立花響に勝利したい   作:うみうどん

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十九話

 空を飛びフィーネを見据える五人。

 鍵音は漆黒のシンフォギアを身に纏い、漆黒のラインに沿って炎が小さく曲がれる。

 手には機械仕掛けの杖を持っており、それは真紅に燃えている。

 

「何故生きている」

「俺だって死んだと思ったさ。だがな、コイツらの声が聞こえたら何が何でも立ち上がらねぇと、男が廃るだろ」

 

 レーヴァテイン。

 かつて、ロキという邪神が作り出したという、武器。それは炎を纏い、その輝きは太陽にも匹敵するという。

 しかし、鍵音が扱うレーヴァテインは鍵音に多大な影響を及ぼしていた。

 

(右手が痛い……)

 

 ズキズキと永遠に反芻するような痛み。中にあるガングニールがレーヴァテインに対して拒否反応を示す。

 さらに、半端だといえシンフォギアをこの身に二つ宿したという事実。先ほどまでガングニールを右手に纏っていたので、鍵音自身、体力の限界だった。

 しかし、ここで折れるわけにはいかないという事実。

 

 鍵音はチラリと奏の方を見やる。

 すると視線に気づいたのか、奏が艶やかに微笑んだ。鍵音が死んではいなかった、その現実があまりにも幸福で、現実離れしている。

 しかし、その余韻に浸っている場合ではないと奏はフィーネを見る。

 

「高レベルのフォニックゲイン……コイツは二年前の意趣返し……!」

『んなこたどうでもいいんだよ!』

「念話までも……限定解除されたギアを纏ってすっかりその気か!」

 

 フィーネはソロモンの杖を使いノイズを出現させる。

 

『いい加減芸が乏しいんだよ!』

『世界に尽きぬノイズの災禍も全てお前の仕業なのか!』

『どうなんだよ! フィーネ!』

 

 限定解除をした装者が念話で話し始める。

 そして鍵音はというと。

 

(……さっきから何だ? レーヴァテインを纏ったときから、頭がガンガンする……)

 

 急な変身によるシンフォギアからのバックファイア。それは鍵音がレーヴァテインにまだ完全に適合しきっていない状態だった。それもそのはず、櫻井了子が検査をした時にはガングニールの適合反応しか出ておらず、その他のシンフォギアへと干渉するのは不可能だったはずなのだ。

 

(頭の痛みはだいぶ……治ってはきたな……だがさっきから胸の奥からドス黒い感情が渦巻いてきて仕方がねぇ!)

 

 鍵音の心の奥底でドス黒い何かが、渦巻いている。鍵音は気づいた。コレは殺意にも匹敵する喜びの感情。その感情はあまりにも歪で人間がその感情を受けられるのは快楽殺人者ぐらいのものだろう。

 

(それに……気を失った時に聞こえたあの声……)

 

 人間のイザコザを心底楽しんでいるかのような、下劣な声。

 鍵音があの声を聞いて最初に持った感想だった。まさか、自分の中にあんなのが入っているなど思いもしなかった。

 

(奴だけには……この体の主導権は握らせさせないようにしないと……)

 

 鍵音がそう決意したその時だった。フィーネがノイズを五人に向かって放つ。

 それを難なく交わしたが、次にフィーネがとった行動は空に向かってソロモンの杖を翳し、空中からノイズを大量に発射した。

 

「あちこちから……!」

「よっしゃぁ! どいつもこいつも片っ端からぶちのめしてやる! 行くぞ! 鍵音!」

「……はあ……体が怠くて仕方がないがやってやるよ!」

「ちょ! 鍵音! お前まだ病み上がりだろ!」

 

 クリスに呼ばれた鍵音がそれに答え、心配した奏が追いかける。

 それを見ていた翼と響が話し始めた。

 

「ははは……!」

「立花……?」

「こんな状況で言うのも何ですけど……本当に鍵音君が生きてて良かったなって……」

「……ふふ、そうだな」

「本当に凄いなって思って……だから、だからこそ! 鍵音君には負けられないんです!」

「ああ……行こう! 立花!」

 

