ドラゴンクエストX ~父を探して~   作:ゴミ収集車

22 / 24
渾身の力を込めて

 

 

 

 

 

 

「ぐぁがぁああ!!」

 

食い抉られた箇所から赤黒い血が噴き出す。

連続したメラミのせいで反応が遅れ、目では捉えていても体が咄嗟に動かなかった。血は瞬く間にせいどうの鎧下からブーツを血塗る。

 

「クワレぇ!」

 

「クワレーさん!」

 

「くっくっく。やり過ぎちゃったかしらぁ?」

 

結構深く抉られたのか、臓物がはみ出て太股は骨らしき物が確認できる。

一気に青ざめたギールは腰を抜かして茫然とし、マイユはスラリンガルに回復を任せ、止血を行う。

 

「酷いわ・・・!このままじゃ10分も・・・」

 

「クワ・・・」

 

「っく、っ、っぅ・・・」

 

痛みで呼吸も忘れ、自分が生きているのかも分からない状態でただ痙攣している。

 

「・・・ゅ・・・ぃ」

 

「?何か言ったかしら?」

 

「・・・るさない・・・ゆる、さない・・・」

 

「ギール・・・?」

 

「許さない!よくも、よくもよくもよくも・・・」

 

自分の握力で血が滴るのも構わず、怒りを露にするギール。大盾と剣を構え、殺意剥き出しのレッドの瞳が涙で揺れる。

 

「よくもぉぉおお!」

 

跳躍。空中で自身をコマのように回転させ、着地と同時に直前の遠心力を利用して高速で斬り上げる。ボンテージドレスを一部裂き、切れた皮膚から血が一滴。

それだけでは止まらない。更に回転を加え、頑丈な銀のブーツのすね当てでジュリアンテの脇腹をフルパワーで蹴る。

 

「~~!?」

 

『ギール。躊躇いが在るなら、下がってろ・・・』

 

「・・・私は、躊躇わない!」

 

ふと思い出したクワレーの言葉を振り払い、はがねの剣でジュリアンテの背を斬った。

 

「あっあ”!」

 

これも浅かった。だが、大量の髪と共にボンテージドレスを伝って流れる血を見たジュリアンテは取り乱し滅茶苦茶に鞭を振り回した。その姿を見たギールは逆に冷静さを取り戻し、大盾で身を守りながら再び接近戦に取り掛かる。

もう迷いは無い。クワレーの為に、ガートラントの人々の為、拐われた人々の為、ギールは迷いを捨てた。

 

「ぅぁぁああ!」

 

「私に傷を・・・殺してやるぅぁ!」

 

「ギール!」

 

ドスッ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ・・・はっ・・・」

 

「ごふ・・・」

 

「ギール!」

 

ボタボタ・・・。

大量の血が、ジュリアンテの下半身全体を濡らしていく。

ギールのはがねの剣は、ジュリアンテの背中から赤くなって突き出ており、ジュリアンテは懐のギールに支えられたような形でぐったりとしている。

 

「ぅっぶ・・・あーあ、負け・・・ちゃったわ、ね・・・」

 

「はぁ、はぁ」

 

「安心、しなさい・・・本当に私の負けよ・・・っぅ。はぁ・・・ひぃ・・・良いことを教えてあげるわ・・・そこの、クワレーちゃんに教えてあげなさい・・・グレンにゴーレムを入れたのは私じゃないわ・・・私は、ただ男の品定めに、きて・・・ただけ。ザマではからかっただけだったの・・・はぁ、はぁ・・・」

 

「ど、どういう事よ?アンタは何も知らないの?」

 

「知らないの・・・。ふ、ふふ・・・そこのクワレーちゃん・・・大切にしなさいよ・・・?実は、私は力を最大限・・・発揮出来なかった・・・それ、は、彼が・・・て・・・の血・・・」

 

フォォォ・・・。

魔瘴竜のように黒い霧となって霧散したジュリアンテは、最期に笑っていた。謎の一言を残して。

 

