第97管理外世界の赤い球   作:破壊光線

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 サブタイはリリカルなのは一期、EDより


小さな願い

 『時の庭園』の地面が真っ二つに割れて、巨大不明生物が完全にブラックホールのような空間に飲み込まれたのを目視で確認すると、みんな一斉に深く息を吐いた。

 

「ヒロシ、あの怪獣は本当に何だったんだ?」

「知らん。怪獣について考えていたら突然『赤い球』が光りだしてアイツがいた。今回に関しては俺が望んで創ったわけじゃねえ」

「これに関しては私からも保証しよう。あの怪獣は真っ先にヒロシを攻撃した。よって、我々が味方として生み出して怪獣とは全く別物だ」

 

 ヒロシは肩をすくめる。メトロンのフォローを受けてクロノもこれ以上言及したところで得るものはないと感じたのか、口を閉じた。

 結論として、なんらかの原因で時空に歪みが開き、その歪みから怪獣が現れた。もしくは、キングオブモンスをはじめ『時の庭園』で使われた『赤い球』の光を浴びた生物が突然変異を起こし、ベリュドラとの戦闘で目覚めた。この二つのどちらになるらしい。

 

「『闇の書の闇』の討伐、八神はやてさん、鹿島ヒロシさん、リインフォースさんの救出。巨大不明生物というイレギュラーがありながらも怪獣達含めてみんな無事で結果的にはハッピーエンドですね」

「おお、リンディ君。そう言ってもらえると助かるよ」

 

 メトロンが軽快に笑った。しかし、船内の空気は重い。

 

「それで、鹿島ヒロシさん。あなたのロストロギア『赤い球』をこちらで預かりたいのだけれど」

「いや、最後に一つだけ叶えたい願いがあるんだ」

「この場に及んでまだロストロギアを使うのか」

 

 怒るクロノを浩はなだめた。

 

「またキングオブモンスを創り出そうとか、そんなことは考えてない」

 

 浩は一度振り返って、自分が創り出した怪獣達を眺めた。そして満足げに、悲しそうな表情でリンディの目を見る。

 

「地球から魔法を封印して、怪獣達を元に戻そうと思う。『赤い球』を消したうえでね」

「ちょっと待って、シグナム達はどうなるんや? リインフォースは折角助けたのに」

「待て、魔法が使えなくなるだけでそれ以外は無事だ。リインフォースさんやシグナム達は『夜天の魔導書』から独立している。だから無事だ」

「それじゃあレイジングハートが使えなくなるって事?」

「そういうことになるな」

「でも、どうして」

 

 なのは達から疑問が飛ぶが、浩の意見は変わらない。

 

「今回の『闇の書』も前回のキングオブモンスも魔力や『赤い球』っていう力から発生した争いだ。俺たちがこの力を持ち続けている限り、戦いは終わらない」

「でも悪い人から身を守るためには力が必要ではなくて?」

 

 リンディの考えに、浩は首を横に振る。

 

「その力が原因で戦いに巻き込まれたんだ。行き過ぎた力によって生まれたのが『闇の書』で、その果てがベリュドラやキングオブモンスだ。そして、それと戦ったのも謎の怪獣。

 今後、この力を維持してたところでいいことはないと思う。何が正解かは分からないけど、少なくとも俺は『赤い球』を消すつもりでいる」

 

 怪獣達は何も言わずにヒロシの意見を聞き入れたようだ。

 

「科学であれ、魔法であれ、行き過ぎた力は我が身を滅ぼす。なら、どこかで捨てなければならない。君たち管理局が『赤い球』を収集して保管したい気持ちも分かる。君たちにとってそれが一番安心できる方法だ。私から見ても賛成できる。

 しかし、存在自体を消滅させれば別の人物が同じ過ちを繰り返さなくて済むだろう。保管したところで絶対に盗まれないとも限らないと思うが」

「保存するにはコストもかかるんじゃねーか? 冷凍怪獣の冷気で倉庫を凍らして終わりって訳にはいかないだろうし」

 

 バルタン、グローザムから援護射撃が飛んだ。グローザムの保存が運送業やってた時のものだが。

 

「貴方たちはいいの? 消えることになりますが」

「フハハハハ、消える? 元に戻るの間違いだ。俺たちは今までも、これからもヒロシのとなりにいるさ。コイツが望む限りな」

 

 リンディの問いかけにデスレムが笑った。

 

「しかしだ。このまますぐに消えたくはない。みんなで温泉に行くと約束してしまったからね。最後くらい思い出を作っても構わんだろう?」

 

 メトロンに続いて、メフィラスが決まり文句が炸裂する。

 

「私たちに温泉に行きましょうと言ってはくれないかね」

 

 こうして無事に地球へと帰還した浩と怪獣達、時空管理局、八神家、なのはやフェイト達。冬休みを利用して全員で温泉旅館へと泊まりに行った。露天ぶろ付きの大浴場で騒ぎ、風呂上がりのピンポン大会でも暴れ、旅館の定食を食べるのにもひと騒動あった。落ち着いて物事を行うことができない怪獣に、癖の強い魔導士が加わった結果、旅行中はお祭り騒ぎだった。

