明日の林間学校、休めないかなぁ。だってさ、肝だめしをやるんだぜ?何で肝だめしが嫌なのか。端的に言えば、俺はビビりなんだ。遊園地にあるお化け屋敷とかも、誰かの袖を掴んでいないと、とてもじゃないが、入れないくらいに駄目なんだ。…………それに、さ。明日のバスの席や
__次の日
遂に、来ちゃったな。あ、古田だ。……よし、席を変わってもらえるか、相談しに行こう。
「お~い、古田。おはよー」
「おう!タケ、おはよう!」
ニヤニヤしながら、古田は挨拶を返した。俺は軽く深呼吸をして、古田に意を決してお願いした。
「お願いなのですが、古田様。席を変わってもらえないでしょうか!」
「………ふむ、小野寺さんは、桐崎さんと鶫さんを抜けば、学年で、一番可愛い女の子だ。だがしかし、俺は敢えてこう言おう____
____だが、断る!
って、一度言ってみたかったんだよね!ま、改めて言わせてもらうけど、嫌だよ。そして、頑張れ」
「お~~い!お前ら、置いてかれるぞ!!さっさとバスに乗れ!」
バスの乗車口からキョーコ先生が、早く乗るように言ってきた。
「あっぶねぇ!バスに入るぞ!」
そう古田が言いながら。急いで、俺達はバスに乗った。
___バスの車内
小野寺の隣の席とか、普通は運は良いが、俺にとってはついてない方なんだよな。あー、マジどうしよ。寝てもいいんだが、そうすると、宮本辺りが、後で煩そうなんだよな。……………、よし。
「あー、小野寺さん。キャンプ場で、確かカレーを作るんだっけ?」
「え。そ、そうだね」
会話、即終了してしまったな。こういう時の話題振りって、苦手なんだよな。どう振ればいいのか、わからないんだけど!そういえば、主人公の席は、どうなっているんだろ。チラッと見てみるか。
『ちょっと、もやし!くっつきすぎよ!』
『そうだぞ、一条楽!お嬢にくっつくな!…それと、私にも、くっつきすぎだ!』
『そう言われましても、無理があんだろ!』
ほぅ、そうなったか。……話は戻してだ。まぁ、一応俺から、話題を振ったし。もうすぐ……うっ!気持ち悪りぃ、吐き気がヤバいと思い、口に手を抑えて、数分くらいで到着するキャンプ場まで、なんとか耐えようと、外の景色を見て気を紛らわそうとしていると。
「森谷君、体調が悪いの?まだ大丈夫?」
酔っている俺に気がついた小野寺は、心配そうな顔をしていた。気分が思ってた以上に悪くて、話すのも厳しい。
とりあえず、体調が悪い事を顔を横に振って、伝えてみる。どうやら伝わったみたいで、キョーコ先生を呼ぼうと、手を真っ直ぐ伸ばして、「先生、先生」と繰り返しながら呼んでくれた。
その事に気づいたキョーコ先生が前の席から、俺と小野寺がいる後ろの席まで来た。
__時は少し遡る
一条side
「はぁ~。小野寺の隣がよかったなぁ」
ため息を吐きながら、なったらいいなと思っていたことを漏らした。
『!』
俺の右隣にいる
「イッテ!何しやがる!お前ら!」
『ふん!』
二人揃って、頬を膨らませ視線を外された。ったく、まだつねられた所が痛むぜ。こんな時、小野寺だったらどんなによかった事か。
「ん?小野寺の隣にいる奴、酔ったのか?」
小野寺は酔ったそいつの背中を擦っていた。二、三秒後ぐらいにキョーコ先生が来て、そいつを先生の席に連れて行った。
前に集の奴が「小野寺さんの事は、諦めた方がいい」って言われたけど、理由を聞いても「見てみれば、わかる」と言ってもな、よくわからなかったな。
キャンプ場に到着してから、十分後くらいにキョーコ先生と、他の先生達が来たので、クラスごとに並び。キョーコ先生がプリントを持ちながら話し始めた。
「お前ら、ちゃんと並んでるな?では、ここのキャンプ場でする事を説明するぞ!って言っても、わかってるか!それぞれ班ごとに別れて、カレー作りだ。じゃ、頑張れよー」
先生は、話が終わると先生達用の所へ戻って行った。
「さて、カレー作り!頑張るわよ!」
妙に張り切っている桐崎を見て、先日のおかゆ事件が脳裏に過る。
「おい!桐崎はあっちにある薪を幾つか。持って来てくれ。もし、わからなかったら、周りの奴に聞け」
「んぅ、まぁいいわ。薪はあっちにあるのね?」
「そうだ」
ふぅ、何とかあいつに料理させずに済んだ。この前みたいな事にならなくて、本当によかった。
「じゃ、俺も自分の役割を果たそうかな。………あれ?小野寺じゃねぇか。」
どこに行くんだ?と小野寺の行く先を見ると、さっきバスで酔った奴の所に向かっていた。
