「へぇ。じゃあ3人は1度は腕を競った仲なんだ」
「そそ。マイユは村王の娘なのよ。そして、アロルドはその婚約者ね」
「婚約者だなんて・・・まだ結婚は考えてないし・・・」
「まぁ、焦らずともその内決めよう。クワレーだったな?俺達の村を救ってくれてありがとう。実はな、俺達には何の連絡も無かったから、さっき聞いた時は驚いた」
「ギールも頑張ってくれましたよ」
「だが、少し気になる事がある。ゾンガロンの力で村が危機に陥ったと話したな?俺達はその悪鬼ゾンガロンを倒すために世界を旅して色んな事を調べたりしているんだが、詳しく聞きたい」
「ゾンガロンは必ずまた村に、オーグリード大陸に災厄を呼び起こす。みたいな事を聞きました」
実はあの悪鬼ゾンガロンは、メラリを暴走させる1週間前にも問題を起こしていたのだ。
アロルドと村一番の強さを競った男、ジーガンフを操り、自らの封印を解こうとしたのだ。しかし、それは敢えなく失敗し、一時は落ち着いていたのだ。そのジーガンフもまた、そのゾンガロンを倒すために世界を旅している。
「・・・成る程。つまり君は特殊な存在であるのか」
「僕自身は特殊でもないですが・・・」
「何はともあれ、クワレーのお陰で俺の家族も生きていられる。ありがとう」
「私の父を、村を、ありがとうございました」
アロルドとマイユが共に頭を下げる。クワレーもペコペコと頭を下げるとある事を思い出した。
「そうだ。ここにくる途中、白いベールの女を見付けたんですが、かなり高確率でそいつが犯人です。何処に行ったかは分かりませんが、人間じゃないのは確かです。あのマリーンもそうです」
「「「え」」」
「あれ、どうして僕今、マリーンが人間じゃないって・・・」
まるで思わず口が滑ったように言った一言は3人を驚かせた。賢者マリーンはオーグリード大陸ではかなり有名な人物だ。そいつが、さも魔物であると言うように人間じゃないとクワレーは否定したのだ。現に、マリーンは何人、否、何百人以上と言う人々の命を救ってきた。それに、今もゼラリム姫の治療を行っている。王が信頼している何よりの証拠だ。
「ぁ、はは。もう夕方だしな、疲れたんだろ?早速だが、明日太陽が真上に来たときにザマ峰火台に集まろう。調査はそれからだ。ゆっくり休むといい」
「そ、そうですね。(またザマの坂を上るのか・・・」
「じゃあ明日ね。宜しく頼むわよギール、クワレーさん」
「はーい」
◇
テーレテーレテッテッテー♪
「アァーー!♂」
「ぶわぁ!?」
隣の部屋から聞こえてきた突然の叫びに跳ね起きるクワレー。もっとも、今の声が何だったのかは知りたくない・・・。
「あ、クワレーオハヨー。どう調子は?」
「目覚めが悪いのを除けばOK」
既に起床済みのギールはタンクトップ1枚に半ズボンと、抜群のボディラインが丸見えのラフな格好。チラリと見える括れを見ると、クワレーの中の男を刺激する。
(っと、駄目だ!駄目だ!もし変な事をしたら・・・ベホイミじゃ足りない!)
「クワレー?」
「いいね!」
キュピィーン☆と立てた親指から黄色い星が何処かへ飛んでいく。こう言う時、Gが足りなくて同じ部屋になってしまうのが何よりキツい。
「?兎に角、支度して」
「何でよ?まだ集合には早いぞ?」
「兄さんに手紙送らなきゃ。だから便箋買いたいし、早めに出しておきたいから」
「ん。分かった、じゃあ此処で待ってる。着替えたいし」
「そうね。魚臭いもん」
「ウェディは魚臭く無い!」
ヒレ(耳)をツンと逆立て、眉に皺を寄せる。冗談だと分かっているが、何処に行ってもそうからかわれれば怒りたくもなってくる。
「どうどう・・・怒らない怒らない。とりま行ってくるわ」
最早共有財産となったクワレーの財布を持ち、フル装備で宿を後にするギールに何となく溜め息が出る。
旅に出たばかりの頃は結構持っていたのに、鉄道パス代金、装備代、宿代、食事代が瞬く間に財布を食い荒らして、現在は2000Gでチミチミ遣り繰りしている。
「はぁ・・・稼ぐ方法を考えないとな・・・」
再び布団に潜り、寝息をたてはじめた。
◇
「今はガートラントに居ます・・・っと」
郵便局で手紙を書き終えたギールは封筒に送り先の名前を書き、郵便局員に手渡す。
アストルティアに存在する郵便局はどんな物を送ろうが送料無料。魔法は便利だ。郵便物の送り先の人の名前、もしくは場所の名前が分かれば直接魔法で飛ばして送るのだから。
「お菓子でも買って行こうかな」
残り僅かしか軍資金が無いと言うのに、ギールは全く危機感が無い。いや、金銭感覚か?
「あれ?マイユ?」
旅の扉(ガートラント等の大きな町になると、移動が大変な為、町の入り口付近から城の入り口付近まで、と言ったように、ワープ出来るポイントが設けられている)の前にキョロキョロと辺りを忙しなく見回すマイユが立っていた。
何かあったのかとギールが駆け寄る。すると、ギールに気付いたマイユが泣きそうな顔で肩を掴んだ。
「ギール大変!アロルドが・・・アロルドが!」
◇
「行くぞスラリンガル!よく見ろ!ほぉぁぁあ!」
「ピキー!」
宿ではスラリンガルに自分の筋肉を見せつけるクワレーがパンツ一丁でポーズを決めている。
大剣をはじめとした重量系の武器は腕力だけで振り回せる物では無い。瞬時に重たい武器の軌道を変える腕力、振り上げる時に負荷が掛かる肩や背筋、振り抜いた時に踏ん張る下半身等、個人によって力の入れ方は違うが、基本的に全身の筋肉を酷使するのだ。
前にも言ったが、クワレーの肉体は並みのウェディと比べても非常に筋肉質だ。
「ピキー!ピキー!」
「ふはは!羨ましいかスラリンガル!ならば、これも見ろ!」
両手を後頭部に、腹筋を引き締める。
「・・・何してるの」
「・・・ギールのパーティーリーダーって面白い人ね」
「は、はは。どうも・・・」
「って、そうじゃないの!クワレー、アロルドさんが居なくなったんだって!」
「へ?浮気か?」
「違う!」
アロルドが消えた。その事は今から30分前に遡る。
外を探索していたアロルドとマイユがサウルスロードから逃げていた途中、岩影に隠れていたアロルドが突然苦し気に叫び、まるで球体に囚われて小さくなっていき、虚空に消えたのだ。ギールは何かの冗談だと思って探したが、現に見つかっていない。
「取り敢えず、グロスナー王に報告しましょう。先に」
「分かったわ」
2人を先に向かわせ、戦いの予感を感じながら装備を整える。脳裏に白いベールの女の紅い瞳が甦る。
『また逢いましょう、“特別な”戦士さん』
「・・・まさかあの女の仕業か」
如何でしたでしょうか