第97管理外世界の赤い球   作:破壊光線

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狙われた少女

 怪獣酋長ジェロニモン。

 黒い身体と頭部にある大量の赤い羽根、顎には白いひげが生えている。尻尾にも羽が生えており、先端には毒がある。武器はその羽を超能力で自由自在に飛ばせること。口から吐く無重力光線だ。

 そしてジェロニモン最大の特徴は死んだ怪獣を蘇生できること。この能力が素晴らしい。ウルトラマンでは怪獣を60体蘇生させて総攻撃を企んでいた。最初に復活させたのがドラコとテレスドンとピグモン。ま、ピグモンに裏切られて防衛軍にバレて失敗したが。

 

 なんでジェロニモンの紹介をするかというと、謎の黒い女の子にベムスターが敗れたからだ。

 ベムラーを倒した白い少女の次は、ベムスターを倒した黒い少女が現れた。この街の女子力が物理的に強すぎる。邪馬台国並みに女性が強い街に生まれてきたことを後悔しつつ、2メートルくらいのジェロニモンを創る。

 羽を振り振りしながら俺に近寄ってきて、お辞儀をすると両腕を回しながら光を集める。グオオオと鳴くと光がベムスターになった。

 

「すげぇ、怪獣蘇生だ」

 

 目の前でベムスターが生き返ったことに興奮しする。バキシムも異変を感じたようで駆けつけ、ベムスターの復活を喜んでいた。強く抱きしめるバキシムと、両腕の棘がいたくて振り払おうとしているベムスター。

 俺はジェロニモンをバトルナイザーにしまって、メトロンを呼んだ。

 

「メトロン、出かけよう。テレスドンとドラコを創りたい」

「オッケー。すぐに出発しよう」

 

 メトロンは地球の文化に慣れてきたのか口調が柔らかくなっている。

 この前、異次元の整理が終わった後で、メトロンとドラゴリーとグローザム、デスレムと俺でトランプやったのは楽しかった。家族と一緒に遊んだ記憶は小学二年生が最後だった。

 メフィラスは怪獣とコミュニケーションが取れるようにと、怪獣専用のスマホを作ってくれた。もちろん、ラインでグループも作ってある。

 バキシムに『赤い球』を持たせてベムスターと一緒に異次元に帰すと、バトルナイザーをカバンに突っ込んで出発だ。

 

 

 

 ホームセンターでドラコの素材にしたい鎌は入手した。レジ袋の中にカマをしまってドラコセットと名付ける。テレスドンの素材だが、街中に岩石が転がっている訳も無く、その辺のコンクリートブロックを異次元に突っ込んで妥協。ドラコが杖持っていたり、テレスドンの顔が変形したりしてないか不安だ。

 そんな訳で、俺とメトロンは帰り際にレンタルビデオショップに立ち寄った。

 放課後の時間帯だけど平日。さらに動画サイトが発達しすぎたせいかレンタルビデオ店の店内はガラガラで人はほとんどいない。知り合いにバレたら俺も困るのでかえって都合がいいし、メトロンは人間に化けているから問題ない。

 もちろん俺はウルトラマンのコーナーを目指して直進する。メトロンもスキップしながらついてきた。

 

「『小さな英雄」でも借りるか」

「ジェロニモンの回かい? いいじゃないか。私は『狙われない街』が見たいな」

 

 どーでもいい会話をしながらお目当てのコーナーにたどり着くと先客がいた。

 綺麗な長い金髪に黒いシャツとスカートをはいた女の子で年齢は俺と同い年くらい。後ろ姿だけだけど、どっかで見たことあるんだよな。

 

「ベムスター、ベムスター。たくさんあるな……」

 

 どうやら女の子はベムスターの出てくる回を探しているようだ。『帰ってきたウルトラマン』にはじまり、『ウルトラマンタロウ』、『ウルトラマンメビウス』とベムスターも人気怪獣だからたくさん登場している。どれを借りたらいいのか分からないとみた。ここは怪獣殿下の俺が選んでしんぜよう。ウルトラマン仲間は貴重だしね。

