ドラゴンクエストX ~父を探して~   作:ゴミ収集車

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ボキィ!

 

「ア゛ア゛ア゛ァ!!」

 

ゴーレムの重い腕が降り下ろされ、砂埃が舞うと同時にレーニアの哭声が耳をつんざく。

砂埃の中でゴーレムの動きが鈍ったのを感じ、埃を払い除けながら声を頼りにレーニアを見付けた。

 

「レーニア!」

 

「痛い!痛い!ア゛ァァァ!痛い!」

 

直撃は避けたらしいが、右腕にもう1つ関節が増えたように、前腕が痛々しくあらぬ方向に折れ曲がっている。皮膚も裂けていて真っ赤な血が取り止めなく流れていて危険なことこの上無い。

 

「・・・っ!レーニア、痛いだろうが我慢しろよ!」

 

レーニアの脇腹から腕を通して抱き上げ、なるべく痛まないように早く引きずる。だが、レーニアは痛みで暴れて叫ぶ。

 

「誰か!治療を・・・!」

 

宿屋の扉の前にレーニアを寝かしたクワレーが下へ続く階段から助けを求めた。しかし、同じように怪我をした者の治療と、立ちはだかるゴーレムのせいで上がってこれないでいた。

 

「くそ!くそ!・・・スラリンガル!レーニアの右腕を包んで固定出来るか!?」

 

「ピキー!」

 

スラリンガルはすぐにレーニアの右腕にまとわりついてきつく絞めた。

 

「~~~!!・・・」

 

声も出せず、レーニアは余りの痛みに気を失いかける。

だがそのお陰でレーニア自身は痛みを感じなくなっていた。

 

「・・・く、クワレー・・・逃げて」

 

「馬鹿か!誰が逃げるかよ!」

 

ズ・・・!ズシン!

漸く地面から腕を引き抜いたゴーレムが再びレーニアに狙いを定めた。

今度はもっと大振り、言うなれば会心の一撃を狙った攻撃を仕掛けた。だが、クワレーはそれよりも速かった。地面スレスレを駆け、ゴーレムとレーニアの間に割り込んだクワレーは素早く銅の大剣を引き抜き、ブレードガードの構えと呼ばれる、大剣の腹を盾にし、本体を斜めに傾けて攻撃を受ける大剣の基本防御体勢に移り、ゴーレムの会心の一撃を渾身の力で受け止めた。

 

ミシミシ!

とてつもない衝撃がクワレーの身体を押し潰そうと容赦なく掛かる。大剣と言うより文字通り全身でゴーレムの一撃を受け止めたクワレーの身体はまるで骨1本1本が悲鳴をあげているようだった。

 

(・・・ぅぎぃ!?肋が折れた・・・!!)

 

受け止めた際に大剣からの衝撃をもろに受けた左脇腹の肋骨が折れたようだ。だが痛みにもがく余裕など無い。

直ちにゴーレムの腕を押し返し、反撃を開始。

 

「ぬぅぁぁあ!」

 

ガン!

しかし、その勢いも一瞬で終わった。

ゴーレムの左脇腹から右肩にかけての逆袈裟斬りをしたクワレーの銅の大剣は、ゴーレムの圧倒的防御力の前でなすすべ無く半分に折れてしまった。折れた先がヒュンヒュンと風を切り、階段の下へと落ちていった。

 

「・・・ぉあ、嘘だろ・・・」

 

再びゴーレムが大きくのけ反る。会心の一撃がまた来る。

 

『クワレー。お前の名前はな・・・』

 

(!)