 五人が大量のノイズに歌いながら向かう。

 響が先陣を切り、ノイズに向かって拳を放ち、二体同時に撃破する。その次にクリスが空中にいるノイズを一気に殲滅した。

 

『やっさいもっさい!』

『凄い! 乱れ打ち!』

『全部狙い打ってんだ!』

 

 鍵音が杖を振り上げる。この杖の使い方はもう頭の中に入っており、その膨大な説明量に頭がパンクしそうになったが、この際どうだっていい。

 

『だったら俺が! 乱れ打ちだああああ!』

 

 空中に小さな炎を無数に作り出す。その数およそ一万個。鍵音は杖を振り落とし、炎をノイズに向かって放った。

 炎は無差別に大量のノイズを破壊する。そして、鍵音は特別でかいノイズに定めをつける。鍵音は、杖を変形させ、真紅の炎を纏う剣へと変形させる。

 そして鍵音はその超巨大ノイズに向かって剣を回し切る。その姿はまるで踊っているように優雅な動きだった。

 

秘鍵(ひけん)日輪演舞(Dancing Sunflower)

 

 その技は剣道で言うところの胴。丸い軌道で剣を振ったため、炎がその場に留まり太陽の如く輝いた。

 

「これが……レーヴァテイン……」

 

 鍵音はその強さを実感する。しかし、あの時、響華が纏っていたような拳状態にすることが出来なかった。確か、あの時は響華は剣や杖らしきものを持っていなかったはず。

 

(あの状態にするにはどうしたら……! そうだ!)

 

 自力では無理でも、右手がある。

 鍵音は即座に右手に集中する。右手がかなり痛んできたが今はどうでも良い。兎にも角にも、鍵音は必死に痛みに耐え抜き。右手部分のみガングニールを纏うことに成功した。

 

「……!? ガングニールまでも装着した……だと」

 

 遠くから見ていたフィーネが驚きの表情をあげる。そんなバカなありえない、と狼狽える姿が見えた。

 シンフォギアの二重装着、なぜそんな化け物じみた事が出来るのかと、驚愕した。

 

 鍵音の後ろで翼と奏が連携技を繰り出す。あたりにいたノイズたちはあらかた片付いたようだ。しかし、地面から超大型ノイズがまたもや出現する。しかし、限定解除した装者たちの敵ではない。

 

 鍵音が炎を纏ったガングニールを引き絞る。それを見た響も同じように引き絞り、奏と翼は連携技の準備をして、クリスはミサイルを取り出し、全員がその強大なパワーを発射した。

 

 五人が力を合わせ、ノイズを破壊して街全体にその余波が流れる。それは圧倒的と言って良いほどの強さだった。

 

「はっ! 今更ノイズが何体出てこようと!」

「!」

 

 翼が何かに気づき、フィーネの方を見やる。するとフィーネがニヤリと笑いソロモンの杖を自分の腹に突き刺した。

 

「自殺?」

「いや……待て……」

 

 街に残っていたノイズや、自ら出したノイズに取り込まれるフィーネの姿。粘土のような塊がフィーネを包み込んでいた。

 

「ノイズに取り込まれている?」

「いや……そうじゃねぇ……あいつがノイズを取り込んでんだ!」

「なんっ……だと……」

 

 粘土のような物体が装者たちに襲いかかる。難なく避けたが、その瞬間フィーネの足元が光った。

 

「来たれッッッッッ! デュランダル!!」

 

 カディンギルにノイズが侵入し、奥底に眠っていたデュランダルを取り込んだのだ。そして、フィーネが変貌した姿が見える。それは紅き龍と呼称しても良いほどの化け物だった。

 龍は光線を発射し街を破壊する。余波が限定解除した装者の襲いかかった為、どれ程の強さか計り知れなかった。

 

