励みになります٩( 'ω' )و
結論から言おう。
鍵音達は無事だった。
多少なりとも鍵音自身は怪我をしたが、女の子の方は無傷で隊員に暖かい物を貰って安心している。
それを、鍵音はちらりと見て少しため息をついた後、目の前で目が泳ぎまくっている響に声をかける。
「……これは一体どういう事だ」
「え? あはは、私にも何が何だか〜」
「ここ最近の人知を超えた様な力は、全てソレなのか」
響につめ寄ろうとした瞬間、肩を掴まれる。
後ろを振り向くと、そこにはツヴァイウィングの風鳴翼が立っていた。
「まずは私達と同行してもらおう。話はそれからでも遅くはない」
「わり、そういう事だ鍵音」
「……分かった」
「……不承不承といったところだな」
鍵音の手に厳重な手錠がかけられる。
これから車に乗せられて連行されるのだろうと、鍵音がぼんやり思っていた時だった。
鍵音の服をつまんで、引き止める幼女。
「お兄ちゃん……また会える?」
「……分からん」
「じゃあ、わたしとけっこんしてください!」
「「はあ!?」」
鍵音と奏の声が重なる。
なんで奏まで驚いているのかと不思議に思うが、鍵音はなんとか冷静さを取り戻し、少女の頭に手を置き、今までの鍵音とは思えないほどの穏やかな表情で言う。
「……ああ、嬉しいよ。また20歳以上になったら同じ言葉を言ってくれ」
「おい!?」
奏が後ろで何故か叫んだが、鍵音は受け流すことにした。
そして少女と指切りをした後に後ろを振り向くと、奏に顔を思いっきり掴まれた。
「がふ、ふがふが(おいやめろ)」
「いっぺん頭冷やしやがれ、このロリコンやろー!」
「ふが────!?」
奏は思いっきり鍵音を地面に叩きつける。
後頭部を打った鍵音はそのまま地面にめり込んで気絶した。
──ー
メディカルルームという場所で鍵音は目を醒ます。
まだ後頭部が痛むようでさすってみると包帯が巻かれていた。
記憶が混濁しているが、どうやら天羽奏によって気絶させられたということだけは思い出す。
「……なんでだよ」
「目を覚ましたか、黒森鍵音君」
「……アンタは?」
目を覚ました鍵音に声をかけてきた如何にも只者ではない雰囲気を漂わせる男。
鍵音は名も知らない男に名を知られているこの事態に危惧していた。
「まったく……ウチの奏がすまない」
男は鍵音に深々と頭を下げる。
子供に非を認め頭を下げてくれる大人は少なくない。
しかし、この男はそれは見事に頭を下げてくれたので、鍵音の怒りも冷めた。
「いえ、大丈夫です。それでアナタは」
鍵音も口調を直し、一人の子供として大人に接する。
名前を聞く前に謝られたので聞きそびれたのだ。
「ああ、俺の名前は風鳴弦十郎。特異災害対策機動部二課の司令官をやっている者だ」
特異災害。それはノイズの事を指す。
鍵音は一人でもノイズへの理解を深めるために勉強をしていた。
しかし、特異災害対策機動部というのは初めて聞いた。
そこから弦十郎からいろんな話を聞く。
シンフォギアのことや、自分の体の状態。
鍵音自身は自分の体についてはある程度予想してはいたが、やはりあの時の破片が関係しているらしい。
鍵音が一時的とはいえ右手に纏ったのはガングニールという聖遺物。
そこから微量ではあるが、力が解放された。
本来なら詠唱……歌の力がこの聖遺物の力を引き上げ、ギアを纏えるらしいのだが。
「君の今の状況についてはまだ分からない事だらけだ。なので、これから我々には協力してほしい」
「協力……ですか」
「ああ、データだけの採取でいいんだ。何も不確実な君を戦わせるというわけではない事は分かってくれ」
戦う。
そうだ、このシンフォギアの力があれば戦える。
立花響だって……。
あの時の会った立花響を思い出す。
鍵音があの時、手も足も出なかったノイズを拳一つで消滅させた。
(俺も……あれに似た力が……)
「下手なことはあまり考えない方がいいぞ」
「!」
「君の友達の響君の事だが……」
「友達ではありません、ライバルです」
「……おほん、ライバルの響君だがここ数週間前に君と同じ融合症例で二課の預かりとなっている」
なんとなく鍵音は察していた。
前々から鍵音が追いつけないほどのスピードで強くなっている響の事を考えると悔しくて悔しくてたまらない。
どんどん離れていっているみたいで、それが悔しくて仕方なかったのだ。
「彼女は今では奏と翼の助けもあり、シンフォギアを充分に扱えるようにはなったがそれでも身体の負荷はかかったままだ」
「……」
「なので、不完全な君がガングニールを纏うとなると確実に身体の崩壊が始まると予測されている」
「……じゃあ何故立花は?」
「君のおかげだよ」
「!?」
弦十郎は笑顔で鍵音に言う。
「あの時の君が咄嗟に庇ってくれたお陰で、彼女の心臓の付近に残っていたカケラもさほど難しくない摘出で終わったんだ。それもほぼ完璧な状態で」
「……」
「まあ、誤算があったとすれば響君の思いが強すぎたと言った所だな」
「思い?」
「君と同じさ。君と同じように響君もノイズから少女を救い、追い詰められたところで奏者として覚醒した、それも心臓付近に残っていた本当に僅かなガングニールの破片で」
(そうか、アイツも)
弦十郎は続けて言う。
「それは本当に僅かな破片だった。そのおかげで響君は低負荷の状態でシンフォギアを纏いノイズと戦えている。これは君のおかげでもある、ありがとう」
弦十郎はそう言って頭をまた下げた。
鍵音は下がった頭を見てから目線をそらす。
(俺のおかげ……だと?)
鍵音自身は何もできなかったと悔やんだあの日。
もっと強くなろうと誓った最悪のあの日。
鍵音が最も望んだノイズとの戦える力を手に入れたのは、鍵音ではなく響だった。
(ふざけるな)
唇を噛みきり血を流す鍵音を見て、弦十郎はふうとため息を吐く。
そして、鍵音を頭をわしゃわしゃと撫で始める。
「なっなにを」
「今日はもう遅い。泊まっていきなさい」
「……家族が心配するので」
「嘘は良くないな」
「なっ!?」
「すまないが君のことは少々調べさせて貰った、複雑な事情を抱えている事は分かったのだが、不明な点が……いや、これは後日話すとしよう。今日はもう寝なさい」
「……はい」
弦十郎を見送った後、ベッドに倒れこむ。
どうやら今日は色々なことがあって体が疲れきっているようだった。
鍵音は目を閉じると、そのまま気絶するように眠った。
もうそろそろ、何故鍵音が響に固執するのかとか過去を書いていこうと思うけど……( ͡° ͜ʖ ͡°)