「菅生の強さは、各校の序列上位者に匹敵するかそれ以上かと……」
「……やっぱりね」
幾ら辻斬りとはいえ、それなりの実力がなければ序列上位者を倒すなんてことは出来ない。さらに、辻斬りに襲われた生徒は全員入院を余儀なくされ、辻斬りという存在を恐れているとのことだった。
それほどの恐怖を与えるにはそれなりの実力が必要になる。
「秘密のカギは謎の純星煌式武装ってところだね」
「えぇ、その通りかと。そちらの調査はいかがしましょうか」
「そっちは影星の方で菅生の暗部を探らせてるから出てくると思うから、総司は引き続き菅生の身辺調査をお願い。菅生本人には決して勘ぐられないように」
「はっ」
総司は頭を少し下げるとすぐさまその場を去った。
(それにしても謎の純星煌式武装に、菅生家の暗部か。なんか引っかかるな)
現在判明している純星煌式武装の中にも使用者の実力以上の力を出すことが出来るものがあるが、それらは封印などがされ使用が禁止されている。
それ以前に、純星煌式武装は使用者を選ぶため菅生家が偶々手に入れたものだったとしても菅生本人に適合したのは奇跡に近い。
「……謎は深まるばかりか」
手持ち無沙汰となった私はそのままベットへと倒れこみ、意識を手放した。
数日後
あれからというもの、調査がこれといって進展することはなかった。
辻斬りによる被害報告もなく、調査を依頼した両者からもこれといった報告は上がってきていなかった。
唯一の変化と言えば、序列四位に菅生信明という名前が羅列されたことぐらいだった。
(……まさか正式に勝つとはね)
先日の決闘で菅生は序列四位に勝利し、正式に序列四位の称号を手にしていた。例の純星煌式武装は使うことなく、彼は魔術師として戦っていたのだ。膨大な量の星辰力を携えて。
「まさかですよね~。これで彼を現行犯で捕らえるのは難しいでしょうね」
「……クローディア。毎回のように私の居場所を突き止めるのやめてくれないかな」
屋上で一人考え事をしていたはずなのに、いつの間にか現れていた人物の頭を私は軽く小突いた。
「けど、クローディアの言う通りだね。どんな手を使ったにしろ、菅生はある程度の実力は手にしてるみたいだし、これから辻斬りなんて真似はまずしてくれないだろうね」
「えぇ。恐らくですが、星辰力だけならあの孤毒の魔女にも匹敵するかと」
私が小突いた額を抑えながら、クローディアは分析していた。
クローディアが言うように彼が決闘で見せた星辰力は、かの孤毒の魔女に迫るほどのものだった。
「ただ彼の腰にあった純星煌式武装。あれが引っかかるんだよね」
彼が決闘の際腰に差してあった純星煌式武装は、武器としての使用こそされなかったが明らかに起動されていた。
これと言って能力が使われた様子はなかったが、明らかに異質ではあった。
「やっぱり、あの純星煌式武装を調べるしかないかな」
「ですが、純星煌式武装の情報なんて余程の理由がないと開示してもらえませんよ」
「まぁ開示してもらわなくても……ね」
そう言った私にクローディアは呆れたように頭を抱えると、「琴音はそうでした」とため息を吐いた。