グロスナー王に報告しに、3人は王の間に向かう。
相変わらず階段が厳しい。
「グロスナー王!大変です」
マイユが驚くグロスナー王に説明をする。我が身をもて余すギールとクワレーは入り口で立っていると、不意に開いた扉にどつかれた。
「申し上げます!行方不明だったパラディンが1名帰還いたしました!」
城兵に支えられて1人のパラディンが片足を引きずりながら入ってきた。
「おお、戻ってきたか!」
「ぐ、グロスナー王・・・しろ、白い・・・女が突然・・・」
「白い・・・女?」
「ギルザット地方の・・・賊の、アジトに・・・」
その言葉を最後にパラディンは気を失った。
ギルザット地方には海賊のアジト跡と呼ばれる小さな廃小屋がある。彼が言いたかったのは恐らく其処だろう。しかし、彼処は廃小屋だけで何か見付かった事は無い。
「彼をすぐに治療に!お主たちは今聞いたアジト跡に急いでくれ。ワシも兵を向かわせたいのは山々なのだが、これ以上は難しい」
「それを承知です。ギール、クワレーさん、行きましょう!アロルドも其処にいるはず!」
「待って下さい。何があるか分からないので、ちゃんとした準備をしてから出ましょう」
「でも急がないと」
「落ち着いてください。僕が考えた作戦があります」
「「作戦?」」
「ふふふ」
◇
ーーメガボンバー
それは、盗賊が使う武器(道具?)の1つ。
真ん丸真っ黒の砲丸状爆弾に火を着け、時間差で敵を吹っ飛ばす豪快なもの。マッチとセットで500Gだ。残り金額はギールが買った便箋代も引いて1490G。
「馬鹿じゃないの!?お金無いのに!節約しようと思わないの!?」
お前が言うなお前が。
「まぁ落ち着け。敵がそんな簡単な場所に隠れてるなんて思ってないよ。大概、こう言うRPGには隠し扉とか隠し階段とかの入り口があるわけだ。そこで、一々探すのも面倒なので、爆破することにしました」
手っ取り早い方が良いでしょ?と付け足すクワレーにため息を漏らし、買ってしまっては仕方がない。と納得せざるをえないギール。
少しメガボンバーの威力も気になるマイユも同意の下、海賊のアジト跡に到着し、早速怪しい場所を探す。メガボンバーも中々重たい為、暖炉前に置く。
「ふぅ。何処で爆破しようかな・・・いいや、此処で」
暖炉前に置いたメガボンバーを転がらないように小石でバランスを整え、鞄からマッチを取り出し、大袈裟な動作でマッチをすると、ゆっくり導火線に火をつける。
「ちょ!?いきなりおっ始めるつもり!?」
「逃げろぉ!」
ヂヂヂと導火線の火が本体に近付いていく。クワレーの一言でギールとマイユも猛ダッシュで逃げ出す。
「馬鹿でしょ!絶対馬鹿でしょ!」
「爆発するぞ!伏せろ!」
ヂヂヂ・・・ズドン!
