立花響に勝利したい   作:うみうどん

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三話

 そして再び舞台は現代へ。

 

「んで、お前の両親はそん時に戦死したと」

「ああ」

 

 喫茶店で奏は鍵音の話を聞きながら、レモンティーのストローに口をつける。

 何故、鍵音の昔の話が出ているのかというと、奏が知りたがっていたからだ。

 しかし、いくらなんでも本当の事を言うはずもなく今戦死したといったのは嘘だ。

 

 いや、いくらか正しいところもある。

 しかし、本当の事を話す気にはなれなかった。

 

「……大変だったんだな、お前も」

「……」

「アタシはよ、鍵音ともっと仲良くなりたいと思ってるんだ。なんてったってアタシの命を救ってくれた恩人だからな」

「……」

「……だんまりか」

 

 奏は寂しそうな顔を浮かべて、席を立つ。

 奏が金を置いていこうとした瞬間、鍵音は金を持った手を掴む。

 

「ひゃ!? な、なんだ!?」

「金は俺が先に払っておいた」

「え、ええ?」

 

 奏がテーブルの上に領収書らしきものが置いてある事に気づく。

 

「い、いつのまに……」

 

 そのまま鍵音は何も言わずに店内を出る。

 奏はその背中を観て、少し笑った。

 

「相変わらず不器用な奴」

 

 後で奏に話しかけられた事があるという事の重大さに、いつ気付くのだろうかと奏は少し思った。

 

 しかし、事の重大さに気づいている男、鍵音。

 あの日以降、すっかりツヴァイウィングのファンになってしまい、歌だけを買いにCDショップへ買いに行くようになった。

 特に、奏の方のファンになってしまったので、余計タチが悪い。

 

 何かとつけて、奏は鍵音に接触してくるが、1ファンである鍵音は少し距離を置いていた。

 本来なら喋る事も許されない存在だと言う事も理解している。

 それなのになんで、喋りかけてくるんだ。と鍵音は内心焦っていた。

 

 行きつけのCDショップへ向かうと、顔を覚えられているのか。

 

「お客さん! 天羽奏の新作取って置きましたよ!」

「……!」

 

 こうやって売り切れ確定のCDを置いといてくれていた。

 鍵音は恥ずかしさよりも興奮の方が勝ち、柄に似合わず、親指を立てて店員を褒め称える。

 

 鍵音は店を出て、足早に帰路につく。

 しかし、その先の道で鍵音は違和感を感じた。

 人の気配が全くしないのだ。

 それに、鍵音の目の前に一つの灰が舞う。

 

「…………ノイズか」

 

 あたりを見渡すと、あちこちに人が炭化したであろう痕跡が見られた。

 

「きゃあああああ!」

「!」

 

 小さな女の子の悲鳴が聞こえる。

 鍵音は急いで、悲鳴の場所へ駆けつける。

 するとそこには大量のノイズに襲われている女の子がいた。

 

 ノイズが女の子を襲う瞬間、鍵音は滑り込んで、女の子を助け出しそのまま走る。

 

「お兄ちゃん……」

「大丈夫だ、こんな時のために鍛えてある」

 

 息も切らさずに一定の速度を保ちながら走ると言うのは並大抵ではできない。

 それは日々、立花響を超える為に行なっていたトレーニングのおかげだった。

 

 しかし、それも長くは続かない。

 

「はあ……はあ……ちくしょう……はあ……しつこいにも程があるぞ!」

 

 ノイズは何故か鍵音達を標的にしており、隣町の工業地帯にまでやってきたがまだまだ追ってくる。

 幼女一人を抱えた状態では、素早く走れない鍵音にピンチが迫り来る。

 

「お兄ちゃん……死んじゃうの……?」

「バカを言え、こんな所で死んでたまるか」

 

 鍵音は女の子を抱えなおして、ひたすら走る。

 工場の中、水の中、いろんな所を逃げ回った。

 しかし。

 

「マジかよ……」

 

 逃げ場を失った、鍵音に待っていたのは絶望だった。

 なんと逃げた先に、新たなノイズが出現したのである。

 

