青年達が向かうのはレーンの村があるコルット地方の北西にあるレーナム緑野のジュレー島下層行きの船乗り場だ。
そんなに離れている訳でもないが、地域が変わるだけで外の魔物の強さも変わる。
「アガペイさんはグレンで何をしてる人なんですか?」
「ひっひっひ・・・あなたさまのように、強さを求める戦士達に道を示しております。・・・中には失敗し、『狂戦士』に堕ちた者もおります」
「『狂戦士』?」
「その事につきましては、あなたさまがもっと強くなってわたくしめのもとに来たときに、お話致しましょう」
聞いたことのない何か不気味な言葉が気になり、頭から離れない青年は、アガペイからその後何度も聞いたが、アガペイは「まだ時期ではございません」と断る一方。ついに青年も諦めた。
道なりに進んで数分すると、レーナム緑野が見えてきた。
コルット地方よりも大きいこの地域。此方も北西に向かえばジュレー島下層への船乗り場が見えてくる。
そしてコルット地方からレーナム緑野に入った直後の位置から北に進むと、祈りの宿と呼ばれる休憩所的な場所がある。
宿泊施設もあり、ここら辺に訪れる冒険者は其処を拠点に動くのが多い。
「祈りの宿からジュレー島下層行きの船乗り場に近い所に行ける船が出てる筈です。それに乗りましょう」
◇
歩いて間も無く祈りの宿に到着。
湖の上に佇むこの祈りの宿は、奥のシエラ巡礼地に向かうために必要な橋でもある。最近は強さを求める冒険者がシエラへ向かってよく怪我をしている。
「おっしゃ。シエラ行くぞ」
今もまた、シエラへ向かう冒険者のパーティーが青年達の前を横切った。
4人のパーティーで装備を見る限り、上級冒険者である事が分かる。
「やっぱり大剣は見ないなぁ」
大剣=両手剣は身の丈程の全長、それにみあった重量、最大級の武器だけあって素材を多く使用し、故に値段は高い。取り回しも悪く、下手をすると仲間を傷付けてしまうかもしれない広い攻撃範囲と攻撃力。そうなかなか大剣使いには逢えないだろう。
「わたくしめはオーガでよく斧を愛用している者を見ました」
「叩き割るのが好きなのかな?」
「ひっひっひ・・・若いオーガは豪快なのが好きでございます」
「ジュレー島下層行きの船乗り場近くまでの船を出すよー!乗りたい奴はさっさとのっちまいなー!」
「アガペイさん行きましょう」
やや早歩きで船に向かうと、既に乗っていた何人かが珍しげに青年を見やる。
大剣ウェディは珍しいのだ。
「さぁ、乗った乗った」
元気の良いウェディのお兄さんは手を2回叩くと足元のオールを持って船に乗り込んだ。
「そぉれ」
船は真っ直ぐ前進し始めた。
◇
ガヤガヤ。
「アガペイさん。レーンの村まで1人で来たんですよね?魔物は大丈夫なんですか?」
「ひっひっひ・・・わたくしめは大丈夫でございます。さぁ、もう日が暮れてます。お帰りになってください」
「でも」
「わたくしめはこう見えて戦士でございます。次は更に強くなって、グレン城下町でお会いしましょう」
アガペイは青年に頭を下げるとゆっくりと去っていった。
青年はやっぱりついていこうと思ったが、これ以上は迷惑と判断し、踵を返した。
「・・・そうだ、旅に出るんだ」
青年は船に乗らず、敢えて遠回りで村へと走っていった。
「ひっひっひ・・・楽しみでございます。あなたさまが力を求めて来るのを」
如何でしたでしょうか。