伏せた頭上を大量の破片が飛び散る。粉塵が舞い、メガボンバーの高い威力が目に見える。
「本当に爆破した・・・」
「・・・予想外の威力・・・」
「あ、見て!」
マイユが指差す先を覗きこむ。すると、粉塵を吸い込む穴がぽっかり口を開けていた。
「あ、穴が開いてる・・・あれが白いベールの女が居る場所?」
「だと思う。妙に肌を擽る雰囲気を感じる・・・」
「クワレーさん、気配を感じるの?」
「気配と言うか、肌で感じると言うか」
兎に角、砂ぼこりが晴れてから穴から下に向かって伸びた梯子に足をかけるクワレー。
「じゃあ、先に降りるよ」
木と縄だけで出来た梯子を慎重に降り、鞄から松明、ドワチャカオイルを松明先の布に染み込ませ、マッチで火を灯す。
「どぉ?」
続いてギール、マイユ、スラリンガルと降りてくる。
クワレーの持つ松明で照らされた地下洞窟は近くの海水が染み出ており、潮の匂いがする。所々に岩塩の存在が確認出来る。持ち帰ればGに換金出来る。それを知らない訳ではないクワレーは予備の鞄に片っ端から岩塩を詰めていく。
「クワレー?」
「岩塩は貴重だ。何処でも高く売れるから採っておこう」
「マジ?やった!私も採るー!」
興奮した2人は本来の目的を忘れ、目につく岩塩をぎゅうぎゅうに詰めていく。
「ちょっと2人は共!目的を忘れてない!?」
「そうよクワレー!何しちゃってるの!」
そう言うギールは鞄から岩塩が溢れている。
「冗談だよ冗談。・・・奥だ、奥に居る・・・」
岩塩を採っていた笑顔が一瞬で鋭い目付きへと変わる。旅を始めて1週間が経っている。始めはまだ戦いを中途半端にしか知らない頃とは違い、身近に戦いを感じ、共に旅をする仲間を守るための強い心、体を身に付けていた。
「先導します」
海水の水溜まりを構わず踏みつけ、洞窟の奥に走り出した。
◇
「ふん!」
ザシュ!
襲い掛かるボーンプリズナーを斬り倒し、一切迷うこと無く奥へと進む。
「ねぇ、クワレー怒ってるの?」
「んにゃ?邪魔だ!」
再び起き上がるボーンプリズナーを今度は力任せに叩き伏せる。今度こそ完全にバラバラ死体となった。
「・・・怒ってるの?」
「いや?怒ってないけど」
((怒ってる、絶対怒ってる))
当然だ。口には出さないが、前にこの先に居る白いベールの女の仕業でレーニアが死ぬ所だったのだ。わざわざグレンから此処まで探しに来たのだ。積もった怒りが漏れ出していてもおかしくない。
「・・・ねぇ、もしかして今から会うその女に何か怨みでもあるの?」
「・・・この扉の先に居る女に1発食らわしたら、教える」
睨みをきかす先。ギールでも分かる不穏な空気を滲み出す扉が佇んでいる。
「アロルド・・・」
「クワレー、何があるか分からないから慎t」
「失礼します」
「「えええ」」
丁寧にノックを3回すると中から艶かしい声で許可が下り、やや重たい扉を開ける。
「あらいらっしゃい。また逢ったわね、“特別な”戦士さん。もしかして、貴方が1人逃がしたの?」
突然広くなった空間の真ん中に待ちくたびれたような白いベールの女がたっていた。
女は全身が真っ白な服装で顔も目元しか確認出来ない。
「あのパラディンか?知らないですね。僕が知っているのはお前がゴーレムを招き入れて僕の仲間を危険な目に合わせたことだ!」
「だ、誰か居るのか・・・!頼む助けてくれ・・・」
「よかった・・・彼奴は上手く逃げれたんだな・・・」
「あら?貴方達がやったの?もしかして、もっとお仕置きして欲しくてやったのかしら?」
「ヒィ、助けて!」
謎の部屋の奥、監禁された男達が窶れた声で助けを求めている。お仕置きとは何なのか気になるギール。
「ふふ。それにしても貴方、やっぱり放っておけないわね・・・」
ゾワッ・・・。
白いベールの女が身を翻し、同時に魔瘴が女を中心に渦を巻きはじめた。今までとは比べられない不穏なオーラを放ち、思わず竦み上がる。
「良いわ。貴方だけは特別に私のモノにしてあげる!」
白いベールの女は黒いボンテージドレスでボリュームのある狐の尻尾のような髪を束ねた姿へと変わっていた。
鞭を片手に妖艶な動きで挨拶代わりのメラミをクワレーの足元に放つ。
「・・・」
「さぁ、いらっしゃい?」
「言われなくても!」
如何でしたでしょうか