このお話しも5~6話くらいで終わると思います。もうしばらくお付き合いください。
※シグナムのセリフで『ベリュドラ』という怪獣の名前が出てきましたが間違いです。正しくは『闇の書の闇』です。ベリュドラは登場しますが、まだ出てきていません。申し訳ございませでした。
×『ベリュドラ』→〇『闇の書の闇』
キングオブモンスが誕生するよりも前、『闇の書』のページを埋めるために時空管理局が『時の庭園』にたどり着いた。
かつての戦闘によって、更地になりプレシアが構えていた城はきれいさっぱり無くなっていた。だが、地面自体は無事。亀裂が入ってあるところもあるが、時空渡航艦アースラが着陸しても壊れない。
土台が安定しているのが分かると、アースラを泊めるて『闇の書』の解析が始まった。
アースラから出て『時の庭園』の中心地まで移動すると、あらかじめメフィラス達が作っておいた機械が置かれた。
透明なカプセルにラッパの口のようなものが取り付けられていてそこから魔力を吸収するらしい。そのカプセルの中には『闇の書』が、カプセルの外にはさまざまなコードが張り巡らされていた。コードを通じてモニターにいくつものグラフが表示される。これで『闇の書』の様子が分かる仕組みになっている。
「異次元で作っておいた魔力収集マシーンです。この場に散らばっている魔力はもちろん、部品などの実体のあるものも『闇の書』へと送り込むことができます。
魔力は自動で送り込まれるので、後は量や速度をコントロールし、こちらとあちらの準備が完了すれば作戦を決行すればいいでしょう」
「キングオブモンス、バジリス、スキューラ。ゾイガーとスコーピス軍団。そして戦闘で散らばった魔力に、以前フェイトや我々が集めていたジュエルシードの魔力。これらを総合すると残りのページが埋まる計算になる」
機械の説明をメフィラスが、必要になる魔力量をメトロンが教えた。
胡散臭い二人だが、その技術は確かなもの。自動で魔力収集が可能となった今、原生生物や魔導士と戦う必要が無くなった。これで管理局は準備に費やすことができる。
なのはやフェイト、怪獣達はガタノゾーア戦での英気を養いつつも万が一に備えることになった。作戦通りプレシアが『闇の書』へと侵入したり、ヴィータがシャマルの手料理を内緒で『闇の書』に転送させたりと平和な日々が続いた。『闇の書』の修復も順調で、とくに問題はない。魔力も計算のとおりに溜まって、残すは『闇の書』の完成、修復プログラムの起動だけとなった。
そして、事件が起こる。
『時の庭園』の中心地。『闇の書』の全てのページが埋まるとなって、時空管理局の研究員、協力した宇宙人はもちろん、シグナム達も見守っていた。
『闇の書』はページが埋まったと証明するように動き出し、ページがひとりでにパラパラとめくられていく。シグナムの目に怪獣の挿絵や料理のイラストが一瞬だけ止まり、過ぎ去ってパタンと閉じた。
「起動したのか」
誰かが言ったその直後、『闇の書』は宇宙人たちの作り上げたカプセルを破壊すると、外に飛びだした。そのまま赤い光を放たれ、人の形へと変わっていく。
すらりとした肢体が伸びて、白い手には黒いグローブ、細い腕には赤い包帯のようなものが巻き付いていた。この包帯は足にも巻かれており、長さの異なる黒いニーソを履いている。黒のジャケットとタイトスカート、ロングコートを羽織った女性が現れた。彼女の背中と腰に一対ずつ黒い羽根が付いていた。
そして、悲しげな表情を見せる彼女の瞳の色は『赤い球』と同じ、赤い色。『闇の書の闇』と『赤い球』の怨念が合体したような女性が、シグナム達の目の前に現れた。
「私は人が憎い。力を求めて力を与え、その先には滅びのみ。もう、破壊するのも奪うのもたくさんだ。いっそすべてを消滅させて世界を終わらせる。君たち人間が今までそうしてきたように」
不気味なエコーがかかった声で淡々と話し始めると、なのはを睨みつけた。
「どういうこと? 『闇の書』のバグは治ったんじゃないの?」
「ふむ、違うらしい。『闇の書』に溜まっていたバグと『赤い球』の性質が結びついて彼女が顕現したようだ」
