「ん…んん…ん?」
どれぐらい経っただろうか、指揮官が目を開ける。
目の前にあるのはいつもの食堂の天井だけだが周りは異常に静かで、そして非常灯以外真っ暗だった。
「…何が起きたんだ?…あ!」
体を起こし周りを見ると同じように食堂にいた職員、戦術人形、ペルシカやクルーガーらも倒れていた。
「ん…ご主人様、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、それよりも他の子を起こしてくれ。
非常事態だ」
「了解しました」
G36が起きると倒れた戦術人形を一人一人揺さぶり起こしていく。
指揮官も倒れたクルーガーに駆け寄り体を揺さぶる。
「社長、社長」
「ん…なんだ?」
クルーガーやへリアン、ペルシカは見たところ問題はなさそうで気絶しているようだった。
「大丈夫ですか?」
「ん…?ああ、大丈夫だ」
「良かったです」
「何が起きたか分かるかね?」
「いえ、さっぱり。
ただ緊急事態なのは分かります」
「そうか、なら頼むよ」
「分かってますよ。G36、起こした子から急いでいつもの部隊を編成、全部隊を緊急配置につかせろ」
指揮官が命令する。
楽しいパーティの時間は終わり素早く戦闘に備える。
素早い切り替えが出来なければ最前線では命取りだ。
それができるからこそ彼と戦術人形は生き残ってきたのだ。
「ご主人様、了解です」
「SVD、G43無事か!」
「ああ」
「Ja!問題ありません!」
銀髪のSVDとブロンドのG43が返事する。
「第二部隊は予備電気系統の確認と電源を確認!
第三部隊は基地内の確認!」
「Jwol!お任せください!」
「ARと404も臨時で私の指揮下に入ってもらう。
45とM4はどうだ?」
「私は無事よコーシャ。」
「だ、大丈夫です!」
「ならいい、全管轄地区内に警戒警報発令、警戒レベルを最高レベルに。
作戦室に行く」
立ち上がると指揮官は走って作戦室に向かった。
電力が復活した作戦室のモニターには基地の地図とその地図上での全部隊の動きが点滅していた。
周りのコンソールは光の海、画面には基地内の動きだけでなく監視カメラの映像が流れていたが幾つかは画面にエラーの文字が描かれる。
「各部隊、状況を報告。」
『第一部隊G36、問題ありません』
『第二部隊SVD、異常なし。いつもより静かなぐらいだ』
『こちら第三部隊G43、異常なしですわよ』
『第四部隊、NTW-20、異常はない』
『第五部隊LWMMG、異常ありません』
『第六部隊、M14、問題なしです』
『第七部隊、M21、なんにも問題もないよー』
『第八部隊、ナガン、問題なしじゃ』
『こちらAR小隊、M4A1、問題ありません。』
『404小隊、UMP45、問題なし。』
「了解、妙だな…本部、近隣基地へのホットラインが故障。
周辺監視ポストとレーダー基地と連絡途絶、鉄血の仕業か?
その割には動きが無い、なぜだ?」
各部隊からの状況報告を聞くが状況は全くの平穏、ただの停電だが他の基地への連絡手段が失われているのに鉄血の動きも何もなしという状況で不思議な事ばかりだった。
「各部隊、何でもいい、鳥がいないとか何でも構わない、少しでも変な事、気がついたことがあったら教えてくれ」
『こちらG43、気のせいかもしれないけど…』
第三部隊を率いるG43が何かに気がついたらしい。
『基地の周りの植生がいつもと違う気がしますわ。
気のせいだと思いますけど。』
「植生?」
『ええ、木の高さとか形がいつもと違う気がしますの』
『言われてみればそうね、いつもはもう少し高い木がいくつかあったはず。
変ね』
G43の報告にWA2000が同意する。
二人共スナイパーらしく観察眼に優れているのは基地の誰もが知っている事だ、この二人が言うのだから何かが引っかかった。
「植生が違う…そのほかに何かないか?
