「なのはちゃん、お待たせ。アリサちゃんを探してたら時間かかっちゃった。それに下を見て」

 

 二人も協力するようで、なのはの隣に並ぶ。すずがに言われるがまま、なのはが下を向くと波に揺られながらも手を振っている怪獣がいた。飛び出した目を二つ、赤と青に点滅させて存在をアピールするのは。

 

「レイキュバス?」

「どうしても来たいようだったから連れてきちゃった。あとエアロヴァイパーも」

 

 すずかはフフッと笑顔を浮かべる。なのはが手を振り返すと、レイキュバスは攻撃の機会をうかがうために海中に潜った。エアロヴァイパーが上空を飛んで近くにいたゾイガーを攻撃し始める。突然の増援を快く思わないモノもいる。もちろん、ガタノゾーア。体勢を立て直した邪神は無数の触手を伸ばして反撃に出る。

 ブヨブヨした触手を少年少女は散り散りになって軟体動物のような触手をやり過ごす。

 

「みんな言いたいことはあると思うが、まずはあの怪獣を倒してからだ。誰か、情報を持っている人はいるか」

 

 クロノから念話が入った。

 ガタノゾーアはキングオブモンスとは違い元ネタがある。浩の創りだした怪獣は原作に忠実な個体が多く、その情報を使って倒すのがセオリーだ。

 

「あのデカ物はキモい触手とデケエはさみ、あとは口から吐く霧みたいなモヤと、紫色のレーザー光線。んで、それに当たると石になっちまう」

「仲間に超古代怪獣、今回だとゾイガーがいます」

 

 すぐにヴィータとすずかから返答が来た。攻撃パターンと仲間の情報。二つとも貴重な情報だが、決め手がない。

 

「……ゾイガーの弱点は羽の付け根。それでガタノゾーアは……」

「アリサちゃん」

 

 不機嫌に答えるアリサにみんなが注目する。アリサはペチペチと自分の頬を叩くと、今までの鬱憤を吐き出すように叫んだ。

 

「ガタノゾーアの弱点は光。ウルトラマンを一度は倒したけど、復活したティガに倒されたわ」

「ウルトラマン、つまり光の巨人に倒されたから光が弱点ってこと? それじゃあ僕たちじゃ倒せない」

 

 結局はウルトラマン頼り。原作を知ってユーノが項垂れた。

 これだけの人数がそろっても、メトロンと管理局、怪獣達が協力しても倒せない。いや、ガタノゾーアの周りにはスコーピスとゾイガーの軍団が集まりつつある。弱点が分かったとはいえ、邪神と戦えるのはなのは達だけだ。数による有利をひっくり返されたら勝ち目など無い。

 ひしひしと絶望に包まれていく仲間たちを、アリサが否定した。

 

「ウルトラマンティガが復活したきっかけは、私たち、子供の光なの。世界中の子供がティガと一つになってアイツを倒した」

「じゃあみんなで力を合わせれば」

「なのはの言うとおり、勝てると思う。でも、フェイトが居ない」

 

 念話という声だけのコミュニケーション、使用者の表情は分からない。でもアリサの悲しみは痛いほどを分かった。苦しそうに声をひねり出して彼女は続ける。

 

「すずかから聞いたわ、ガタノゾーアは復讐から生まれた怪獣だって。それは『闇の書』と守護騎士に向けられたモノ。私たちの中で一番『闇の書』を恨んでいるのはフェイト。フェイトが納得しなかったら、ガタノゾーアは何度でも甦る」

 

 邪神は配下を整えると、無数に生えた触手をアリサたちに見せびらかした。かなりの数の触手をシグナムやヴィータが破壊したはずだが、途中で千切れているモノは一つもない。きれいに生えそろっている、いや、再生したと言うべきか。さらに、なのはによって傷を負った腹部も回復していた。

 

「あの子がここにいなかったら、そもそも勝ち目なんてないのよ」

「……アリサちゃん、大丈夫だよ。フェイトちゃんは必ず来る」

 

 なのはが否定をするが、アリサたちの表情は暗い。なのはが嘘をつかない人だとしても、フェイトは守護騎士たちを倒すために管理局を抜け出している。説得力には欠けるだろう。

 

 闇を統べるモノ、ガタノゾーア。おぞましい口から闇を吐き出し、人間の心の闇を糧とする。復讐心や敵意をもって戦えば絶対に勝てない怪獣。それが鹿島浩の創りだした切り札だった。

 闇は結界のように少女たちを閉じ込め、じわりじわりと迫ってくる。ガタノゾーアが触手を飛ばした。さらに集まったゾイガーとスコーピスが群れを成して襲い掛かる。分担して少年少女の相手をするが、狙われたのはなのはだった。

 

「もう、私のところにばっかり」

 

 日頃、なのはは浩から敵視されていた。メインの敵は守護騎士たちだったとはいえ、なのはも復讐の対象としてとらえたのだろう。ガタノゾーアは触手に加えて巨爪も飛ばし、絶えずなのはを攻撃する。猛攻によって、なのは達はだんだんガタノゾーアから遠ざかっていった。

 

「ガタノゾーアから離れて行っているけど、本体相手にしなくて済むならマシだよね。……ディバインバスター」

 

