ドールズウィッチーズライン   作:ロンメルマムート

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M590とSAT8の独自設定とか


後方幕僚トム・ラングドン

「ここ数日大変な事になったなスプリングフィールド」

 

「ええ、トムおじさん。これからどうなるんでしょうか」

 

 スプリングフィールドと話しながらコーヒーをすする。

 砂糖が入っていないブラックだが彼の生きていた時代なら格別の美味しさのコーヒーだ。

 歳は60ぐらい、身長は指揮官とほぼ同じ170センチ代半ば、話す英語はユタ訛り、灰色になってはいるが所々まだ黒い髪の毛、ごく普通のメガネをかけ場違いなスーツ姿襟には弁護士のバッジをつけたとんでもない甘いもの好きの隠居人、それが彼、後方幕僚トム・ラングドンのこの基地での評判だ。

 

「うちの可愛い子達に何も無ければそれでいいんだがな。」

 

「そうですね、何も泣ければ万々歳です」

 

「そうだよな、モスバーグ」

 

 トムが隣でコーヒーを飲むモスバーグM590に言う。

 この基地における指揮官の立ち位置が家長を任された長男ならば彼の立ち位置は隠居した祖父や父という立ち位置、指揮官とは違うベクトルで戦術人形に慕われ同時に愛してくれる存在、それが彼だ。

 後方幕僚という忙しい仕事ながらこうして戦術人形とふれあい、悩み相談に乗り、カフェでコーヒーを飲む。

 元々国際弁護士として30年以上忙しい日々を送ってきたがその仕事を捨て着いたこの仕事を気に入っていた。

 というのもこの仕事は何かと都合がいい、彼の持病の糖尿病に配慮して人間よりも効率がよく間違った指示さえしなければ絶対に間違った仕事をしない戦術人形をアシスタントに書類の整理や行政の事を考え、交渉するという仕事は以前の弁護士と比べればずっと楽な仕事だ。

 ちなみに彼は最初後方幕僚を打診された際辞退したがある事情でM590とSAT8と知り合い二人を連れてくるという条件を付けてこの仕事を受諾したのは余談だ。

 

「ふふ、トムおじさんは平常運転ですね。」

 

「この歳になったら大概のことはサラッと受け流せるものさ。

 それに私には子供がいないからね、私に娘がいたら君達ぐらいだっただろうから」

 

「ふふ、そうですね。

 でも実際の娘が隣居るじゃないですか」

 

「そうだなスプリングフィールド」

 

「駄目ですよ、おじさん。角砂糖の瓶に手を出しては」

 

 テーブルの上の瓶に手を伸ばしたトムの手をM590が掴む。

 壺の中身は角砂糖、彼の悪い癖が角砂糖を貪る事、ストレスが溜まると一時間に一袋貪り結果糖尿病になり杖無しに歩けない体になる程貪ったのだ。

 糖尿病の件は基地内に徹底して布告され彼には絶対に砂糖や特定の甘味料以外を出さないように徹底されていた。

 それどころか特別メニューも用意されている程だった。

 

「分かっとるよ、ハハ。

 最近は糖尿病患者でも問題ない甘味料があるしな」

 

「トムさん~ご注文のペパロニピッツァ焼けましたよ~激ウマですよ~」

 

 すると奥からSAT8ペパロニのピザを運びトムの前に置く。

 トムは嬉しそうに一緒に出されたピザカッターを構える。

 

「Thanks!」

 

「相変わらずトムおじさんの胃はすごいですね」

 

「おじさん、朝からピザは体に悪いですよ」

 

「いいのいいの、アメリカ人の胃を舐めるなよ?

 ピザとハンバーガーとステーキを消化するのに特化した胃だからな!」

 

 朝からピザを丸々一枚食べようとする食欲にM590もスプリングフィールドも呆れていた。

 これがいつもの事だ。

 するとカフェの入り口のベルが鳴り振り向く、するとG36Cが入ってきた。

 

「いらっしゃい」

 

「コンパクトか、どうした?仕事は終わったのか?」

 

「トムさん、指揮官が呼んでます。」

 

 G36Cがピザを食べ始めたトムに言う。

 トムは一口コーヒーを飲むと返事をする。

 

「ピザ食べてからでいいか?

 こっちは昨日の夜から何も食べてないんだ」

 

 

 

 

 

「交渉だが…」

 

「相手はブリタニア政府だが問題がある。

 事前情報が無い」

 

 指揮官の私室で指揮官とトム、へリアン、クルーガーは交渉の方策を話し合っていた。

 彼らに伝手も擁護者もなし、政治的なバックアップもない、もしテロリスト認定されればその場で終わりである。

 それだけは絶対に避けなければならない、組織として、会社として何としても生き残るために。

 

「それはこっちも同じだよ、トム。

 それに完全にないわけじゃない、内閣の情報などはこちらの歴史のチャーチル政権と同じだ」

 

「それにカードはあるな?指揮官」

 

「捕虜二人ですか?」

 

 へリアンがある情報を指摘するが二人はさっぱり理解できなかった。

 彼の頭の中には捕虜二人以上のカードはないように思えた。

 

「違う、もっと大きな物だ。」

 

「技術かへリアン」

 

 へリアンは首を横に振る。

 二人は何のことか分からず首をかしげる。

 

「ケンブリッジ」

 

 クルーガーが口を開く。

 すると二人には合点がいった。

 