「逆さ鱗に触れたのだ……相応の覚悟は出来ておろうな?」

 

 紅き龍からまたもや光線が発射される。その光線は装者たちに擦り、大ダメージを与えた。

 

「ぐう!」

「このぉ!」

 

 間一髪体制を立て直したクリスがミサイルをフィーネに発射するが、その前に龍の障壁が邪魔をして攻撃が通らなかった。

 龍は反撃するかのように光線を何重にもして、ホーミング機能が付いているミサイルさながら避けるクリスに直撃させる。

 

 奏と翼が連携技の【双星ノ鉄槌-DIASTER BLAST-】を放つが龍には傷を負わせただけで、すぐに修復してしまう。

 

 響と鍵音も連携して響が放った拳に、鍵音は杖でエンチャントさながら炎纏わせる。

 しかし、龍には風穴が空いただけで、フィーネには全く攻撃が通らなかった。

 

『いくら限定解除されたギアであっても、所詮は聖遺物のカケラから作られた玩具! 完全聖遺物に対抗できるなどと思うてくれるな』

『はっ、その玩具にまんまとコケにされてる気分はどうだ?』

『減らず口を……イレギュラーなど、もう見飽きたわ』

 

 鍵音がフィーネを挑発するが乗ってこなかった。

 

(……逆上して襲いかかってくると思ったが……そう簡単にはいかんな)

 

『おい! 聞いたか!』

「ああ、チャンネルをオフにしろ」

 

 クリスと翼が何かに気づいたようで作戦を練り始める。

 作戦の要は響にあると判断して、振り向いた。その瞬間奏も何かに気づいた様子だった。

 そして……鍵音も。

 

「だったら俺が邪魔してやるよ、そんぐらいは病み上がりだろうが死にかけだろうがしてやる」

「……はあ……鍵音。何でもかんでも一人でやろうとすんなよ」

「む」

「アタシも行くぜ」

 

 鍵音が小さく笑いうなづく。そして、奏と鍵音が龍に向かって対峙する。

 

『という訳だ! 待たせな! お前をこれからぶっ倒す!』

 

 鍵音がフィーネを見下し、指を指す。

 

『多少のイレギュラーが! 何を出来ると言うのだ!』

 

 龍が光線を複数回発射して、鍵音たちに襲いかかる。

 それを鍵音と奏で交わしながら、龍の邪魔をし始めた。

 

「鬼さんこっち! 手のなる方へ!」

 

 奏が龍を挑発するかのように手を鳴らす。案の定ターゲットが奏に向いたようで、先程クリスにした攻撃を同じようにした。しかしそんな事を鍵音が許すはずも無い。杖状態から変形した剣を縦に降る。

 

 真紅の炎が龍の身体に傷を深くつけた。

 

【秘鍵・日輪裂傷斬(Cut up Sunflower)

 

 そして鍵音は歌を歌う。

 それは愛する物を守るための熱き歌だった。

 

 ──この火剣の先何を見るか、愛の為なら先にまで、喜んで命を燃やそう

 

 ──夢の為なら、俺は手段を選ばない

 

 ──さあ……Protecting flame! 太陽のように燃えさかれ! 

 

 鍵音が炎をガングニールに纏わせ、拳を握る。

 

「これが! 母の愛だあああああああああ!!!!!」

 

【秘拳・Protecting flame・限界突破】

 

 鍵音は持てる限りの力を龍に打つける。

 最大火力をぶつけられた龍は体制を崩し、二人が入り込む隙を完全に作った。

 

「後は……頼んだ……ぜ……」

「鍵音ぇ!」

 

 力を使った、鍵音は意識が朦朧とし、その場に落ちる。

 間一髪、奏が鍵音を抱きかかえ。地面に激突するのを阻止した。

 

「黒森が切り開いてくれた活路ッ! 無駄にするな!」

「おう!」

 

 翼とクリスが、龍に向かって、突撃する。

 

