「言われなくても!」
白から黒に大胆チェンジを遂げた女は下唇を舐めて鞭をほどく。クワレーも背のビッグブレードⅡを滑らせるように脇腹から下ろし、肉薄。素早さを上げる錬金効果が付いた足装備のお陰で即座にトップスピードで女の右手側に回り込み(鞭を持っているのが左手)、脇腹から逆袈裟斬りで斬り上げた。
しかし女も即座に反応し、ひらりと身をかわすと鞭で反撃。足首に絡ませた鞭をクンッと引っ張り、背中から地面に落とす。
「ぃづ!」
「そう言えば、まだ貴方の名前も聞いていなかったわね。私の名前は妖魔ジュリアンテ。今までの男は皆タイクツだったわ。貴方は楽しめそうだから、私のお気に入りにし・て・あ・げ・る(ハート」
「くっ!ふざけるな!お前に1発かます為に僕は来たんだ!ふざけるのも大概にしろ!」
「あ~ら私に1発?いきなり大胆ね」
強引に鞭をほどいたクワレーも反撃と足払う。それもひらりと身をかわしてバックジャンプで距離をとる。その隙にクワレーも跳ね起きてギール達の所に下がる。
「ちょっとクワレー!1人で行かないでよ」
「ふぅん。貴方クワレーって言うのね。たまにはウェディの男も良いかも(ハート」
「ギール、私達も加戦しましょう。スラリンガルちゃんも頼むわよ」
「ピキー!」
「ふふふ、いらっしゃい。纏めて相手してあげるわ」
ジュリアンテが鞭を頭上で渦の形を作ると同時、鞭がピンクのオーラを纏い、広範囲に風が巻き起こる。
魔力の込めた鞭の攻撃のようだが、威力はそこまで高くないのか、ギールとマイユはかすり傷だけで済んだ。
「なにコイツ?大した攻撃力ないわ。クワレー、一気に締め上げr」
「ウェヘヘヘ・・・ジュリアンテ様ぁ・・・」
「ピキー・・・」
「あれは!?」
「ふふふ」
ーーテンプテーション
対象を魔力を込めた鞭で攻撃することで、一時的に魅力させる事が出来る。こうなると、魅力された者を殴って正気に戻すか、効果が切れるのを待つか、魅力させた相手を沈黙させるしかない。
「クワレーのあんな媚びた姿初めて見たわ!」
「そうじゃないでしょ!相手の言いなりであの大剣を振り回されたら私達も流石に厳しいわ!」
「ウェヘヘヘ」
「さぁ、クワレー。私の下に来なさい」
「イヤァ!クワレー目を覚まして!」
メギョ!
ジュリアンテの手に落ちそうになったクワレーを間一髪ギールの正拳突きで正気に戻した。しかし、今の攻撃はジュリアンテのよりも遥かに強力で、くの字にひん曲がったクワレーはピクピクと悶えている。
「あらあら。残念・・・」
「ギール、相変わらずね・・・」
「許さない!よくもクワレーをこんな酷い目に合わせたわね!」
「・・・いや・・・これ、は・・・お前ぁ・・・」
腰からはがねの剣を抜き、戦士の大盾を構える。
「う~ん。本当は私、女には興味無いのよね・・・でも纏めて相手してあげるって言った矢先だものねぇ」
「ごちゃごちゃ言ってると舌噛むわよ!」
刹那、ギールは力強く踏み出し、そのまま盾をジュリアンテに押し付ける。咄嗟に踏ん張れず尻餅を付いたジュリアンテ。そこにすかさずギールがはがねの剣を降り掲げた。
「!」
だが、それを降り下ろす事は無い。躊躇いだ。何せ、相手は魔物であるが、見た目は人間にこの上なく近い。故に一瞬、心に迷いが生じたのだ。
「この!」
鈍い動きで降り下ろすが、ジュリアンテは簡単にいなし、無防備の腹に蹴りを食らわす。胃のなかの物が逆流しそうになるのを堪え、距離をとる。
