ドラゴンクエストX ~父を探して~   作:ゴミ収集車

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魔瘴竜

 

 

 

 

 

「朝日が眩しい・・・くそっ、今日も戦うのか・・・!」

 

村人が1人、苛立った様子で吊り橋の柱を殴った。苛立った様子と共にかなりの疲労感が滲み出ており、涙も流していた。

 

「どうして・・・どうして俺達がこんな目に・・・」

 

「おぉーい!おぉーい!」

 

「・・・?この声は・・・」

 

「おぉーい!誰か居るかー!」

 

「まさか・・・ギージス!?オーイ!ここに居るぞー!」

 

村の出入口の先から聞こえてくる声に返し、吊り橋を駆け抜ける。

ギシギシと大きく上下するのも構わずひたすら走った。

 

ガラガラ。

木製の車輪の音が段々近付いてくる。間違いない、ギージスが村に入ってこれた。と村人は昨日まで魔瘴が塞いでいた出入口の坂道をかけ下りる。

そして、坂道を登ってくる馬車と、その横を歩く人影を見付けた。

 

「ギージス!ギール!無事だったのか!」

 

「ベガザン!良かったそっちも無事か!」

 

村人、ベガザンとギージスは大の親友だ。互いに実力を切磋琢磨させてきた。

 

「あのあとお前らを探しに行けなくて、もう死んだかと思ってたぜ」

 

「悪かったな。どうしても外に助けを求めに行かないと村が滅びると思ったんだ」

 

「なんにせよ、無事で良かった。でも、どうやったらあの魔瘴を消す事がてきたんだ?」

 

「それはそこの彼に聞いて」

 

馬車の女、ギールがクワレーを指差す。ベガザンは嘘だろ?といった様子でクワレーに歩み寄る。

 

「君があの魔瘴を?」

 

「それが、僕にもよく分からなくて・・・気付いたら消えてたんです」

 

「よく分からない・・・?ギージス、彼が助けか?」

 

「一応そうだが、お前名前は?」

 

「クワレーです」

 

「よし、クワレーよく聞け。もうすぐ例のドラゴンが起きる。起きたらすぐに武闘場に行って戦う事になる。あいつは恐らくあのメラリザードだろう。だが、こうなってしまっては他に道は無い。全力で殺しに行け。じゃないと此方が殺される」

 

「・・・ゴク」

 

思わず唾を飲んだ。

殺されるかも知れない。その恐怖はクワレーもよく知っている。今更逃げたいとも思っていた。だが、ここで逃げたらドラゴンはどうなる。魔瘴は消えたが、ドラゴンは残っている。故に放っておけば隣村のラギレ村も危険だ。誰かが倒してくれるのを待っていられない。まさに今なのだ。

 

「分かりました。自信はありませんが、やります」

 

冷たい汗が更にドッと吹き出た。

 

 

「今日も始まるのね・・・あぁ神よ・・・」

 

「ママ、怖いよ」

 

武闘場へ向かう途中、荒れたランガーオ村は本当に酷い有り様だった。崩れた教会には家を無くした者達が集まり、祈っている。民家の殆どは炎によって焼き尽くされ、この村の長、村王クリフゲーンもドラゴンに敗れ、現在は意識不明の重体。村の戦える者は皆満身創痍だ。

 

「いいか?今魔瘴が消えたと話すと皆一斉に村から逃げ出す。そうしたらドラゴンが気付いて恐らく皆殺しだ。皆には悪いが、黙っててくれ」

 

そう耳打ちしてきたギージスにコクりと頷き、装備を確認する。先のギージスとの戦闘で皮の鎧は使い物にはならないが、残念ながら今のランガーオ村では皮の鎧すら扱っていない。

 

「もうじき起きる・・・奴のブレスに気を付けろ。食らったらあれみたいになる」

 

ギージスが顎で指した先を見ると、家畜だったのであろうか、真っ黒に焼け焦げた生物の死骸が転がっている。ハエがたかっていてつい最近死んだらしい。グロテスクで見たくないのについ目を向けてしまいながら武闘場までの狭く、長い坂を上がっていく。ここにも焦げて黒くなった箇所がみられる。今ブレスを吐かれたら死ぬだろう。

 

「グォォォォオオ!!」

 

「「「!!」」」

 

ピリピリと大気を揺るがす咆哮。間違いない、例のドラゴンのものだ。

 

「お目覚めだぞ・・・魔瘴竜まであと少しだ」

 

「な、ナイスなネーミングですね」

 

「冗談言う暇があったら上がるわよ」

 

今回戦いに向かうのはクワレーとギージス、ギールの3人。ドラゴン、もとい魔瘴竜はすぐ目の前の門の先だ。

 

「・・・着いたぞ。今更ながら、自己紹介をちゃんとしておきたい。これで最期かも知れんからな。俺はギージス、そこのギールの兄だ。職は主にツメを使いやすいもの。改めて宜しく頼む」

 

ギージスはレッドの瞳に同色のソフトモヒカンをした大柄の男だ。装備は盗賊のチュニックシリーズとドラゴンクロー。

 

「じゃあ私も。知ってると思うけど、私はギール。ギージスとは兄妹で、基本的に職業は戦士ね」

 

ギールもギージス同様のレッドの瞳に同色のウルフヘア。装備は銀のシリーズとビッグブレード。

 