現状からメトロンが推測する。修復プログラムが出来たとはいえ、効果を発揮するのは『闇の書』が完全に起動してから。修復プログラムよりも先に『闇の書の闇』と魔力として漂っていた『赤い球』の怨念が結びついてしまったようだ。
「消えろ」
彼女は『闇の書』を取り出すと、魔法陣を展開する。自身の周りに無数の光の球を生み出すと、その一つ一つからレーザー光線が発射された。
「諸君、出番だ」
メトロンの合図と共に戦闘班の怪獣達が飛び出して、光線や吸収能力を使って相殺した。その間になのは達はバリアジャケットをまとい、飛び立つ。
「私たちはあなたを助けたい! もうすぐバグが治るから信じて待ってて」
「うるさい」
なのはが説得を試みるも、『闇の書の闇』の攻撃は止まらない。虹色の光線が飛び交い、なのはやフェイトに襲い掛かる。ターゲットから外れた怪獣たちも反撃するが、相手は自分の周囲にバリアを張って無効化した。
ガタノゾーアも強力な相手だったが、攻撃パターンは四つ。バリアは張らなかった。それに比べて『闇の書の闇』の攻撃パターンは計り知れない、さらにバリアを複数展開できる。さらに『赤い球』と『闇の書』という二つの魔力も合わせ持つ。
生い立ち、実力、魔力。その全てにおいて最強の敵が立ち塞がった。
どれくらいの時間が経っただろうか。シグナムは瓦礫に埋もれながら、ぼやけていく視界の中で考える。
突如として『闇の書』から現れた女性。そいつは高町なのはの話も聞かないで、一方的に攻撃を始めた。むろん、黙っているわけにもいかず、相棒のレヴァンティンと一緒に立ち向かった。しかし、結果はこのとおり。敵の無限とも思える攻撃に苦戦、翼竜のような怪獣を自ら庇って倒れた。
かすみながらも桃色の光線や氷の剣、降りそそぐ火球からまだ戦っている人物がいることだけが分かる。
「シャマル」
シグナムは戦友の名前を呼んだ。しかし、囁きはすぐに爆音にかき消されてしまう。
シャマルが回復のプロフェッショナルだが、身体は一つしかない。強敵相手に怪我人の数は彼女一人で治療するには無理がある。シグナムは全身の痛みに耐えながら上体を起こして戦況を確認する。戦っているのは、なのは、アリサ、すずか、クロノたち。他にもアルフやリーゼ姉妹の姿も見える。怪獣軍団も大体が生き残っている。ユーノやリニスが居ないのはサポートか怪我人の手当てをしているのだろう。
「また負けたのか……」
ヒロシの怪獣軍団との戦闘、邪神ガタノゾーアに石化されて、今回の戦いで三度目の敗北を喫した。主を助けるために、主の命令を破って収集をした。その結果は主が『闇の書』に囚われてしまう。もがけばもがくほどに裏目に出て、シグナムに騎士としての誇りはすでに無くなっていた。
どうしてこんなことになってしまったのか。今まで歩んできた道を振り返り後悔に浸る。それでも烈火の将として、仲間たちが心配になって上体を起こした。
シグナムは頭を振ってぼやけていた視界を元に戻す。焦点を合わせると、シグナムの目の前で、もぞもぞと黒いマントがうごめいていた。
「テスタロッサか」
フェイトもやられたらしい。しかし、フェイトはシグナムと違い、全身傷だらけになりながらも立ち上がる。
フェイトもシグナムと同じで大切な人を『闇の書』に囚われて、彼を取り戻すために戦いを選んだ。その結果は何も得られず、親友のなのはを傷つけて終わった。ガタノゾーアを倒したきっかけを作ったとはいえ、シグナムは少なからずフェイトの境遇にシンパシーを感じていた。
デバイスを握りしめて戦意を見せるフェイトにシグナムは声をかけていた。
「どうしてそこまで真っ直ぐに戦える。相手はお前の力をはるかに上回っているんだぞ」
どこか怯えた表情のシグナムに、フェイトは優しく微笑んだ。
「相手が強いとか、勝ち目がないとか、そんなものは関係ありません。私はただ大切な人を助けたい。どんな目に遭ってもそれだけは変わりません」
フェイトはネックレスを外して『赤い欠片』を握りしめる。小さな手の中でほのかに赤く輝いた。血のようなグロテスクな赤ではなく、暖炉の炎のように暖かい光。その光はシグナムを優しく照らしている。
「私に力が無くても、私には心強い味方がいます。なのは、アリサ、すずか……まだまだたくさん。貴方にだっているはずです」
シグナム!
