ドールズウィッチーズライン   作:ロンメルマムート

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基地案内回最後。
ハンガリーとブルガリアの士官忘れてた。


基地へようこそ!(3)

「はぁ…疲れましたわ…」

 

 すっかり日が落ちた後、基地の廊下でペリーヌが肩を揉みながら言う。

 すると前を歩くメイドが謝った。

 

「大変申し訳ございません、クロステルマン様。

 将校たちには後で注意します」

 

「別にそこまでしなくても結構ですわ。

 彼らもアレが仕事でしょうから」

 

「失礼しました」

 

 前を進むのはG36だった。

 ふとペリーヌは彼女を見る。

 ペリーヌはマゾヴィエツキが見抜いたように良家の子女である。

 戦争で没落したがそれでもその教育の賜物でマナーに精通している。

 彼女が見てもG36は礼儀正しくマナーにも精通した完璧なメイドに見えていた。

 唯一常に不機嫌に思える程目つきが悪い以外は。

 

「G36さん」

 

「なんでしょうか?」

 

「いえ、礼儀正しく、マナーにも精通、仕草も完璧、完璧なメイドですわね。

 ただ、ちょっとその目つきが…」

 

「申し訳ございません、私はその、カメラの性能が悪いので人間で言うところの近視で遠くの物を見るのが苦手でして」

 

 G36のカメラはなぜか性能が悪く遠くを見るのが苦手だった。

 だから目つきが悪くよく気の弱い戦術人形や子供に怖がられていた。

 当の本人はものすごく優しいのだが。

 

「そうなのですか、失礼いたしましたわ」

 

「いえ、お気になさらず」

 

 二人は月の光が差し込む廊下を歩き食堂の前に来た。

 

「こちらです」

 

 G36がドアを開けると中は騒然としていた。

 

「今日は飲むぞー!」

 

「お!G36!ウォッカだ!ウォッカを持ってこい!」

 

「私はビールをお願いします!」

 

 出入り口すぐの所でSVDとSV-98、M16が酒を飲んで騒いでいた。

 呼ばれたG36は溜息をつく。

 

「はぁ、ドラグノフ、お客様が来ているので節度を持ってください」

 

「大丈夫だ、節度をちゃんと持って飲むさ、だから酒を持ってこい!」

 

「大丈夫ですよ、私がついてますから」

 

「分かりました、このバカライフルの面倒はちゃんと見てください」

 

 G36はSVDを後輩のSV-98に任せる。

 二人は先輩後輩の関係、SVDには甘くなりがちだが優秀で十分任せられるだけの能力はある。

 G36はペリーヌを連れてさらに進むと第一部隊が飲んでいるところに遭遇した。

 

「だから言ってやったのよ、あのメイド冗談が通じないし堅物で色気なんて鼠のクソ程もないし可愛げなんてダイナゲートの方が1億倍あるぐらいだって!

 なのにあのバカ、それはワルサーが知らないだけだって、知らないって?この中じゃ最古参どころか空軍時代からの付き合いだって言うのに?ふざけんじゃないわよ」

 

 どうやらヴィーフリがWA2000にウォッカを盛ったようで珍しく大声で喚いていた。

 内容はG36の悪口だがWA2000は後ろに彼女がいることに気がついていなかった。

 

「ワルサー、人の話をする時は後ろをよく見てから話しましょうね?」

 

 G36が言うと一瞬で固まり油が切れたロボットのように振り返る。

 

「G、G36、こ、これはその、えっと、あの」

 

「お酒は程々にしてくださいね?」

 

「はい…」

 

 WA2000に注意すると矛先は隣で笑っていたヴィーフリに向けられた。

 

「ヴィーフリ、ワルサーに盛りましたね?」

 

「あはは、楽しいかなと思って…つい」

 

 さらに向かいでワインを飲みながら楽しんでいたAUGにも向けられる。

 

「AUG、止めなかったのですか?」

 

「あら、面白いと思わないのですか?」

 

「出た、愉悦部」

 

 人の不幸を楽しむ節のあるAUGは楽しんでいた。

 さらにG36が聞いた。

 

「G36Cは?」

 

「あそこだけど」

 

 ヴィーフリが指さす、指した先はカラオケマシンが置かれていた場所、見るとG36Cと指揮官が楽しそうに歌っていた。

 

「「Oh~♪Du schöner Westerwald~♪」」

 

「何か不味かった?」

 

「いえ、別に」

 

 楽しそうに妹が歌ってる姿を見て嫉妬やらいろいろな感情が混ざった微妙な表情をする。

 G36は人の合間を縫って歌っている二人に近づく。

 

「Über Deine Höhen pfeift der Wind so kalt~♪」

 

「Jedoch der kleinste Sonnenschein~♪

 あ、お姉さん!」

 

 G36Cが気がついて声をかける。

 

「ご主人様、クロ…」

 

「いいところに来た!一緒に歌おうぜ!」

 

