20分ほど前、UMP45に言われた通りラジオをつけると衝撃的な言葉が聞こえてきた。
『こちらはBBCホーム・サービスです。1944年2月28日、8時のニュースをお伝えします。
本日チャーチル首相はロンドンにおいてリベリオン国務長官コーデル・ハル氏と会談し…」
「1900…」
「44年…?そんな馬鹿なことが…」
「タイムトラベル…か」
「それもパラレルワールドへのね。
さっきコーデル・ハルの事を“リベリオン国務長官”って言った、史実ならアメリカ合衆国って言うはずだよ」
ラジオから僅か2文の放送でも衝撃は十分だった。
全員が顔面蒼白し信じられない物を見る様子だった。
「嘘だろ、おい…」
「悪い夢なら覚めてくれ…」
指揮官とへリアンは常識とかそんな言葉を超えた安っぽい三流小説家の小説の方がまともと思えるような現実にめまいを感じる。
「残念だが二人共、これが現実だ」
「いやぁ、まさか調査に来たのに調査対象のいた世界に行っちゃうとはね」
ペルシカの発言に指揮官が反応する、これが調査の対象だったのか。
「は?どういうことだ変態ケモミミ引きこもり」
「言ったとおりだよ、私の調査は例の黒い連中の調査。
回収された破片から私はアレを異世界の物と考えてこの地区のどこかにワームホールがあると思って探しに来たんだ。
結果は私達がワームホールに吸い込まれたんだけどね。」
「ハハハ、気に入った、殺すのは最後にしてやる」
ペルシカたちの調査対象というのはこの異世界へのワームホールだったのだ、だが実際はそのワームホールに巻き込まれその上帰れなくなるという最悪の事態となったのだ。
指揮官の中に強烈な殺意が芽生えるが何とか理性で抑える。
「そりゃどうも」
「畜生いつか殺してやる」
恨み言を言うと無線機で全部隊に指示を出した。
「全部隊、というか全職員、全戦術人形へ、非常に重要な情報を入手した。
総員食堂に集まるか無線で話を聞いてほしい。」
内線で戦術人形たちに伝えると指揮官は椅子に崩れ落ちる。
「はぁ、大変な、いや大変って言葉で済めばずっといいぐらいの大事だ。
社長、いざという時はお願いします」
「うむ、分かっている」
「へリアンさん、迷惑かけますよ」
「ああ、そのぐらい承知だ。
今はお前が頼りだ」
「ペルシカ、お前いつか絶対殺す」
「ありがとうね」
クルーガー、へリアン、ペルシカに一言言うと立ち上がり食堂へと向かった。
そして話は元に戻る。
指揮官の安っぽい小説の方がよっぽどマシな話に全員が驚き、困惑していた。
「あの指揮官、それ本当ですか?
とてもじゃないけど信じられないんですけど…」
その驚嘆と困惑を代表してM1ガーランドが手を挙げて聞いた
『指揮官!あんた過労で頭ぶっ飛んだの!?』
『指揮官、腕のいい医者を紹介しますよ?』
『指揮官、慣れないギャグは言わなくていいんだよ?』
『お主、とうとう狂ったか?』
更に部屋のスピーカーに繋がれた各部隊の無線機から第一部隊のWA2000と第二部隊のツァスタバやM21、ナガンから悪辣な言葉が続く。
戦場で共に戦い絆を築いていた戦術人形たちでさえ信じられない、いや信じる方が難しい事だ。
「残念ながら本当、だと思う。
さっきラジオでBBCホーム・サービスの1944年2月28日の午後8時のニュースが流れていたからな。
一応同じ放送をクルーガー社長とへリアンさん、クソケモ耳引き籠りが聞いてたから3人に聞けばいい。」
指揮官はさっきよりは弱い口調で根拠を伝える。
流石に社長と上司と当代一の天才科学者が証人となれば疑う余地は内容で押し黙ったようだった。
「というわけだ、今後の活動について色々と議論したい。
よって、30分後に各部隊長は作戦室に集まってもらいたい、以上だ」
短く会議を伝えると切り上げ作戦室に戻った。
残された職員と戦術人形は茫然とし、少しすると誰かが声を上げた。
「つまり、俺達は異世界の1944年に来ちまったってことか?」
「そう言ってるだろ!聞こえなかったのか!?」
恐らく整備士の誰かの声を皮切りに口々に言い始めた。
「じゃ、じゃあ、コーラップスとか鉄血はいないし第三次世界大戦も起きてないってことじゃね?」
「そうだ!その代わりに世界中で大戦争中だけどな!」
「汚染されてない食品とかちゃんとした食材とか一杯あるってことだろ!?