 

「もしもし、そこの君。何か困ってる?」

「え、あ、はい。ベムスターっていう怪獣の話が見たいんですけど……どれがいいのか分からなくて」

 

 金髪の女の子が振り返った。恥ずかしいのかもじもじしてる。顔を見て分かったけど、滅茶苦茶かわいい。

 こんな美少女がウルトラマン見る事に驚きだが、俺のオススメベムスター回を教えねば。

 

「ベムスターって言ってもたくさん出てくるからね。一番最初に出てきたのは……」

 

 これから俺のベムスタートークが炸裂した。マニアックな内容なのに女の子はきちんと最後まで話を聞いてくれた。めっちゃいい子。

 その上、詳しいんですね。だって。引かれてないか心配だけど、この子絶対いい子。

 

「あの、こんなこと言うの変だと思うんですけど、ベムスターって実在しますよね?」

 

 ウルトラマンを借りるのに特撮を知らない様子。

 キョトンとしてるとスマホが鳴った。ラインにはメトロンからメッセージが着ていて内容は。

 

「その子と仲良くなって欲しい。できれば家に招待したい」

 

 いきなり難易度の高いことを言わないでほしい。だってさっきのベムスタートークでドン引きされたかもしれないのに、好感度ゼロからデートに誘うってどんな地獄だよ。

 もしかしてこれがバックアップの仕事なのか。しかもメトロンいなくなっているし。二人っきりにしたって無駄だと思う。

 

「えっとさ、ベムスターの回って一人じゃ借り切れないほど多いから、一緒に借りて見ない?」

「いいですよ」

「ダメだよね……え?」

 

 なんかOKでた。乙女心が分からない。ラインにはメトロンからグットのスタンプが押され、下にメッセージにこう書かれていた。

 

「その子、おそらく当たりだから。入口付近で私がぶつかって盗聴器仕掛けるからよろしく メトロン」

 

 ラインで犯罪宣言しないでほしい。スタンプ打ってもごまかせない。あと、当たりって何だろうか。

 

「あの、私、フェイトって言います」

「あ、ご丁寧に。俺は鹿島浩」

 

 ビデオショップでいくつかビデオを借りると、宣言通りにメトロンがぶつかってフェイトの家に行った。フェイトは嫌な顔一つせずに、わざとぶつかったメトロンに謝っていた。

 

 

 

 怪獣トークをしながら歩いていくと、知らないうちに遠くの街に来てしまった。そして今俺はフェイトの家にいる。

 クソデカいマンションにお姉さんと二人で暮らしているようだ。お姉さんは現在外出中とのこと。母親は何処にいるの? と聞いたらものすごーく悲しそうな顔をした。地雷踏んだ。未だになぜ俺がフェイトと仲良くなったのかが分からない。キモオタトークした後、地雷踏み抜いていくとか好感度はゼロに等しいと思うのに。

 見るからに高そうなソファーと映画館のスクリーン並みに大きなテレビ、キッチンとかも完備してあるフェイト家。お嬢様だった。

 

「ヒロシ……君はさ、怪獣詳しいよね。やっぱり本物を見たことあるから?」

 

 ちょっとまて、フェイト。これは俺が怪獣を創ってること知ってるの? ゴメン。メフィラス、メトロン。君たちの計画は俺がぶっ壊した。今すぐ助けに来て下さい。

 

「え、あ。本物って何?」

「私ね、信じてもらえないけど、ベムスター倒したんだよ」

 

 何この子、いい子だと思ってたけど電波少女か。地雷を踏んだのは俺か。

 ベムスターって俺が創り出した宇宙怪獣だよね。確か、ベムスターを倒した女の子って黒い服で金髪……。特徴が一致してますね、限りなく黒じゃん。

 

「あと、その前に確認したいことがあるからフェイトさ、髪をツインテールにしてくんない? あ、もちろん怪獣じゃない方で」

「え、ツインテールなんて怪獣いるの?!」

 

