立花響に勝利したい   作:うみうどん

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一話

 とある街中で、1人の男が同い年と思われる女子生徒2人に向かって吠える。

 いや、正確には1人だろう。

 

「立花響! 今日こそお前を超える! 勝負だ!」

「ええ!? また!?」

 

 この男が立花響と呼ばれる女子生徒に勝負を挑むのはこれが初めてではない。

 彼と立花響は所謂幼馴染というやつで、小さい頃から勝負を挑んでいるのだ。

 

「当たり前だ、俺は立花響を超える為だけに生きている。これまでの敗北の数々、今日こそ晴らしてくれる!」

 

 ちなみにこの男が立花響に勝負を挑み、負けた回数は数知れず。

 それも軽くあしらわれている悲しい状態だ。

 

「行くぞっ!」

「もー、下がってて未来」

「うん、響。頑張ってね」

 

 男が、拳を握り立花響に向かっていくが、避けられて軽く腹にパンチを入れられる。

 男は内臓がかき乱される感覚に、膝をつき地面にひれ伏した。

 

「があああ!?」

「ねえ、鍵音くん。勝負なんてやめて話し合わない?」

 

 響がうずくまる鍵音と呼ばれた少年に手を差し伸べる。

 

 すると、苦しみながら立ち上がり、響の手を払いのける。

 

「こ、断る……次は……勝つ」

 

 腹をさすり、鍵音は2人の前からすごすごと帰っていく。

 その光景を響と未来は見送る。

 

「これで何回目だっけ、黒森君」

「うーん……これで1054回目」

「そっか、いつか分かり合えると良いね」

「うん、鍵音君とはいつかちゃんと分かり合えると思うんだ……」

 

 そして負けた後の鍵音というのは。

 

「……クソ……日に日に立花が強くなってやがる」

 

 明らかに手加減された時の事を思い出して、唇を噛み悔しがる。

 ここ最近着実に力をつけてきた響は、鍵音より遥かに強くなっている。

 それに人知を超えた力を持っているような感じがする。

 

「……このまま、立花に負け続けるのか……」

 

 諦める、そんな言葉が鍵音の脳裏に過ぎる。

 だがそれを、遮る言葉が鍵音の脳裏に過ぎる。

 

『絶対に諦めちゃだめだよ』

 

 それは少年の最愛の人であり、一種の呪いでもあった。

 その女性は、当時小学生だった鍵音を助けるために歌を歌い、命を燃やす。

 

「そうだ、諦めちゃダメだ。俺は絶対に」

 

 鍵音は赤いクリスタルのようなペンダントを取り出し、握りしめる。

 目標は立花響を超える事。

 その先の目的は……

 

「必ず……必ず、ノイズを……俺の手で」

「おーい鍵音〜」

 

 ペンダントを握りしめ、決意を決めたとこで、鍵音を呼ぶ声が聞こえる。

 鍵音は手早く、ペンダントをポケットの中にしまい込み、鍵音を呼ぶ声に答えた。

 

「どうした、天羽」

 

 ニカッと笑う天羽と呼ばれた彼女の名は天羽奏。

 大人気ユニット、ツヴァイウィングの一人であり、奇跡の歌姫と世界で呼ばれている。

 そんな彼女がなぜ、鍵音に声をかけたかというと、2年前のツヴァイウィングのライブにて突如としてノイズが襲来し、人々を絶望に追い込んだ、史上最悪の事件。

 あの時、死にそうな天羽奏に手を差し伸べたのが、鍵音だった。

 いや、正確にはタックルをしたというのが正しいだろう。

 

「いや、帰りにお前に姿が見えてな」

「そうか、じゃあな」

「おいおい! ちょっと待てよ!」

 

 奏は鍵音の肩を掴んで、振り向かせる。

 

「な? ちょっとお前と話したいんだ」

「…………分かった」

 

 少々、不貞腐れた態度で奏の申し出を了承する。

 なぜこの二人が、こうやって話すようになった経緯というのは、また話すとしよう。

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