「僕はレーンの村から人を探しに旅してるクワレーです。宜しくお願いします」

 

3人は握手をし、木製の門を見た。

 

「また戦うのね・・・」

 

「クワレー、ギールもお前と同じ戦士だ。スラリンガルに回復を任せて(ランガーオ村に着く前にホイミを覚えたらしい)2人で押さえてくれ」

 

「分かりました」

 

「行くぞ」

 

ギギィィィ。

重たい木の門を押し開けたギージス。武闘場は約360度が観客席となっており、その真ん中に真っ平らで障害物1つないリング。身を隠せそうにはない。

 

ズシン。

そして其処に鎮座する大きな黒いドラゴン。大きな翼を広げ、恐ろしく鋭い牙を覗かせ、咆哮した。

 

「行くぞぉぉ!」

 

魔瘴竜が動く前に3人と1匹が動いた。

クワレーとギールが魔瘴竜に向かって走り出し、顔面に体当たりをかます。出鼻を挫かれた魔瘴竜は一気にぶちギレ、凶悪な前足の鉤爪を容赦なく2人に降り下ろす。

 

「ぬぉあ!」

 

ガィン!

大剣を振り上げて鉤爪からガード。しかし、魔瘴竜のパワーが圧倒的。弾かれたクワレーはリングから転げ落ち、すぐにスラリンガルのホイミを受ける。

 

「ギールさん!」

 

「きゃぁ!」

 

紙一重でかわしたギールだがリングを抉った時に破片が飛び散り、それが彼女の視界を奪う。

 

「ギシャァァア!」

 

バキン!

鋭い牙がギールのビッグブレードをいとも簡単に噛み砕いた。

 

「ふん!」

 

ザシュザシュ!

ギージスががら空きになった魔瘴竜の腹に潜り込み、抉るように引っ掻いた。しかし、比較的軟らかい筈の腹であるのに薄皮を剥ぐ程度の傷しか与えられない。しかもこのドラゴンクローは名前から分かるように、ドラゴン系に大きなダメージを与える為に作られた武器。魔瘴竜もドラゴン系の筈だが、明らかに効いていない。

しかしギールから注意を逸らすには充分だ。

 

「ピキー」

 

「よし!ありがとうスラリンガル!」

 

回復を終えたクワレーがリングに再び上がる。魔瘴竜から充分距離をとったギールは丸腰状態。残念ながら足手まといにしかならない。

 

「ギールさんは取り合えず下がって!ギージスさん!」

 

「あい分かった!」

 

ギージスはすぐに魔瘴竜から離れ、ある呪文の詠唱を始めた。

 

「グャァア!」

 

「馬鹿め」

 

シュルル!

魔瘴竜の動きが止まった。ギージスが仕掛けたのはクモノと呼ばれる盗賊専用の呪文で、時差式のトラップ魔法。敵がエリア内に踏み込むと発動し、魔法で作られた糸が絡み、行動不能にさせる。

 

「ふんぬぅぅあ!」

 

止まっているからこそ近付けるギリギリの距離で大剣を振り上げ、踏み込みと同時に叩き斬る。長い首を狙った完璧な斬撃。の筈だった。魔瘴竜は翼を盾のように利用し、斬撃のダメージを減らした。魔瘴竜の左翼は前のゴーレムのように綺麗に切り落とされ、かすった首からは鮮血が舞った。

 

「くそっ、まだだ!」

 

まだ魔瘴竜は糸でガンじからめにされて動けない。右翼はここまで届く筈もない。ここで首を落とせば終わる。そうクワレーは思っていた。別に間違いでは無い。誰もが勝てると思うだろう。だが、クワレー達はあるものを忘れていた。

 

コォォォ・・・!

魔瘴竜の口から熱が溢れてくる。空気を吸い込み、段々火が見えてきた。

 

「!?ブレスだ!逃げろ!」

 

いち早くそれに気付いたギージスがクワレーを引っ張り、リングの外に駆け出した。

 

ゴォォォォオオ!

刹那、魔瘴竜の口からまさに身を焦がすような熱を含んだ炎が正面を焼き払った。

 

「ぐぁぁ!!畜生がぁ!」

 

クワレーを庇って炎にすこし当たったギージスが顔の右半分を押さえてのたうちまわる。少し当たっただけだと言うのに、ギージスの皮膚は焼けただれ、見るも痛々しい姿だ。

 

「ギージスさん!」

 

「兄さん!」

 

「スラリンガル!すぐにホイミを!」

 

「この・・・許さない!」

 

ダッ!

ギージスの姿を見て激情したギールが丸腰にも関わらず魔瘴竜に突進した。当然返り討ちにあい、前足て凪ぎ払われて魔瘴竜の正面で倒れた。

 

コォォォ・・・!

再びブレスが吐かれる。ギールは今までにない恐怖と絶望、そして悔しさを味わった。

 

(ごめんね兄さん・・・)

 

「おぉぉぉらぁ!」

 

「!?クワレー!」

 

ブレスが吐かれる直前、ギールと魔瘴竜の間に割り込み、ギールを強く抱き締めた。

 

ゴォォォォオオ!

 

「ピキー!!」

 

「まさ・・・か・・・ぎ、ギールぅぅ!!」

 

 

 

 




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