カチャン。

と、霧散した直後に不気味なオーラを放つネックレスが落下。そのネックレスをギールが拾おうとしたとき、部屋の入り口を蹴破る音が響いた。

 

「スピンドル兵士長参上!」

 

「「「は?」」」

 

思わず横になったクワレーを腑抜けた声で反応した。

どうやらガートラント城の兵士長であるらしいそのスピンドルはいかにも小物臭がプンプンし、小柄で丸い体、非常に窮屈そうな鎧が目に入る。

 

「白いベールの女はどこだ!このスピンドル兵士長が来たからにはもう」

 

「兵士長?じゃあガートラントからの・・・?」

 

「む?おぉ、無事だったか。して、女は?」

 

「ジュリアンテなら」

 

「いや、言わなくても分かる。私に恐れて逃げ出したんだな!ハッハッハ!」

 

「「「・・・」」」

 

高らかに笑うスピンドルは重傷のクワレーに気付かず、ギールに歩み寄る。

 

「ご苦労」

 

偉そうな態度でネックレスを拾い、不思議そうにそれを眺めているとその部下であろう2人の兵士も入ってくる。

 

「兵士長、例の女は?」

 

「うむ。私が一瞬でケリをつけた。この者たちも奮闘していたがやはり私の剣術の前では女は無力だった」

 

(((コイツ・・・!)))

 

3人は嘘をつくスピンドルに苛立ちを覚える。特にクワレーのスピンドルに対する怒りは誰よりも大きい。

しかし、このスピンドルはグロスナー王からの信頼も厚く、一部の兵士を除いて信頼されている。ただの旅人と“兵士長”のどちらの言葉を信じるか?となれば後者に負けるのは目に見えている。

 

「お前達は囚われた者たちを救出。私はグロスナー王に報告に向かう」

 

「「はっ」」

 

「アロルド、アロルド!」

 

部屋の奥の監禁室から2、3人のパラディンが窶れた様子で出てきた。アロルドの姿は、無い。

 

「え・・・アロルドは?」

 

「アロルド?ここには俺達しか居ないが・・・」

 

オーガのパラディンが人間のパラディンに庇われ歩いた状態でマイユに答えた。彼の話によると、ここにはジュリアンテに拐われた男が居るだけで、他の消えた者は居ないと言う。愕然と、絶望したマイユは膝から崩れ、アロルドの名を叫んだ。虚しくこだまする。

 

「・・・マイユ」

 

「ギール・・・最期にジュリアンテが何て言っていた?」

 

「・・・後で話すわ」

 

スラリンガルの必死の治療によって一命をとりとめたクワレーに寄り添い、肩を震わして泣き始めた。

 

「・・・泣け。今一杯泣くんだ。僕だって味わった・・・今はそうすれば気持ちが軽くなる」

 

「クワレー・・・ひ、人って、どこからどこまでの事を指すの・・・?」

 

「分からない・・・」

 

魔物とは言え、ほとんど人とも捉えられるジュリアンテの命を奪った事に恐怖等、様々な感情に困惑して、ガートラント城に着くまで泣き続けたギールであった。

 

 

ガートラント城内王の間。先に到着していたスピンドルから報告されたグロスナー王が待っていた。

 

「おお。ご苦労だった。スピンドルから報告されたが、その白いベールの女は魔物だったのか?」

 

「はい。(クッソ!スピンドルの奴、手柄を自分の物にしやがって・・・)そこの兵士長が強いお陰で助かりましたよ」

 

「しかし、その傷はなんなのだ?スピンドルは一瞬で倒したと言っていたが?」

 

「えぇ。確かに僕はジュリアンテにやられたんですけどねぇ?」

 

「・・・ゴク」

 

クワレーからすれば、死にかけてまで戦ったのにそれを偉そうに手柄を我が物とされたら殺意を抱くほど苛立っている。一方のスピンドルはクワレーの異常なまでの殺意を感じ取り、冷たい汗をかいている。

 

「?まぁ、良い。お主らのお陰で女のアジトも見付かったのだ。その功績に称え」

 

「おやおや。スピンドル、アンタ本当にあの白いベールの女を倒したのかい?」

 

