ああ────。
俺は間も無く死ぬ。
当たり前だ、身体を半分に引き裂かれたんだ。
本来なら即死のはずだが、奇跡のようにまだ意識がある。
しかしそれもいつまで保つか分からない。
俺は死ぬのだろう。
一生のうちに一回もライバルに勝てずに無残に殺されたのだ。
おいおい、そんな顔すんなよライバル。
俺はもうすぐ死ぬっていうのに、お前も心の中では清々してるんだろう?
ごめんな。お前の貴重な時間潰しちまって。
お前の親友との時間を潰してちまって。
毎回毎回勝負なんて言ってきてウンザリしてたよな。
お前がどんなに優しかろうが、俺に対してはあまり快く思わないだろう。
俺は多分悪人だ。
こんな事でしか…………小さなイタズラのようなものでしか自分を表現できないロクデナシだ。
俺の脳裏に過ぎる、最愛の人の姿。
ああ、あの人も最後はこんな感情だったのか。
俺を守ってくれて、死んでいったあの人はこんな感情だったのかと初めて理解した。
ありがとう……としか言いようがないな。
だから────。
そんな時だった。
俺の心の内から声が聞こえた。
ドス黒く、何者を寄せ付けぬ程の威圧を出す声が。
『ライバルに負けるのはまだ早いぞ少年』
その男は俺に向かい喋り掛ける。
なんだ? 俺の中にこんな化け物が眠ってやがったのか?
なんて事だ、最後の最後でこんな事になるとは。
『近くにオーディンの気配がする、ならば悪戯をするしかないだろう』
何をするつもりだ。
俺のこの体で好き勝手は許さん。
この体は、俺に大切な人が守ってくれた体なんだ。
『ああ、知っているよ、君のことはずっと昔から。バケモノ共に人間のままでよく立ち向かえたものだ』
お前は……一体?
『俺はトリックスター、そして俺の作った神器はお前のその胸に掛けてあるペンダントだ。さあ歌え。俺の神器の歌を!』
心の中に溢れる歌がある。
ドス黒く、気持ち悪いものではあるが、何処と無く寂しそうな歌ではあるが。
しかしそれは紛れもなく、燃えるような歌だった。
「Find the sword Lævateinn tron」
……お前を倒すためにお前と戦う。
お前が戦うのなら俺も戦う。
お前がそれを纏うというのなら俺も似たようなものを纏う。
絶対にお前を倒す! だからお前と戦う! 絶対なる勝利を!
『秘鍵・レーヴァテイン』
戦場に歌が流れる。
これはまさしく俺の歌だ。
俺が目の前にいる奴を倒すための力。
そして立花響を倒すための力!
「ラグナロクだ! 太陽に匹敵する業火によってお前をヴァルハラに送ってやる!」
ここに新たな奏者が誕生した。