海も空も闇に塗り潰された中、光を放つ流れ星が7つ。赤、青、藍色、オレンジ、緑、桃色そして黄色。虹色の輝きを放って飛んでいるのはフェイト達だった。
ガタノゾーアの尖兵怪獣をフェイトが連れてきた怪獣達に任せて、魔法少女たちは邪神の元へと向かう。
「ったく、どーしてこんなに強いんだよ。ガタノ・ナントカ」
ヴィータが悪態をついた。
管理局指折りのリーゼ姉妹を倒して、ヴィータを除く守護騎士たち三人を石に変えた。手下を従え、闇を操り、不死身ともいえる再生能力を誇る邪神。浩の切り札は伊達ではない。
すずかが補足する。
「ヒロシ君はガタノゾーアを創るときに『赤い球』の欠片を使ったらしいの。だから、あれはガタノゾーアの見た目をしているけど、ロストロギア『赤い球』そのものが相手だと思っていいと思う」
「すずか、今『赤い球』の欠片って言った?」
フェイトが欠片というワードに反応する。彼女は飛行しながらポケットを探ると、『赤い欠片』を取り出した。一見、ガラスの欠片としか思えない物体だが、熱を放ち、ガタノゾーアに近づくにつれて鼓動する光を放っている。
すずかはこの『赤い欠片』に見覚えがあったのか、目を大きくして驚いていた。
「フェイトちゃん、それどうしたの?」
「ヒロシの部屋の引き出しから見つけたんだけど……何か関係がある」
「うん。ヒロシ君は『赤い球』から出てきた三つの欠片を使ってガタノゾーアを創ったの。でもねキングオブモンスの過ちを犯さないように細工がしてあった。
一つは本体に、残り二つはガタノゾーアをコントールできるカギにしたって。つまり、フェイトちゃんが持っているのは『赤い球』の欠片になるね」
すずかの説明を聞いていたなのはが声をあげた。
「リーゼロッテさんがネックレスで付けていた宝石だ。でもどうして持っていたんだろう」
「ロッテ? あの仮面の男の正体だったヤツか」
なのはとヴィータの情報を受けてクロノが事件の全貌を明らかにした。
「そうか。鹿島ヒロシが八神はやての家に行った時、仮面の男、つまりリーゼロッテから襲撃を受けた。その時に『赤い欠片』をはやての家に落として『闇の書』に吸い込まれた。落ちた『欠片』をロッテが拾って操られた。そしてガタノゾーアが復活」
ロッテがおかしくなったのも、フェイトが狂暴化したのも、全て『赤い欠片』の性質。かつてキングオブモンスを創り上げた浩と同じ状態が二人に起こっていた。
「とはいえ、その欠片がカギになっているんだったら、スターライトブレイカーで倒す選択肢の他に『赤い欠片』を使って何とか出来る可能性もある。か」
「一歩間違えたらパワーアップするんじゃないの?」
クロノとアリサのやり取りを聞いて、『赤い欠片』は諸刃の剣だと確信する。それでもフェイトは一つの打開策として、『赤い欠片』を大切にポケットにしまった。
「問題はまだあるぞ。みんな気づいていると思うが、僕たちの身体が石になりつつある。外はプレシア達と管理局が全力で結界を張って何とかなっているが、肝心の結界内部は邪神の闇で埋め尽くされている。その影響で石化が絶賛進行だ」
原作ではガタノゾーアが地球を闇で覆ったが、倒されたと同時に闇は消えている。そこから考えると、ガタノゾーアを止めることができれば闇はもちろん、石像になったシグナムたちも元に戻るだろう。
しかし、それはガタノゾーアを倒したらの話。なのはを含め、少年少女の石化はじわじわと進行中。残された時間はわずか。なのはは空を飛びながらタイムリミットを確認する。
「ユーノ君、ガタノゾーアの闇がここを埋め尽くすまでどのくらいかかるか分かる?」
「んーと、闇が埋め尽くすまでには時間はあるけど、逃げ場所とかを考えて、戦える時間は長くて5分。いや、石化の進行速度とかを考えると4分かな」
「スターライトブレイカーを撃つまでに30秒かかるから実際はもっと少ないかな。準備とか考えると……3分くらい?」
なのはが導き出したタイムリミットは3分。つまり180秒。この間にガタノゾーアという神を倒さなくてはいけない。
リーゼアリアの弾幕でキズ一つ付かないガタノゾーアを倒すには、現時点での最大火力のスターライトブレイカーが必要だろう。しかし、なのは達の切り札となるスターライトブレイカーは魔力を溜める時間があり、その分も考えるとさらに少なくなる。
