翌日の目覚めは最高に調子が良かった。まるで身体が新品になったのではないかと錯覚させる程、昨日の倦怠感、毒のせいで焼けるように熱かった身体が嘘のようだ。
「しかし凄いな僧侶の治療魔法は・・・今度転職してみようかな・・・」
宿屋から飛び出したクワレーは頭に乗せたスラリンガルに皮の帽子を被せてから腰の鞄から財布を取り出して中身を確認する。
手持ちは1万Gと少し。冒険初心者にしてはかなり持っている方だ。
「・・・足りるな。よし、まずは大陸間鉄道パスを買わないとな。スラリンガル行くぞー」
「ピキーピキー」
「え?レーニアは置いて行くのかって?まぁ、レーニアは行きたくないって言ったからしょうがない。それに宿屋にも居なかったし、放っておこ」
「ピキー」
ジュレット駅は酒場から出てまっすぐ進んだ海の上にある珍しい海上駅。鉄道マニアの間でも名所となっている。
◇
「大陸間鉄道公社窓口へようこそ!」
「あのー、鉄道パスが欲しいんですけど」
「では、此方の書類にサインをお願いします」
ジュレット駅の一角に設けられた大陸間鉄道公社の窓口。此処では鉄道パスの販売や損失時に必要となる持ち主の情報、鉄道の運行状態などを随時更新している。勿論、ジュレット駅だけではなく、全ての駅に存在している。
「はい、ありがどうございます。えぇと、クワレー様でございますね。こちらが大陸間鉄道パスになります」
渡された鉄道パスは大地の箱舟の絵が彫られた金属製のカード。これを持っていればどんな駅からでも好きな駅へ行ける(例外として、ヴェリナード城下町などの乗り換えて向かう駅等にはもう1枚カードを作らなければならない)。
「ではお気をつけて!よい旅路を!」
元気な駅員のウェディの女性は手を振りながらにこやかに声をはる。
このようにどこの駅員も元気が良く、それに女性であれば男性に、男性であれば女性に人気が高い。
「よし、早速グレン城下町行きに乗るぞ!」
「待ちなさいよ!」
ドン!と背中をしばかれたクワレーがよろめく。
聞き覚えのある声にクワレーは振り返らず、背中をさすりながら答えた。
「レーニア・・・いきなり叩くの止めてって何度言えば」
「はいはい分かってるわよ。それよりグレン城下町行きは反対側よこっちはラッカラン経由のオルフェア駅行き。それとも手前のメギストリスに行くつもり?」
「メギストリスに行けないのは分かってるでしょ。それにレーニアこそオルフェア行きか?」
「違うわよ、グレンよグレン城下町」
昨晩、あれほど嫌がっていた筈のレーニアがクワレーを引っ張ってグレン城下町駅行きの大地の箱舟に乗り込む。
(そうよ。なんの為に私はクワレーを追ってきたのか・・・)
「おい、おい、レーニア。席に座るよ」
スラリンガルを隣に座らせ(?)向かい合った椅子のクワレーの前にドッカリと腰をおろす。
『間もなく、当箱舟はグレン城下町駅方面へ発車致します。席に座ってお待ちくださいませ』
「グレンまでは1、2時間掛かるからなぁ。寝る?」
「うん」
『発車致します。揺れにご注意ください』
ガタン・・・。
大地の箱舟がゆっくりと前進し、初めて乗る方舟に興奮しながらも心地好い揺れに段々と意識が薄れていく。
(『狂戦士』・・・それも聞いておかない・・・と、な・・・)
如何でしたでしょうか。