「えぇー!アイツ旅に出たの!?」
レーンの村。鳥が囀ずる静かな村に大音量の青年(女でも青年って使えるの知ってましたか?)の声が響き渡った。
「ぇ、えぇまぁ、黙っておくように言われたけど・・・」
「そんなぁ・・・私はアイツのライバルなのにぃ・・・!」
右拳をキツく握り締めた青年、彼女の名前はレーニア。
茶の瞳に同色のツインテールのウェディ女の子。
全体的に何処か気怠そうな雰囲気を醸し出すウェディのイメージとは違い、やや鋭い目付きと癖で両腰に手を当てて仁王立つ元気な武道家見習い。使用武器はツメ。
「・・・決めた!私も旅に出る!」
「ちょ、レーニアちゃん。いくらなんでも急過ぎるわ」
「アイツだって急に旅に出たんでしょ?昼間に出るだけまだマシよ」
レーニアはこのレーンを夜中に旅立った青年のライバル(と、自分で言っているが、青年本人は元気な馬鹿と認識)で会ってはしょっちゅう実力比べをしていた。
「まぁ、取り合えずコラ村に戻って親と話すのが良いと思うわ」
レーニアはこのレーンの村出身ではない。
隣のレーナム緑野の南西にあるコラ村出身である。2つの村はよく祭りをしたり、結婚式があれば祈りの宿に2つの村全員が集まって祝福するほど仲が良い。そしてレーニアは2年前、村の代表者による武道大会で青年に敗れて以来追いかけ回しているのだ。
「いや、大丈夫ですこのままジュレットに行きます。たぶんアイツもそこに居るので」
(・・・好きなのかしら?)
隅に置けない子ね。と息子の事を考えていると目の前にレーニアの姿は無かった。
◇
「ぅ・・・んぅ・・・」
「ピキーピキー!」
レーニアが村を飛び出して1時間後、ジュレー島下層の大空洞の何処かでウェディの青年が苦しそうに目を覚ました。
「スラリンガル・・・っ!?」
起き上がった青年の体に激痛が走る。横のスラリンガルが心配そうに(表情の変化は無い)青年の顔を覗き込む。
「僕は、何で此処に・・・?」
昨夜の事を思い出してみる。
遡ること数時間前、船が出てなかった為泳いで(そんなに距離は無い。レーンから下層行きの船乗り場くらいまでの距離)ジュレー島下層の大空洞入り口に着いた青年はスラリンガルを頭に乗せて大空洞を迷っていると不運にもポイズンリザードと遭遇。なんとか倒したものの、戦闘のダメージで倒れてしまった。それをスラリンガルが引きずって比較的安全な場所に移動。青年の薬草を使って回復させていたのだ。
「・・・思い出した・・・情けね・・・」
「ピキー」
「そんな訳ないよ」と言っているのだろうが、表情の変化は無く、ぷるぷると柔らかそうに動くだけ。
「ごめんなスラリンガル。もう大丈夫だからジュレットに行こう」
痛みを我慢し、脇に転がっていた銅の大剣を杖がわりに歩き出す。
「しかし参ったなぁ・・・出口は何処なんだよ」
下手に歩き回ると体力がもたないし魔物との戦闘の危険も大きい。どうするのがベストかと思考を巡らせていると空洞内の何処かで叫び声が反響した。
「・・・行くべきだよな?」
「ピキー!」
「当然だ!」と跳ねる。
「分かった」
青年は今出来る全力疾走(くさった死体とほぼ同格)で声の主を探し始めた。
如何でしたでしょうか。