第97管理外世界の赤い球   作:破壊光線

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 エピローグまで完成しました。この作品はエタりません。……たぶん。


闇の書GO!GO!GO!

 フェイト達が侵入すると、そこには黒い影のようなもので埋め尽くされていた。気味悪くうごめくソレはフェイト達を見つけると一斉に襲い掛かる。フェイト達も影に抵抗してそれぞれデバイスを振るった。黒い影は数こそ多いものの、一体一体は弱く、そのほとんどが一撃で消えていった。

 しばらくの間、フェイト達は怪獣達に乗ったまま、魔法をばらまきながら進んでいくと、一段と大きい爆発を発見。怪獣達も気づいたようで、速度を上げて爆心地へと進路を変えた。

 

「……あの光線はキングオブモンス?!」

 

 先頭を飛んでいたフェイトが眉を顰める。真っ直ぐなオレンジ色の光線とその軌道に追随して爆発が巻き起こっていた。特徴的な光線はフェイトが知っている怪獣の中でキングオブモンスくらいしか思い浮かばない。

 フェイトが目を凝らすと、爆発の炎に照らされて怪獣のシルエットが浮かび上がる。紺の身体に金色の模様、同じく穴の開いた金色の翼も見つけた。やはりキングオブモンスのようだ。他にも二体怪獣がいる。バジリスとスキューラではない。見た目が機械で出来た巨大な怪獣と、全身が怪獣達のパーツで出来た合体怪獣だった。

 

「ファイブキングとグランドキングまでいる」

 

 この二体、つまりファイブキングとグランドキングはキングオブモンスと一緒に溢れかえる影たちと戦っていた。三体とも強豪怪獣だけあって苦戦している様子もなく、ビルを破壊するかのごとく黒い影を蹂躙していた。

 

「シグナム、あの怪獣達を助けたい」

 

 フェイトとキングオブモンスは一度敵として戦っているし、他の二体の怪獣とは初対面だ。敵の可能性もありえなくはない。

 しかし、怪獣達は影と戦っていた。ヒロシが生み出した怪獣ならば意思疎通は可能であること。そしてガタノゾーアのように味方になっている可能性があること。これらを考えて、フェイトはキングオブモンスの援護をすることにした。

 

「怪獣達に加勢します」

「分かった」

 

 フェイトの呼びかけにシグナムは短くつげ、エアロヴァイパーもろとも影の大群に突っ込んだ。その後にヴィータとタイラントが続く。

 ただでさえ優勢だったキングオブモンス達に、フェイトとシグナム率いる援軍が加わった。結果、影の大群は一瞬にして消え去った。黒い影が無くなり、フェイト達の足元だけが白い光で照らされている。フェイトが当たりを見渡しても近くに黒い影の気配は無い。

 

「ふう、これで一安心ね。……きゃあ!」

 

 身の回りの安全が分かると、いきなりファイブキングがシャマルに飛び掛かった。ファイブキングはシャマルに抱き着いたまま押し倒し、そのまま頭を撫ではじめた。大型犬が飼い主に飛びついてじゃれ合っているといえば分かりやすいかもしれない。

 

「大丈夫か! シャマル」

 

 ファイブキングは怪獣で、犬ではない。じゃれ合っているはずが、襲われているとしか思えない状況を見てヴィータが叫ぶ。しかし、その声はあのやかましい声でかき消されてしまった。それでもシャマルには届いたのか、ファイブキングの肩から白い女性の手が伸びて、親指を立ててグットの合図を出す。どうやら無事なようだ。

 

「ひどい目に遭ったわ」

 

 満足したのかファイブキングが起き上がり、腕を伸ばしてシャマルを立たせると、フェイトとキングオブモンスが向かい合う。

 キングオブモンスが鳴きわめき、時々グランドキングやファイブキングといった他の怪獣も吠える。その雄叫びにエアロヴァイパー、タイラントがコクコクとうなずいた。怪獣同士の会話が終わると、どこからともなく声がした。

 

「ここからは私が案内しよう」

 

 グランドキングのハサミから一人の宇宙人が飛び出した。ソフビくらいだったものが成人男性ほどの大きさになる。両手のハサミを上下に動かしてフォッフォッフォと笑う宇宙人。

 

「バルタン!」

 

 守護騎士たちを怪獣軍団率いて打ち破った司令塔、バルタンの出現でヴィータ達が戦闘態勢に入る。ヒロシの怪獣達と八神はやてで和解会議が行われたが、その会議にはシグナムしか参加しておらず、その会議も仮面の男の乱入でメチャクチャにされていた。メフィラス達とは和解できたが、ヴィータ達の中ではバルタンはまだ敵なのだ。

 

「君たちが怒るのも無理はないが、私も『闇の書』の被害者であり、この状況を打開すべく、八神はやてと協力している。この場に居るのも君たちの主の居場所へ案内するために来た。怒りを治めてくれないだろうか」

