ウィッチーズでもドルフロでもコラボしていいのよ?
交渉が行われていたその頃、部屋の外では第一部隊と404小隊の戦術人形がウィッチ達と警戒しながら相対していた。
「なんで通さねえんだよ!」
「指揮官からの命令だよ。
外部から乱入されて交渉を台無しにされたくないんだって」
ヴィーフリにシャーリーが迫るが通す気はさらさらなかった。
何せ通せばその時点で交渉はご破算だ。
ウィッチと戦術人形の問答は交渉が始まってからずっと続いていた。
一方の404小隊は第一部隊にウィッチの扱いを押し付けて離れたところで暇を持て余していた。
「いいから早く通しなさい!」
「中にいる上官たちが心配なのはわかるけど何も取って食おうとは思わないわよ。
私達は首狩り族じゃないんだし」
メガネをかけた少女、ペリーヌ・クロステルマン中尉にWA2000が言う。
それでも言う事を聞かない。
「誰が信じられますか!襲撃までしておいて!」
「あー、それは事情があったからね、悪かったとは思ってるわよ。」
「まあまあ、今日は平和的な交渉の為に来たんだからさ。
あんまり騒ぐと交渉決裂でもっと大変なことになるよ」
「ええ。落ち着いて仲良くやりましょう、ね」
ヴィーフリとG36Cが諫める。
二人の言う事が最もだった。
外野の騒ぎでご破算になった交渉や契約というのは今までもいくつもあった、その苦い経験から騒ぎは出来る会切り起こしたくないものだ。
「二人の言う通りね。
言い争っても無駄ね、ここは仲良くやりましょう?
まずは自己紹介からかしら」
冷静になったWA2000が言う。
最初にWA2000とペリーヌが自己紹介する。
「ええ、私はペリーヌ・クロステルマン、自由ガリア空軍中尉ですわ」
「私はワルサーWA2000、よろしく」
「私はSR-3MP、ヴィーフリって呼んで」
「G36式コンパクトですわ、よろしくお願いしますわ」
「ステアーAUGですわ」
第一部隊がペリーヌ達に自己紹介する。
「本当は後もう一人G36がいて隊長なんだけど今回は色々あってワルサーが隊長なんだよね」
「色々?」
「実は今…」
「駄目です!ヴィーフリさん!」
ヴィーフリがG36の事を言いかけたので急いでG36Cが口を塞ぐ。
その様子にペリーヌは首をかしげる。
「何かありましたの?」
「まあ色々と…」
「そう、色々だよ、色々。」
何とか二人は誤魔化した。
すると突然G36Cの胸が誰かに背後から触られた。
「ひゃああ!!」
「G36C!」
突然の事でG36Cが大きな声を出し全員が警戒する。
するとWA2000が背後に気配を感じ振り返る。
そこには褐色でツインテールの小中学生ぐらいの少女がいた。
「あ、バレちゃった」
「今、私に何をしようとしたのかしら?」
WA2000は少女にかなり怒っている様子で問い詰める。
WA2000は基地内では本気で怒るとかなり怖い部類の人形だと言われている、普段はツンケンしているがいつもの事でありツンデレとして愛されているが怒ると怖い戦術人形第4位か5位に位置している。
1位がスプリングフィールド、2位がG36、3位がG36Cだが。
「今、私の胸を触ったのはあなたですね?」
更に怒ると怖いG36Cも少女に迫る。
WA2000の怒り方は冷静に感情を爆発させないが同時に無表情な怒り方、一方G36Cはと言うとニコニコいい笑顔で迫るタイプ、本気で怒ると姉どころか指揮官にまで一撃を食らわせるタイプだ。
「ひ…!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
するとシャーリーが間に入り二人を止めた。
二人は不機嫌なままいったん止まる。
「ルッキーニが胸を揉んだんだろ?