スプリングフィールドさんが喜ぶぞ!」
「でも整備部品とかどうするんですか?」
「んなもん気合いだ気合い!そこをどうにかするのが技術屋ってモンだろ?」
「お菓子いっっぱい貰えるかなぁ」
職員に交じってFNCも言い始めるなど喧騒としていた。
「で、集まって貰ったんだが、どうする?
正直言ってノープランだ」
30分後、作戦室に集まった各部隊隊長とクルーガー達幹部、そして指揮官だが誰も何の策も知恵もなかった。
文字通りのノープラン、どうも三人寄れば何とやらを期待したようだった。
「はぁ、コーシャ、バカなの?」
「バカではないと思いたいが客観的に見ればもしかしたらそうなのかもしれない」
「指揮官、私はあなたの指示に従います」
するとM4が言う。その言葉はこの場にいる全員の意思を代弁するかのようだった。
「M4、ありがとう、よその子だけど」
「ご主人様、どうしますか?」
「対処フローはシンプルよ、引き籠るか、それともこちらから打って出るか」
UMP45が選択肢を提示する。
引き篭もり戦力を温存し備えるか、それともリスクを承知で周囲を捜索、調査して情報を収集、場合によっては当局と接触し交渉するか。
どちらともリスクはある、その上ここは補充が効かない異世界、慎重な判断が求められる。
提案を受け彼は黙り込み考える、彼の両肩には今まで以上の重責がのしかかっている。
「引き籠るってのはキャラじゃないよね?指揮官」
「指揮官!私達を信じてください!」
すると、M14とM21が彼の背中を押した。
基地のムードメーカーの二人の言葉にこの場の意思が決定した。
「そうじゃ、ワシらの能力を信じるのじゃ」
「そうだ、鉄血が来ても倒してきたんだ。
今更異世界ごときで怯える程じゃない」
「指揮官、スナイパーの実力を疑うのか?」
「指揮官、引き籠ってもいたずらにコストがかかるだけですよ」
「指揮官、ご指示を」
「ご主人様、私たちはいざとなれば徹底的にやります」
「指揮官、AR小隊の能力を疑ってますか?」
「コーシャ、404の実力を見たい?
私達はあなたが思うより強いわよ」
戦術人形達が自身げに言う。
「アーチポフ君、君の能力は父親譲りだ。
失望させないでくれたまえ」
「指揮官、貴様の能力が今の所頼りだ。
期待している」
「現状君だけが頼りだからさ、お願いね」
クルーガー、へリアン、ペルシカも言う。
そして決断した。
「そうか、なら明日、明朝から周辺地域の捜索と情報収集を行う、にしよう。
質問は?無いようなら解散、各自明日に備えてゆっくり休め」
「「了解」」
翌日
「ドローンによる航空偵察で色々と周辺の状態がわかった。
どうやらここはドーバーの西に当たる場所で2.5キロ南に海岸線がある。
その他にここから東に7.5キロほどの所に滑走路を有した空軍基地らしき基地がある。
人影等も確認できている他駐機場にJu52を確認した。
この基地への潜入調査は現状情報不足のため難しいと判断、日中は周辺部の捜索調査とし潜入調査は夜間にゾディアックボートを使用して行うものとする。」
探索に向かう部隊の隊長は作戦室に集められ指揮官からドローンによって集められた情報を伝えられる。
2062年ともなれば例えグリフィンの使う民間用を改造した代物や軍用の型落ち品や中古品、モンキーモデルでも周囲10キロの航空偵察には十二分すぎた。
明らかになったのは現在地がドーバー近郊の沿岸部だという事、そして近くにそれなりの規模の空軍基地があるという事だった。
「何か質問は?」
「はい、その潜入調査は誰がやるの?」
UMP45が質問する。
「それについては404とAR、それにうちの第一部隊でやるつもりだ。
詳細は後で詰めておいてくれ。
各部隊にはそれぞれ一機ずつドローンを専属偵察機として配属させる。
何が起こるか分からない、一応人はいるだろうが補給の無い危険な任務だ。
最大限安全を確保し同時に戦闘を回避するように、いいね?命令したよ?
作戦名はコンキスタドールだ。
では、解散、各自作戦を開始。
おやつまでには帰ってこい」
「「了解!」」
彼女達の今後を左右する作戦、コンキスタドールが開始された。
やっとウィッチーズ要素