翌朝、例の空軍基地の指令室でG36とUMP45は手錠をかけられて座らせられていた。
「何をするつもりかしら?」
「尋問でしょうか?」
話しているとドアが開き赤毛の少女と黒毛に眼帯をつけた少女、そして例のMG42を両手持ちしていた少女が立っていた。
「初めまして、私は連合軍第501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズ隊長、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐よ、そちらは戦闘隊長の坂本美緒少佐とゲルトルート・バルクホルン大尉よ」
「どうも」
ミーナ中佐と名乗った少女にUMP45が返事をする。
「では早速だが色々と聞きたい。」
次に坂本少佐と名乗っていた少女が訊ねる。
「お前たちの所属と名前はどこだ?」
「君たちの所属と名前を答えてもらえるかな?」
同じ頃、基地では404とAR小隊、第一部隊が拉致した二人の少女を指揮官が尋問していた。
二人は手錠をかけられ銀髪で黒と白の服を着た少女は大人しくしているがもう一方の同じく銀髪で青い軍服を着た少女は反抗的な態度を取っていた。
「いやだ!サーニャを解放しろ!」
「その少女はサーニャと言うのかい?
ありがとう」
フィンランド訛りの英語で喚く少女を無視しながら尋問を続ける。
周りには指揮官だけでなくもしもに備えG36Cも一緒にいた。
「サーニャ、名前からしてロシア人かい?
こう見えても俺もロシア人でね、モスクワ生まれだ。
君の出身は?」
「…ウィーン」
「ウィーン、差し支えなければ本名を教えてもらえるかな?」
「アレクサンドラ・ウラディミーロブナ・リトヴャク。」
「ダスヴィダーニャ、アレクサンドラ・ウラディミーロブナ。」
サーニャと名乗った少女に続いてもう片方の方にも尋ねる。
「さてと、君の名前は?」
「そんな事より今すぐ解放しろ!」
「OK、俺も手荒な真似はしたくない」
そう言うと彼は拳銃を取り出し向ける。
「言っておくが君たちの立場は今は捕虜だ。
そしてもう一つ言っておくが我々は戦時国際法を守る義務が無いんだ。
つまりだ、今ここで君らを殺しても何の刑事的責任も発生しない。
それは理解してくれ」
「く…エイラ、エイラ・イルマタル・ユーティライネン。
所属は連合軍第501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズ」
しぶしぶ二人は答えた。
「私はグリフィン&クルーガー社所属404小隊隊長UMP45よ」
「私はグリフィン&クルーガー社P-38地区基地所属G36です」
二人は正直に答える、こうするのが得策だと考えた訳もあるがそもそも素性が特別なUMP45以外は嘘が得意ではない、プログラムの関係上嘘をつけないシステムになっているからだ。
だが二人の話を信じられないようだった。
「ふざけた答えを言うな」
「あら、私達、会社の中でも相当な正直者で知られているんだけれどね」
バルクホルン大尉とかいう少女がキツイ口調で言う。
「そのグリフィン&クルーガーというのは何の会社ですか?」
ミーナが訊いた。
「何の会社って」
「PMC、と答えればいいでしょうか?」
「PMC?なんだそれは」
「PMC、プライベート・ミリタリー・カンパニー、民間軍事会社、言い方はいろいろあるけど一言で言えば傭兵かしら」
「傭兵?」
「ええ、傭兵よ」
「次に聞きたいのはお前たちの名前だ、そのU何とかとかいうふざけた名前は何だ」
「これが私の型番ですが」
「登録番号も聞く?MJG14051」
「フフ…」
UMP45が言うとG36が笑う。
だがそれがバルクホルンの癇に障ったようだった。
「何がおかしい!」
「失礼いたしました、お上手なジョークでしたので」
「ジョーク?」
「古い映画のセリフから取ったのよ、悪い?」
「真面目に答えろ!」
「あら、一流の兵士にはジョークのセンスは必要不可欠よ。」
UMP45の飄々とした態度にバルクホルンのイライラが募る。
「ふざけた事を言うな!