「いえ、ご主人様…」

 

「いいじゃないですか、お姉さん、ね?」

 

 指揮官は彼女の手を取って無理矢理マイクを持たせる。

 

「分かりました、一曲だけです」

 

 そう言うとG36は歌っていたヴェスターヴァルトの歌を止める。

 

「ブー!」

 

「続きを聞かせろー!」

 

 一緒に騒いでいた職員や戦術人形からヤジが飛ぶがG36が一睨みすると黙った。

 戦艦クラスの眼光に敵う者はこの基地には指揮官以外いないのだ。

 

「はぁ、ご主人様、一曲お付き合い願います」

 

「OK、喜んで、お姫様」

 

「ヒュー!」

 

「お熱いねー!」

 

 指揮官とのやり取りに外野が囃し立てる。

 しかし二人は無視し曲を選んだ。

 そして流れたのは古い軍歌「褐色のモルドバ娘」だった。

 

「Как-то летом на рассвете

 Заглянул в соседний сад.」

 

 指揮官が最初の節を歌う。

 得意な曲らしく歌詞を見ずにG36だけを見て歌う。

 一方のG36も慣れているようで打ち合わせもせず節が終わると次の節を歌う。

 

「Там смуглянка-молдаванка  

 Собирала виноград.」

 

「Захотелось вдруг сказать:  

 Станем над рекою  

 Зорьки летние встречать!」

 

 G36が歌った節が終わると指揮官は彼女の手を取りその次を歌う。

 そしてサビに入る。

 

「「Раскудрявый клен зеленый, лист резной,  

  Я влюбленный и смущенный пред тобой  

  Клен зеленый, да клен кудрявый,

  Да раскудрявый, резной!」」

 

 サビを二人で歌う。

 周りの人々は手拍子を始め近くの戦術人形の手を取りステップと取る。

 

「「Раскудрявый клен зеленый, лист резной,  

  Я влюбленный и смущенный пред тобой  

  Клен зеленый, да клен кудрявый,

  Да раскудрявый, резной!」」

 

 そしてサビが終わるとG36が二番を歌う。

 

「А смуглянка-молдаванка

 Отвечала парню в лад:

 - Партизанский, молдаванский

 Собираем мы отряд.

 Нынче рано партизаны

 Дом покинули родной.

 Ждет тебя дорога

 К партизанам в лес густой.」

 

 元々若者とパルチザンの娘の恋愛を歌った曲であるこの曲の二番は娘が若者をパルチザンに誘う内容だった。

 二人は歌詞の内容を理解した上で歌っているのだ。

 そしてまたサビを二人で歌う。

 周りの観衆も手拍子とステップだけでなく歌い始める。

 

「И смуглянка-молдаванка

 По тропинке в лес ушла.

 В том обиду я увидел,

 Что с собой не позвала.

 О смуглянке-молдаванке

 Часто думал по ночам... 」

 

 3番は指揮官が歌う。

 だが歌詞の途中で一旦切る。

 

「Вскоре вновь смуглянку

 Я в отряде повстречал. 」

 

 そして最後の歌詞を続けサビを歌うが指揮官はG36の手を掴んで踊る。

 周りも踊ったり騒いだりの大騒ぎになっていた。

 

「Да раскудрявый, резной!フーハハハ!

 飲め飲め!踊れ踊れ!」

 

「ご主人様、あまり騒がないでください」

 

 歌い終わり興奮して抱き着くがG36は嫌がる。

 

「すまん、G36」

 

「この数日忙しかったのは分かりますが節度を持ってください。

 お客様も見ています」

 

「おお、忘れてた。」

 

 G36が注意する、パーティが楽しかったようですっかりペリーヌの事を忘れていたようだった。

 

「全く…ご主人様、いつもいつもそう肝心なところをお忘れになるところをいい加減直してください。」

 

「人間は完璧にはなれないから無理だね。

 だから君を頼ってるんだよ?」

 

「ご、ご主人様」

 

 G36の顔が赤くなる。

 この基地の日常でもある指揮官がG36を褒めちぎり照れる光景が今日も起きていた。

 

「あの、アーチポフ指揮官?」

 

「クロステルマン中尉、楽しんでいるかい?」

 

 するとペリーヌがやってきて声をかけた。

 どうも騒ぎに気がついて来たようだ。

 

「は、はい」

 

「そりゃよかった。どうぞ楽しんでいってくれ。

 見た事のない料理や味に舌鼓を打つといい、君らの世界には中国や韓国が無いって聞いてね、だから中華料理と韓国料理を中心に集めた。」

 

「ありがとうございます」

 

「それと、うちの子とも仲良くしてやってくれクロステルマン中尉。

 これからは長い付き合いになりそうだ」

 

 指揮官が言う。

 パーティは夜更けまで続き大騒ぎとなりペリーヌは出された中華料理の数々に舌鼓を打ったのだった。

 

 




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