「お前こそ1人で行くなよ」
「う、五月蝿いわね!」
「ギール。躊躇いが在るなら、下がってろ。あ、スラリンガルの相手頼む。そしたら僕とマイユさんで戦う」
「でも」
「僕は慣れてる!」
どういう意味か考えさせる暇もなくクワレーがビッグブレードⅡをジュリアンテに投げつける。
それを弾き返したジュリアンテにマイユが肉薄。
「次は貴女が相手?」
「舐めないでよね!」
ジュリアンテの懐に潜り込んだマイユはジュリアンテの左足を右足で自分側に刈り寄せ、バランスが崩れた所で非常に露出が多いボンテージドレスの胸元を掴み、背中に背負いながら流れるような動作で地面に叩き付けた。
「ぐっ!?」
これには思わずジュリアンテも余裕の色が消えた。
しかし、ジュリアンテの大きな特徴の1つでもある髪。これが背中から叩き付けられた際に衝撃を吸収し、小さいダメージしか与えられない。だが、マイユはそれで十分だった。本当の目的はジュリアンテの動きを封じる事。これが大きな攻撃チャンス。
「私こそなめてもらっちゃ困るわ!」
マイユを押し退け、指先に炎の玉を作り出す。
「ちょっとぐらい火傷しても構わないわ!」
ボゥ!
ジュリアンテの指先からメラミが放たれ、狙い過たずクワレーの顔に激突した。
「クワレーさん!」
「・・・残念」
炎がはけた所で、クワレーの顔は笑っていた。多少髪の毛が焦げているが、竜のおまもりの効力でダメージは非常に少ない。
驚きを隠せないジュリアンテ。
「貴方、竜のおまもり持ってるのね・・・厄介な・・・っ」
「!くっ!」
再びテンプテーションがマイユとクワレーを襲う。同じようにクワレーは魅力され、ジュリアンテから距離を離される。
「ジュリアンテ様ぁ~」
「ギール!」
「うん!覚ましてクワレー!」
ゴギャ!
今度は背面に向けてドロップキックが炸裂。吹き飛ばされたクワレーはスラリンガルを巻き込んで転倒。
そのお陰でスラリンガルもクワレーも魅力から解放され、痛みに堪えつつも即座に臨戦態勢。
「・・・ギール、お願いがある・・・今のはツッコミじゃなくてただの暴力だから、もうやめて・・・」
「ふんっ。あんなのに魅力されるクワレーが悪いのよ」
正直、妖魔ジュリアンテはギールやマイユと並ぶグラマーな奴だ。それを更に強調させる露出度が高いボンテージドレスと何処か悪魔的な美しい顔は大概の男なら落ちるだろう。
「おおクワレーよ。魅力されてしまうとは情けない!って?」
「はいはい。次魅力されたらばくれつけんね。マイユ、大丈夫?」
「ええ。取り敢えずはね」
「くる!」
ボゥ!ボゥ!
連続してメラミがクワレーに放たれる。勿論ダメージは少ない。
(何のつもりだ?魔力の無駄じゃないのか?)
シュル!
メラミを放つ一方、鞭が2度、地面に打たれた。刹那、それぞれ打たれた地面から竜が交互しながらクワレーに迫る。
ーー双竜打ち
鞭を使う者としてはスタンダードな技。そんなに接近しなくても攻撃できる鞭だが、そんなに遠距離からは攻撃出来ない微妙な中距離武器。そこで、遠距離からでも攻撃出来るように作り出されたのがこの双竜打ち。威力は若干上下するが、元が高威力なのが気に入られている理由。
「何だあれ!」
「避けなくて良いの?」
「何をいっ」
ブシッ!
生温かい違和感と音に気付き、そこに手を当てる。
「・・・あ”」
2匹の竜はクワレーの右太股と左横っ腹を食い抉っていた。
如何でしたでしょうか