なのはがチャージしている間、仲間たちが守りを固めるとはいえ、なのは本人が落とされれば不発。三分以内に撃てなければ石化されて負け。さらに言えば、他の怪獣達ではガタノゾーアを倒せない。
この三分と言うあまりにも短い時間の中で、スターライトブレイカーを撃てるのか。撃てたところでガタノゾーアの装甲を貫き、倒せるのか。勝算は低い。
しかし、この3分と言う絶望的な制限時間を知って、フェイトの心の奥底で奇妙な自信が生まれた。
「3分。でもこの3分はウルトラマンが地球で戦う時間と同じ。きっと勝てる」
テレビのヒーローを思い浮かべて、少年少女は互いにうなずいた。
ガタノゾーアは一歩も動くことなく、フェイト達を待ち構えていた。
「なのはちゃん、みんな! これを」
すずかがメフィラスからもらった魔力カプセルを使う。白い光が雪のように舞って、フェイト達を包み込んだ。身体中に魔力が満ちて、全身に力が入る。
「レイジングハート、早速行くよ」
『yes my master』
一瞬にして魔力が溜まり、スターライトブレイカー発射準備完了。ガタノゾーアが体勢を整えないうちに最大火力をぶっ放す。
桃色の光線は見事にガタノゾーアの顔面に命中、火花を散らして大爆発を起こした。邪神の下半身は無傷なものの、顔やハサミがある上半身は未だ白い煙をあげて反応が無い。
「やったか!?」
クロノが早まるのも無理はない。今まで強敵を屠った高町なのはの必殺技だ。直撃ともあれば倒したと思いたくもなるだろう。遺跡ともども巨体も海中に沈んで、空が晴れる。はずだった。
「なのは危ない!」
アリサがなのはにタックルをして弾き飛ばすと、二人がいた空間を紫色のレーザーが打ち抜いた。なのは、アリサともにレーザーを掠ったものの、石像にはなっていない。
二人を襲ったレーザーの出所はもちろん煙の中。ぼやけていたところが晴れて、姿を現したものは。
「ガタノゾーア」
甲羅が傷つき、下あごの右目が潰れているが本体は健全。しかしフェイトの参戦、守護騎士のヴィータ、管理局が協力しているため、あの回復能力が発揮されていない。3分以内に押し切ればフェイト達の勝ちだ。
「なのは、アリサ、大丈夫?」
「大丈夫だよ」
「こっちも平気」
フェイトの呼びかけに二人は強がって笑って見せるが、もちろんそんなことある訳ない。今のレーザーで、なのはは左足の石化が進行し、機動力を失った。アリサは腰から太ももにかけて石になる。接近戦を行わない二人だからまだ何とかなっているだけで、状況は確実に悪化している。
「ボクとクロノで触手は何とかやり過ごせそうだ。なのは、もう一発撃てる?」
「うん、撃てるよユーノ君。一発じゃなくて何発でも」
なのはは、まだ元気。と言いはるが、これが空元気だとフェイトはもちろん、みんな分かっている。仮に何発打てたとしてもタイムリミットは迫っていた。さっきのレーザーで余命は2分。
ガタノゾーアはここぞとばかりに闇を広げて、レーザーを乱射し、勝負に出た。当たればラッキー、当たらなくても時間さえ稼げればそれでいい。
状況は絶望的。ダメージを負っているとはいえ、邪神の様子からスタミナ切れは狙えないし、掻い潜るのは不可能に近い。さらに弱点が『赤い欠片』だとは分かっているが、何処にあるのかが分からない。
それでもフェイトは頭の中で考える。
ガタノゾーアを倒すには、触手とレーザー、霧状の闇をどうにかしないといけない。なのはが魔力をチャージすれば、なのは目掛けてレーザーを放つはずだ。幸い、あのレーザーの軌道は直線だから読みやすい。クロノとユーノの二人で守れば何とかなるか。
霧状の闇は口から吐いていた。あの口を塞げばどうにかできるかもしれない。触手と爪はアリサとすずかに任せれば、動かない邪神にスターライトブレイカー当たる。
「……それで、何処に当てようか」
最後の一発はガタノゾーアの弱点に当てなければダメ。肝心の弱点は素体となった『赤い欠片』だろう。欠片にスターライトブレイカーをぶつければ邪神の力は衰えるはず。
ガタノゾーアの身体に異変は無いか、不可解な部分は無いか。フェイトは触手をやり過ごしながらも注意深く200メートル越えの巨体を観察する。