 驚きながらも指でわっかを作って試しに見せてくれた。はにかんでて可愛いけど、間違いない。ベムスター倒したのコイツだ。当たりってこのことだったか。

 どんな反応すればいいんだろう。すがるようにスマホを見ると通知が来ていた。

 

「もっとベムスタートークして。メトロン」

「家族構成、とくに母親について聞いてください。メフィラス」

「宝物とか言ってソイツの武器を教えてもらえ。デスレム」

「俺と戦わせろ。グローザム」

「今すぐぶっ殺せ。ベムスター」

「ギャァアゴァア。ドラゴリー」

 

 俺これ知ってる。複数の選択肢から一つ選んで女の子と仲良くなるゲーム、ギャルゲーってヤツだ。碌な選択肢がないけど。なんでこうも俺は女子に嫌われる話しかできないのだろう。……あれ、普段学校で女子と何話してたっけ。

 ベムスター、私怨だだもれ。ドラゴリーに至っては音声入力ならぬ、鳴き声入力をしたようで何言ってる分かんない。後で音声入力禁止って言わなければ。

 

「とりあえずフェイトの話を聞くべきじゃないかな。それがダメならDVD見たら? バキシム」

 

 おお、バキシム。オマエだけだよ俺の味方は。やっぱりいい奴だ。バキシマムに強化したら喜んでくれるだろうか。

 

「フェイトさ、ベムスターと戦ったて、どういうこと?」

「うんん、何でもない。何でもないよ。ちょっと自分でも何言ってるか分かんなかったな」

 

 なんだろう、フェイトって控えめすぎて友達いなさそう。可哀そうになってきたな。放課後に友達ほったらかして怪獣と遊んでいる俺が言える立場じゃないけど。

 

「あのさ、せっかくDVD借りたか見よ」

「うん」

 

 DVDを鑑賞した俺たちだが、フェイトにとってのウルトラマンは初めて見るようでとても興奮していた。

 

「すごいよ、ヒロシ! あんな大きな怪獣を倒しちゃうなんて。あのブレスレットすごいな、ウルトラスラッシュもカッコよかったし」

 

 切断系の技ばかりに注目するの何なんだろう。それでも同い年とウルトラマントークできるとは思わなかった。

 

「ねえヒロシ。ベムスターって悪い奴だと思ってたけど、地球には迷い込んで来ちゃっただけなんだよね。倒されてかわいそう」

 

 怪獣のフォローが出来るあたりやっぱりいい子だ。絶対友達になろう。

 

「そっか、それじゃあ『第三惑星の奇跡』とか『大地裂く牙』とかがオススメかな」

 

 人間が悪くて怪獣が被害者シリーズをいくつか挙げといた。フェイトは熱心にメモを取っているかわいい。

 それから二人で怪獣トークをしていたら日が暮れていた。夕日がきれいだった。

 

「地球の夕焼けは美しいなぁ。とりわけ日本の黄昏は、この陰影礼賛が何よりの土産だな……」

「フフッ、何それ」

「何でもないよ、ただ知り合いが言ってたことを思い出しただけ」

「変なの。でも、今日は楽しかった。ありがとう」

 

 玄関までフェイトが送ってくれる。帰り際にラインを交換してもらい、いつでも連絡できるようになった。結局フェイトのお姉さんには会えなかったけど、楽しかったからまあいいや。好感度も上げられたはず。

 フェイトの家を出てスマホを確認する。たまっていた通知にの中にこんなものが入っていた。

 

「ねえ、今度紹介して。一緒にご飯食べたい。ベムスター」

 

 コイツ、どうやって文字打ってんだろう。

 

 

 

 今日は実に素晴らしい。

 メトロン星人はご機嫌でアジトとなった異次元に帰ると、すぐさま他のメンバーを集める。

 異次元の広さを生かしてそれぞれに個室が与えられ、メンバーが増えるたびに個室も増やしていく決まりができた。そんな個室から全員が集まって作戦会議に入る。

 手始めにメフィラス星人が白い女の子、なのはと黒い女の子、フェイトの戦闘能力についての分析結果が発表された。

 