「成程ね、連中を使うのか。」

 

「奴らも腹の中の裏切り者がいるとは思ってないだろうからな。

 だが、この世界でも連中はスパイなのか?もし違ったら…」

 

「その可能性もないとは言えない。

 そこで指揮官、AR小隊をロンドン南部の浄水場に送り込む」

 

「浄水場?なんで、そうか…」

 

 へリアンの策に一瞬理解できなかったがすぐに策を思い付いた。

 そしてニヤリと笑った。

 

「フフ、へリアンさん、お主も悪よのう…」

 

 

 

 

 

 

 

「何時までそんな答えを続けるつもりだ。

 いい加減本当の事を話したらどうだ」

 

「迎えが来るまでよ」

 

 昼過ぎ、朝早くから始まったUMP45とG36の聴取は日が高くなり時計が真上を指しても終わらなかった。

 何せ互いの情報が一切噛み合わない、その上UMP45は何かと話を煙に巻き話が進まない。

 グダグダが続きミーナも坂本もバルクホルンも疲弊しきっていた。

 

「あら、もう根を上げるの?

 残念ね、もう少し暇をつぶせると思ったのに」

 

「ええ。もう少し楽しませてもらえませんか?」

 

「フフ、やっぱりあの人に似るのね」

 

「ご主人様に連れられて色々映画を見せられたので」

 

「あのオタク、まだ変わらないのね。」

 

 二人は3人を無視し雑談をするほどだった。

 その態度に益々苛立ちが募る。

 すると耳に微かに変わった音が届いてきた。

 

「ん?何かしら」

 

「蜂か?」

 

 ミーナと坂本は音のする方を見る。

 

「あら、この音は…」

 

「どうやら迎えの者が来たようです。」

 

 この音は二人にも聞こえ、よく知った音だった。

 ミーナ達は窓を覗くとそこには見慣れない飛行物体が飛んでいた。

 

「何あれ!?」

 

「一体あれはなんだ!」

 

「迎えのヘリじゃないかしら。」

 

 そう言うとUMP45は手錠を外して立ち上がり窓から覗く。

 窓の外には迷彩塗装が施されたカモフKa-52アリガトール2機に護衛されたミルMI-26ヘイロー2機がまっすぐこちらに向かってる来るのが見えた。

 

「やっぱりね、空軍のお古のアリガトールとヘイローよ。

 アリガトールは護衛かしら」

 

「な!貴様!」

 

「こう見えても脱出イリュージョンは得意なのよ」

 

 バルクホルンが気がつくがもう後の祭りだった。

 

「大丈夫です、ご主人様から殺傷は出来る限り避けるよう命令されておりますので」

 

「ええ、迎えがあと10分で来るのに暴れるバカではないわよ」

 

 G36が手錠を外しながら言う。

 するとドアが激しく叩かれ明るい髪の少女が入ってきた。

 

「中佐!外に!」

 

「分かってるわ、シャーリーさん。

 急いで警備の人を駐機場に集めて!

 二人も来てちょうだい」

 

 シャーリーと呼ばれた少女-どことなく声がG36に似てる気もする―に指示を出すと二人を連れてミーナ達は駐機場に向かった。

 

 

 

 

 

「コーシャ、本当にやるのかい?」

 

「ああ、これからの事があるからな。

 社長、そろそろ着陸です」

 

「うむ」

 

 Mi-26の機内では空軍時代の知り合いの機長と指揮官が会話した後向かい合って座るクルーガーに話しかける。

 Mi-26の貨物室には404小隊と第一部隊も乗っていた。

 もう一機には第二部隊と第三部隊、エイラとサーニャが乗っていた。

 機体はゆっくりと降下し基地の滑走路に着陸、もう一機もその横に着陸した。

 着陸するとゆっくりとドアが開き戦術人形が飛び出して周囲を警戒する。

 

「右クリア」

 

「左クリア」

 

「正面クリア」

 

 G36C、ヴィーフリ、AUGが抜け目なく周囲を警戒するとクルーガー達が降りる。

 基地の建物の方を見れば警備の兵士達がライフルを構えていた。

 

「止まれ!」

 

「分かってる!何も殺し合いをしに来たわけじゃない!

 ここの基地の責任者と話し合いがしたい!」

 

 警備兵を率いる将校に指揮官が大声で叫ぶ。

 

「こちらには捕虜が二名いる!捕虜交換交渉だ!」

 

 すると人ごみの後ろが騒がしくなり人をかき分けながら赤毛の少女が出てきた。

 

「あなた達がグリフィン&クルーガー社の者達ですね!」

 

 止めようとする将校を制して大声で訊ねた。

 

「ああ!この基地に潜入して捕虜になった二人の上官だ!

 レディがこの基地の責任者ですね」

 

 指揮官は答えるとゆっくりと歩いて向かう。

 兵士達は警戒して銃を向ける。

 そして握手できるほどの距離まで近づくと手を差し出した。

 

「G&K社P‐38地区基地指揮官、コンスタンティン・ハリトノーヴィチ・アーチポフだ。

 本日は是非話し合いの場を設けていただくために来ました。」

 

「連合軍第501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズ隊長、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐よ。

 我々としても話し合いを行いたかった所よ」

 

 二人は握手し自己紹介する。

 グリフィン&クルーガー、そして戦術人形の生き残りをかけた交渉が今、始まる。




このSSには作者の持っている戦術人形しか出ません
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