PMCだか何か知らないがお前たちは今は捕虜だ!
こちらの指示に従え!さもないと…」
「トゥルーデ!」
バルクホルンがUMP45に掴みかかる。
ミーナが急いで止める。
「あら、そんなこと言っていいのかしら?
私達はPMC、そう、正規軍じゃないの。
どういう意味か分かる?今私達が拘束しているお仲間を殺しても何のお咎めもないの。
それにね、私達は“人じゃない”のよ。」
「どういう意味だ?」
UMP45が含みを持たせたことを言う。
彼女は言っている意味が理解できない。
「あら、そのまんまよね?G36」
「ええ、人でなければ法の下で裁かれる権利はありませんので」
「私達は人じゃない、戦術人形、言い方を変えればロボットよ。
まあこの時代ロボットって言葉自体生まれたばかりだろうけどね」
「どう見ても人だろうが」
「そうね、コンポーネントの半分が生体パーツだけれど頭に入ってるのは大脳ではなくマイクロチップとシリコンの基盤、思考の代わりに0と1の数字配列が行ったり来たりしてるのよ。
証明してもいいわよ、誰でもいいから私の腕を撃ってみなさい、答えはすぐ出るわよ」
「第501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズ?
どのような部隊か教えてもらえるかな?」
指揮官が二人に聞く。
「ネウロイの侵攻からブリタニアを守るため各国の軍の精鋭ウィッチを集めた部隊、です。」
「ネウロイ?ウィッチ?」
「ネウロイは私達人類の敵です。
突然現れて欧州から人々を追い出したんです、何百万という人が故郷を追われ今も世界中で戦っています。
そのネウロイに対抗できるのが私達ウィッチなんです」
サーニャが正直に答える。
だが指揮官にはさっぱり理解できない、何せネウロイやらウィッチなどと言う単語は聞いたこともない。
「では、そのウィッチとやらである、と証明できるかね?
何分、物的証拠がなければ信じるのも難しいので」
指揮官が試すつもりで二人に聞いた。
すると二人は体が光ると猫と狐の耳が生えた。
「その、これでどうですか?」
「な、私達はウィッチだ!」
サーニャとエイラが言う。
その姿に指揮官の脳裏にある女の姿を思い出した。
「あいつのケモ耳もウィッチなのか?」
ふと呟く。
その瞬間バックヤードで「どっかの誰かにそっくりだな」「私の耳は違うよ!?」という会話があったのは余談だ。
「OK、理解した。
G36C、ちょっと」
後ろで二人を監視していたG36Cを呼び耳打ちする。
「こいつは相当大変なことになった。」
「は、はい」
「人類の要を誘拐してしまったらしい。
早急に交渉のテーブルに着きたい、今日の午後一時には基地に向かう体裁を整えたい。
こういうのは社長とトムが適任だ。」
「分かりました、トムさんと社長を呼んできます」
「ああ、トムはこの時間帯ならスプリングフィールドで駄弁ってるはずだ。」
G36Cは取調室を出る、代わりにヴィーフリが入る。
「失礼、ちょっとした準備だ。
君らを確保するのに我々も二名、向こうに拘束された。
今日の午後には向こうの当局者と話し合いをしたいのでその準備をね。」
二人に事情を説明する。
「あの、一つ聞いてもいいですか?」
「何かな?アレクサンドラ・ウラディミーロブナ」
サーニャがある質問をした。
「あなたたちは、一体…?」
サーニャの質問に指揮官の表情が変わる。
一瞬曇らせると笑顔を浮かべて答える。
「我々が何か?実に面白い質問だ。
答えは色々ある、戦争屋、現代の封建領主、守護者、傭兵、金で動く汚い連中等々。
どの答えを望むかね?どの答えを言っても君らには信じられが。」
そう言うと手を合わせる。
「ま、こんなところでふざけた答えを言ってもあまり意味はない。