「……何で、あいつに___」
構うんだと言おうとした瞬間、首筋に冷たい感触がした。
「うぁおぅ!何だ!」
「ひひっ、どうしたんだ?楽。誰に熱烈な視線を向けているんだ?」
悪戯をしてきた集の方を向くと、水で濡れた手を軽く首筋に触れていた。
「あぁ?まぁ、その何だ。気になって、ちょっとな」
まさか、あいつに恋なんてしてねぇよな。
__宿泊部屋
主人公side
何とか快復した俺は、割り当てられた部屋に入るところだ。
「おぉ、そこそこ広いな。それに、窓からの景色も良いことだしな」
「そうだね~」
俺の独り言を聞いていたのか、相づちを打つ小野寺。
「じゃ!とりあえず集合時間まで、ババ抜きでもやりたい所だけど、先に準備を済ませてからやろうか」
場の視線を自分に向けるかのように、手をパンっと鳴らして、古田は話した。
「そうだな。ちゃっちゃと準備を済まそうかな」
俺を含めた四人全員の準備が終わり。集合時間までの時間潰しに、皆でババ抜きをやっている時、宮本がボソッと言った。
「次のババ抜きで負けた人は、自分のハツコイを話すってのはどう?」
「うえっ!?」
「えっ?」
「ほう」
宮本の発言に、三者三様の反応を示した。三人の中の誰かの反応に、ふふっと含み笑いをする宮本に、うわっと思いつつも、あー、こんな事も、あったなとため息を漏らしながら頭をポリポリとかいた。その後宮本と古田の舌説により、罰ゲームとして『自身のハツコイについて』を語る事が決定された。その事に見てわかるぐらいに動揺している小野寺が、本人に悪いが、ついニヤついてしまいそうなくらい可愛いかった。
最終的に残ったのは俺と小野寺だった。このような状況になる事は想定していたが、実際になってしまうと、うわって思ってしまう。さっさとババを引いてそれっぽいハツコイ話をして、集合場所に行かないとキョーコ先生に叱られてしまう。
「(え~と、ババはどっちだ?)」
二枚あるトランプの右側の方を触ると、パァと晴れた表情を浮かべる小野寺、反対の左側を触るとズーンとこの世すべてに絶望したかのような表情をした。
「(じゃ、右側を引くか)」
いざ、
「コラッ!!時間過ぎてるぞ!!」
バンっと扉を勢いよく開け、怒鳴り込んできたキョーコ先生に、この場にいる俺達は一瞬ビクッとして、さっさと持って行く物を手に掴んで出ていった。
__宴会場
「んっ~~!!はぁ~、山登り疲れた!」
「うっ!そうだな」
俺と古田は互いに背伸びをしながら、料理が来るまで雑談をしていた。
「そう言えばさ。明日って、二つのメインイベントがあるよな?」
思い出したかのように話しだした古田に、ハテナマークを浮かべながらも、答える俺。
「ん?確か、肝だめしとフォークダンスだったけ?」
「あー、それだわ!」
「それが何だよ」
古田はニヤっと悪巧みを思い付いたような表情を浮かべた。
「肝だめしとフォークダンスは何と、男女ペアで行うのだ!どうだ、ドキドキしてくるだろう?」
「?」
古田の言ってくる事にピンっと来てないので、雑な返しをしてしまった。
___翌日の朝
ワイワイと騒いでいる食堂の中で、古田と一緒に朝食を摂っていた。
「なぁ、メシを食べ終わったら、何すんだっけ?」
バターを塗ったトーストを頬張りながら聞いてきた。
「あ~~。オリエンテーションとテント設営の後にバーベキューをして、夜ご飯を摂って、その後に肝だめしとフォークダンスをするんだったか?」
「おお~。そうだった、そうだったな」
人がせっかく言ったのに、古田は棒読みで返してきた。
__宮本side
私は、今日の夜にある
「ねぇ、小咲。あんた、今日どうすんの?」
「えっ?何が?」
キョトンとした表情をする
「肝だめしとフォークダンスの事よ。森谷君とペアを組みたいんでしょ?」
顔を赤く染めて俯いた小咲は、消えそうな声で言った。
「……う、うん」
そんな小咲に、抑え込んだため息が出てしまった。
「はぁ、私も協力はするわ」
「あ、ありがとう!るりちゃん!」
小咲は歓喜極まって、若干涙目になり、そのままの勢いで私の両手を掴んで喜んでいる。
___キャンプ場
夜ご飯を食べ終えて、キャンプ場に来た私達は、先生の話を聞き終わり。まずは、肝だめしから始めるそうなので、男女ペアで行う肝だめしは、男女別れて番号が書かれたクジを引くとの事。
「小咲、もし私が彼の番号引いたら、交換してあげる。これなら、少しは確率だけ上がるでしょ?」
「……るりちゃん」