本当に済まない!ルッキーニも謝って」
「ご、ごめんなさい」
ルッキーニと呼ばれた少女も立ち上がりシャーリーと共に謝る。
それに二人はいい笑顔で返した。
「いいのですよ、謝ってくれれば」
「謝ればそれでチャラよ」
二人は表面上許したように見えるが二人の表情からは「次やれば殺す」というメッセージが書いているようだった。
すると誰かが聞いてきた。
「ねえ、みんな左手に指輪してるけど何それ?」
聞いてきたのは背の低いブロンドのショートの少女だった。
「これは誓約の指輪ですわ。
細かい説明を省くと戦術人形の能力を向上させるというものですわ」
「戦術人形?」
G36Cが説明するとシャーリーが首をかしげる。
当たり前だが彼女達は戦術人形が分からない、彼女達はG36C達を人間と認識しているのだ。
「私達の事よ。
私達は戦闘用に改造された自律人形、それが戦術人形。
端的に説明すれば機械よ」
WA2000が説明する、だが勿論信じられる訳なかった。
「機械?どう見ても人間じゃないか」
「私達の元になった自律人形自体が人間に似せて作られてますからね。
食事や排泄までできますからね」
「ええ、人形や人という色眼鏡で見なければ全く同じですから」
後ろから言われウィッチ達が振り返るとショットガンを持った褐色銀髪の女性と癖毛のブロンドの女性、即ちM570とSAT8のコンビがいた。
二人は本来外周警備のはずだ。
「M590、SAT8、来たの」
「ええ、おじさんが心配ですから」
「そ、心配性なのはいいけど邪魔しないでよ」
二人はトムを心配してきたようだった。
「外の様子はどうですか?」
「最初はピリピリしてましたけど仲良くやってますね。
ただSVDがウォッカ持ち出そうとして…」
G36Cが外の様子を聞いた。
外も平和なようで警戒心は何処へやら交流が開始されていたようだった。
するとドアが開いてバルクホルンが出てきた。
「堅物、終わったのか?」
「大筋終わった、今からコーヒーを取りに行くんだ」
「コーヒー…もしかして砂糖も頼まれませんでした?」
バルクホルンにM590が聞いた。
図星のようで彼女は驚いた。
「ああ、砂糖も念押しされたが」
「はぁ、おじさんですね。
トムおじさんに砂糖は絶対に飲ませては駄目です」
「どうしてだ?」
M590がバルクホルンに伝える。
強い口調で言うので彼女は気になった。
何せ普通砂糖を飲ませるななんて人はあまりいないのだ。
「トムさん、糖尿病なんですよ。
だから基地での料理は全て特別メニュー、砂糖なんてもってのほかです。
なのに基地だとFNCと同じぐらい甘いものが大好きですからいつも目を盗んで砂糖とかお菓子食べようとして怒られてるんですよ。」
SAT8が説明する。
それにバルクホルンも納得した。
「糖尿病なら仕方ないな。」
「それと、入る時は一緒に入れてください。
一回〆ますから」
「トムを〆るのは別にいいけど怪我させないようにね」
M590にWA2000が忠告する。
数分後、バルクホルンがコーヒーを淹れて戻ってくると部屋の中から叫び声が聞こえた。
「なあ嬢ちゃん、俺と付き合っ…」
「他の人を探してください」
外では警備の兵士と第二部隊、第三部隊が交流していた。
ある兵士がツァスタバをナンパするがあしらわれていた。
「ふふ、残念だが私達を口説こうなど一億年早い」
「一番チョロい人が言うのね」
「私はチョロくなんかないぞ、G43」
SVDにG43がツッコむ。
SVDはなんだかんだで女の子扱いされると簡単に引っかかるタイプだった。
お陰で第二部隊で一番釣りやすいだのチョロインなどと職員たちが影で言っているが本人は気がついてない、バレたら恐らく全員がウィリアムテルごっこされるからだ、誰も死にたくない。
「暇ね」
「暇ですね」
「暇ですわね」
「暇すぎて煙草切れた」
「あら、禁煙にはちょうどいいじゃない」
「何時になったら交渉が終わるんだよ!」
「騒がないの、エイラ」
ヘリの機内では指揮官の元同僚のロシア人パイロットと戦術人形が形式的にエイラとサーニャを監視しながら駄弁っていた。
だが余りの暇さにグリズリーも9A-91もPPKもFALもエイラもサーニャもパイロットも退屈になってきていた。
するとスプリングフィールドが籠を持って来た。
「あの、基地でクッキー焼いてきたんですけど食べますか?」
籠からクッキーを包んだ袋を取り出して聞いた。
すぐに全員の表情が変わり我先にクッキー受け取り食べ始める。
「あらあら、大丈夫ですよ全員分ありますから。
お二人も食べましょう?」
スプリングフィールドはエイラ達にもクッキーを渡した。
「あ、ありがとうございます」
「お口に合うかしら?」
二人はクッキーを恐る恐る食べ、表情が柔らかくなった。
「美味しいです!」
「ウマいぞ!」
「ふふ、ありがとう。」
スプリングフィールドの絶品のクッキーはウィッチにも好評であった。
魔女と人形、その対立は意外な事にすぐ治まりそうだった。
夕方、更に諸々の細部が詰められた後、基地の格納庫前でエイラとサーニャ、UMP45とG36が交換された。
もはや周りの兵士達は警戒心はなくそれどころか野次馬が集まり一目でも戦術人形の姿を見ようと集まっていた。
「ミーナ中佐、この度は失礼した」
「クルーガー社長、次からはちゃんと事前連絡をお願いします。
これからは隣人ですので」
クルーガーとミーナが握手する横で指揮官は二人を出迎えていた。
「よ、生きてたか?」
「死んだんじゃない?」
「ハハ、そんなふうに返せるなら生きてるな」
「ええ、お陰様で。前より調子いいぐらいよ」
UMP45と彼はいつものように軽口を叩き合う。
そしてもう一人、G36の方を見ると優しい表情で声をかけた。
「おかえり」
「ただいま戻りました」
一言返すと指揮官は抱擁し、額にキスすると手をつないでヘリに向かう。
「さ、帰ろう。仕事が山ほど残ってる」
「ええ。お手伝いします」
「今日は徹夜覚悟だ、しばらく忙しくなるぞ、G36。」
「ご主人様、無理は体に良くありません。
コンディションにも悪いですよ」
「分かってるよ、それに倒れてもこの世で最も可愛くて美しいメイドが完璧な看病をしてくれるしね」
二人は話しながらヘリに乗りこんだ。
その様子を見てUMP45は苦笑いして呟いた。
「たく、あの二人…ま、これからはアレを見ながら生活するのが日常になりそうね」