プレシアにざっくりと状況を教えてもらった。
管理局、守護騎士達と俺の創った怪獣軍団は『闇の書』のバグを協力して直すことにした。俺たちのSOSから『闇の書』を書き換えることが可能だと判断し、俺たちの送ったメッセージもあってプレシアが『闇の書』の内部に侵入する。真っ暗闇の中をふらついていたら、ゾイガーとゲオザークのティガコンビに遭遇してここまで連れてきてもらったようだ。
俺たちは、この話を無駄に文明が発展し、娯楽まみれのキャンプ地で聞いている。プレシアはこのキャンプ地を見て、どれだけ大変だったと思っているのか。とブチ切れた。確かに申し訳ないと思うが、これに関して言い訳をしたい。だって退屈だったんだもん。
「まあ、いいわ。あなたのおバカは今に始まったことじゃないし」
失礼なことを言って、プレシアは頭を抱えながらもポーチを探って四つのソフビを取り出した。ゴルザ、メルバ、ガンQ、超コッヴ。それを俺の目の前に並べる。
「デスレムから差し入れよ、これで元気出せって言ってたわ」
それだけ告げると、プレシアは『闇の書』の説明を求めて管理プログラムさんと話している。俺は用済みなのか、はやてともども放置された。……にしても、デスレム、いいセンスしているじゃねーか。これはアイツを揃えて、あの怪獣を創れ。とのご命令ですね。
「うーん、この味付け、シャマルやな」
エビかカニっぽいものが欲しいなと思っていた矢先、はやてが天ぷらそばを食べていた。でもあんまり美味しくなさそう。
「はやて、その海老天もらえる?」
「ええで。ほい、あーん」
うん、スーパーの総菜売り場に売っている天ぷらよりもギリギリ美味しくない。微妙。
失礼な感想を抱きながらモグモグと咀嚼していく。残ったエビの尻尾と、ガラクタの山からプラスチックで出来た脳みその模型を拾ってきて、分解し、四体のソフビの中に入れた。
「『赤い球』よ、王を創れ」
『赤い球』がピカリと光ると、四つのソフビを照らす。赤い光を受けて、ソフビと素材がグニャグニャと曲がると、一つに合体。たちまちプレシアよりも大きくなって、厳つい怪物の姿へと変わる。真っ白だった身体に色が見えるようになると、そいつは吠えた。
うるせえ。
興奮した俺の声もかき消すほどの声量。超合体怪獣ファイブキングだ。
ウルトラマンギンガSに登場した怪獣だ。左手がガンQ、右手がレイキュバス、胴体が強化ゴルザ、メルバの尻尾と翼に両足が超コッヴ。この五体が合体した怪獣だからファイブキング、平成版タイラントとでも言ったら分かりやすいと思う。
合体した怪獣の全てが光線や火球を発射でき、ファイブキング自体にも光線や火球を受け継いでいる。原作では左手のガンQが相手の光線を吸い取ってしまうため、高町なのは対策も完璧。フェイトの切断攻撃はレイキュバスのハサミが何とかしてくれるといいな。
でも、両手がレイキュバスとガンQだから近接戦闘は微妙。知力特化のチブル星人が操ってたからなおさらだ。接近戦のタイラント、遠距離戦のファイブキングみたな感じでタックを組んでいただきたい。
個人的には胸辺りのパーツにネオジオモスとかゴルドラスの角でも付ければもっと強くなるんじゃないかな。でも今回は原作リスペクトで五体合体にしました。
閑話休題。
ファイブキングは五体の怪獣を合体させただけあって、鳴き声は怪獣五体分。非常にやかましい。
ヤツは俺を見つけると、いきなり抱き着いてきて肩を組んだ。その間ずっと吠えっぱなし。カラオケでデュエットしているみたいでご機嫌だ。
俺の怪獣達にもちゃんと挨拶をすると、バルタン星人とじゃんけんをして飽きると、はやてや管理プログラムさん、苛立ち中のプレシアにも抱き着いていた。そしてプレシアを除く連中とそこそこ仲良くなった。こいつ、初対面なのにコミュ力高くね、陽キャか?