 翼が巨大な剣を振り下ろし、【蒼ノ一閃 滅破】で龍に大きい風穴をあける。

 すかさず修復するがそれをクリスが潜り込み、フィーネと対峙した。クリスが中でミサイルを放つ。たまらずフィーネは龍の障壁を一旦解除するが、それを待っていたと言わんばかりに翼が追撃する。

 かなりの爆発。その衝撃でフィーネの手からデュランダルが零れ落ちた。

 

「そいつが切り札だ!」

 

 翼が叫ぶ。

 

「勝機を零すな! 掴み取れッ!」

 

 響が届くように鍵音が下から炎でデュランダルを弾く。

 

「美味しいところは全部お前にやるよ……だから……やっちまえ!! 響ィ!!!!」

 

 響がその言葉に答えるかのように、デュランダルをしっかりと持つ。

 内なる殺意の衝動に塗りつぶされそうになり、響の体が暴走状態へと変貌するがその衝動に塗りつぶされまいと必死に堪える姿が見える。

 

 すると、鍵音と奏の横にあったシェルターが破壊され、人が中から出てくる。

 それはシェルターに避難していた人々だった。

 

「正念場だ! 踏ん張りどころだろうが!」

「強く自分を意識してください!」

「昨日までの自分を!」

「これからなりたい自分を!」

 

 響に激励の言葉を送る、大人たち。

 その姿を見て鍵音はふっと笑い、そして後ろに控えていた人物に話しかける。

 

「……小日向、お前が鍵だぜ。あのバカを受け止められんのは……止められんのはお前しかいねぇよ」

「うん、分かってる」

「……これは……これは……お熱いことで」

 

 鍵音は響を見やる。

 そして、一つ鍵音も声を掛けてやろうと、大声を出す準備をする。

 

「お前は強い!!! 誰よりも強い!!! だから……例え衝動であっても……俺以外に負けてんじゃねぇぞ────ー!!!」

「ああ! そうだぜ! 頑張れ! アタシが認めた響ならやれる!」

 

 鍵音と奏が檄を飛ばす。

 いつのまにか暴走し掛けている響を抑えるかのように付いていた二人もニコリと笑い、響に何かを言っていた。

 

「貴女のお節介を!」

「アンタの人助けを!」

「今日は私たちが!」

 

 響の友達と思われる生徒も檄を飛ばす。

 そして、響の暴走が本格化し始めた頃に──

 

 ────本当の切り札が叫んだ。

 

「響ィィィィィィ!!!」

 

 その声を聞いた響ががピタリと動きを止める。

 そして、響を取り込んでいた黒い衝動が、霧散していき、神々しい光を放つ。

 

「……はは……やっぱ……お前には敵わねぇな……今日もお前の勝ちだ」

 

 そして、響たちはデュランダルを振り上げる。

 

「その力! 何を束ねた!」

「……響き合うみんなの歌声がくれた! シンフォギアでえええええええ!」

 

 そして、豪快に振り落とす。

 まるで綺麗だと思った。天使の羽が舞っているかのような錯覚が見える。

 

「……これが……完全聖遺物……」

 

【Synchrogazer】

 

 デュランダルから発せられた光線で、龍が沸騰し。中から崩壊を巻き起こす。

 フィーネはその中で呆然と事を見ていた。

 

 そして思い出したかのように、念話で叫ぶ。

 

『どうした! ネフシュタン! 再生だ! この身……砕けてなるものかああ!』

 

 その場で龍は大規模な爆発を巻き起こす。

 その爆発は周りにいる人間全員を巻き込む程の熱量であったが、すぐに収束した。

 

「……ふう、どうやらレーヴァテインには炎を吸い取る力があるようだな……」

 

 鍵音がレーヴァテインで爆発の炎を吸収したからだ。

 そして、この場で装者の勝利が確定した。




最後の爆発、どうやって周りにいたみんな助かったんだろうと思ったら弦十郎さんの発勁がありましたね_(:3 」∠)_
次回!エピローグ!( ◠‿◠ )

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