 

唐突に、クワレーの脳裏に甦る記憶。それは、クワレーの父と話していた時の事だ。

 

(どうしてこんなときに思い出すのか・・・)

 

『「剣」って意味なんだ』

 

『父さんが大剣を使ってるから?』

 

『ははは。流石に違うんだなぁ、クワレー。良いか?俺はお前に大剣みたいに豪快で強く、そして盾のように、お前の大切な誰かを守れる男になってほしくてその名前にしたんだ』

 

(・・・そうだ、僕はただの剣じゃない・・・背中に居るレーニアを守れる盾にもなれるんだ・・・)

 

ふと、まだ背中に背負っている大剣に気が付いた。

鞘におさまった細身の刀身。華のような十字の鍔がキラリと光を反射させる。

 

「父さん!借りるよ!」

 

チキ・・・。

柄に手を伸ばし、1歩踏みしめた。鞘から一気に引き抜き、袈裟斬りの要領で斬りつける。

 

キン・・・!

一瞬、まさに一瞬時が止まったようだった。

振り抜いたまま動かないクワレーと、あと1寸もない所で止まったゴーレムの腕。

 

「クワレー・・・?」

 

ズル。

先に動いた、いや、崩れたのはゴーレムだった。

左肩から右腰にかけて綺麗に刃が通っており、パンチングポーズのままゆっくりと上半身が滑り落ちていく。

 

ズズン!

 

「はぁ、はぁ・・・」

 

冗談にならない切れ味だ。あのゴーレムの体躯を刃こぼれ一切無く、滑らかに加工された大理石のように斬り落としたのだから。

 

「「ーーーーー!!」」

 

「!?何だ!」

 

グレン城下町に響き渡る何かの生き物のような咆哮。とても形容しずらいその咆哮と同時に残ったゴーレム達はグレン領東、西へと散らばっていった。

 

「何だったんだ今のは・・・」

 

「こ、これは何事か!?」

 

直後、駅から出てきた1人のオーガが荒れた町をみて慌てて僧侶達に状況を聞く。

赤い髪に威厳に満ちた顔、強靭な肉体はこのグレン国の王、バグド王だ。

 

「あぁ、バグド王・・・大変でございました・・・先程、獅子門付近にて魔物の群れが人々を襲っていてると報告しに来た者を介抱し、応援部隊が出ていった直後、ゴーレム達が暴れだしまして」

 

「何だと・・・まさか、私が留守なのを狙って・・・?だとしたら真の敵は魔物でもかなり人間世界に溶け込んだ奴のようだな・・・他には?」

 

「怪我人の治療で手一杯でございます。城内も混乱しております、どうかお力を」

 

「うむ。動ける者は怪我人を教会へ運べ!少しでも治療出来る者がいたら治療にあたってくれ!」

 

バグド王は素早く指示を回し、自身も怪我人の救護にあたる。

それを階段上から見ていたクワレーは難が去ったと安心し、レーニアに寄り座った。

血の気が引いたレーニアは動く左手でクワレーの頭を軽く殴った。

 

「・・・何だよ?」

 

「私を・・・2度も心配・・・させ、た・・・お返しよ」

 

「・・・悪い・・・」

 

伸ばした脚の太股にレーニアの頭を乗せたクワレーは左脇腹をさすりながら寝転がった。

 

(感覚が麻痺してる・・・くそっ・・・。駄目だ、もっと強くならないと・・・どんな敵も倒せる強さを!)

 

(・・・2度目・・・これでこいつに命を救われたのは2度目ね・・・私がクワレーの脚を引っ張ってるのかなぁ・・・。このままじゃ私、クワレーを殺しちゃう・・・嫌だ、強くなりたい・・・強くなりたい!)

 

「大丈夫か!?これは酷い・・・誰か!大至急こっちに誰か寄越せ!」

 

「僕は大丈夫です、彼女を早く!」

 

「いやしかし、君の鎧と身体の庇い具合を見ると、肋骨を折ってるのは分かるしかも一部粉砕だ。破片が肺に刺さったら大変だし、彼女はそのスライム君が止血してくれてるから今すぐじゃなくても」

 

「良いから早くお願いします!僕は自分で歩けますから」

 

「・・・わかった。君の彼女は絶対に助かるから安心して」

 

「お願いします・・・」

 

クワレーは父の大剣を鞘におさめ、折れた銅の大剣な破片を集めながら、フラフラと階段を降りて行った。

 