 

 2泊3日の旅行は最終日になり、最後だからと魔導士VSヒロシの怪獣軍団で模擬戦が行われた。これまた歴史に名を残しそうな一戦が繰り広げられたのだが、詳細は割愛する。終始怪獣達が善戦していたものの、浩が調子に乗った結果、最後の最後で隙を作り、リーダーの浩がなのはに落とされて負けた。

 なのはがスターライトブレイカーを半分くらい溜めた時、浩の周りにいた怪獣達はリーダーを見捨ててクモの子を散らすように逃げていったという。なのは達の魔法は非殺傷設定になっていたというのに。

 

 戦闘が終わり、少し休憩をはさむ。この後は『赤い球』と一緒に魔法を封印することになっている。

 

「『赤い球』が消滅するのを見届けられないのが残念だが、魔法が使えなくなるんだったら仕方ない。大気圏外から地球の魔力を測定して待ってるよ」

 

 クロノたちは名残惜しそうに、転移魔法を使って旅館を後にした。浩は『赤い球』、怪獣とともに魔力を封印しようとしている。この地球にいればクロノたちも魔法が使えなくなり、また魔法と関係しているアースラが動かなくなる可能性もあるためだ。

 フェイト、プレシア、リニス、アルフ、アリシアらテスタロッサ家。八神はやて、シグナム、ヴィータ、ザフィーラ、シャマル、リインフォースら八神家。そして、ユーノ。もとから地球に住んでいた、高町なのは、アリサ、すずか、浩。逆を言えば、いまこの場に残ったメンバーが地球で暮らしていくとになる。

 クロノたちを見送った後、一行は旅館の近くにあった森へと移動する。

 

「本当にいいの?」

 

 浩が怪獣達を消すと分かって、なのはが心配して聞き返す。

 

「うん。君たちこそいいのかよ、魔法が使えなくなるんだぞ」

「……そうだね。レイジングハートともうお話しできなくなっちゃうのは寂しいかな。でも、魔法を使って色んな人を傷つけちゃった。だから次は魔法無しで誰かの力になれるようになりたい」

 

 なのはに反応してレイジングハートが光る。なのははマスターだから分かるが、浩の耳には英語が聞こえてくるため理解できなかった。しかし、なのはの笑顔を見て、魔法が使えなくなることに納得しているのだと確信する。

 

「うーん、私は魔法なんて2回しか使っとらんから、分らんよう。でもな、シグナムと、シャマル、ヴィータ、ザフィーラ、リインフォースと。みんな一緒ならなんも文句はないよ」

 

 はやても前向きにとらえていた。守護騎士たちも躊躇わずに同意した。八神家なら上手くやっていけるだろう。

 

「わたしも別にいいわ。元に戻るだけだもん」

「そうだね、またみんなで一緒になれる平和が一番だよ」

 

 アリサとすずかも異論はない。ティグリスも元に戻れると分かったのか、嬉しそうに吠えた。

 

「少年、我々は役目を終えた。フェイト君、少年を頼んだぞ」

「はい」

 

 フェイトは力強く返事をすると、メトロンは満足げにうなずいた。魔法少女たちの返答を経て、メフィラスの発光器官が光った。

 

「それではみなさん、おもちゃ箱へと帰りましょう」

 

 デスレムとグローザムが笑う。

 

「ヒロシ、元気でやれよ。宿題は自力で片づけるんだ。アリサやすずかに迷惑をかけるなよ」

「栄養のバランスは考えてメシ食えよな。はやてに教えてもらえ」

「余計なお世話だ」

 

 浩が若干不機嫌になる。

 フォッフォッフォ。バルタンがお辞儀をすると、上下にハサミを動かした。さよらなだっていうのにいつもと変わらない浩の宇宙人たち。

 

「私たちは動かなくなるでしょう。しかし、いつでもヒロシ君の傍にいます。安心して下さい、またすぐに会えますから」

「少年、一人遊びもいいが、たまには友達と一緒に遊ぶといい。きっと楽しいぞ」

 

 メフィラスとメトロンの発光器官が光る。シャマルがキングオブモンスに影法師の石を手渡した。怪獣達も各々鳴いて別れを告げている。

 浩は名残惜しそうに怪獣達を見つめると、一回深呼吸をして、『赤い球』を空へとかざして小さな願いを込めた。

 

 『赤い球』はフワフワと浮いて、白い光を放った。その光に反応して怪獣達はもちろん、なのはやフェイト達の身体も光を放ち、落ち着くと怪獣達は消えて人形や絵が残されるばかりだった。

 

「レイジングハート、レイジングハート……うん。何にも言わない。魔法、使えなくなったみたい」

 