 

 自分は和解しているから、この場はザフィーラに任せる。シグナムはザフィーラに視線で合図を送った。

 彼は睨みつけるヴィータと乗り気なタイラントを抑えて前に出る。

 

「……俺たちより先にこの空間にいるのが何よりの証拠、か。分かった。お互い消化不十分だろうが、ひとまず協力しよう」

「うむ。こちらこそ感謝する」

 

 巨大なハサミとゴツイ手で握手する。これにて守護騎士たちと浩の怪獣達が和解した。

 

「状況を説明しよう。君たちも戦った、あの黒い影。あの正体は『闇の書』の元主たちの怨念らしいが……。

 ともかく、それに襲われて我々は避難した。今は城だか砦みたいなのを作ってその中に隠れている。八神はやて、プレシア・テスタロッサは無事だ、安心してくれ。

 それでヒロシが怪獣達を率いて影と戦闘。数は減らしたものの、まだ交戦中。そんな時に君たちが侵入したと情報が入った。私が分身し、怪獣達と一緒に探していたんだ」

 

 フェイト達はバルタンから状況を聞き、犠牲者がいないと分かって、ホッと胸を撫で下ろす。

 

「君たちの探し人はこっちだ。案内しよう」

 

 バルタンを先頭にフェイト達も後に続いた。

 不思議なことにあれほどいた黒い影とは遭遇せずに進んでいった。道中、影に警戒しながらもシグナムはバルタンに訊ねた。

 

「なぜシャマルはファイブキングに襲われたんだ?」

「ああ、ファイブキングはシャマルの作った天ぷら蕎麦から生まれている。自分の生みの親に出会ってテンションが上がったのだろう」

「私のごはん、怪獣になっちゃんたんですか!?」

「あはははは、マジかよ」

 

 それを聞いたヴィータがお腹を抱えてゲラゲラ笑う。ざるうどんから命名された怪獣は存在するが、天ぷら蕎麦から生まれた怪獣など聞いたことがない。フェイトもザフィーラも笑いをこらえるのに必死でプルプル震えている。一人納得のいかないシャマルが首を傾げた。

 

「ファイブキングさんとは戦っていないし……そしたらこの空間で生まれた怪獣でしょ? それなのにどうして私の作った天ぷら蕎麦がこの空間にあるのかしら」

「誰かが天ぷら蕎麦を『闇の書』に収集させたとか?」

 

 ザフィーラの推理にヴィータの動きが止まる。ダラダラと汗が流れて、吹けない口笛を吹き始めた。あからさまにおかしい挙動見て、シャマルのジト目がヴィータを捕らえた。

 

「ヴィータちゃん、もしかして……犯人なの」

「な、なんでもねーです」

「シャマル君、よくわかったじゃないか」

 

 バルタンが突然のカミングアウト、ヴィータが黒に。

 

「てめえ、なんでバラしやがった!」

「もう、お残しした罰でアイスは当分禁止って、はやてちゃんに言いつけます」

「えー、勘弁してよシャマルぅ。バルタン覚えてろよ!」

「君ノ日本語ハ分カリニクイ」

 

 ファイブキングがシャマルの料理から生まれたという事実がきっかけを作り、三人が談笑している。穏やかなシャマルが中心人物になったこともあって、先程までいがみ合っていた仲だとは思えないほどに打ち解けていた。

 三人のやり取りを聞いて、ザフィーラがフェイトに聞いた。

 

「ファイブキングとはどんな怪獣なんだ? 強いのか」

「うん。とっても。ウルトラマン二人同時に倒せるほど」

「……料理作るよりも怪獣創る方がうまいのか」

「ザフィーラまで」

 

 自信を無くして項垂れるシャマル。そんな彼女を慰めるキングオブモンス。母親と浩が無事だと知って喜ぶフェイト。彼女の笑顔を見てグランドキングも笑っているような気がする。

 敵陣のド真ん中でこんなにも呑気でいいのか。シグナムは大きくため息をつく。それもファイブキングの鳴き声によって潰された。助けを求めるようにエアロヴァイパーを見ると、時空怪獣はキョトンと首を傾げる。シグナムは一人頭を抱えるのであった。

 

 

 

 

 

 バルタンに案内されてフェイト達が奥へと進んでいくと、砦が見えた。あの建物の中に浩たちがいるらしい。

 バルタンは浩たちと黒い影が交戦中だと話していたが、砦の中心からは火炎や光線が放たれておらず、周りに黒い影一つ見えない。バルタンは交戦中だと言ったが、浩たちが打ち勝ったのだろうか。いずれにせよフェイト達は砦目指して走り出した。砦の細かい部分まで目視できる距離まで行くと、フェイト達の頭上を黒い影が飛び回りはじめた。

 

「敵か」

 

 シグナムがレヴァンティンを構え、それにならい他の守護騎士もフェイト、怪獣達も戦闘態勢に入った。黒い影は今までのように集団で戦うことを諦めたようで、うめき声を上げながら一つに合体した。