そして、見つけた。邪神の額に刺さっている剣を。
「ヴィータ、額に刺さっている剣は何!」
「シグナムのだ。あっこにぶっ刺して、魔力流し込んだら大爆発起こしやがった。さっき撃った砲撃よりも効いて気がする」
シグナムの攻撃よりも、なのはの砲撃の方が威力として勝っている。なのに、どうしてシグナムの攻撃の方が効いたのか。そして、200メートルを超えた巨体にもかかわらず、『赤い欠片』の片鱗が見つからないのか。その答えは。
「体内、ガタノゾーアの体内に強烈な魔力反応がある。小さいくせに、その量は尋常じゃないわ」
アリサが導いた『赤い欠片』のありか。魔力反応からして体内にある。シグナムの炎が効いたのも、ガタノゾーアの体内に直接届いたからに違いない。
それがガタノゾーアの数少ない弱点。体内にこそ弱点の『赤い欠片』が潜んでいる。
「バルディッシュ、残り時間は」
相棒からデジタルで示される01:30の文字。
残された時間は1分と30秒、これが最初で最後の反撃になる。フェイトは大きく息を吸うと、大きな声で叫んだ。
「みんな、聞いて。ガタノゾーアの弱点は体内! そこに力の源の『赤い欠片』があるはず。今からそこをスターライトブレイカーで叩く。なのははチャージ。アリサとすずかでなのはの援護して、触手と爪を何とかして。クロノとユーノはレーザーをお願い。私は闇をどうにかする」
打てば響くように、応。と返事が来た。
「フェイト、アタシは何すればいい?」
「ガタノゾーアの甲羅をかち割って」
ヴィータが得意げにニッと笑う。鉄槌を構えて邪神へと飛んでいく。
今日の敵も昨日の友もみんなで強大な闇に立ち向かう。これなら勝てるかもしれない。
残り時間01:10
フェイトの狙いが分かったのか、ガタノゾーアの攻撃一段と激しくなる。乱射していたレーザーは、高町なのは目掛けて一寸の狂いもなく放たれた。すかさずクロノとユーノが盾となり、バリアを展開、真正面から受け止める。
ガタノゾーアは防がれたと分かっていながら、レーザーを放ち続けていた。さらに口からしか吐かなかった霧状の闇を周囲から集めて、無防備ななのは達の背後に忍ばせた。
「なのは、逃げて」
いち早く気づいたアリサが、すずかとなのはを蹴りとばす。二人は闇に囚われなかったが、闇はアリサに食らいつく。アリサの赤色だったスカートは徐々に灰色へと変わり、闇は下半身の全てと左腕を飲み込んだ。
「アリサちゃん!」
顔と右腕、胸部は石になっていないものの、アリサはそのまま飛行能力を失い、荒れ狂う海へと落ちて行った。黒一色に染まった波にのまれて、アリサの金髪も、真っ赤なバリアジャケットも見失った。すずかの悲鳴も波の音にかき消されてしまう。
友達をやられた怒りを胸に秘め、フェイトが全速力で飛ばした。
迫りくる触手や巨爪をスレスレで避けて、回り道をしながらも友の仇に近づいていく。ガタノゾーアまで五十メートルほどの距離でフェイトは失速した。いや、落下していると言った方が正しい。
「なんで……」
気づけばフェイトの下半身が石化していた。マントも石に変わって、フリルのスカートも硬い重りとなってフェイトを襲う。かろうじて無事な両腕をバタつかせてもがくが、身体は浮かず、落ちて行く一方。
自分の身体が石へと変わっていく絶望感と、ガタノゾーアに届かなかった敗北感に押しつぶされながら落下する。
空は黒い、海も黒い。飛んでも落ちても真っ暗闇。邪神には勝てないと最初から決まっていた。
分かっていたのに抵抗した。だからこれは神様が与えた罰。自分勝手に行動して、都合よく友達を助けると言って、何一つ貫き通せなかったフェイトの最後。
「ゴメンね、なのは」
親友は精一杯抵抗している。クロノもユーノも片腕が石に変わりつつも友達を守っている。ヴィータも腕や髪が石になっている。それぞれがタイムリミットを抱えながらも懸命に足掻いていた。
でもフェイトは諦めた。敗北を受け入れたのだ。今はあの輪の中には入れない。でもそれも時間の問題。きっとみんな邪神に負けるだろう。
そしたら全員石像になっておそろいだ。それまで目を瞑るだけ。石像になれば半永久的に生きられる。死ぬことも無くずっと一緒。案外いいかもしれない。