正直に答えよう、我々はグリフィン&クルーガー社だ。
創業は2056年、私はそこのまあ、下っ端社員だ」
正直な答えに二人は驚愕する。
「おいお前!ふざけたこと言うな!」
「ミスユーティライネン。
嘘ではないよ、例えば君らはこれが何かわかるかね?」
指揮官は言いながらポケットから薄い金属の板を取り出す。
60年以上前に形が決定されその後も計上を維持したまま進化した携帯、所謂スマートフォンだ。
「なんだそれ」
「板?」
「これは電話であり百科事典であり本であり時計でありレコードであり蓄音機だ。
君らの時代の約120年後の代物だが、聞いてみるかい?」
彼は言いながらスマホを操作し音楽を流した。
「私は結構歌が好きでね、例えばこの曲」
流れてきたのはロシア人ならだれもが知っている民謡「コロブチカ」。
二人も聞いたことのある曲に驚愕する。
「信じてくれたかね?」
二人は無言で頷く。
「それは良かった。
では最後の質問だ、レディに年齢を聞くのは極めて無礼なのは重々承知しているが年齢をお伺いできますかな?」
「13」
「15だ」
年齢の問いに指揮官は呟いた。
「この世界も相当狂ってるな…」
「では次に聞きたい、お前たちが持っていた武器はなんだ?」
バルクホルンが二人に聞く。
「何って」
「銃以外に見えますか?」
二人が答える。
「見慣れない銃だから聞いた。
U何とかの持っていた銃の弾は45口径弾だったがそっちのG何とかの弾は見た事が無い。」
「ま、当然ね。
私の銃はドイツ製ヘッケラー&コッホUMP45よ。
烙印システム付よ」
「私のはドイツ製ヘッケラー&コッホG36、同じく烙印システム付。
それが何か?」
「どちらの銃も聞いたことが無いわ。
その上ドイツなんて国もヘッケラー&コッホなんて会社も烙印システムなんてのも聞いたことが無いわよ」
二人の銃の説明は3人とも理解できない。
当然だ、この二丁はドイツで1990年代に生まれた銃だ、この50年後に生まれる銃でありこの時代製造メーカーのH&Kすら誕生していない。
ましてや二丁とも従妹ともいえる関係の銃でG36は導入時レゴライフルなどと呼ばれるほど異質な見た目の銃だったのだ。
アサルトライフルという概念自体が生まれたような時代では仕方ないと言えた。
「まあ当然でしょう、どちらも1990年代に生まれた銃ですので。
G36は5.56×45ミリNATO弾を使用、作動方式はロータリーボルトのショートストロークピストン方式、キャリングハンドルにはドットサイトが付属、繊維強化プラスチックを全体に使用、マガジンは半透明で弾薬の量を確認可能なアサルトライフルです。」
「UMP45は45口径弾を使用したサブマシンガンよ。
G36同様繊維強化プラスチックを大々的に使用、シンプルブローバック方式のクローズドボルト方式のいい銃よ。
まあ理解できないでしょうけど」
二人が説明するが三人とも理解不能だった。
「まあ理解できなくて当然よね。
で、次は何の話が聞きたいのかしら?」
UMP45は不敵な笑みを浮かべながら聞いた。
誰も得しない後方幕僚設定
・トム・ラングドン
ユタ州出身。元国際弁護士。父親は元上院議員。59歳。
元鉄血の顧問弁護士。
髪は白髪交じり、身長は170センチ代半ば。普段はグレーのスーツに赤いネクタイ。
蝶事件後事実上弁護士業を廃業、隠居しようとしたが昔の伝手で後方幕僚を打診され条件付きで受諾した。
法律に明るく行政に関しても知識がある。
角砂糖を貪る癖がありそのせいで糖尿病を患っている。
隠居理由も糖尿病の悪化が原因。
条件とは助手と部下をつけることでそのために何人かの戦術人形を使える。
戦術人形には娘や孫に会うような態度を取り父親的存在。
温厚そうに見え人当たりがいい。
糖尿病の影響で視力が悪く足も悪い。