ファイブキングは騒ぎ倒した後、ゲオザークや他の怪獣達と一緒にガラクタの山へと突っ込んでいった。楽しそうでなによりだ。
「作業の大まかな流れは分かったわ」
プレシアが帰って来た。管理プログラムさんと話し合った結果、ついに『闇の書』をハッキング出来るみたい。
「やっぱり、『闇の書』の暴走の原因は転生機能による再生と防衛プログラム。まず初めに転生機能を上書き、破損個所を管理局の部品で修正する。
その後に防衛プログラムを改正したものを用意。この二つをすぐに実行できる状態まで持ってくる。最終的には八神はやてが正式なマスターになった瞬間、たたみかける算段ね」
俺には全く理解できないが、プレシアが出来るって言うんなら出来るんだろう。
「今後、『闇の書』には魔力を少しずつ、継続的に補給していくことになっているわ」
さらっと魔力を用意したって言ってるけど、『闇の書』のページが埋まるほどの魔力をどこから用意したんですかね。
「誰かさんが壊した『時の庭園』に漂っている大量の魔力を使うことになっているから安心してちょうだい」
マジで。
「めんどくさいことになったらヒロシが何とかしなさい。あと、足りないパーツとか出てきた場合にも貴方の『赤い球』で解決すること」
突然の飛び火。『時の庭園』の魔力を使うこと自体大丈夫なのか? どうやら魔力に応じて『闇の書』の機能が解放される可能性もあるらしい。その中に俺たちの都合に悪い機能があった場合、俺の怪獣達が戦うことになった。
メンバーはドラコ、テレスドン、ティグリスと原作では微妙な連中とブラックギラスとレッドギラス、ゾイガー、スコーピス、ジェロニモン。新しく加わったゲオザークとファイブキングだ。これで戦闘できるのかな。プレシアが戦った方が強い気が……。
隣を見ると、デカいハサミを持った宇宙人がいる。コイツ居るから平気か。
「ヒロシ、残念だが私はプレシアと管理プログラムと『闇の書』の改変にあたる。君たちで何とかしてくれ」
君さあ、分身の使いどころだぞ。クローン技術は朝飯前だって言ってたじゃん。空埋め尽くすほど大量発生していたくせに。
「まあ、ほら。新しく怪獣創ればええやん」
「人型勢がみんな戦力外だから仕方ないか」
今もなお怪獣達はガラクタの山から素材を探してくれている。俺の足元にも使えそうなゴミ……もといい、お宝が積まれている。そのうちの一つ、鳩のはく製を拾い上げた。
鳩は帰省本能があるって言ってたな。あー、こんな災難、早く終わらして俺も家に帰りたい。……俺の家ってどこ?
帰る場所が分からないが、『闇の書』に居たくない。居心地はいいけど。てなわけで、鳩っぽい怪獣を創ることにした。適当にエースのDVDを引っ張ってきて、鳩のはく製をその上に置いた。
「強い怪獣……じゃなかった。超獣を創って」
エースの中で強い超獣はバラバ、ジャンボキング、エースキラーくらいしか思い浮かばないぞ。あとは月滅ぼしたルナチクスとか、ドリームギラスとかかな。
『赤い球』の光は俺の帰りたい欲に反応して、鳩のはく製はドンドン大きくなった。そして、バードンみたいなシルエットに変わる。エースに出てきた鳥型の超獣って何かいたっけ?
俺が記憶の片隅をほじくっていると、光が納まった。鳩のはく製は立派な鳥型の超獣へと変化した。
ベムスターのような腹には謎の突起物が突き出している。体形はバードンみたいで、肩から腕にかけて赤色との棘が一列生えていた。鱗は緑、青色の甲殻を持ち、イっちゃった目。そういえばこんな超獣いたな。
「ブラックピジョンか」
バキシム、ベロクロンという良デザインの二匹。ドラゴリー、ルナチクスというインパクトのある連中。エースキラー、Uギラ―ザウルスの最強コンビ。ハンザギラン、バラバ、キングクラブというタイラントのパーツになった奴ら。
メジャーとマイナーな超獣に格差があるというウルトラマンエースの特徴だ。エースを何度もノックアウトした実績を持つくせに、何故かマイナーなのがこの超獣。大鳩超獣ブラックピジョン。
肝心の実力派と言うと、口からは火炎放射とバードホワイトバブルという毒液を放つことができる。鳥超獣よろしく、くちばしの突っつき攻撃や翼の突風も武器だ。腹の突起物は一発限りのミサイルになっている。バキシム先輩、マジリスペクト。攻撃技も豊富だが、防御面もメタリウム光線を腹で吸収し、跳ね返した実績もある。高町なのは対策は完璧だ。
「ブラックピジョン、よろしく」
