この話から大きく前作との違いが出てくると思います。
前作を知っている方にも楽しめると思うのでよろしくお願いします。
王竜星武祭まで数ヶ月と迫り、星導館の序列争いもやや盛り上がっていた。
他校ど比べ、絶対的な実力者が少ないこともありここ数日、冒頭の十二人{ページワン}ですらも固定されていない。
そんな乱戦の中、編入生でありながらユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトはいつの間にか序列五位まで駆け上がっていた。
「……おかしい」
「なにがですか?」
屋上で寝そべっていた私の呟きに反応したのは当たり前のように横に座っているクローディア。
「序列三位までは全員一度は決闘してるのに、なんで私たちは一度も挑まれてすらないの?」
クローディアがいることにはツッコまず、私は疑問に思っていることをクローディアに聞いた。
うちの学校は基本的には誰でも序列をかけて決闘することが出来る。それにも関わらず、私もクローディアも決闘の話すら来ないのだ。
「……さぁ?ですが、琴音に挑む命知らずはいないでしょうね」
「そうかなぁ。案外何とかなるかもしれないのに」
負ければ少しの期間、挑戦権がなくなるとはいえ未来永劫なくなるわけではない。それに、能力の相性さえ良ければ序列下位が格上に勝つということも珍しくもない。
「……琴音に本気にでもなられたら、立っているのも大変ですよ」
そう言いながらクローディアは校舎の中に戻っていった。
「……人を化け物みたいに言うなっ」
もう一度仰向けになり、そのまま瞼を閉じた。
私のお昼寝は予想外の人の手によって終わりを告げた。
「……っん。誰?」
突然現れた人物の気配により、私は目を覚ました。
一歩ずつ近づいてくる、その人物を視認しながら私は背中を伸ばした。
気配から敵意は感じられなかったため警戒はしなかったが、その動作の一つ一つから実力者であることが伝わるほど、その所作は研ぎ澄まされている。
「琴音様、このような場所で居眠りされるのはいかがなものかと」
目の前の人物は、私から少し離れたとこで片膝をつけてそう言った。
「……うるさいよ、総ちゃん」
私がそう呼んだ人物は、私の親友であり最も信頼している部下の一人でもある沖田総司であった。
「ですが、ダメですよ?いくら琴音とはいえ、寝ている時はただの女の子ですし、なにより辻斬りが最近出現しているそうですから」
私が総ちゃんと呼んだことから、若干ではあるが口調を崩して話した。
一応主従関係はあるものの、親友である総ちゃんにかしこまられるのはどことなく寂しいものだ。
「辻斬り?」
「えぇ。そのことについて、奥様より言伝を預かっています」
一瞬流れていた和やかな空気も、総司の真面目な口調により引き締まる。
総司の説明によると、その辻斬りというのは最近六花に現れたらしい。
星導館の序列上位者が狙われているらしく、その関係で最近序列の変動が激化しているとのこと。
「こっちに来ているには総司だけ?」
「はい。私と琴音様の二人でとのことです」
隠居したとは言え、現在は東雲家の舵は母がとっている。
私が六花に来ていることも、そうなのだが私の能力が集団戦に向かないことも一応関係している。
だから、母が私を動かす時はそれ相応の理由があるし今回のように少数精鋭で任務に当たることが多い。
「なるほどね。でも、ただの辻斬りならうちが出るような案件でもないよね」
「それが、この一件菅生家が行っている可能性が高いとのことで、菅生家の方は本家が対応、菅生家の一人息子である菅生信明と辻斬りについて琴音様に一任するとのことです」
「……菅生家ね」
日本にある四大財閥の一つである菅生家は、暗い噂が絶えない一族であった。
金儲けのためならば、手段は問わないスタイルであり、今まで重ねた悪行は数え切れない。しかしながら、尻尾は決して掴ませない徹底ぶりであり姑息さで右に出るものはいなかった。
その菅生家が今回、一人息子のためとは言え動いてくれたとなれば日本の暗部として見逃すわけにはいかないということだろう。
「……それにしても、知らなかったわ。あの菅生家の一人息子が星導館にいたなんて」
かれこれ、二年ほどこの学園に在籍していたが菅生家の一人息子がいるなんて話聞いたこともなかった。
実力がなくとも、実家のネームバリューからして有名になりそうなものだが。
「琴音は、他人に対して基本的には無関心ですからね」
「……悪かったわね」
不貞腐れるように私は頬を膨らませる。
「……では、私は辻斬りについて調べて参ります。琴音様もどうかお気を付けて」
「……わかった、総司もね」
総司はクスりと笑うと、その場から消えるようにどこかへと行った。
(……菅生信明か。取り敢えず、どんな生徒か調べるところからかな)
私はこの学園の生徒を知り尽くしているある人物の元へと向かうことにした。
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