聞き覚えのある声がしてシグナムが振り向くと、そこには見知った三人が立っていた。シャマル、ヴィータ、ザフィーラだ。
「こんなとこにいたのか!」
「どうして、敵はどうなった!?」
驚くシグナムにシャマルが答えた。
「あの子の攻撃範囲広すぎるから私たちが一旦下がって攻撃を防いだり、救助活動してたりしたの。ほら、戦闘っていきなり始まっちゃったでしょ? それで逃げ遅れた人たちもいて」
どんな状況でも付いてきてくれたシグナムの仲間たち。シグナムもザフィーラの肩を借りて立ち上がった。現状を変えたいと願うシグナム達の前に、一体の怪獣が姿を現した。
翼竜のようなこの怪獣はさっきシグナムが身を呈して庇った奴だ。そのおかげでシグナムは撃墜されたが。
「お前は……」
エアロヴァイパー。かつて『時の庭園』でヒロシに創られて、フェイト、アルフと一緒に過去へ飛んでリニスを助けた怪獣。時空を超えることのできるこの怪獣ならば、出来ることがあるかもしれない。思いが通じてか、エアロヴァイパーは二人に対して小さく鳴いた。
「どうしたんだいと言っているよ」
メトロンがぬうっと現れる。異星人の襲来にシグナム達は驚いて目を見開いた。そんな彼女たちを押しのけて、メトロンが話始める。
「私たちはヒロシ君を助けることができない。いや、助けることができなかったと言うべきか」
だから事件は繰り返したんだろうね。
メトロンはどこか寂しそうだ。事件とは、おそらくキングオブモンスとガタノゾーアの戦闘だろう。
「我々はあくまで人形さ。君たちと寄り添うことはできるけど、君たちとは友達になることはできない。友達のように付き合うだけで精一杯。主の命令を独自解釈すれば好き勝手には動けるけど、基本的には受け身。シグナム君たちのように命令を無視することはできないよ」
バツが悪そうに俯いたシグナムを、メトロンはあの白い腕で頭を撫でる。
「私は君たちが羨ましい。君はシグナムと言う名前を持っているし、フェイトはフェイトだ。プログラムであれ、クローンであれ、名前は君たちを個人として認めるもの。
でも我々は違う。私のメトロン星人というのは種族の名前で、私個人の名前ではない。タイラントもエアロヴァイパーもテレスドン、ドラコ、バキシムだって。私たちの行動や趣味嗜好は全てテレビのもののイメージさ。なのは君たちに何度となく挑戦したメフィラスは少年のイメージ通りのメフィラス星人であろうとしたようにね。
でも私はメトロン星人としてではなく、個人として見て欲しかった。しかし、結果は違った。結局、私はどこまでいってもメトロン星人だったんだよ」
こんな状況でもメトロンは呑気にココアシガレットをしゃぶる。これも浩のメトロン星人に対するイメージが反映されているようだ。
メトロン星人としてではなく、個人として認められたかった。彼はどこか悲しそうに、でも誇らしげに独白した。ポリポリと駄菓子を咀嚼する極彩色の宇宙人をフェイトは否定した。
「……違うと思います。私はアリシアとして生み出されたけど、アリシアにはなれませんでした。フェイトになりました。だからあなたも同じだと思います。
ううん、この世界にはメトロン星人やメトロン星なんてない。生まれた時からあなたはあなた一人。そして、メトロン星人として生まれたけど、メトロンっていう人物になった。恋バナが好きで正義の味方とトランプをする宇宙人はあなたしかいない。メトロン星人のメトロン。それがあなたの名前です」
メトロンはただでさえ丸い目がまん丸になった。彼の頭の中では、メトロンという単語がグルグルと回っている。
メトロン星人と呼ばれることもあったが、ヒロシは基本的にメトロンと呼んでいた。そもそもこの世界に怪獣はおろかウルトラマンも存在しない。なら本来種族名として名付けられた名前は固有名詞なのではないか。ウルトラマンの世界では多数いたメトロン星人もこの世界ではたった一体。ならこのメトロンこそが彼を表す名前なのだろう。
「ハッハッハ。まさか、いつの間にか名前を手に入れていたなんて。気づきもしなかったよ。」