 後ろからもノイズ、前からもノイズ。

 鍵音は女の子を降ろし、ノイズ達に拳を構える。

 

「お兄ちゃん!」

「ああ、分かってる! こんな事しても無駄だって事を! でもな! それでも俺は生きてぇんだよ! お前もそうだろ!?」

 

 泣きじゃくる女の子の頭に手を乗せ、撫でる。

 

「だから、絶対に守ってやる」

「あ」

 

 そう言った瞬間。

 鍵音の右手が光る。

 

「んな!?」

 

 鍵音の右手はみるみる内にオレンジ色の鎧へ変わっていく。

 まるで、機械が鍵音の右手に纏わり付いているようだ。

 

 変化が終わり、右手から排熱のための煙が出される。

 

「!? これは」

 

 天羽奏があの時身にまとっていたものと同じもの。

 しかし、鍵音のは右手に限定された物だった。

 

「……なるほど……そういうことか」

 

 あの時、響に飛んでくる奏の破片を鍵音は右手で守ろうとして受けたことがある。

 その後の摘出手術で、右手の大事な神経の近くに散らばっており、摘出するとなると、一生右手は動かせない状態になると言われていた。

 なので医者からはこのままの状態にしておいたら普通の日常生活に戻れるとまで言われていたのを思い出す。

 

「お兄ちゃん……? それ」

「ん? ああ、安心しろ。なんとかなりそうだ」

 

 鍵音はノイズに向かいこう言い放つ。

 

「かかってくるのなら其れ相応の覚悟をしろ、今のお前らでは俺には間違いなく勝てん! さあどうするっ!」

 

 ノイズは鍵音の話を聴くと、飛びかかるように身体を細め突撃してくる。

 鍵音はそれを右手で払いのける様に迎撃する。

 すると、ノイズがみるみる炭化していき、一つの突破口が開かれた。

 

「行くぞ!」

「う、うん!」

 

 鍵音は女の子を担ぎ、右手でノイズをぶん殴る。

 その威力は絶大で、あたり一面のノイズが弾け飛んだ。

 

 後ろからくるノイズも飛びかかってきたが、鍵音は右手の鎧を変形させ、槍状にする。

 そしてあの時、奏が守ってくれた様に槍を回転させノイズを迎撃した。

 

「す、すごい! お兄ちゃんかっこいい!」

「ああ、だが……これもいつまで続くか……!」

 

 右手のみに負担がかかり、右手の古傷が痛む。

 これも長く使ってはならない力だと鍵音も心得ていた。

 

「だがっ! それでもだ!」

 

 鍵音は槍を掴み、フルスイングする。

 その衝撃波で、あたりのノイズは全部炭化して、蒸発した。

 力を使い切ったのか、右手に持っていた槍や鎧が消え去る。

 

「はあ……はあ……はあ……」

 

 あたりを見渡す。

 ノイズの影は一つも見えない。

 どうやら鍵音は殲滅できた様だ。

 

 その場に女の子と共にへたり込む。

 体力も消耗してしまい、この場から一歩も動けそうになかった、

 そんな時だった。

 

 地面が盛り上がり、鍵音達の目の前に超巨大ノイズが出現する。

 

「!? バカなっ!」

「ひっ……」

 

 ノイズは鍵音達を見やり、向かってくる。

 力を使い果たした鍵音にはどうすることも出来やしない。

 そのまま向かってくる、ノイズを睨みつけることしか出来なかった。

 その時だった。

 

「やあああああ!」

 

 ノイズが横に吹っ飛んでいく。

 そして鍵音の目の前に三人の女が歌いながら立っていた。

 そのうちの一人が必死な声で俺たちに話しかける為に振り向く。

 その顔は鍵音がよく知っている顔だった。

 

「大丈夫ですか!? ……って!」

「…………立花……響……」

「鍵音!?」

 

 奏も鍵音に気がついたみたいで、驚く顔を浮かべている。

 

「もしかして……あのガングニールの反応って……」

 

 その後のノイズとの戦いは、三人が問題なく片付けたのであった。

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