いつのまにか60超えてたびっくり( ◠‿◠ )
黒森響華は歌を歌う。
それは命を燃やす歌だった。
真紅のシンフォギアを身に纏い、排熱口から炎を吹き出す。
口から血を吐き、愛する我が子をチラリと見やる。
そして、最後の魂を吐き出す様に彼女は口を開いた。
「へいき、へっちゃら」
「母さん!!」
「いい? 鍵音、絶対に諦めちゃダメだよ」
響華は炎を纏った拳を握りしめて、目の前の巨大な化け物に殴りかかる。
巨大な化け物はノイズとはまた違う、別の生き物だ。
それが暴走し、鍵音達は命の危険に晒された。
この中で唯一シンフォギアと完全適合できるのは、黒森響華のみ。
そして、化け物を止める手段も響華自身だった。
炎を纏った拳は化け物に突き刺さり、完全に沈黙する。
それと同時に、響華が歌った絶唱のバックファイアで身体の崩壊が始まっていた。
完全適合者である黒森響華だったが、それも人工的に作り出されたものであり、体に薬物を投与しての絶唱だった。
度重なる人体実験、その末にあったのは、最愛の母を亡くし、落ちてくる瓦礫の中、母さんと叫び続ける鍵音のみだった。
それから数年後。
鍵音は小学校三年生の時に日本という国へ帰国した。
それは響華たっての希望。
せめて息子だけは幸せに暮らしてほしいと切に願った事だった。
しかし、母を亡くした子供にそんな余裕はない。
鍵音の父親は軍人で戦死。
金自体は国が保証してくれたが、鍵音は孤児施設に預けられた。
しかし、その環境は劣悪。
金目当ての大人達によってまたもや鍵音は傷つけられた。
時には、誘拐されそうな時もあった。
この国も、子供には優しくない。
そう鍵音は思い始めた時の出会いだった。
「待ってよ未来〜!」
母親と瓜二つの立花響を見かけてしまったからである。
同じ小学校に通う響の存在は鍵音にとって大きな物となる。
小学五年生の時、クラス替えで始めて立花響と同じクラスになった。
そして、隣の席にもなってしまった。
フレンドリーに接してくる響とは最初こそ、普通に接していたが、接して行けば行くほど響の背中に母親の存在を感じた。
違う、あれは別人だ。
別の人間なんだ。
そう鍵音は自分に言い聞かせていたのだが、響の口癖を聞き、その考えが吹き飛んでしまう。
それは響が木から降りれなくなった猫を助けた時だった。
運悪く、登った先の枝が折れ、響が落下してしまったのだ。
をの時に発した響の言葉。
「へいきへっちゃら!」
母親の顔で、母親と同じ声で、母親と同じ事を言う。
鍵音は確信してしまった。
アレは母親の生まれ変わりである事に。
そう思ってしまった。
鍵音は自分を酷く痛めつけた。
アレが母親の訳がない、自分の最愛の人である訳がない。
思春期を迎えようとしている鍵音の精神状況はとても不安定な物となる。
そして、とある日。
「立花……響……! 勝負だ! 俺と勝負しろ!」
「え? ……ええ──ーっ!!??」
コイツが母親の訳がない。
だったらそれを証明してやる、コイツに勝って立花響は弱いと言う事を確信して、俺の中の強かった母親の面影を取り戻す。
日に日に立花響によって塗りつぶされていく母親との思い出。
それを取り戻すために鍵音は勝負という道を選んだ。
それが、鍵音にとって最善の道だった。
それからまた数年。
あの最上最悪とも言える、ノイズ襲来の事件から戻ってきた二人の前にはとんでもない物が待ち構えていた。
それは世間からの誹謗中傷である。
それのせいで響の家族はバラバラになってしまった。
そして、それは鍵音も例外ではなかった。
毎日の様に集団リンチは当たり前、人殺しだと蔑まれ、世間から鍵音に居場所はなくなった。
しかし、それだけで終わる鍵音ではない。
集団リンチを加えてきた奴らは一人ずつお礼参りをして病院送りにした。
人殺しだと蔑まれたら、本当に殺してやろうかと脅したりもした。
一番酷かったのが、本当に殺されかけた事である。
あの事件の日に最愛の娘を亡くした恨みでその娘の父親にナイフで刺し殺されそうになった。
しかし、その時に助けてくれたのが立花響と小日向未来だった。
「大丈夫!?」
「早く警察を!」
響が男の顎をカバンで殴り、気絶させ未来は警察への手早い通報をして鍵音の命は助かった。
しかし助けてくれたのが響の姿を見て、また母親の思い出が一つ薄れていく様な感覚がした。
(……ダメだ……一刻も早く……立花を倒さないと)
襲われそうになった時にまでそんな事を考えてしまう鍵音。
その歪な考えはかなり異常だった。
────ー
「そんな事が」
「……まさか、君の母親が適合者だったとはな」
「……母さんは適合者だったんですか?」
「確信はないが十中八九そうだろう。何よりそのギアらしきペンダントが証拠だ」
弦十郎は鍵音に赤いペンダントを貸してもらい、マジマジと見始める。
形そのものはシンフォギアと寸分違わず同じだ。
検査する必要はあるが、シンフォギアと断定してもいいだろうと思った。
「鍵音君、このペンダントを二課で預からせて貰えないだろうか。詳しい検査がしたいんだ」
「……でも」
「大丈夫よ♪ この出来るお姉さんがパパッと解析してすぐに返してあげるから」
「うむ、何も永遠に預かるという訳ではない。しかし、聖遺物は本来危険な物だ、それを確かめる為に、預からせてほしい。そしてもし危険な物だったらその対処法を一緒に考えよう!」
鍵音はどこまでも真っ直ぐな目をした弦十郎と目線を合わせる。
その目を見ると、とてもじゃないが断るという選択肢は鍵音には無かった。
「分かりました。でも本当に大切な物なのですぐに返してください。では」
そう言い残すと鍵音は二課から去っていった。
そして、その去っていった鍵音の背中を見ながら弦十郎は考える。
「……鍵音君、少し危険かもしれないな」
「どうしたの? 弦十郎君」
「いや、鍵音君の目を見たんだ。その目はとても黒く濁っていて、何も期待していない様にも思えた。無気力というか、響君とはまた違う危うさを感じた」
「ということは……彼も」
「こちら側……に最も近いという訳か」
弦十郎がため息を吐く。
どうしてこうも子供達だけがこんな重荷を背負ってしまうのだろうと考えてしまう。
鍵音しかり響も。
その時だった。
司令室のサイレンが鳴り響く。
「何があった!」
「ノイズ出現しました!」
「位置は北西に200!」
「っ、近いな……。奏者達の到着は!」
「天羽々斬、ガングニール2名とも到着に三十分かかると予想!」
「くそっ! 避難警報発令! 奏者達が到着するまでなんとか持ち堪えるんだ!」
「!? これは!」
オペレーターの友里が目を見開く。
そしてモニターに映し出されたのはアウフヴァッヘン波形だった。
「この波形は!」
モニターにその波形の名前が表示される。
【Gungnir】
「ガングニール 、だとぉ!?」
「彼……まさか!」
その頃地上では。
「ああ…………異様にむしゃくしゃしてたんだ。これで発散できる」
大量のノイズに一人立ち向かう鍵音の姿があった。
司令室のシーンって難しいですね( ´Д`)y━・~~
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