「まず、なのはの攻撃、ディバインバスターと言うらしいですが。あれは今の我々の身長から考えて、十分致命傷を与えられるものです。ウルトラマンのスペシウム光線よりも劣りますが。

 一方で牽制の光弾の方も放っておくには危険すぎる威力です。ベムスターのような光線が効かない怪獣が彼女への対策になるでしょう」

 

 なのはがベムスターに対しディバインバスターを撃った映像が流れる。

 

「次に、黒い女の子ですが、彼女の名前はフェイト。と言うようです。先程、メトロンから情報が入りました。

 彼女の技はアークセイバーというウルトラスラッシュに近い技くらいしか把握できていません。これからも調査が必要です。しかし、彼女の武器、カマの形状を見る限りでは切断系の技が多いと予想できます。それらに強い怪獣が欲しいところです」

 

 簡単にまとめてメフィラスの発表が終わる。二人とも異世界からの技術を持っているというのがメフィラスの答えだった。続いてメトロン星人が立ち上がった。

 

「諸君、聞いて欲しい。今日、レンタルビデオ店で黒い女の子、すなわちフェイトに遭遇した。ヒロシ少年との会話やメフィラスの報告を聞いてもらった通り、彼女がベムスターを倒した少女だ。

 私の希望としてはヒロシ少年とフェイトを友達にさせ、ある程度コントールできる状態に持っていくことが最優先だと考える」

 

 メトロンの働きに他のメンバーから拍手が起こった。

 デスレムの目が光る。

 

「なるほど、裏でフェイトを操り、なのはとぶつけて情報を得つつこちらは準備を進める。いいじゃねーか」

「オイ待て。ガキとはいえ、せっかく面白そうな相手が現れたんだ。それと戦わなくてどうする」

「グローザム、すこし考えてください。我々は今後、さらなる強敵と戦うべく準備段階に入ったところです。ここで余計なことをすれば宇宙征服という偉大な目標も失敗に終わります。今は我慢するときです。

 いずれあなたには『グローザム連合』のような戦闘部隊のトップになって欲しいと考えているのですから」

「仕方ねえ、今回は黙っててやる」

 

 メフィラスに諭されてグローザムが渋々納得した。四天王のやり取りが終わると、メトロンの発生器官が光る。

 

「フェイトとヒロシ少年は現状、友達という仲になったと考えられる。今後はヒロシ少年を通じて私のことをDVDで知ってもらい、その後は私自ら関わって行こうと思う」

 

 浩は『赤い球』を持っているとはいえ、普通の小学生だ。フェイトからしても戦いに巻き込みたくないだろう。しかし、メトロン星人となれば話は別だ。高度な科学力を持った宇宙人相手ならジュエルシードについても話してくれるだろう。メトロン星人たちは考えた。さらに、フェイトは怪獣や宇宙人の全てが悪ではない。という考え方を持っている。

 ベムスターは本来フィクションのウルトラ怪獣で存在しない。実際に動いているベムスターを見たとはいえ、地球に住んでいるならそのまま受け入れるはずがない。DVDでベムスターを見たのなら尚更だ。

 これらを考えてメフィラスは特撮番組という概念を知らないことを予想。さらに、メフィラス星人の『フェイト=異世界人説』がほぼ当たりだと確信する。

 メフィラスはフェイトと共通の敵を作り上げれば協力してくれると考えた。

 

「分かりました。ならば我々はフェイトの敵として振舞い、メトロンはフェイトの味方を演じてください。これで内部、外部ともにデータが収集できます」

「よし、戦闘だ」

「心得た」

 

 メフィラスが敵役に立候補したことでグローザムが喜んだ。

 こうしてメフィラスたちの作戦は思った以上に順調に進んでいくのであった。

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