グロスナー王がキーエンブレムを授与しようとしたとき、ゼラリム姫の治療を終えたらしいマリーンが降りてきた。どうやらスピンドルの言動を怪しく感じたようだ。

 

「な、何を馬鹿な・・・では証拠をお見せしましょう」

 

チャラ・・・。

スピンドルが証拠であるネックレスを提示。すると、グロスナー王がそれを見て驚いた。

 

「それは、魔瘴石のネックレス!どうしてそれがあるんだ!」

 

この魔瘴石のネックレスは随分前にグレンでバグド王が凶暴になり、このガートラントに戦争を仕掛けようとして事で大きな問題となった物だ。これはマリーンが破壊し、封印した事でバグド王も正気を取り戻し、戦争も取り消されて一件落着したと思われていたが・・・。

 

「どういう事なのだマリーン殿!」

 

「・・・破壊?封印?冗談じゃないね。この魔瘴石のネックレスはね・・・アタシ達の力を増幅させてくれる便利な秘宝なんだよ」

 

シュン!

ネックレスがスピンドルの手からマリーンの手に瞬間移動。直後、全てを察したグロスナー王が立ち上がり、玉座脇の剣をマリーンに向けた。

 

「貴様!一体何者だ・・・!?」

 

「ニヤ・・・」

 

邪悪に口角を吊り上げた刹那、マリーンは魔瘴のような物で全身が覆われ、スピンドルの背後に瞬間移動した。

 

「アタシは呪術師マリーン!白いベールの女・・・ジュリアンテはアタシの可愛い妹さ!」

 

スピンドルの背後に姿を表したマリーンは更に巨大になった体躯に、青い肌。非常に醜い姿となったマリーンは怯えるスピンドルの頭を鷲掴みにし、その巨体を揺らして笑う。

 

「ジュリアンテは戦を起こせば手っ取り早く強い者達を集められると考えていたらしいけど、アタシは戦には興味無いんだよ!アタシが興味あるのは、この世に居ると言われる、生き返しの術を受けた特別な者をずっと探していたんだ。魔瘴石を使ったジュリアンテを倒すなんて、大した力じゃないか?えぇ?スピンドル兵士長。アンタの事見くびってて悪かったね!」

 

フォン。キュゥゥン!

頭を鷲掴みにされたスピンドルが突然姿を消した。それを見たマイユが立ち上がり、叫んだ。

 

「あれは、アロルドが消えた時と同じ黒いモヤ!マリーン!貴女がアロルドをさらったのね!」

 

「だとしたら、どうするつもりだい?」

 

「ふん!」

 

グロスナー王が高く飛び上がり、マリーンに斬りかかる。しかし、ひらりと身をかわされた瞬間、マリーンの右手の特殊な形状のハンマーで叩き上げられたグロスナー王もマリーンの力によって小さな黒い球体となってしまった。

 

「くっくっく・・・。グロスナー王い・た・だ・き」

 

「マリーン!お前2人に何した!」

 

「くっくっく。ジュリアンテに負けて車椅子でしか動けないアンタは要らないね。マイユちゃん、アロルドに会いたかったら古代オルセコ闘技場に来るんだね!」

 

マリーンは一瞬で姿を眩まし、気配も完全に消えた。

 

「な、何て事だ・・・賢者マリーンが魔物だったなんて・・・クワレーさん、ギールさん、マイユさん!どうか、古代オルセコ闘技場に向かい、グロスナー王を救って下さい!救って下さった暁には今度こそキーエンブレムを差し上げます!どうかお願いします!」

 

マグナスが深く頭を下げた。車椅子のクワレーも立ち上がる。

 

「必ず救ってみせます!」

 

古代オルセコ闘技場はガートラント領の北西、オルセコ高地をまっすぐ西に進んだ所にある。非常に強い魔物が徘徊している危険地域だ。

たとえ古代オルセコ闘技場に着いたとしても、生きて出てこれるかも分からない。

 

「急ごう!僕の治療は走りながらでいい!」

 

 




如何でしたでしょうか
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。