「よし、時間だ。
騒ぎを起こすぞ」
「皆さん!予定通りお願いしますわ!」
日付が変わろうかという頃、空軍基地の陸側の森ではSVDに率いられた第二部隊の79式、グリズリー、ツァスタバM21、FALと第三部隊のG43、M1903、PPK、MP40、9A-91が動き始めた。
やることは簡単であった。
「では皆さん、ファイヤー!」
「射撃開始!」
両部隊銃を誤射しないように撃ち始めた。
更にFALとツァスタバがグレネードを炸裂させ注意を惹く。
その音、さらに銃口の光に気がついた基地の警備兵は伏せライフルを構える。
「こちら第二部隊、陽動開始!
反応あり!」
『殺さないように惹きつけろ』
第二部隊と第三部隊は警備兵を惹きつけるために銃を乱射する。
すると何かの連絡を受けたのか撃ち返し始めた。
「撃ってきた、それじゃあ引き上げるぞ。」
部隊は撃ち返しながら引き上げる。
警備兵も追いかけてきたようで大きな声で指示を出しているのが聞こえる。
「え!?発砲!?
自衛目的での戦闘を許可します」
「ミーナ!」
「正面ゲート付近で銃撃戦よ。
相手は不明、機関銃の発砲音もあるそうよ」
基地内では赤毛の少女が電話を受け取ると対応を指示していた。
「夜盗か?」
「夜盗が機関銃を持ってると思う?美緒。
まさか反乱…」
ふと恐ろしい可能性が頭をよぎる。
もし反乱ならこの基地は耐えられるだろうか、そんなことが一瞬頭をよぎる。
だがその思考は次の連絡で消え去った。
「え?撤退し始めた?」
『はい、現在追跡していますが森の中なので捕捉は困難かと…』
「了解、最大限注意して。
海側の警備の兵士を陸側に回すわよ」
『は」
「なんだ?」
「妙よ、撃ち返し始めたら逃げたって。」
「逃げた?」
「何かしら、いやな予感がするわ…」
警備からの連絡に嫌な予感を感じる。
その嫌な予感の正体は数秒後分かった。
「大変!これが目的だったのね!?
急いで警備兵を格納庫に!」
「ご主人様、こちら第一部隊、上陸まで3分」
『第一部隊了解、上陸後第一部隊の半分とARはホールディングエリアで待機、残りは潜入、書類等、場合によっては捕虜の確保を行え。
第4、第5部隊はアタッカーで待機、緊急時はアタッカーを発進、援護する。』
基地の海側では3艇のゴムボートが高速で接近していた。
乗っているのは第一部隊、AR小隊、404小隊だ。
「上陸まで残り2分、上陸ポイントの安全を確認。」
416が上陸ポイントの安全を確認する。
2分後、3隻のゾディアックボートは岸に着くと上陸する。
上陸したのは丁度滑走路付け根の真下に当たる部分であった。
「こちら404、上陸完了。
これより潜入する」
『了解、幸運を』
45が無線で手短に報告する。
部隊はここで404とG36とヴィーフリのグループ、そして残りのグループに分かれた。
404のグループは基地の西側に周りゆっくりと岸壁の階段を上り駐機場と格納庫を確認する。
同時に416とG11が分かれて格納庫の隣を探る。
「格納庫には人がいる、それも大勢。
格納庫からの侵入は無理ね」
UMP45が判断する。
最大限リスクを避けるよう厳命されている以上この判断は妥当に思えた。
すると416達が戻ってきた。
「格納庫の隣に基地内に入れる出入り口があったわ」
「警備は?」
「何も、鍵もかけられてないわ。
奥は廊下よ」
416は出入り口を確認しただけでなくその先のルートやセキュリティまで僅かな時間で調べていた。
これこそ最精鋭の存在しない小隊の実力だ。
「そこから行くわよ。
これからは私達の流儀に従ってもらうわよ、G36、ヴィーフリ」
「承知しております」
「そのぐらい百も承知だよ」
UMP45が二人に忠告だけすると返事を無視して出入り口に向かう。
注意しながらドアを開けG36とヴィーフリを後衛、UMP45と416が先頭に立って周囲を警戒しながら前進する。
「クリア」
「クリア」
途中コーナーを一つずつ丁寧に確認して安全を確認する。
その間耳につけた無線では正面ゲートの陽動作戦の音声が聞こえていた。
『こちら第二部隊、妙だ。警備兵が追いかけてこない』
『了解、監視を続けろ』
何となく聞き流そうとした会話にUMP45は何かを感じる。
戦闘で培われた勘とも言うべきものが反応した。
「まさか、ね。」
生じた不安をぐっと飲みこむ。
すると後ろから話し声と二人の足音が聞こえてきた。
「ミーナ中佐、この辺りかー」
「何もないようですけど」
二人の少女、話し声から僅かなフィンランド訛りとロシア訛りがあるような英語だった。
UMP45は咄嗟にハンドサインで傍のコーナーに隠れる。
そして
「何もないな、サーニャ、早く夜間哨戒行こうぜ」
「駄目よエイラ、ちゃんと確認しな…キャ!」
コーナーに差し掛かった瞬間UMP45が一人の腕を強引につかみ絞める。
同時に416がもう一人を蹴り飛ばし首に持っていたスタンガンを押し当てる。
「悪いわね、これが仕事だから」