―――残り時間は00:59
青色のカラータイマーが赤色へと変わる時間帯。片目の邪神が微笑んだ。
フェイトはこれ以上涙が溢れないように目を閉じる。どうして自分は戦うのだろうか。
『フェイトに会いたい 鹿島浩』
『浩に会いたい フェイト』
石になったらなのは達とは一緒にいられる。ヒロシは? ヒロシはまだ本の中。
「諦めない、絶対に」
フェイトの両目が開かれた。消えかけていた闘志が不死鳥のように甦る。
しかし自分ではどうすることもできない。だから願いを叶える『赤い欠片』を取り出してた。
「誰でもいい、私に力をください!」
暗黒に包まれていく中、身体の感覚が失われていく中、強く願う。『赤い欠片』はそれに応えるように真っ赤な、深紅の光を放った。
そして、願いが通じたのか、フェイトの落下が止まった。石になった足が青色の何かに引っかかっている。石だから感触はないものの、宙ぶらりんになったこの状況。誰が助けてくれたのか。逆さになった視界で左右を見渡すとオレンジ色の顔がフェイトの視界に入る。
イモムシのような青いお腹とオレンジ色の背中、頭の上には立派な一本角。一角超獣バキシム。フェイトが友達に会いたいという願いに応えたのは、かつてヒロシが友達を望んで生み出された超獣だった。
バキシムは異次元からひょっこりと腕を伸ばしてフェイトの身体を捕まえている。
「ありがとう、バキシム」
バキシムはコカカカカと嬉しそうに鳴くと、頭の角を自分の腕で軽くたたいた。その意味が分かってフェイトは不敵に笑う。
フェイトはバキシムに頼んで、超獣の角と背中をくっつける。ひも状のバインドで角とフェイトの身体を結んで固定した。。
「いつでもいいよ」
赤色のカラータイマーはピンチの証だが、ウルトラマン反撃の合図だ。
フェイトは涙を拭って、バルディッシュを構える。
―――残り時間、00:40
バキシムが角ミサイルを発射、バインドで結ばれたフェイトが再び空へと飛び立った。
目標はもちろん、ガタノゾーア。
「バルディッシュ、フォームチェンジ。ザンバーフォーム」
大鎌状のバルディッシュがフェイトの掛け声と共に剣へと変化。両刃が付いて、少女の身の丈よりも巨大になった金色の剣。フェイトはさらに魔力をこめて大剣を巨大化させた。その大きさはガタノゾーアの爪を上回る。身長130センチそこそこの女の子が扱えそうにもない。頑張っても上下に動かすだけで精一杯だろう。でもそれだけで十分だ。
強烈な閃光に気づいた邪神が闇を噴き出して反撃。フェイトは大剣を両手で持ち替えて、前に突き出した。余った魔力を使って、自分の顔とバキシムの角にバリアを張る。そのまま怯えることも無く霧の中に突っ込んだ。
霧から抜けるとフェイトの両腕は石へと変わっている。だが、バリアで守られていた超獣の角は勢いを増して、フェイトの瞳は輝きを失っていない。それどころか、大剣の光を受けて金色に輝いている。
「貫けぇぇええ!」
ついに光の剣がガタノゾーアの顎を捕らえた。大剣の質量はかなりのものだが、石化した故に両腕は曲がることない。フェイトはあえて両腕を石にすることで、重さや衝撃で腕が曲がらないようにした。目論見どおり、腕は真っ直ぐと伸び切って、バルディッシュが邪神の顎にめり込んでいく。
邪神の下顎からぶち抜いて、そのまま上顎も貫通。バルディッシュという名の光の釘が突き刺さった。口を封じられたガタノゾーアは闇を吐き出すことはできない。
「フェイト、よくやった! コイツは、みんなの仇だ」
顔を挟んで頭上からヴィータが大回転。遠心力を利用して、シグナムのレヴァンティン目掛けて鉄槌を振り下ろす。
バルディッシュと同じくらいの大きさまでに巨大化したグラーフアイゼンはレヴァンティンの柄を捕らえると、バキッと音を立てて甲羅に深くめり込んだ。レヴァンティンが杭となり、ガタノゾーアの甲羅に雷が走ったような亀裂が入る。
さっきまで放たれてたレーザーが止まる。ついにガタノゾーアが怯んだ。
―――残り時間00:30
「ユーノ、いくぞ」
「分かった」
これを好機とユーノ、クロノコンビが得意のバインドでガタノゾーアの巨爪をがんじがらめに拘束。