ブラックピジョンは俺を見ると、親だと思ったのか抱き着いてきた。刷り込み現象ってヤツですね。
新しく創った超獣もガラクタの山の探索に行かせた。ファイブキングに絡まれて、ゾイガーと一緒に発掘作業にいそしんでいる。後になって分かったことだが、鳩だけに口笛を吹くとどんな場所からも飛んでくる。犬とボールを投げて遊ぶって、こんな感じなんだろうな。
その後は割と平和だった。元からバルタンが『闇の書』を解析していたため、魔法以外の部分はすでに終わっていた。バルタンの専門外だった魔法に関しては、プレシアと管理プログラムさんの協力で解明された。
これにて必要なパーツや作業が判明する。『闇の書』のページを使って、外にいる時空管理局とやり取りをし、内部で必要なパーツを送ってもらう。防衛プログラムのコピーを書き換えていき、外部では壊れたパーツを交換していった。
この間にも『闇の書』に魔力が溜まっている。全てのページが埋まり、メンテナンスが終わるのも時間の問題。あとは八神はやてが『闇の書』の正式なマスターになって、今まで作ってきたものを組み込んで終了。めでたしめでたし。
「ついに私もヒロシも外に出られるんか」
「地球じゃなくて『時の庭園』に出るらしいけどな」
あまりにも暇なので、気分転換に新しく怪獣を創ることにした。ガラクタの山から発掘してきた照明とウルトラマンの映画のDVDを引っ張り出して、『赤い球』に願う。
赤い光に照らされて、二つの物体が合体する。次第に頭や腕などの部分ができ始めた。頭部には三日月上の角が生え、両手は強大なハサミ、脚は短く、太い尻尾の先端が二つに分かれている。照明はモノアイのような目に変わった。全身に鱗や甲殻みたいな生物のようなものはなく、機械で出来ていた。
「超合体怪獣グランドキングだ」
映画ウルトラマン物語で登場したボスキャラ。ジュダとかいう悪者が怪獣達の怨念を集めて生み出したのがコイツ。角はゴモラ、ハサミはバルタンとかサドラ、尻尾がツインテールでできているらしい。全身メカなので分からんが。タイラントと同じような生まれ方な気がする。
さて合体怪獣、ボスとだけあってやっぱり強い。怪力を誇り、全身から電撃や尻尾からレーザー光線、ハサミから毒ガスを吐く。これだけでも十分なのに、頭部からはグランレーザー、口からはグランビームなる必殺技を持っている。防御面に関しては、バリアなしの状態でウルトラマンの必殺光線を立て続けに浴びてもビクともしない。強い。
名実ともに怪物なグランドキング。でも、後輩とかは自分の武器を利用されて負けているので、なのはと戦わせたら、何だかんだ負けると思う。悔しいことに。
「よろしくな、グランドキング」
誕生を俺と一緒になって喜んでくれた。グランドキングに生まれた経緯を話していると、管理プログラムさんがやってきた。
「我が主、準備ができました。参りましょう」
俺とはやては管理プログラムさんに呼ばれて魔法陣の描いてある場所へ案内された。
とはいったものの、数歩動いただけで着いたけど。
はやてと管理プログラムさんが魔法陣の中に入ってもらい、プレシアとバルタンが支援することになっている。外の世界ではメフィラス達が魔力供給マシーンをフル稼働しているみたいだ。管理プログラムさんが指を動かして作戦開始の合図を書き加えている。俺と怪獣達は絶賛待機中、魔法陣に興味津々なゲオザークを制止しつつ、見守っていた。
もうすぐこの『闇の書』から出られる。長かったようで、短かった『闇の書』生活。外ではなのはとフェイトが喧嘩したり、ガタノゾーアが倒されたりと色々あったみたいだが、大丈夫なんだろうか。
「それでは主、お願いします」
管理プログラムさんが合図を出した。魔法陣が輝きだして、バルタンとプレシアも忙しなく作業開始。八神はやては静かに目を瞑っている。
今まで真っ黒だった『闇の書』の内部が一変、白い文字が現れていく。パソコンのプログラムコードみたいに白い文字が書かれては消え、また現れる。防衛プログラムや転生機能の修正は順調らしい。
このまま無事に終わればいいな。
俺が呑気なことを思い始めた時だった。
管理プログラムさんが悲鳴を上げた。
彼女の苦しみに反応して、真っ黒だった内部が赤に点滅し始めた。白い文字に覆いかぶさるように赤い字で『ERROR』が乱発する。
「ああもう! 何なのよ」
プレシアは緊急事態に頭を掻きむしりながらも必死に術式を編んだ。バルタンも分身能力を総動員して事の解決に当たっていた。