「クワ・・・レー・・・待・・・って・・・」

 

「大丈夫だ。すぐに彼と会える、気をしっかり!早く!」

 

「クワレー・・・クワ・・・レ・・・」

 

離れていく背中に手を伸ばす。

 

「クワレェェ!はぁ、はぁ、はぁ」

 

勢いよく半身を起こしたレーニアは周りが暗い事に気付くまで暫く時間を有した。添え木と包帯でグルグル巻きの右腕を見、捲れた布団を見た。そこで漸く理解した。既にあれから時間が経っていると。

 

「気を失ってたのね・・・」

 

「レーニア、せめて寝る時ぐらいは静かにしてくれ・・・」

 

「クワレー・・・?」

 

「何?死んでないからな?」

 

「・・・身体、大丈夫なの?」

 

「うん。って言ったら嘘になるかな?実は痛みが酷くて寝れないんだわ。だからこうして寝相が酷いか見てるんだ」

 

上半身全体が包帯で巻かれ、眠っているスラリンガルを膝に乗せたクワレーがソファに座っていた。

どうやら痛みが酷いのは本当らしく、時折痛みを我慢した険しい顔を見せる。

 

「ごめんなさい・・・私が油断したからクワレーが・・・」

 

「まだ気にしてるの?大丈夫だってば」

 

「私ね・・・やっぱりクワレーとは別で旅をしようと思うの・・・」

 

「・・・」

 

「私、クワレーがもう死ぬんじゃないかって、ゴーレムと戦ってる時に思ったわ。だから私決めたわ。いつも無理無茶ばっかするクワレーを守れるくらい、強くなるって」

 

珍しく真剣なレーニアに若干驚きながらも、静かに話を聞いているクワレー。

 

「だけど、強さって物が明確に分からないと、それをどう得るか分からないの」

 

「・・・僕が求めてる強さは、昼間のゴーレムにも負けない、敵を上回る強さが欲しいんだ。今日なんかは特にそう思った、後ろのレーニア達を守らないとって。たけどさ、よく考えたら結果的に僕もレーニアと同じ強さを求めてる訳じゃない?」

 

「そうかな?」

 

「そうだろ?僕は自分の背中にいる奴を守れる強さがほしい。レーニアは僕を守れるくらいの強さがほしい。どちらも誰かを守る強さだ」

 

「まぁ、そう考えるのもありね、でも」

 

「はいはい。これ以上考えても長続きするだけだよ。怪我人は寝た寝た」

 

「クワレーこそ寝なさいよ」

 

「寝れないの。あぁ、そうだ。明日こそ観光しような。思いの外ゴーレムからの被害は少なかったみたいだし」

 

「OK。おやすみ」

 

「ああ」

 

レーニアが布団にもぐって寝息を立てるまで、クワレーは考え事をしていた。そして何を思い付いたのか、スラリンガルをソファに置いて、父の大剣を背負うと部屋を後にした。

 

 

グレン城下町東陸橋出入口前。今夜も交代で見張り番が眠気と戦っている。

 

「ふぅぁぁ・・・」

 

「夜のお勤めご苦労様です」

 

「おや?貴方はゴーレムをぶった斬ったウェディの兄ちゃん。こんな時間に何処へ?」

 

「ちょっと素材を集めようかと。で、ここら辺で鉱石がよく採れる場所って無いですかね?」

 

「鉱石が?うーん・・・あぁ、ゲルト海峡らへんとか、ゲルト海峡に向かう前のえぇと、線路の下らへんとか結構採れるらしいですよ」

 

本来ならば、鉱石採りにもっとも良いのはドワチャッカ大陸の鉱山が効率が良いが、時間が無いのでこうして近場でも採れる所を探す。

 

「武器の素材で?」

 

「それもそうなんですが、ちょっとありまして」

 

「?まぁ、取り合えず気を付けて下さいね」

 

大きな袋を持ったクワレーは鉱石を集めるのが目的。しかも大量にだ。

 

「ただ石ころ集めれば勝ちだ」

 

 

 




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