 

「我ハ滅ビヌ、貴様タチガ力ヲ求メルカギリ」

 

 巨大な影は黒いフード付きのマントをまとい、うめき声に近い言葉を発しながらフェイト達の前に立ちはだかる。言葉を使うが、目的も動機も分からない。せめて表情だけでも確かめたいところだが、巨大な影のローブには顔がなかった。ローブからは禍々しい黒いオーラがユラユラと揺れている。悪の親玉のような影に戸惑っていると、シャマルが言った。

 

「なんだろう、私たちを恨んでいるような……憎んでいるような、そんな負の感情が集まってできている気がするわ。話し合いで解決できそうにないかも」

「ならば戦うのみ」

「はやてに会えるんだ、お前が何者かは知らねーが、そこをどいてもらう」

 

 シグナムがレヴァンティンを掲げ、ヴィータもグラーフアイゼンを合わせる。二人の傍にいたタイラントとファイブキングもカマの腕とレイキュバスの腕を重ね合わせて吠えた。相手が攻撃をしていないから手は出していないものの、二人と二匹は影法師を睨みつけている。

 フェイトも警戒しながら影法師に声をかけた。

 

「……あなたの目的はなに?」

「世界ノ滅ビノミ」

 

 次の瞬間、影法師から黒い霧が放たれた。シャマルの予想通り話し合いは不可能だろう。影法師の放つガタノゾーアが吐き出した闇のような霧はシグナム達に迫りくる。

 

「させん」

 

 間一髪、ザフィーラが魔法で物理的な壁を築いて霧を防いだ。

 

「無事か」

「サンキュー、ザフィーラ」

 

 ザフィーラはガタノゾーア戦で仲間を守れず石へと変えられている。その悔しさもあってか、今回の霧を防いだことに内心喜んでいた。彼の隣ではグランドキングのモノアイが光りを放つ。

 大きさが変わっても影は影。フェイト達は敵だと判断するとグランドキングのレーザーを皮切りに魔法で反撃開始。近距離ではシグナム、フェイト、ヴィータの三人が切り込んで、中距離にはファイブキングとタイラントの光線による援護射撃、そしてザフィーラが戦況を見ながら壁を生み出し防御を固める。遠距離からはシャマルによる回復の援護とキングオブモンス、グランドキングの破壊光線が飛ぶ。バルタン、キングジョー、エアロヴァイパーの三体は遊撃だ。

 

「よし、いける。このままアイゼンの頑固な汚れにしてやる」

 

 ヴィータの猛攻は止まらない。即席だとは思えない火力重視の連係プレー。

 影法師の攻撃はタイラントとファイブキングに吸収、ザフィーラに防がれてしまい、攻撃後に生まれた隙をつかれてフェイト達近距離メンバーの反撃をもらう。ガードを固めたところで、キングオブモンスとグランドキングという怪獣界きっての高火力組に圧倒される。バルタン率いる遊撃部隊も無視できないか力を誇り、そこにシャマルのサポートが加わる。

 

「不滅ダ、我ラハ」

 

 影法師のマントはたちまちボロボロになり、うめき声を上げつつ小さくなる。やがて小さな黒い石へと姿を変えた。

 

「なんか、可愛そうになっちゃった」

 

 シャマルが石を拾上げる。巨大影法師は世界を滅ぼすことが目的だったとはいえ、戦ってみたらフルボッコ。挙句の果てに、駐車場にありそうな石になってしまった。シャマルは気の毒に思ったのか、そのままスカートのポケットに突っ込んだ。

 フェイト達はというと、八神はやてが閉じ込められていると思われる砦を調べていた。フェイトは砦を一周して出入口を探しているが見つからない。

 

「この砦には扉がないみたい」

「あっそ、ならぶち抜くだけだ。バルタン、はやて達が危なくない場所をぶん殴りてえ。どこら辺にはやて達がいるか教えてくれ」

「……分かった。今中にいる本体から情報を受け取った。あの部分を撃てば問題ない」

 

 扉がないなら穴をあける。ヴィータの危険な思想に戸惑いつつも、バルタンは巨大なハサミを開くと赤色の光線を放ち、砦の壁の一部分に氷を張って目印を作った。

 

 やっちまえ。グランドキングが吠えた。

 

 ヴィータがハンマーで叩いて、壁にヒビを作った。フェイトとシグナムは相棒を構えると、魔力を注ぎ込む。二つのデバイスから、それぞれ雷と炎がほとばしる。

 

「いくぞ、テスタロッサ」

「はい、シグナム」

 

 力をこめて、二人の魔法が砦の壁を吹き飛ばした。砂埃が晴れて、砦の内部があらわになる。そこには不敵に笑うヒロシと安心しきった笑みのはやて、そして泣きながらも驚愕している大人の女性がいた。

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