どんな間抜けでもこの状況を見たら不祥事が起きたと分かるだろう。俺と怪獣たちも魔法陣の周りに集まって、バルタンやプレシア、はやてと管理プログラムさんを守るように囲んだ。
「……プレシア、バルタン。ダメだ、私の身体を闇が……蝕んで……」
管理プログラムさんは力尽きたのか、バタリと倒れてしまった。下半身が不自由ながらもはやてが懸命に支えている。
動けなくなった二人を見てバルタン叫んだ。
「プレシア、中止だ!」
そして異変が起きる。
黒い空間からドロドロした気味の悪い液体が垂れてくると、それらは人の形に姿を変えて俺たちのところに迫って来た。
「全員、攻撃開始!」
影のようなソイツ、相手の正体が分からないけど、絶対に良いものではない。俺は怪獣達に命令を出して攻撃させる。
ファイブキングの光線が影を貫いて、テレスドンの火炎放射が焼いた。ギラス兄弟は合体して竜巻を起こす。
俺たちの攻撃は影には有効だった。個性豊かな必殺技を受けて迫ってくる影は消滅していった。しかし、黒い空間から湧き上がるように増えていく影は俺たちの処理能力をはるかに上回る。
気が付けば影だらけ。敵がゆっくりと近づいてくるから時間的には余裕があるけど、空間的にはもう無理だ。
「みんな、拠点に避難しろ」
バルタンの叫びを受けて俺を先頭に撤退を開始。あそこなら便利な物がそろっているので逃げるにはもってこいの場所だ
俺はガラクタの山を見えた瞬間、『赤い球』の力で巨大な城に変える。その中に避難して、扉を石にした。管理プログラムさんと八神はやてを城の奥底へと避難させた。ここなら時間を稼げるだろう。
一時的とはいえ、影から逃れた。突貫で創ったもものの、鉄で囲まれたこの空間は安心できる。管理プログラムさんを含め、みんな落ち着き始めた。
管理プログラムさんは呼吸が乱れ、顔色は悪い。それでも伝えたいことがあるのか、はやてに支えられながらもポツポツと話し始めた。
「……すまない。今まで、蓄積されていたバグが、一気に噴き出した、みたいだ。あの影は、かつて私たちが収集した者や、『闇の書』の暴走によって、犠牲になった人々だ。……もう、助かる術は、ない」
管理プログラムさんはぐったりと倒れ込んでしまう。今まで犠牲になった人たちの怨念があの影、吸い込まれた俺たちが活動できたようにあの影も動けるのか。転生機能で『闇の書』が初期化されたとしても、バグは消滅せず継続していたことから、以前の主や犠牲者の怨念が残っていたらしい。
まだ勝負はついていない。バルタンとプレシアは作業を再開したし、外ではクロノやメフィラス達が異変を感じて対処しているはずだ。内部と外部で力を合わせれば打破できるはず。
「プレシアさん、外は『時の庭園』だよな!」
「ええ、その通りよ。それが何!?」
それさえわかれば十分だ。それに、ここじゃあ狭すぎて戦いなんできやしない。
俺は怪獣達を引き連れて、『赤い球』を持って、城の最上部へと登っていく。
「ヒロシ、何処へ行く、外は……外はもう」
管理プログラムさんは勝手に絶望しているけど、俺にはまだ希望がある。
だって、ここは『時の庭園』だ。怪獣軍団を創り上げた俺が高町なのはを迎え撃った思い出の場所。ここにはあの戦いで魔力が満たされて、その魔力はこの『闇の書』に注がれている。
そして、俺の創り上げた怪獣達は魔力に近い何かで出来ていた。だから俺はこの訳の分からない空間で、ゾイガーやスコーピスと再会できた。
だとしたら、アイツも魔力となってこの空間に存在しているはずだ。
「俺にはまだとっておきがある」
かつて、破壊へと走ってしまった邪悪な力。大勢の人や仲間たち怪獣に迷惑をかけた自惚れた願い。
あれから少しだけ時間が流れて、怪獣ってなんなのか分からなくなっちゃったけど、オマエの存在を忘れたことは一度もない。だってオマエと一緒に生きてきたから。
「その力でみんなを守るんだ」
でも、その過去を受け入れて、向き合って、この状況を打破して、誰かを助けることができるのなら、喜んでやってやる。
俺は城の頂上へとたどり着いて、扉を勢い良く開ける。城の周りをドロドロの影が取り囲んでいた。怪獣達の猛攻は続く。アイツらの雄たけびを聞きながら、俺は『赤い球』を掲げた。
「戦え! 俺の最強怪獣」
―――キングオブモンス―――
読者アンケート怪獣より
ブラックピジョン、グランドキング、ファイブキングの三体です。
遅くなってごめんなさい。