メトロンは何かを決意したようにフェイトとシグナム達を見つめると、発光器官を光らせる。
「私たち宇宙人も、怪獣も、元は一人の少年が「友達が欲しい」という願いで創られた物。でもそれは宇宙人や怪獣へと変化していったようだ。時の流れなのか、はたまた文化の違いかは知らないけどね。
我々は人形であり、テレビのソレを反映させた玩具。しかし、それは人と寄り添うことで怪獣や宇宙人へと変わっていった。宇宙人や怪獣が居ない世界で生み出されたから我々はただ一人。テレビ番組で与えられた種族名は固有名詞へと変化した」
嬉々として生まれたセリフはこのメトロン星人が出した答えでもあった。メトロンはいつもと同じ変化のない表情で、今まで以上に力強くフェイト達に訴える。
「さあ、今度は私たちの番だ。玩具ではなく個人にしてくれたお礼に君たちの力になろう。私のような平和主義者から、かつて暴れた大怪獣まで!」
メトロン星人から話を振られて、シグナムもフェイトも胸に手を当てる。目を閉じて、何をしたいのか。自分たちがすべきと事は何か。ひたすら考える。
この戦いは敵が一方的に攻撃を始めて、それに応える形で戦闘に突入していった。今は戦っているが、暴走した『闇の書』に勝利することよりも、『闇の書』に囚われている八神はやてと鹿島ヒロシを救出する方が大切だ。二人の願いは変わっていない。
フェイトは網膜に光を感じて目を開ける。胸元では赤い光が淡く光を放っている。それは人の心の奥底に秘めた願いのようだった。
「私たちの力だけじゃ『闇の書』を、ヒロシを助けられない。だから私たちに力を貸してください」
フェイトが手にしたその欠片には海鳴市の海上で大暴れした邪神が封じ込められている。シグナム、シャマル、ヴィザフィーラを石に変え、なのは、フェイト、クロノ、ヴィータ達を敗北寸前まで追い詰めた、あの怪獣。
ここでアイツが甦ったら状況はさらに悪化するに違いない。シグナムがフェイトを止めようと声を荒げた。
「テスタロッサ、その欠片をどうする気だ。状況分かっているのか!」
フェイトは穏やかに笑う。それでもアイツの行為はフェイトにも守護騎士たちにもしっかりと記憶されている。現に脳内に刻まれた恐怖からフェイトの手は震えていた。その小さな手のひらを、メトロンは大丈夫だと寄り添うように優しく握りしめた。
「大丈夫、怪獣達はどんな時も私の……ううん、私たちの思いに応えてくれた。だから今回も!」
タイラント、ラゴラスエヴォ、キングジョー、ギマイラ。落ち込んでいたフェイトに寄り添って支えてくれた存在。彼らの顔を思い出して、フェイトは赤い光を放つそれを片手で強く握りしめる。そして、ウルトラマンに変身するように腕を空高くかざした。
少女の願いに反応して、手にした『赤い欠片』が100万ワットのようにピカリと光る。巨大な光は質量を持って塊になると、あの怪物の形へと変わっていった。禍々しくも神々しい、あの咆哮が空気を揺らす。
「一緒にヒロシを助けて! お願い、ガタノゾーア!」
復讐を掲げて暴れまわった邪神。だが、本来ガタノゾーアに込められた願いは、大切なモノを守りたい。
復讐から救済へと願いを受けて、あの神が生まれ変わる。
フェイトに呼び出されたガタノゾーアは体長が130メートルから30メートルほどへと小さくなっていた。それでも顔や肩から垂れる触手、二対のハサミ、背中を覆う巨大な殻はガタノゾーアそのものだ。
ガタノゾーアはおとなしくフェイトを見つめている。シグナムはガタノゾーアを警戒してレヴァンティンを抜いた。彼女の耳にはひっきりなしにクロノやアリサから念話が入ってくるが、それに応える余裕はない。どうにかしてフェイトをガタノゾーアから遠ざけようと叫ぶが、フェイトに声は届いて無く、シグナムを無視してガタノゾーアへと飛び立った。
「ガタノゾーア、見える? 今、なのは達が『闇の書の闇』と戦っている。その闇の中にヒロシが囚われている。私はヒロシを助けたい。でも、私一人の力じゃ何もできない。お願い、『闇の書の闇』の動きを少し封じて」