追い詰められたガタノゾーアは最後の武器、触手を伸ばした。目標は、なのはとすずか。なのはは両目と両足が石へと変わり、身動きが取れない。すずかもすずかで、両腕がなのはを支えたまま石になってた。グロッケンは震えないし、クロノたちはバインドの維持で精一杯。
絶体絶命な状況なのに、すずかは笑ってた。
「今だよ」
刹那、黒一色だった海面から無数の火球が飛んできて、邪神の触手を焼き払う。
これほどの火球を一度に操ることができる人物をフェイトは一人しか知らない。
「アリサ!」
フェイトが海面を注視すると、一ヶ所から絶えず火球が召喚されていた。
デスレムインフェルノ。異次元から火球を呼び出して攻撃するデスレムの必殺技。そして、それはデスレムの力を宿した武器、デスローグを相棒とするアリサ・バニングスの得意技でもあった。
アリサはレイキュバスの背中で波に揺られながらも、今までの仕返しとばかりに連射している。彼女を背負うレイキュバスも口から火球を放ってアリサに加勢した。
―――残り時間00:15
触手を焼き切られ、ついに武器を失ったガタノゾーア。無防備となった今がチャンス。すずかが叫んだ。
「なのはちゃん標準は任せて。私の目は闇でも大丈夫、だって吸血鬼だから」
ガタノゾーアと同じ赤い目。でもそれは邪悪なものではなく、闇夜を照らす炎のようにみんなを導く綺麗な瞳。すずかが標準を合わせる。彼女の両腕は石になっているからぶれることはない。精確に邪神の弱点を打ち抜くだろう。
―――残り時間00:10
すべての準備が整い魔力が溜まる。石化は進行している。これが正真正銘、最初で最後の反撃だ。
―――残り時間00:05
だれもが待ちわびたあの言葉を、あの少女が叫ぶ。
「みんな、行くよ」
―――4
「全力」
―――3
「全開」
―――2
「スターライト……」
―――1
「ブレイカァァアアア」
桃色の光線は暗黒に染まっていた雲も海原も照らして、心の闇さえも吹き飛ばす。魔法の光は邪神の額に直撃し、大爆発を起こす。ヴィータの一撃で脆くなっていた甲殻が砕け散り、勢いそのまま背中をぶち抜いた。もちろん、核となっている『赤い欠片』も貫いて。絶対優位に立っていたはずの闇は圧倒的なまでの光を浴びて、桃色に染まっていく。
難攻不落のガタノゾーアがついに陥落する。コアを攻撃されたことにより、身体のあちこちから爆発が起こる。額に突き刺さっていたシグナムのレヴァンティンが宙を舞い、顎の下にいたフェイトにも衝撃が襲った。
思わずフェイトが右腕で顔を覆た。
「石化が解かれてる」
邪神の力が弱くなったのか、フェイトの身体は元に戻っていた。両腕も両足も自由に動かせる。邪神の持つ再生能力を封じるため、今しかないとフェイトはポケットから『赤い欠片』を取り出すと、沈みゆくガタノゾーアへかざした。
「『赤い欠片』よ、ガタノゾーアを封印してください!」
フェイトの願いに反応し、『赤い欠片』は桃色の光に負けないくらいの光を放つ。時空が歪み、願いを叶えんと邪神を吸い込み始めた。
5センチほどの小さな宝石に200メートルの怪獣は吸収されていく。不気味な遺跡は消滅。脅威だった石化する闇も光となって霧散した。
「フェイトちゃん、グッジョブ」
「なんとか……なった」
フェイト達はフラフラになりながらも、岸まで移動して、助けを待つ。
ゾイガー、スコーピスと戦っていた怪獣達、ヴィータたち守護騎士、リーゼ姉妹。みんなが一度に集まった。再開を喜ぶ者、疲れて倒れる者、項垂れて反省する者。それぞれが異なった反応を示したが、共通していることは誰もが嬉しそうだった。
改めて無事だと実感すると、なのはとフェイト、すずか、アリサの四人はお互いの顔を見て笑いあう。
青空の中心で光を放つ太陽は、元の輝きを取り戻した。
ハイペースで投稿していたため、ストックが少なくなりました。
次回の更新は一週間後とかそのくらいになると思います。
小ネタ
ガタノゾーア戦はティガリスペクトで子供たちVSガタノゾーアの構図。
比較的大人なシグナムやザフィーラ、シャマルが石化して、ヴィータが残ったのはそれが理由。直接ガタノゾーアと戦った怪獣、バキシムとレイキュバス。この二体は擬人化マシーンで子供の姿になっていたため参戦。