 もちろん、なのはも抵抗する。砲撃で触手を焼き切り、ゾイガーの光弾を掻い潜り、バリアでスコーピスの毒液から身を守った。

 ガタノゾーア本体から離れていくにつれて、触手の反応が鈍くなり、爪による攻撃の頻度が減った気がする。おかげでゾイガーたちに少しだけなら反撃が出来るようになっていった。

 敵が何を考えているのかは分からないが、かえって好都合。ゾイガーたちを倒してボスを叩く、勝負はここから、。反撃に転じようとした時、なのははふと足に異変を感じてつま先を見た。

 

「うそ、石になってる」

 

 左足の白かったブーツの先端が灰色に変わっていて、足の指に力を入れても感触が無い。

 くるぶしのあたりに魔法で翼を付けて飛んでいるから飛行に支障はない。だが、今後石化が広がれば飛べなくなるどころか、石像になってしまう。そうなれば言うまでもなく負け。

 

 遠くでガタノゾーアが吠えた。

 

 ガタノゾーアは闇を拡大させていくことによって、なのは達を一度に石化することを選んだ。後は時間を稼げば終わり。そのためのゾイガー、スコーピスとの連携攻撃だ。ガタノゾーア本体からなのは達を離して、尖兵怪獣二体に相手をさせる。その間自分は闇を着々と広げていった。今まで見せていた余裕は一切なし。時間をかけてじっくりと着実に倒していく。

 なのはは絶望に包まれていくような錯覚にとらわれ、反撃の手を止めた。それに合わせてゾイガーたちも攻撃の手を止める。

 

「やっぱり、時間稼ぎ」

 

 配下も主の作戦を分かっていたようだ。ゾイガーは翼を羽ばたかせて滞空しているだけ。しかし、なのはがガタノゾーアに近づこうとすれば一斉に攻撃するだろう。

 

「アリサちゃんの力でワープしたら近づけるけど、ガタノゾーアは倒せないし。さっきの連続攻撃に加えて石化光線も飛んで来たら……」

 

 ガタノゾーアを倒すためには近づかなければいけないのに、近づけば石になるリスクが高くなる。しかし、ガタノゾーアを倒さなければ全員石になって負け。

 空には黒煙のような暗闇が広がって、海水は墨汁かと思えるほどに真っ黒に染まっている。なのはの周りには闇が渦巻いて水平線すら分からない。陸地にあったはずの街灯もゾイガーたちに破壊された。星も月も、太陽も光るものは一切ない。光源は、なのはたち魔法少女の魔法の光くらいだ。それも時間が経てば、ロウソクの炎のように儚く消えるだろう。

 耳をすませば、さっきまで聞こえていたはずの爆発音や詠唱などの戦闘音が消えていた。なのはの仲間たちも石化が進行しているようだ。遠くの方で邪神が勝ち誇ったように吠える。

 闇には負けないとレイジングハートを握りしめた。なのはの戦意をかき消そうと邪神の闇が迫りくる。

 

「まだだよ、まだ動けるもん、負けたわけじゃない……そうだよね、フェイトちゃん!」

 

 刹那、雷のような閃光が走った。光は闇を切り裂いて、ゾイガーたちを吹っ飛ばす。

 不意を突かれ、パニックに落ちる闇の尖兵たち。困惑するなのはの視界に六つの背中が飛び込んだ。

 黒い背中、機械の背中、棘が生えたもの、背ビレが生えたもの、甲殻に覆われた背中。どれひとつとっても同じものはない。そいつらはゾイガーとスコーピス群れ目掛けてぶつかった。もつれ合って落下、海面からは水しぶきが上がった。

 

「怪獣達?」

 

 六つの背中はゼットン、キングジョー、ギマイラ、タイラント、ラゴラスエヴォ、ゴモラだ。怪獣達はゾイガーとスコーピスの軍団と取っ組み合いの戦いを繰り広げている。

 状況は一変、体勢を崩したゾイガー軍団に襲い掛かる怪獣達。なのはの肩を叩く人がいた。

 

「ごめん、遅くなった」

「待ってたよフェイトちゃん!」

 

 今度はフェイトがなのはを抱きしめた。待ち望んでいた助っ人に思わず涙がこぼれ落ちそうになる。

 

「でも、どうして」

「ガタノゾーアの闇が突破できなくて……でもギマイラの霧で少しだけなら相殺できたんだ。ギマイラだけじゃない。みんな協力してくれたよ」

 

 フェイトの連れてきた怪獣たちが一斉に吠える。これでガタノゾーアを倒す最後のカギがそろった。

 最初は敵だらけ、でも今は違う。なのはの周りにはフェイトをはじめ、クロノやユーノ、アリサ、すずか、ヴィータと仲間たちに囲まれていた。

 

「ゾイガーとスコーピスは怪獣達に任せて、ガタノゾーアを叩くよ」

 

 魔法の光を携えて、なのは達は邪神に勝負を挑んだ。




 なのはサイド、メンバーがそろいました。
 でもね、状況はガタノゾーア絶対有利なんですよ。

 次回、ガタノゾーア戦。ラスト。



Ps.誤字報告ありがとうございます。
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