モブになりたくて   作:冥々

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二ヶ月遅れの投稿すいません。


送るプレゼントの意味を考えた事でもあんのか!

小野寺春side

 

今日は森谷さんとお出掛けする日。隣を歩いても恥じない様な服装にする為に、タンスからお気に入りの服を何着か引っ張り出した。その中から選りすぐりの服を決めるのを悩む事かれこれ約二時間半が経過した。

 

「......子供っぽい。......微妙。......露出が多い。」

「はぁ、そんなに悩んでたら、待ち惚けをくらうよ?武広君」

「わかっているけど~......いまいち決まらないの!」

「......小咲のプレゼント選びにそんなガチガチに行くと引かれるよ?」

「わかってるって!これにするから、お母さん部屋から出てってよ!!」

 

私の部屋から邪魔者(お母さん)を追い出して、直近で買った新品の洋服で行く事にした。待ち合わせまでの時間はまだ余裕があるから、変な化粧にならないように丁寧に化粧をした。

 

「じゃあ、私出掛けて来るからね!」

「ん、いってらっしゃーい」

 

待ち合わせ場所は我歩利(がっぽり)ショッピングセンター前に忠犬シャチ公銅像前に集合という事になっている。私は集合時間十分前に着くように家を出た筈だったんだけど、既に森谷さんが待ち合わせ場所に来ていた。これ以上待たせるのも心苦しいので、急いで駆け寄って行った。

 

「すいませーん!お待たせして」

「いや、俺の方が待ち合わせ時間よりも早く来てたからね」

 

待たせてしまったのにも関わらず、広い心で受け入れてくれる森谷さんに感心してしまった。ぼーっと顔を見つめていると目線を合わせて話始めた。

 

「今日は俺の用事に付き合わせてごめんね?」

「いえいえ、勉強する事以外は暇でしたので全然大丈夫です」

「それはよかった。女の子にプレゼント選ぶのが初めてだから、同性で小咲の事をよく知っている人って言ったら春ちゃんしかいないなと思って声を掛けたんだよね」

 

森谷さんの口から直接お姉ちゃんの名前呼びを聞くとモヤモヤする。でも、まだ二人は付き合っている訳じゃないし、二人の距離感的にも幼稚園からの付き合いがあったのに、高校に入ってやっと名前呼びになったからまだ結ばれる可能性だってある筈だ。

 

「それでどんな物を送るのかって決めてたりします?」

「うーーん。まぁ、貰って腐らないような物をにしようかなと考えてはいるけど」

「具体的に何かをプレゼントにする物は決まってない.....でいいですよね?」

 

これはチャンスかもしれない。恐らく森谷さんは異性に送るプレゼントの意味を理解しているようには見えない。ネックレス、財布.....ましてや指輪なんて送ったらお姉ちゃんの事だ。飛び跳ねるように喜ぶのは目に見えている。

 

「私としてはミサンガなんてどうでしょう?」

 

ここで森谷さんに〝ミサンガ〟を勧める理由はミサンガの異性に送った際の意味の中に〝陰ながら支えています〟〝応援しています〟といった事が込められており、遠回しに恋仲になる気はないと伝えるプレゼントを受け取ったお姉ちゃんの森谷さんに対する行動力を落とす狙いがある。

 

「じゃあ春ちゃんの言ったミサンガにしよう」

 

お姉ちゃんのプレゼントが決まり、目的のミサンガが売っているアクセサリーショップでピンクのミサンガを梱包した後はフードコートで昼食を取り、森谷さんと手を繋いでデパート内にあるお店を見て回り、お家近くで別れて解散となった。

 

 

森谷武広side

 

『はぁ』

 

小咲のプレゼント選びから返って来て早々田辺さんと顔を向き合った状態でお互いに深いため息を吐いては視線を合わせるの繰り返しを五分程前から行っている。事の発端は、帰宅して直ぐに父さんと母さんに呼び出された俺と田辺さんは、何事だと緊張と不安に苛まれていた。

 

「........実はだな」

 

重い口を開けて話し始めた父さんの言葉に耳を傾けた。

 

「突然ですまないが、お前達は婚約関係になった。一体どういう訳なんだと思うのは当たり前.....なんだが、俺と華も要領をいまいち理解できてないんだ」

「.....ええ。実は黙っていたけど、お母さんは元々叉焼会ていうチャイニーズマフィアの一人娘でね?」

 

そこから長々と話している母さんには申し訳ないだけど、致命的に説明が下手すぎて中々頭に入らない。話している内容はとても大事な事だと分かるが、いまいち理解出来ていない俺は隣に座っている田辺さんは母さんが何を言っているのかと思いチラッと視線を向ける。

 

「......?」

 

如何やら田辺さんも俺と同じく分かっていない様子だった。話している内容をかいつまんでまとめると.....『母さんは叉焼会のボスの姉で、田辺さんはその護衛との事。何年か前にボスが亡くなり、後継者争いしている一部の幹部陣が何をトチ狂ったのか、ボスの姉の息子である俺と護衛の田辺さんとの間に出来た子供を後継者するという意見が上がり、婚約関係に至った』というのが事を説明してたっぽい。

 

「....はぁ、武広君。どうする?」

「....どうするも何も俺と田辺さんじゃ、どうしようもなくないですか?」

「ですよね」

 

叉焼会のお偉いさん達に今すぐ婚約関係を解消しろって文句を言っても、取り付く島もなく拒否される事だろう。そこで俺は一旦茶を濁す為に思い付いた案を田辺さんに話す。

 

「でも、そういう立ち振る舞いをしろとは強制されてないですし、今の所は気にせずに過ごしてみませんか?」

「.....確かにそうですね。現状はその考えで行きましょうか」

「もうすぐ中間があるので、失礼します」

「そうなの?頑張ってね!......部屋、出ましたか

 

俺がリビングから立ち去ったのを確認した田辺さんは懐から携帯電話を取り出し何処かへ電話を掛けた。

 

『もしもし?どうだったかな。たっ......武広君の様子は?』

「最初は動揺していましたが、最終的に落ち着いてました」

『うーん。.....そっか、あの時から十年経ってるし、精神的に成長してるか』

「.....あの、本当に武広君と婚約関係にはありませんよね?」

『当たり前でしょ?彼は私の王子様だもん。こっちの騒動が治まったら行くからね?ありがとうね...バイバイ』

「はい。......武広君も大変な人に想われているなんてね」

次話について

  • 1.原作通りに正月
  • 2.話を飛ばして、席替えとバレンタイン
  • 3.お好きにどうゾ

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