「おやすみ」
気絶させるとUMP9とG11が二人の両手に手錠をはめる。
するとUMP45が気がついた。
「不味いわ、この二人無線機をつけてる。
404、潜入がバレた。撤収する、援護!」
UMP45が指示を出す。
「ヴィーフリさんとG11さんが二人を抱えて、私とUMP45さんが殿を。」
「いい判断よ、416と9が前衛、すぐに人が来るわ!」
G36と45が判断する。
すぐに一行の耳には多数の足音と声が聞こえ始める。
「404の皆さんの潜入がバレたようです。」
「で、どうするM4」
「兵力をこちらに誘い出します」
「やったー!」
格納庫側では連絡を受けたAR小隊らが動き始めた。
銃を構えると格納庫に向かって撃ち始めた。
勿論最大限被害を出さないためわざと地面や天井に向かって撃つ。
「M16姉さん!」
「よし来た!」
M16がスタングレネードを格納庫に投げ込む。
格納庫は大混乱と恐怖に支配され整備兵たちが蜘蛛の子を散らすように逃げる。
すぐに騒ぎに気がついて警備兵たちもやってくる。
「警備が来ました!」
「M4!警備兵はこっちがやるわ!」
「お願いします、ワルサーさん!」
警備兵はWA2000とAUG、G36Cが対処する。
警備兵に当てないように気をつけながら銃撃する。
警備兵も持っているライフルを撃ち返す。
『M4!そろそろ出るわ!』
「分かりました!第一部隊の皆さんは反対側に回って404の皆さんを迎え入れる用意を!」
「分かったわ!急ぐわよ!」
UMP45の連絡を受け第一部隊を回収に向かわせる。
その間にも警備の兵士が次々と現れていた。
「M4!兵士の数が増えてきたわよ!」
「ええ、404の皆さんが出てくるまでの辛抱です!」
「M4!榴弾撃っていい?」
「駄目です!死人が出ます!」
『M4!先に9達が出るわよ!』
AR小隊が警備兵と戦っていると第一部隊が反対側に到着、さらに出入り口からUMP9と416、少女を背負ったG11とヴィーフリが飛び出した。
「来たわね!M4!援護!」
WA2000がM4に要請する。
数秒後炸裂音が聞こえ、煙が撒かれる。
どうやら発煙弾か催涙弾を発射したようだった。
「今よ」
その間にG11とヴィーフリ、続いてUMP9と416が飛び出して駐機場を横切り階段に飛び込む。
それと時を同じくして発砲しながらUMP45とG36が出入り口から飛び出した。
「G36お姉さん!」
「ごめん!追撃を振り切ってたら遅れた!」
「いいわよ、早くこっちに来て!」
WA2000がこちらに来るよう言う。
二人が格納庫の端から出ようとした瞬間、ある銃の特徴的な連射音が聞こえ壁を抉る。
「な、何…?今の」
驚いたUMP45がゆっくりと壁から覗くと一人のおさげの少女が二丁のMG42を構えていた。
「嘘でしょ、MG42二丁抱えて撃つとか正気じゃないわよ。
M4、そこからMG42持ってる女見える?
そいつ排除してくれないと動けない!」
次の瞬間、頭を銃弾が掠める。
「M4!早くして!」
『無理です!暗くて撃てません!』
「ああ、クソ!」
M4の言葉に悪態をつく。
「UMP45さん」
「G36、最悪よ。
ここから動けない。
ここから動けないと全滅よ」
「どうしますか?」
「ねえ、コーシャって無理をする方?」
するとUMP45がG36に指揮官の事を聞いた。
一瞬驚くがすぐに言葉の真意を理解したG36が答える。
「かなり無理をする方です、特に部下に対しては」
「例えば?」
「行方不明が出ると空軍まで動員して探す程度には」
「そう、M4!私達は動けない!
私達を置いて撤退して!」
『でも!』
M4に指示を出すが彼女は渋る。
二人を見捨てるという選択を選ぶのに迷っていた。
「大丈夫よ!コーシャ!聞いてる?」
UMP45が指揮官の指示を仰ぐ。
この戦闘の無線の会話は全て作戦室に繋がっていた、だから何が起きているかは指揮官もよく理解していた。
『45、最初から聞いている。
M4、二人を置いて行け』
『しかし』
『今は安全確保が先だ。
今すぐ戻れ。』
「ありがとう、コーシャ」
指揮官が強い言葉で命令する。
M4達はしぶしぶこの命令に従い急いでゾディアックボートまで戻りボートに飛び乗って撤退する。
岸を離れると警備兵が撃ってくるが幸い夜の闇に紛れ一発も当たらなかった。
「みんな離れたわね。」
「ええ、指揮官なら絶対助けに来ますよ」
「あいつはバカだから」
そう言うと二人は銃を下ろして両手を上げる。
警備の兵士と例のおさげの少女、そしてブロンドのショートの少女が近づいてくるとドイツ訛りの英語で話しかける。
「お前たち二人を不法侵入の容疑で拘束する」
「あらどうも、丁重に扱ってよね。」
「ええ、犯罪者でも権利ぐらいはあるので」
二人は銃を取り上げられ後ろ手に縛られ連行された。
残された二人の少女は落ちていた銃を拾った。
「トゥルーデ、見た事ない銃だね」
「ああ、おもちゃみたいな銃だな」
二人が呟いた。