 レイジングハートは赤い球状の待機状態のまま沈黙している。バルディッシュもだ。アリサとすずかのデバイスは消えてなくった。一方、『夜天の魔導書』の落書きは健在だが、はやてが魔法を使うことは出来なくなった。

 もう一つ変化が起こった。

 

「リインフォースもシグナム達も無事みたいやな。おお、ザフィーラが犬になった。」

「リニスが猫に、アルフも犬に戻ってる」

 

 魔法が使えなくなった影響で、ティグリス含めてアルフやザフィーラなど使い魔たちも元となった動物に戻ったようだ。リインフォースと守護騎士たちは魔法が使えなくなったものの、ちゃんと生きている。

 

 メフィラスとメトロンは浩の両親へと戻ったが、気を失っていた。二人は守護騎士たちに運ばれて、旅館の一室に寝かせると、プレシアが救急車を呼んでくれた。シャマルが言うには「命に別状はないから大丈夫」とのこと。

 怪獣達が消えて一段落したころ、なのは達とはやて達は荷物をまとめ始めた。浩がメトロン達と別れた場所に行くと、怪獣のソフビ人形が取りこされていた。周りに『闇の書』の怨念が詰まった石はない。成仏したのだろう。

 浩は黙祷をささげると、青空を見つめていた。彼の裾をフェイトが引っ張った。

 

「どうしたの? 悩みが解決したみたいだけど」

「うん。怪獣ってなんだろう。今までずっと考えてたけど、その答えが出たんだ。魔法が、怪獣が居なくなって、日常が戻ってきた。

 たぶん、怪獣って、人の文化から生まれた非日常にいる生物。怪獣はオカルトを含めて今までの常識では倒せない存在。オキシジェンデストロイヤーとかペンシルミサイル、血液凝固剤、スペシウム光線みたいな特殊な兵器じゃなきゃ倒せない奴らだってね。そして、怪獣が居なくなると日常が戻って来る」

「難しいね」

 

 吹っ切れた少年の腕の中にはキングオブモンスの人形が抱かれていた。しかし、少女は少年の抽象的な考え方に少し困惑していた。

 

「そうか? 簡単だぞ。この地球の常識に魔法は存在しない。つまり、魔法はオキシジェンデストロイヤーみたいな特殊兵器になる。

 ほら、フェイトやなのはの杖って妙に機械だし、ミッドチルダっていう地球外から来たじゃん。ウルトラマンみたいに。その非日常を代表する魔法で倒されて、『赤い球』と消えたことで、俺の創った怪獣達は本物の怪獣になったんだよ。キャラクターとしての怪獣じゃなくてね」

 

 翼も腹の棘も欠けていない、完全なキングオブモンスの人形を少年が撫でた。愛おしく、どこか寂しく、それでも満足そうに撫でている。

 

「ヒロシが満足ならそれでいいかな。でも、キングジョー達と一緒に暮らせなくなるのは寂しいけど」

「分かる」

 

 腕の中のキングオブモンスはどこか嬉しそうだった。

 浩はフェイトと一緒に怪獣のソフビを拾い集めると旅館へと戻った。ソフビ人形をカバンにしまって、救急車が来るのを待つ。旅館が街外れにあるから時間がかかるのだろう。暇になった浩とフェイトは畳にゴロンと横になった。

 

「また学校生活が始まるのか」

 

 浩が背伸びをする。だるそうに欠伸をする浩の頭の上からフェイトの声が聞こえた。

 

「学校ってどんなところ? 春から私も通うことになるんだけど……」

「あれ? フェイトって学校に行ったことないんだ」

「うん。魔法はリニスが教えてくれたし。ヒロシにとって学校は当たり前の場所かもしれないけど、私にとっては初めてだよ。今までは魔法があるのが日常だったから。魔法が無くなって学校に通うのは、それこそ非日常かな」

「そうだよな。あ、学校ってのは、お勉強をする場所で、なのはとか俺の創った怪獣みたいなやつらがたくさんいる場所だ」

 

 フェイトは学校という未知の施設に思いをはせて嬉しそうだ。そんなフェイトを見て、浩が呟いた。

 

「……なんとなく、メフィラスの言ってたことが分かる気がする」

 

 サイレンの音が聞こえてきた。救急車が到着したのだろう。浩は気を失っている両親と救急車に乗車し、フェイト達はアリサやすずかの車で家に送ってもらうことになっている。

 浩の両親は担架に乗せられて救急車へと運び込まれていった。フェイト達が事情聴取を受けつつも浩を見送る。浩は新しくできた友達にさよらなを言って、救急車に乗せられる。ドアが閉まる直前、浩が手を振った。

 

「フェイト、また今度遊ぼうな」

「うん、絶対だよ」




 僕の中で怪獣とは。その答えは一応出ました。答えは変わると思うけど、その時はその時で。怪獣とは何か。僕とは別の意見がある方は教えてください。勉強したいです。

 なのはSSで魔法消滅エンドは珍しいんじゃないでしょうか。そんなことを思いつつ、エピローグに入ります。
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