私の言葉に、じーんと感動している小咲。念の為、釘を指すかのごとく言った。
「もしペアになれたら、暗闇に紛れこみ。彼を押し倒しちゃえばいい!」
私はグッと親指を立てながら、クジの列に向かった。
「るりちゃん!」
その後ろから、小咲は私の名前を大きな声で叫んだ。その後、私の後を追ってそのまま列に加わった。
だんだんと前の人が進み、私がクジ箱からクジを引くと、そこに書いてあった番号は。
「22番ねぇ」
引いたクジを手に持ち、列から離れて小咲がクジを引いてくるのを待っている。
「さて、どうなるのかしら。運が良ければいいのだけれど」
ボソッと周りの人達に聞こえないぐらいの声で呟いた。
「あ、るりちゃん!何番だった?」
クジを引いてきた小咲は、列から離れている私の所へ小走りでやって来た。
「私は22番よ。小咲はどうなの?」
「えっと、私は7番だったよ」
「あら、縁起が良さそうな番号ね」
小咲と他愛ない話していると、男子の列から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「タケは、7番か!」
『ちょっと、お前声がデカイ!』
聞こえてきた声に私は思わずフッと笑みを溢しながら小咲に声を掛けた。
「彼とペアになれたようでよかったじゃない」
「うん!」
小咲は興奮と気合いが籠った返事をした。
「なら、さっさと彼の所へ行ってきなさい。この肝だめしで名前を呼ぶ仲くらいにはなってきなさい!」
そう言いながら、私は小咲の肩を叩いた。
主人公side
藁にもすがる思いで、親友である古田に頼むという感じで両手を合わせながらお願いをしていた。
「お願い!俺のクジとお前のクジを交換してくれ!」
「やだ」
「そこをなんとか!」
「無理」
「諭吉さん十人あげるから!」
「……………断る」
「今、ちょっと揺れた?」
「……ノーコメントで」
古田と言い合っている内に、小野寺が俺達がいる所に来てしまった。
「じゃ、俺はここで」
小野寺が来たのを見て、俺がいる所から同級生の男子がいるところへ行ってしまった。
「あの、森谷君。クジの番号は何だった?」
俺の方に見えるようにクジを両手で持って見せてきた。特別に緊張する事でもないのでさっと番号を見せながら言った。
「7番だけど?」
「え!本当に!っは、ごほん。同じペアだね!」
小野寺は喜びのあまり本音をぽろっと溢してしまったが、直ぐに失言をした事に気がつき冷静を装って答えた。
『7番のペアの男女!早くこっちに来てください!』
「あ、呼ばれたな。さぁ行くぞ」
俺はそう言いながら自然に小野寺の手を掴み、そのまま肝だめしのスタート地点に向かった。
「えっ?……ええっ!?」
小野寺は俺が手を繋いだことに少し遅れて理解したのか。驚いた声を出していた。
肝だめしのコースに入って5分程して、さすがに無言で進むのはビビリの俺としてはきついので小野寺に話を振ってみた。
「なぁ、確か俺と小野寺の付き合いは幼稚園から続いているよな?」
「そういえばそうだね」
「………」
「………」
俺から振った話題が一分と経たずに終わってしまった。
「(会話が途切れたな。話題になりそうなものってあったけ?)」
「(うわぁ、やっちゃったよ私!ここで『長く一緒にいるのに苗字呼びだね。試しに名前呼びしよう!』とか言えばよかった!)」
また無言で進む羽目になってしまい、どうこの場の空気を変えるかを考えていると、頬を染めながら小野寺は緊張しているかのように話し始めた。
「あ、ああ、あの!森谷君!名前を呼んでください!」
「え?」
言われた意味を理解してない俺に対して、小野寺は自分が言った言葉に動揺していた。
「(私ったら何をいってるのぉ~~~~~!!)」
またもや無言で歩く事、2分が経過した。俺は小野寺が名前を呼んでと言われて、『小咲』と呼ぶべきか悩んでいた。
「(ここは幼馴染として、名前で呼んでも良いのかどうかだけど、う~んここは試しに呼んでみるか)」
俺は意を決して小野寺のことを名前で呼んでみた。
「小咲って呼んでいいのか?」
「っ!?!?」
見たことない程に真っ赤に染まった小野寺は、言葉を詰まらせながら答えた。
「い、いいい、いいよ!わた、私も森谷君を武広君って言うから!!い、いいかな?」
「いいよ」
別に断る理由もないので了承した。そしてなんやかんや小野寺と話していたら、肝だめしのゴール地点の近くまで来ていた。
次の日からまだ呼び慣れない名前呼びを意識しながら、小咲と話すのは緊張した。