ガタノゾーアは小さく唸った。それが何を意味するのかシグナムには分からないが、敵意がないことだけは理解できた。邪神は死闘を繰り広げたなのはやアリサ、すずか達には目もくれず、すぐに触手を伸ばして『闇の書の闇』を拘束する。
なのは達はガタノゾーアの乱入に混乱していたが、『闇の書の闇』の動きを封じたことと、直後にフェイトから、「ガタノゾーアは味方だ」と念話が入ったこともあって、敵対していないと理解したようだ。真っ暗な闇の中、ピンクや緑、青い光りがきらめく。なのは達がガタノゾーアの援護をしているらしい。
かつての強敵が180度ひっくり返って味方になったことにシグナム達が言葉を失っていると、フェイトが戻って来た。
「行こう、エアロヴァイパー。ヒロシを助けに行くんだ」
エアロヴァイパーが大きく鼻を鳴らし、任せろと胸を張った。フェイトはそんなエアロヴァイパーの胸に手を置いた。
「フェイト君、彼らも連れて行ってくれるかな?」
メトロンに呼ばれてフェイトと一緒にシグナム達が振り向くと、タイラントとキングジョー、ギマイラの三体が現れる。ギマイラは他三体の怪獣にギャアギャアと吠えて、指示を与えている。
ギマイラが静かになると、キングジョーが四機に分離して、それぞれフェイト、ヴィータ、ザフィーラ、シャマルの近くを漂った。シグナムのところにはエアロヴァイパーが背を向けて立っている。
「乗っかれと言っているようだ」
メトロンから通訳が入って、シグナムがエアロヴァイパーの背中に捕まった。すると時空怪獣はシグナムを乗せたまま宙へ浮く。分離したキングジョーも四人を乗せて飛び立ち、タイラントも飛行する。ギマイラは下でメトロンと一緒に手を振っていた。見送りのようだ。
「ギマイラって、ヒロシみたい」
フェイトが笑う。緩んだ表情を引き締めると、彼女はキングジョーの頭部を撫でた。
「お願い、キングジョー」
フェイトの指示に合わせてキングジョーが『闇の書の闇』目指して飛んでいく。その後にタイラントが続いた。シグナムが様子を見ているとホバリングしながらエアロヴァイパーがチラリとこっちを見つめてきた。
敵陣に突っ込むんだ、それっぽい言葉でも欲しいものだね。
喋れないはずの怪獣がそんなことを言っている気がした。怪獣の気持ちが分かるようになってしまったか。シグナムは内心笑うと、彼の視線に応えるべく剣を抜き、切っ先を『闇の書の闇』へと向ける。
「目標、『闇の書の闇』に囚われている鹿島ヒロシと主はやての救出。ゆくぞ、エア……エアヴァイパー」
エアロヴァイパーだ。
怪獣は大きく吠えると嬉しそうにフェイト達の後を追った。
ガタノゾーアの触手を傍目に、『闇の書の闇』の光線を横切り、驚くなのは達を通り過ぎていく。『闇の書の闇』は動けない上に敵が近づいていることに気づいて一瞬表情がこわばった。
シグナムがレヴァンティンを構える足元で、エアロヴァイパーが吠えて頭の角が光りだす。時空怪獣の角に反応してシグナムの懐も光を放った。以前メフィラスから貰ったゴルゴレムの結晶らしい。時間と空間を操る二つの部位が力を発揮し、『闇の書の闇』の腹部に渦が巻いて黒い穴へと変わった。
「みんな、行くよ」
先陣を切ったフェイトをはじめとして、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、タイラント、キングジョー。シグナムとエアロヴァイパーが『闇の書の闇』の内部、そこで待っているであろう二人の主を目指して暗闇が広がる空間へと飛び込んだ。
ついに、このssの構造的な部分に入りました。いや、物語読ませろよって人は我慢してください。プロローグでこの話は「怪獣て何だろう」がテーマみたいなことを言っていますので。ま、大したこと書いてないんですけどね。
死んだと思っていたヒロシの創る怪獣が人形から生み出された設定ですね。はい。この設定にもう一つ細工がしてあります。これも時期に分かるかと。