立花響に勝利したい   作:うみうどん

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十三話

「おーい!」

 

 鍵音の視線に精一杯のおしゃれをした奏の姿が映る。

 特徴的な髪を隠すための帽子に身バレ防止の眼鏡。

 しかし、服装はそれにちゃんと合わせたカジュアルな格好をしている。

 

 鍵音はその姿を見た瞬間、自分で自分の目を突いた。

 

「ああああ!」

「おい! 何やってんだ! お前!」

「いや、直視したら死ぬと思って……」

「ほんっと大好きだなアタシの事……ちょっと怖いぞ」

 

 鍵音に目が回復てきた頃にはだいぶ余裕が出来たようで、今は吐きそうなのを必死に堪えている。

 

「そういや、お決まりのアレやってなかったな」

「アレ?」

「待ったか?」

 

 男女がデートの時に待ち合わせする時によく見るアレだった。

 

「いや、全然待ってない」

 

 嘘である。

 この男、緊張しすぎて3時間前からずっと居るのである。

 しかも一ミリも微動だにせず。

 通りがかった人からはマネキンか何かだと思われてもおかしくないくらいに! 

 

「そうか! じゃあ行こうぜ! デートの始まりだ」

「………ああ」

 

 ここから先は鍵音のキャラ崩壊が始まるのであった。

 

 ──ー

 

「んじゃどこ行く? 待ち合わせは決めてたけど、全然行き先決めてなかったな」

「奏が行きたいところへ」

「にひ、そういうのは男がエスコートするもんだぜ」

「……こういうのは初めてなんだ、だから遊ぶところとか全然知らない」

「んじゃ、まずは映画でも見に行こうぜ」

「わかった」

 

 ──ー

 

「よかったなー! あのアクション!」

「ああ、カッコよかった」

「それにしても……あの慌てよう……ぷぷ」

「や、やめろ!」

「間違えてアタシのジュース飲んじまって、顔真っ赤! あー! おかしかった!」

「くっ!」

 

 ──ー

 

「さて、ゲーセンに来たわけだが……」

「……奏のポスターがあるな」

「なんか気恥ずかしいな」

「アレ、貰えねぇかな……」

「え?」

「いや、よく出来てるから部屋に飾りたいんだ」

「はー、お前ってやつは……いつだって本物が遊びに行ってやるよ」

「耳元で囁くな! 殺す気か!」

「にひひ」

 

 ──ー

 

 ──あれって絶対天羽奏だよね!? 

 ──見間違いだったのかな? 

 ──あっちに風鳴翼が居るって! 

 ──マジかよ! 

 

「ふう、どうやら撒いたみたいだな」

「お、おい……鍵音……」

「なんだ」

「……手ぇ」

「あ、わ、悪い」

「いや……悪くねぇ、むしろ嬉しいな」

「……っ」

「もうちょい手、繋いでこうぜ」

 

 ──ー

 

「鍵音って案外歌上手いのな」

「……ツヴァイウィングの歌を鼻歌で歌っていたから、そのおかげかもな」

「アタシの歌もか?」

「まあ……」

「よーしっ! 鍵音! デュエットしようぜ!」

「え!? あ、天羽奏と!?」

「へへ、今更だろ?」

「……ああ!」

 

 ────ー

 

 ──ー

 

 ー

 

「いんやー! 楽しかったな!」

 

 奏が背筋を伸ばし、伸びをする。

 

 今の時間は夕方。

 楽しい時間はあっという間に過ぎていき、残る休日の時間も無くなってきた。

 しかし、今日は充実した1日だったと鍵音は思う。

 

「最後に行きたい場所あるんだけど、いいか?」

「俺は何処にでも行くよ」

「……ひひ、デレちゃってよ、昔のツンツンした鍵音は何処行ったんだ?」

「別に良いだろ」

 

 こうして二人は街を見渡せる高台へとやってきた。

 どうやら先客が3名いたようで、こちらに気づく。

 

「おー、お前らも来てたのか」

「奏! と……黒森……」

「なんでそんな嫌そうな顔しやがる」

 

 翼が奏を見つけた瞬間、弾けるような笑顔を浮かべ、その後も鍵音を見たらしかめっ面をした。

 

「おやおや〜? お二方はデートですかな〜?」

「やめなよ響」

「まあな!」

「おい!」

 

 響の問い掛けに奏が胸を張って答える。

 その瞬間、響と未来が叫ぶ。

 

「ええええ!」

「結構なスキャンダルだよぉ!」

「黒森、貴様ぁ!」

「勘弁してくれよ……」

「あはは! まあ良いじゃねぇか!」

「「よくない!」」

 

 楽観的な奏に対し、鍵音と翼が吠える。

 最後に少しドタバタしてしまったが、鍵音にとって一生の思い出になるような休日だったのは間違いなかった。




奏さん一筋で幼馴染の女の子に勝負を仕掛けるヤベー奴

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