星座が違うとか匂いが違うとか」
『少し潮のにおいがする。』
『そうじゃ、それに星座が違う。
オリオン座が出ておる』
さらにダネルとナガンが匂いと星座の違いに気がつき報告した。
状況はますます不可解な状況となり指揮官は情報を整理だけで手いっぱいだ。
「オリオン座?」
『そうじゃ、オリオン座じゃ。
冬の大三角形とダイヤモンドも見えるぞ』
「ダネル、潮のにおいがするのか?」
『そうだ指揮官、かすかに潮のにおいがするぞ』
「了解」
各々の報告を聞き指揮官は頭を掻きむしりながら座り込む。
「一体どういうことだ…植生が変化して星座も変わる、その上海から何百キロも離れたところで潮のにおい…
さっぱり分からん。」
「うむ、全くだ。私でさえこの状況は理解できない」
「常識外れにも程があります。」
「そうだね、もしかしたら科学では説明できないとんでもない事が起きたのかもね。」
「科学では説明できない事ねぇ、幽霊とか宇宙人とかか?」
「それで済めばずっといい事かもね」
同様にクルーガーもへリアンもペルシカも理解不能だった。
謎が謎を生み常識では理解できなことが連続して起き過ぎだ。
『コーシャ!聞いてる!』
突如UMP45が大声で連絡してきた。
「なんだ45!後にしてくれ!こっちは状況整理で忙しい!」
『それより早くラジオ付けて周波数を430キロヘルツに合わせて!』
「?分かった」
「ラジオ?こんな時にか?」
あの404小隊の隊長が言うのだから相当な事が起きたと思い指揮官は指令室に置かれていたラジオをつけ周波数を合わせた。
へリアンが疑問を口にするがその疑問はすぐにラジオから流れた声によってかき消された。
『全部隊、というか全職員、全戦術人形へ、非常に重要な情報を入手した。
総員食堂に集まるか無線で話を聞いてほしい。』
数分後、突如基地内の共通回線で指揮官からの命令が下された。
指揮官の声からはどうもいつもと違う抑揚が感じられた。
「なんでしょうか?」
その微妙な違いに気がついたG36は不安を感じる。
「非常に重要な情報?
なんだろう?」
ヴィーフリが銃眼から分身のSR-3MPを向けながら言う。
何が起きるか分からないため第一部隊は担当している防衛拠点の要塞化された建物から注意深く外を監視していた。
「敵が近づいているって情報でないのは確かよ。
屋上から外を見ても何もないもの」
屋上で警戒していたWA2000が呟く。
周りの森はいつもより静かなぐらいであった。
「いつもより静かなぐらいですね、G36お姉さん、どう思いますか?」
「そうね、何か重大な事が起きている気がするの」
「気がする?」
「ええAUG。ご主人様の声から、こう、何と言いますか、ご主人様でさえ理解の範囲を超えたようなことが起きて今、なんとか必死に私達にどうやって伝えようか考えてるようなものを感じます。」
G36は指揮官が何を言おうとしているかを推測した。
最も親密な間柄だからこそどんなことを言いたいかを推測できる、それほどの信頼関係を築いているからこそ何かを察したのだ。
「流石指揮官の正妻ね。
古参の私でもそこまで分からないわよ」
「流石G36お姉さんですわ!私の自慢の姉ですわ!」
「素晴らしい信頼関係ですわね」
「相変わらずお熱いねぇ~」
すると無線機から指揮官の声が聞こえた。
『えー、全員集まったか?聞いてるか?
それじゃあ今から重大な情報を伝える。
どうやら我々は、
過去のイギリス、それも異世界の1944年2月28日に来てしまったようだ。
戻る術は、今の所ない。』
その言葉は全戦術人形の電脳を大混乱に陥れエラーを出すのに十分だった。
ウィッチーズ要素はまだないです。
1話3000字前後を目安にしたい。